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おまいらウルトラQの脚本を創ってください。再×3

1 :第X話:2006/11/14(火) 06:13:49 ID:UXQfoxqP0
512kb超えちゃいましたoTL
誘導貼らなくて御免なさい

前スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1141268822/

2 :第X話:2006/11/14(火) 06:18:06 ID:UXQfoxqP0
現在まとめサイト構想中………
前スレより引き続きます。

3 :名無しより愛をこめて:2006/11/14(火) 07:46:19 ID:I6UbHX0T0
わたしもすっかり512規制のことを忘れとりました。
この手のスレなら512の発動は必至(笑)。
しばらくはageておいた方がいいのでは?

と、いうわけで応援。

4 :第X話 彼方からの彼女:2006/11/14(火) 07:59:45 ID:LMepAO1t0
一瞬、耳鳴りのような音がした。
振動が小屋を駆け抜ける。────中心の始祖ザラガスが震えていた。その内停止する。
不安げに周囲を見渡す変人女(平行)。

「さて…………」
変人女が目を泳がせる。目に留まったパイプイスを持ち上げた。
「ちょ、何する」「……せえの───」
振りかぶって──────── バ カ ン !!飛び散る石の破片。
あっさりと、禍々しく中心に据えられていた始祖ザラガスが砕け吹き飛んだ。何かの赤い液体も飛び散る。
血のように赤い液体の中に、ビクビクと動く内臓のようなもの。ソレを、

ビチャリ。変人女が踏み潰した。

あっけに取られる変人女(平行)のポケットからマイクを奪う。スイッチを入れた。
「あーあー、聞こえる?オペでも防衛庁長官でも総理大臣でも八百屋のおっちゃんでもいいからどーぞー」
ブツブツザーザー音がする。やがて返信。
『……った、貴様かっ!一体どういう事態か説明しろ!何でザラガスが無限1upしまくってるん』
「たった今ザラガスの即進化適応能力を無効化しました。思う存分うっぷん晴らしちゃってくださいなー」
『な、ちょっと待』
スイッチOFF。マイクを卓上に置く。放心した表情の変人女(平行)
「…………………何で、どうやって……人間一人でDNA変異分析なんて出来る訳が………」

「一人なら、ね」
足元の赤い液溜まりを踏みしめる。「あんた、平行世界から来たのは自分だけだと思ってた?」
「バカ云ってんじゃないわよ、平行世界間の移動なんて、それこそザラガスでもないと────」
「そ。ザラガスかもしくは”ザラガス小体の元の細菌”でもないと、ね」

変人女が、人差し指で自分の頭を指差す。
「今あたしの頭の中には────”ザラガス小体の元の細菌”をモデルにしたナノマシンが詰まってる」
「……え?」
「今現在のあたしは、無限に近い平行世界のあたし達と繋がってるのよ」

5 :第X話 彼方からの彼女:2006/11/14(火) 08:02:53 ID:LMepAO1t0
変人女(平行)と出会った頃から発症した謎の高熱。レントゲンに移った謎の脳腫瘍。
それはナノマシンが変人女の脳内に取り付き、インターフェイスを構築する間の拒否反応。
構築が終了した後、彼女の脳はナノマシンを介し他の平行世界の自分と繋がった。

────無限の自分との巨大ネットワーク。フルに使えばDNA分析でさえもた易い事。
「只、正直他世界の自分たちと折り合いつけるのが大変だったけど。しょーもない奴も居たし」
ああ疲れたといった風情で溜息をつく変人女。

変人女(平行)がうなだれる。
「…………そっか、”あたし”が、ね………」
ゆっくりと机にもたれかかる。床の赤い液溜まりを見て、それから顔に手を添えた。────泣いているのか。
「どうしようかなぁ────────……フフ」
流れる涙を拭う。拭えども拭えども、溢れ出す雫。
「  ……やっぱり、一人で、死」

「死ぬにゃまだ早いわよ」
変人女が小屋を横切り、扉を開ける。誰かを招き入れた。

「 ……ヨ、 お」
雑誌記者。只、動きが妙にぎこちない。「  ………ひサ シぶり、と言うべキ かナ」
泣きはらした顔で、怪訝な顔の変人女(平行)。
「 ……あー、 ワからんカ。 その、急造なんデ、インターフェイスが、  安 定しないイんで、ソの」
雑誌記者の目の中で、紫と茶色のマーブル模様が揺らめいた。
「  ………髪、切ったんダな。 三つ編みは、モう ……しないのか?」


「…………へ?」
短髪の変人女の、か細い、不思議を表す声。

「今コイツの体を、あたしの脳内のナノマシンと同じものがインターフェイスを形作っている。
 インターフェイスの人格は、人間────」

6 :第X話 彼方からの彼女:2006/11/14(火) 08:03:36 ID:LMepAO1t0
「……何で、三つ編みの事知ってるの?」
「 ………そリャ、知っテるさ。おレが三つ編み、教えたロ?」

「貴方の平行世界からの、お迎えよ」


変人女(平行)の顔が歪み、涙が溢れ、雑誌記者の胸に倒れこむ。
「何で!?何で、崩壊する地球も見たし、何度試しても、そっちの世界に戻れなかったのに────」
「……あー、それは だナ」
「生き残った世界が有ったのよ。殆どの平行世界が消失した中で、たった一本細い木の枝みたいなのが」
周辺の平行世界が根こそぎ消失してしまった為、彼女のザラガス石では観測も移動も出来なかったのだ。
生き残った世界からは、消えた彼女を探す為ザラガスの分析から創られたナノマシンを使用。
しかし人間そのものを送ることは不可能な為、意識をインターフェイス化して送り出したのだ。

「平行世界間が離れすぎててそうしなけりゃ移動が────────って、いいかげんにしなさいあんたら!」
顔を近づけ、見詰め合っていた二人を引き剥がす変人女。
「ほら、とっととコイツの身体返しなさいよ?説得できたでしょ?」
雑誌記者ががくりとうつむくと、顔の目や鼻からマーブル模様の液体が滑り出てきた。
変人女(平行)の掌にぽたりと落ちる。ゴムマリ状に丸くなった。


「さて────後一つ。あたしの脳内インターフェイスによれば、ソイツはあんたを連れ戻しに来たのよね」
ナノマシン同士を融合してフルに能力を使えば、彼女の元の平行宇宙へジャンプ出来る。
しかし、その一回のジャンプでナノマシンは焼ききれてしまい、二度と再生することはない。

「……如何する?あっちの世界の状況情報は、インタフェーイスに無かったわ」
一度滅びかけた宇宙だ。どうなっているか分かったものではない。
掌のマーブルゴムマリを眺めた後、大きく息を吸い込んで、変人女(平行)が一言。


「────決まってんでしょ。行くわ」
ニっと笑いあう、鏡像の二人。「………さっすが、それでこそあたしだわ」

7 :第X話 彼方からの彼女:2006/11/14(火) 08:04:18 ID:LMepAO1t0
「……んん?う゛ぁ」
雑誌記者がマヌケな声を上げて起き上がった。「何だ?一体何がどうなって」
「しっかり立ちなさいな、お見送りよ」

変人女(平行)の掌のナノマシン群が輝き始める。形を変え、螺旋を描く。
彼女の身体に沿って、くるくると巻き上がっていく。まるで光の羽衣のよう。全身を包み込んだ。

「…………迷惑、掛けたわね」
「いーわよ別に、いい経験だったしね。おたっしゃでー」
光に包まれる変人女(平行)がくすりと笑った。
「……云っとくけど、今まで見てきた平行世界のアタシの中で、貴方が一番『 ガ サ ツ 』よ?」
「ん゛な゛っ!?」
変人女が変な顔に歪んだ。


「フフ、もっと、おしとやかになりなさいな?  ………────じゃあねっ」

────光の粒子に包まれたかと思うと、少々の風を巻き起こして、彼女の姿は消えた。
恐らく、この宇宙からは。



「………おれにゃあ、殆ど区別はつかんがなぁ」
「ナ〜ニマヌケ面してほざいてんのよ、とっとと帰るわよッ!?大変なのはこれからなんだから!」
大股で小屋の出口へ向かう変人女。何故か肩こりが酷い雑誌記者。頭も痛い。何故だろう?


外では、ぽやんと車の陰に避難しているチーコちゃんと、体育座りで泣いている運ちゃんと、
演習場内で怪獣相手にドンパチ真っ最中の自衛隊の姿があった。
「さー、この中抜けて帰るわよ。徒歩で」

……徒歩で!?

8 :第X話 彼方からの彼女:2006/11/14(火) 08:06:33 ID:LMepAO1t0
結局、自衛隊にとっつかまった一行。
しかし変人女が如何機転を利かしたのか、今は帰りのバスの中。
────運ちゃんは途中で住所氏名連絡先を聞き出して丁重にお別れしたが。

チーコちゃんは靴を脱いで車窓を眺めている。既に夜、夜景が瞬く。
「じゃあ、お前や俺の頭ン中のナノマシンは、あの時点で全て破壊されたってコトか」
「そ。全ナノマシンが”あたし”を元の平行世界に送り込む為に使われたからね。残骸は後日排出されるでしょ」
もう、平行世界の誰とも繋がってはいない。
────────あの短髪の変人女は、無事に自分の世界へ帰れたのだろうか?

「────あんた、あのマーブルチックナノマシンの情報は記憶に残ってる?」
「ん?あ、まあ、うっすらと」
「…………じゃあ、何が起こってたか説明はこれ以上、要らないわね?」
「ん、まあ…………あ、一つ、分からないことが有るか」
「ん、何?」

「あのナノマシンとやらのインターフェイスって、結局誰の人格だったんだろな?」
「…………あんた、本気でソレ云ってんの?」
じとっとした視線を浴びせる変人女。たじろく雑誌記者。「────いや、あの……」
「いーわよ、企業秘密。あんたには教えない」
「……何だよ、そりゃ」


変人女がポツリと呟く。
「────あんた、三つ編みの仕方、知ってる?」
「ん?」
「何でも無い!」


三人の映る夜の車窓。チーコちゃんが向かい側の夜景を眺める。
その向うを、幾つもの灯明かりが過ぎ去っていく。
────そのどれもが、自らの照らし出す世界を抱えながら。

9 :第X話:2006/11/14(火) 08:11:45 ID:LMepAO1t0
長かった………前スレ>>47殿、お待たせしますた。
平行世界ネタは無謀すぎた('A`)

まとめは暫く待って下さい。とゆーか前スレ以外の作品はPC沈没の影響で
自分の分しか残ってませんが。
新都社あたりでいこうかな?

10 :名無しより愛をこめて:2006/11/14(火) 12:33:30 ID:I6UbHX0T0
ではご紹介いただきましたので、拙作駄文。投下させていただきます。
連投禁止との関係や、X話氏新作準備の時間稼ぎも兼ねまして15〜17日の三日に分けての分割投下。
さて、どうなりますやら……。


11 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:35:58 ID:I6UbHX0T0
よく「となりの芝生は青い」と言います。
でも、本当のところは「青く見えるだけ」。
実際は、自分のところと五十歩百歩というところでしょう。
でも、これからお話しするのは、隣りの芝生に立ち入ってしまった男の物語です。

りりりりりりりりりりん!
りりりりりりりりりりりん!!
鳴り響く目覚しのアラーム。
やにわに手が伸びると、目覚まし時計をがっしと掴んで毛布の下に引きずり込み……そして数秒後……。
「やばい!寝過ごしたぁ!」
若い男が布団を跳ね上げ飛び起きると、二日酔いの頭に水道水をばしゃばしゃ引っ掛け、そしてその十数秒後にはズボンのベルトを締めながら玄関を飛び出した。
ドアを手荒く閉めたショックで、玄関脇にかけられた「××ハルオ」と書かれた名札が落っこちた。彼が本編の主人公である。

A級戦犯 「隣りの芝生」

ワイシャツの裾をズボンの下に押し込みながらアパートの階段を転げるように駆け下りると、門を飛び出してすぐのところにアパートの大家が背中を向けて立っていた。
足を止めることなく「お、おはようございまっす!!」と一声挨拶。あとは駅に向かっていっさんに駆けていった。
……あまりに慌てていたので、いつもは快活な大家が自分に挨拶を返してこなかったことに、ハルオは全く気がつかなかった。



12 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:37:41 ID:I6UbHX0T0
いつもの路地を抜け、いつもの角を曲がる。
そして……。
(……今日はここを抜けてくか…)
少しでも近道するため、いつもは通らない児童公園へと道を折れた彼の目に、公園入り口を塞ぐように倒れた自転車が飛び込んできた。
「○×牛乳」と書かれたその自転車をとっさに飛び越え、そのままの勢いで公園内に数メートル走りこんだところで、ハルオの足はぴたりと止まった。
(……ど、どうかしたのかな??)
………こちらに背中を向け、地べたにぺたっと尻を据えて、男が座っていた。
見覚えのある後ろ姿、顔見知りの新聞配達だ。
そしてその前に誰かが仰向けになって倒れている。
新聞配達の体の陰から見えている前掛けには「○×牛乳店」と書かれていた。あの倒れていた自転車の主に違いない。
新聞配達は牛乳屋の上半身に覆い被さる姿勢でいる。
空気には金くさい臭いが漂い、ビチャビチャと水気を感じさせる音が聞こえてきた。
ハルオはその金属臭が、むかし子供のころ野球をしていて自打球が鼻に直撃したとき嗅いだことのある臭いであるのを思い出した。
「……そうだ、この臭いは……。」
思わず彼が口に出してそう呟いたとき、座り込んでいた新聞配達が振り返った。

「…………………ち…………血いいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」

ハルオが思わずが叫んだのと、血まみれの歯を剥き出して新聞配達が立ち上がったのとは、全く同時だった。


13 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:39:47 ID:I6UbHX0T0
(ゾンビがくるりと輪を描いたぁ♪)
目の前に血まみれの口が迫ったとき、まず最初にハルオの脳裏を過ぎった言葉がそれ。
次に、脈絡を取り戻した思考がはじき出したのが(喰われる!?)という言葉だった。
怪物の両手が彼の両肩をがっきと捉えた次の瞬間、ハルオは目の前に迫った肉食の怪物を火事場の馬鹿力で突飛ばすと、機械人形のような正確さでクルリと向きを変え、そして……。
サイレンのように絶叫を上げて走り出した!
「食べないでぇぇぇぇぇぇっ!」
牛乳屋の遺品である自転車をもう一度飛び越えると、もと来た道をまっしぐらに描け戻る!
「た、食べないでぇぇぇぇぇぇぇっ!」
だが、それまで人気の絶えていた路地のそこここから、ぐらつき、足を引き摺る人影が次々まろび出てきたではないか。
ハルオの叫びが、かえって怪物どもを呼び寄せているのだ。
だが、頭では判っているのに、彼の喉は叫ぶのを止めてくれない。
「た、食べないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」(さ、叫ばないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!)
声では怪物に哀願し、心では己自身に哀願しつつ、ハルオは寄って来る怪物をかわしてかわして、遮二無二走り続けた。
やがて、狭いながらも汚い、……いや、愉しい我がアパートが見えてきた。
(あそこに逃げ込めば、もう一度寝直せば、きっと何もかも元どおりに……)
サンクチュアリ目指して、ハルオは走った。

14 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:41:07 ID:I6UbHX0T0
アパートの屋根が、アパートの塀が、アパートの入り口が、そしてその前に白髪の老人が立っているのが見えてきた!
(あっ!大家さんだ!大家さんが立っている。僕を迎えに出て来てくれている。ああ、こっちにやって来た………)
そして次の瞬間、大家さんの鼻先でハルオはバレリーナのように華麗なターンを決めた。
大家さんの口が真赤に染まっているのに気がついたのだ。
「た、食べないでぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
彼は走り出した。
さっきからぶっ続けに走っているので、もう心臓が口から飛び出しそうだ。
もういくらも走れないことは判っている。
おまけに自分のアパートに背を向けた瞬間から、もう何処に逃げるという宛てすら無くなっていた。
酸素不足で混濁し始めた彼の足は、再び駅への道を辿っていた。
ただし今度は児童公園の前を素通りし、いつも通りのルートを辿って…。
なぜか幸いなことに、それ以上怪物には出会わなかったのだが……。
(ひょっとすると、ゾンビの数って意外と少ないとか?)
だが、ハルオのそんな根拠の無い楽観は、駅前広場に飛び出した瞬間粉微塵に打ち砕かれてしまった。
(げぇ!?)
駅前には……怪物が満ち満ちていた。
元サラリーマンだった怪物たちは、人間だったころの記憶に突き動かされて、出勤しようと駅前に集結していたのだ。
「………ひ、ひいぃぃぃぃぃっ!」
ハルオの悲鳴を耳にした怪物たちが、一斉に振り返った!



15 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:42:55 ID:I6UbHX0T0
「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」というハルオの悲鳴に、怪物たちが一斉に振り返る!
だが、それよりほんの一瞬だけ早く、ハルオの体は近くに据え付けられた自動販売機の陰へと強引に引きずり込まれた。ぶ厚く力強い手のひらが彼の口を押さえつけ、同時に有無をいわさぬ何かを備えた声が「騒ぐな」と彼の耳元で囁いた。
(わかった)という印に彼が頷くと、口を抑えていた手が静かに退いた。
ハルオが振り返ると見知らぬ中年男がそこにいた。
年のころは40代後半ぐらいだろうか?背はハルオよりも気持ち低いくらいだが、肩の幅と厚みがさりげない重厚さを滲ませている。整えられた髪型は、彼が硬い職業についていることを感じさせた。
肉の薄い、いかにも打たれ強そうな闘士を思わせる顔には、風貌に不似合いな若い瞳が耀き、そしてその手には………黒光りする回転拳銃が握られていた。
自分の拳銃にハルオの視線が釘付けなっているのに気づいた男は、弁解するように言った。
「オレはK。警視庁の警部だ。」


16 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:44:54 ID:I6UbHX0T0
『警部』……ひたすら混乱の中を駆け続けたハルオにとって、その言葉は天空から垂れる金色の糸かと思えた。
「警部さん!教えて下さい!今朝目が覚めたら、こんなふうになってたんです!いったい何が起こってるんですか!?教えて下さい!!」
K警部にすがりついて、ハルオは尋ねた。だが……。
「残念だが、オレにもわからん。別の世界から来たロボットの殺し屋と追っかけっこしてたら、知らないうちにこうなってたんだ。」
ハルオの目が点になった。「……べ、別の世界?ロボットの殺し屋??」
「天空から垂れる金色の糸」が「タヌキの泥船」に一変した。
「どうかしたか?」
「い、いいえ別に。」
「無理すんな。『こいつキチ○イだな』って顔に書いてあるぞ。」
そのとき、町のどこかでギャアアアアアッと悲鳴が上がった。
「誰かヤツラに喰われたな。」
断末魔としか思えぬ叫びを耳にして、それでも警部の声は冷静さを失っていなかった。
「あああ、あの、ボク、見ました。牛乳屋が、牛乳屋が……。」
対照的に、ハルオは歯の根も合わず、「……食われた」と最後まで言い切ることすらできない。
ハルオの真っ青な顔を値踏みするように見つめてからK警部が言った。
「ここに長居はできん。場所を変えるぞ。ついてこい!」


17 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:46:54 ID:I6UbHX0T0
警部は自分の上着を脱ぎ、手にした回転拳銃の撃鉄を起してからグルグル巻きに包み込むと、通りの向かい側に立つ駅ビル二階の広いガラスエリアに銃口を向けた。
ブムッという鈍い音は、ガッシャーンというガラスが割れ落ちて砕ける音に完全に掻き消された。
音に誘われたゾンビの群れが一斉に駅ビルに向かって移動し始めたのを見計らい、K警部は隠れていた自動販売機の裏から飛び出した。
だが……10数メートルほど行ったところで振り返ってみると、ハルオがついて来ていない。彼はまだ自販機の裏だ。膝が震えて歩けないのだ。
(このバカッ!ついてこい!)と身振りで合図する警部。
痙攣するように首を横に振るハルオ。
(さっさと来い!)と口の形で叫ぶ警部。
ハルオはやっぱり動けない。
半泣きの顔でイヤイヤをするだけのハルオに業を煮やした警部は、ハルオの決断を促そうとしてワザと置き去りにするような素振りを見せた。
「…お、置いてかないでぇ……。」
蚊の鳴くような声だったが、一番近くにいたゾンビをハルオへと振り向かせるには充分だった。
「見捨てないでぇぇぇぇ…。」
情けない悲鳴が、更に数体のゾンビを振り向かせた。
…ハルオのあまりのヘタレっぷりに、Kの顔に一瞬怒りの色が走った。しかし、Kはやはり「警部」であった。
鬼の形相のままで退っ返すと、ハルオの一番近くに迫ったゾンビを猛然とタックルで吹っ飛ばし、ハルオの手首を掴んで引き摺るように走り出した。
「い、痛い、痛い、手首が痛い。」
「贅沢言うな!このボケなす!」


18 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/14(火) 12:51:09 ID:I6UbHX0T0
「こら!少しぐらい自分で走れ!」
「そんなこと言ったってぇ…(泣)。」
地回りの捜査で足腰には自信のあるK警部だったが、ハルオを引き摺りながらでは分が悪い。おまけに追っ手は決して足を止めるということの無い、死者の群れである。
さらにまずいことには、路地の横道から警部たちの行く手を阻むように新手のゾンビも這い出して来た!
「うおおっ!」
追いついて来たゾンビを、体をかわしながら警部は背負い投げでぶん投げた。
新手のゾンビの一群は、先頭の一匹に体当たりをくらわしてボーリングの要領で一群れ一気に蹴散らす。
だが「ああっ、また大勢来た!」というハルオの悲鳴に警部が振り向くと、学生服を来たゾンビの大群がちょうど角を曲がって姿を現したところだった。
はっとして腕時計を見ると時刻は8時15分をまわったところ。
「しまった、元学生のゾンビの登校時間にぶつかった!」
駅の方角からは元サラリーマンのゾンビ、住宅地からは元小中高の学生ゾンビ、近くの家からは元主婦?のゾンビまでよろめき出てきた。
「まずいぞ、完全に囲まれちまった。」
「ど、ど、どうしましょう?警部ぅぅ。」
警部は…ただちに腹を決めた。
「オレが突っ込んで、なるったけヤツラをひきつける。そのスキにオマエ、逃げろ!」
「警部は?!」
「突っ込んでから考える。」
考えるまでもない。突っ込めば死ぬだけだ。Kだって死にたくはない。
でも、死にたくなくとも、Kは「警官」だった。
「じゃ……いいか?いくぞ!」


19 :名無しより愛をこめて:2006/11/14(火) 17:23:24 ID:I6UbHX0T0
10で「15日から3日に分けて」と書いときながら、なんで14日から投下開始してるんだ?
わたしゃアホか?


20 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/15(水) 08:02:18 ID:kA+p3wq50
「じゃ、いいか?いくぞ!」
だが、K警部が飛び出す寸前、ボンッ!!という音とともに駅から来たゾンビの一群の中に火の手が上がった!そして…ボンッ!こんどは学生ゾンビの群れでも爆発が!?
(火炎瓶だな!?投げたのは…)
ハルオが辺りを見回すと、交差点の角に立つ建物の二階窓から男が身を乗り出している!
その男が叫んだ「ドアを開ける!一階の通用口に来るんだ!」
「は、はい。」
もう一発火炎瓶をゾンビの群れの中に投げ込むと、男は窓から引っ込んだ。
ハルオは言われたとおり、ビルの通用口めがけて突っ走った。
(もし……もしあのドアが開かなかったら?)
そんな考えが、ふと頭を過ぎったとき、ガチャッと音を立てて通用口が開いた。
ドアを手で抑えながら、さっきの男が叫んだ「早く!」。
だが、ハルオが通用口に飛び込むと、男は手早くドアを締めて施錠までしてしまった!
「ま、まってください!まだ警部が!!」
直後、ガンガンとドアを激しく叩く音が始まったが、鉄製のドアはびくともしない。
ドアを乱打する音に負けまいと、ハルオは声を張り上げもう一度言った。
「開けてください!K警部がまだ外にいるんです!」
だが、男は不思議そうな表情で答えた。
「K警部?……ワタシが見たときは、アナタ一人だけでしたが?」


21 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/15(水) 08:06:54 ID:kA+p3wq50
「……この建物の一階部分はコンビニになってるんで、たぶん強盗対策なんかもしてると思います。ゾンビなんかには破れませんよ。」
キツネにつままれたような顔のハルオを引き連れ、男は建物の二階部分へと上がると、ニッコリ笑って右手を差し出した。
「大学で講師をやってます。Mといいます。」
Mとハルオがいるのは、ついさっきMが身を乗り出していた窓のある部屋だった。
そこには狭いながらも流し場と給湯設備、そしてトイレまで備え付けられている。
窓辺には酒ビンがならんでいた。
「映画をマネして火炎瓶を作ってみたんですが、結構使えるもんですね。でも下のコンビニにはガラス瓶はたいして無いんですよ。紙パックばっかりで。これじゃあ容量が少な過ぎますしね……。」そう言ってMは醤油の卓上ビンを摘み上げて見せた。
「あ、あの……M先生。」
「Mでいいですよ。ここじゃ大学講師なんて肩書き意味無いですから。」
「……Mさん。教えて下さい。いったい僕らの世界に何が起こってるんでしょうか!?外のゾンビの群れは何なんですか!?」
Mは手にした小さなガラス瓶を窓辺に戻すと、ハルオの言葉を呪文のように復唱した。
「僕らの世界に何が起こってるんでしょうか?……、アナタはそれが知りたいんですね?」



22 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/15(水) 08:12:10 ID:kA+p3wq50

「『僕らの世界に何が起こってるんでしょうか?』……、アナタはそれが知りたいんですね?」
ハルオは、Mが「僕らの世界」という部分を微妙にゆっくり喋ったのがちょっと気になった。
「それでは、その質問に答える前に……。」
Mは近くの事務机の上に広げっ放しになっている地図を指さした。
「これは一階のコンビニに置いてあったこの辺りの地図です。まずはハルオくん、これを見てもらえませんか?」
「この辺りの地図を?……ボクはこの辺に住んでるんですけど……これがいったい……。」
「この近所の住人ならなお好都合ですね。…まあ目をお通してみてください。」
不審げな様子で地図をしばらく眺めていたハルオであったが、やがて眉間に盾ジワを寄せて呟きはじめた。
「…………あれ?こんな橋、あったかな?道のカーブもちょっと違うみたいな……。」
Mが横合いから訪ねた。「町の名前は?どうですか?」
「町の名前?…………町の名前はもちろん………あ、あれれれ!???」
にわかに同様し始めたハルオに対し、更に畳み掛けるようにMは尋ねた。「ハルオさん、アナタの暮らしていた町は何という名前ですか?」
「ぼ、ぼくの住んでるのは曙町……でも、こ、この地図には………」
ハルオの指が地図の地名を辿っていった。
「す、杉…………本…………町……、でもそんなバカな。だってここは曙町で……」
混乱気味のハルオの言葉を制すと、静かな声でMは言った。
「ハルオくん。アナタはさっき『僕らの世界』と言いましたね?キミのその設問の仕方は誤りです。」
「あ、誤り?でも、いったいどこが間違ってるって言うんですか?」
まるで生徒を前に講義でもしているような口調でMは答えた。
「いいですかハルオくん。ここは『僕らの世界』ではありません。」


23 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/15(水) 08:16:53 ID:kA+p3wq50
「ワタシやハルオくん。それからハルオくんが会ったK警部も、何らかの事故で別の世界から迷い込んだのだと思います。」
「いわゆる並行世界とかいうヤツですか!?それでボクらはボクらの居た世界から、このゾンビがうろつく世界に飛び移ったとでも??バ、バカバカしい。そんな考え、いまどきSFファンだって相手にしてくれませんよ!」
だが、そこまで喚き散らしたところでハルオは思い出した。
K警部は言っていなかったか?「別世界から来たロボットの殺し屋を追っていた」と??
「なるほど」ハルオの話しを聞いてMは言った。「…そのK警部という方は、自分の世界で異世界からの侵入者と既に接触していたんですね。そして今度は自身が他世界への侵入者になってしまったと……。」
「でも、でもでもでも」一人納得できないハルオはなおも食い下がった。「このゾンビどもはどう説明するんです!?たしか隣り合った並行世界同士の差異はごく小さいんでしょ?なのになんで隣りの世界にゾンビがいるんですか!?」
するとMは、流し場に干してあった手拭を手にとって広げて見せた。
「一つの例えですが……。この布の繊維のように、並行世界はいわば同一の平面を並行に走る無数の糸です。しかし、この面を裏返せば……」
Mは手拭を裏がえした。
「このとおり。もうひとつの平面が存在しますよね?」
「…いったい何が言いたいの??」
「これは仮説とすら呼べないレベルの考えですが…。」前置きしてからM先生は続けた。
「……表の並行世界を混線させた何かが、表と裏の世界、つまり『≪僕らの世界≫の隣りの世界』とその裏側の『死者の世界』をも混線させたのではないでしょうか?」


24 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/15(水) 08:19:21 ID:kA+p3wq50
「並行世界の壊乱が起こって、生者の世界に死者の世界が重なったとき、この世界の人間は一人残らず『生きている死者』になったんだと思います。」
「それじゃあ僕らは……。」
「並行世界の壊乱は、ワタシたちの世界ではたぶん深夜に起こったんでしょう。
ワタシは……深夜2時ごろでしょうか?近くの町で発生した猟奇殺人事件の調査をしている最中突然何者かに襲われて……、気がついたらこの死者が歩く町に居たんです。」
「それじゃあ僕は眠っているあいだに……。」
軽く頷いてからMは話を続けた。
「ワタシやハルオくん、K警部のような『生きている死者』ではない人間は、たぶん全員他の並行世界から巻き込まれた犠牲者なんだと思います。」
「それじゃK警部もゾンビの餌食に!?」
「あるいは何らかの原因で元の世界に戻れたのか。」
元の世界に戻れる!?
それは一抹の希望といえたが、「何らかの原因で」というオマケつきでは、とても喜べるものではなかった。
Mは窓から空を見上げてみた。
二人のいる部屋から見える空は雲ひとつ無い晴天であり、不幸の兆しは何一つ見出せない。
が、ひとたび下に目を転じれば、そこには血まみれの口を開いた「生ける死者」が群れ集っている。
「………いったい何が原因なんだ…。」空を見上げてMは呟いた。
「……何が並行世界の壊乱を引き起こしているんだ?」
…………
そのとき、だしぬけに大地がグラッと一度だけ大きく揺れた。
同時に、Mの見上げていた青空に、真っ赤な入道雲がもくもく立ちあがっていく!
「……こ、こんどは何がおこるワケ?」いつのまにかハルオも窓枠にしがみついて立ち昇る赤い入道雲を見上げていた。「…赤い入道雲だから血の雨が降るとか??」
「それよりハルオくん!見ましたか!?」興奮気味の口調でMも言った「一瞬だが周囲の光線が一点に向かって褶曲したように見えた……この現象は………まさか!?」
だが、そのMの言葉を遮るように、グオオオオオオッ!という獣の咆哮が轟いた!そして、赤い雲の中から、ヘラクレスオオカブトムシを思わせるような漆黒のツノが!
「あぶないハルオくん!窓から離れるんだ!!」
M先生が叫ぶのと同時に、ハルオたちのいるビルもガラガラ音を立てて崩れだした!


25 :ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/11/15(水) 13:49:32 ID:9LSbeEWw0
前スレが512規制にかかるほどに続いた事は、ほんとにめでたいですね。
これからも応援いたします。



26 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/16(木) 07:57:42 ID:j5EQDP6s0
………………
(………う、うう…頭が痛い、体が動かない。ボクはいったいどうしちゃったんだろう?そうだ……、寝過ごして………それから……。)
意識が戻ったとき、ハルオの体は何か大きなものに押さえつけられていた。
(…………公園……自転車……生きている死者……K警部……M先生……赤い入道雲……………そうだ!黒い怪物!)
はっとして目を見開くと、視界は一面の血の色だ!
「うわあっ!」
叫び声をあげてハルオは飛び起きた。
……落ち着いてあたりを見回すと、彼は半ば以上崩れ落ちたビルの中に立っていた。
時刻はもう夕刻。部屋の中は夕焼け色に染め上げられ、ハルオの後ろには偶然ハルオの上に覆い被さり、瓦礫に対する盾代わりになってくれたパーテーションがひん曲がって倒れていた。
血と見えたのは夕焼け、巨獣の手と感じられたのはこれだった。
「そ、そうだ!あの怪獣は!?」
ハルオのいるビルは半壊状態でもち堪えてくれていたが、狭い通りの向こうのビルは完全に崩壊し、西日に向かって視界が大きく開けていた。その遥か彼方へと沈む夕陽のその中に、黒い染みのように浮かんでいるのは、紛れも無くあの漆黒の一角巨獣だった。
以前は壁のあったところに立って下を見下ろすと、瓦礫が下の狭い通りを完全に埋め尽くしており、ビルを取り囲んでいた「生きている死者」の群れはこれの下敷きになったようだった。
「生きている死者」からの脅威はひとまず逃れた格好だったが、一角巨獣は健在だった。
「そうだ!M先生は!M先生はどこに!?」
慌ててひっくり返ったデスクの下を覗いたりロッカーを動かしてみたりしたが、Mの姿はどこにも無い。
「M先生!どこにいっちゃったんですか!?」
……返事は無い。
(まさかM先生も、K警部のように……消えちゃったとか?)
見知らぬ異界で一人ぼっち……その事実が認識されると、内臓を揉みくちゃにされるような感覚、そして吐き気がやって来た。
「K警部!M先生!!……だれか!誰でもいいから……誰か返事してぇぇぇっ!」

そのとき、背後の男子便所で、誰かが身動きする気配がした。


27 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/16(木) 08:43:25 ID:j5EQDP6s0
ぎっ、ぎしっ……ぎ、ぎぃぃぃぃぃぃっ!
蝶番が歪んだらしく動きの悪くなった男子便所のドアを押し退け、中から異様な風体の人物が現れた。
…いや、「人物」と見せたのは、ハルオの人恋しさだったかもしれない。
普通なら、外のゾンビどもの仲間か異星人だと思っただろう。
それほどに、その人物は異様な姿をしていたのだ。
汚物のカタマリと見紛う巨大なリュックに埃っぽい外套。背中に回るアンテナが見えるので、リュックの中は機械らしい。
頭には三度傘みたいなものを被り、顔にはゴーグルにマスクをしている。外套から伸びた手がマスクを外した。意外と人間らしい手と口が見えた。自分が出てきた場所を振り返り、呟いた。
「…………何で男子便所なのよ。オマケにくっさいし」
謎の人物は呆然と立ち尽くすハルオには目もくれず、彼の横を素通りすると西日に溶けてゆく巨獣に向かって言った。
「やっぱりここにもいたか……ザラガス。」
(え!?日本語??)
ハルオには謎の人物とザラガスとの因縁など、全く知るよしも無かった。
ただ、自分以外の人間がいたということ、そしてそれが日本人らしいということがむしょうに嬉しかった。
「(に、日本人だぁ!)わあい!」
思わずハルオは歓声をあげ相手にむしゃぶりつくと、相手の体に腕を回し……
……だが!?ハルオの両腕が、予想もしていなかった情報をもたらした!?
(あ、あれっ?これってもしや……)と思った直後、
がすっ!
鈍い音とともにハルオの視界に火花が散った。
謎の人物の稲妻のようなグーパンチが頬に炸裂したのだ。
(お……女の人だったのね……ごめんなちゃい……)
ハルオの意識は闇へと沈んでいった。



28 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/16(木) 08:48:17 ID:j5EQDP6s0
りりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりん!
「うわあっとぉ!?」
目覚し時計の絶叫にハルオは飛び起きた。
周りを見回すと、そこは廃墟の二階などではなくアパートの自分の部屋だった。
夕陽が部屋を血の色に染め上げてもいない。
黒い一角巨獣も、あの「変な女」もちろんいなかった。
(あれは……夢だったのか?)
叫び続ける目覚ましを叩くように止め、時刻を見るともう8時近い。
いつもなら30分以上前に出社しているはずの時刻だ。
「まずい!寝過ごした!」


29 :A級戦犯/「となりの芝生」:2006/11/16(木) 08:51:16 ID:j5EQDP6s0
「寝過ごした!」と掛け布団を蹴飛ばすようにして立ち上がり………だが、そこでハルオはふと考えた。
「ボクって……ちゃんと生きてるのかな……。」
死んでなお通勤しようと駅前に集まっていた元サラリーマンの「生きている死者」たちと自分の姿が何故だかダブって見えた。
ハルオの心に誰かが問いかけた。
(アイツらとオマエ、何処が違うんだい?惰性で生きているのならボクもアイツらも違わないじゃないか?)
「いや!アイツらとは違う。ボクは生きているんだ。そうだ……生きている。自分の道は惰性じゃなく自分で決めることができるんだ!」
(ほんとにそうなのかい?オマエは自分の進む道を本当に自分で決めてると、言い切れるのかい?)
K警部、M先生、そして最期に出会った「変な女」。
異界で出会った3人はあの世界で、3人なりのやり方で間違いなく生きていた。でも自分はただ状況に流され、右往左往していただけではなかったか?
いやあの世界でだけではない。
職場の同僚や友人知人が成功すればこれを羨み、けれども自分の在り方は何一つ変えようともせず、それこそ惰力で生きてきたのではないか?
「……それでもボクは生きていると?」最後の疑問は、彼自身の口から出たものだった。
……すとん……。
ハルオはたった今飛び出したばかりの布団の上に座り込んだ。
「………今日は……休もう。」
ハルオにはちょっとだけ時間が必要だった。
自分はどうあるべきなのか?あるいは何がしたいのか?もういちど自分自身に尋ねてみるために。

*ナレーション
あの異世界でのできごとは、本当にハルオくんの夢に過ぎなかったのでしょうか?
それとも彼は異世界に行き、そして生還を果たせたのでしょうか?
いまとなっては確かめる術はありません。
でも、ハルオくんにとって、それはどっちであっても関係ないでしょう。
なぜって、彼はあの異世界でとても大事な何かを見出してきたのですから。

「となりの芝生」
お し ま い。


30 :名無しより愛をこめて:2006/11/16(木) 12:32:15 ID:j5EQDP6s0
お粗末なデキで恐縮です。
X話氏の巻き添えアク禁期間中の中継ぎ駄文として急造したもので中継ぎに徹するものとして……
1.あまり複雑なプロットは採用しないこと。
2.中断となっている遊星氏の作に対しても中継ぎと読める内容になっていること
3.両氏の作との関係で並行世界ネタとすること
4.最初のうちは並行世界ネタだとは判らないようにすること
5.両氏の作品が再開したとき邪魔にならないオチであること
……を念頭に構成してみました。
笑ってお許しくだされば幸いです。


31 :名無しより愛をこめて:2006/11/17(金) 10:23:57 ID:vSWtWdZb0
応援!!保守

32 :第X話:2006/11/19(日) 02:58:25 ID:CUJMB1g/0
>>30
有難うございました。
そんだけの縛りで書いてたんですかw
いや、ゾンビネタはあんまり知らないんで展開どうなるかと思ってたんですが。
またお願いします。

まとめに関しては、自分の初期作品リライトしようかと考えてますので
期待しないで気長に待ってて下さい。

33 :第X話 妄想月世界:2006/11/19(日) 05:22:37 ID:CUJMB1g/0
晩秋の陽はつるべ落とし。

その言葉が似合うように、既に外は薄暗い。西の空に厚い雲がかかっているせいだろう。
その薄暗い中、黒山の怪物の様に圧迫する建物。その内一つの部屋に灯る電気。
内部のひんやりとした廊下を進み、その部屋まで辿りつくと、プレートが貼ってあった。……”4年3組”

「へぷち」
ヘンなクシャミ音。学習机に座ったチーコちゃんがぶしゅぶしゅ鼻をすする。
「なーに、チーコちゃん大丈夫?」「だいじょうぶ」
「おいタミヤー、くっちゃべってないで手動かせよー。オメーの無茶に付き合ってやってんだぞー?」
「うさいわね」「今日中に済ますなんて無理だって、なーはぜやん?」「………多分な」
「そーいやマロヒコは?」「さっきションベンって出てった」「何だアイツ、ガマンしろよソレ位。尿ヒコだな。決定」
「……クラ〜?」「へいへい、分かりましたよバカにすんなってんだろ?ヘッ」
────と、「なーにあんたら未だ居たの?実習の授業なんてまだあるんだし、早く帰りなさいって」

結局、校門から追い出される四人。と、大柄の男子が後からかけてきた。
「オセーゾ尿ヒコはやくし」    スパ────ン!いい響きの上履きアタック。
「あにすんだタミヤ!」「人をバカにすんなって云ってんでしょ!」またケンカを始める二人。
女教師が間に入る。「あーもういい加減にしなさーい。先生付いて行ったげるからとっとと帰れジャリ共ー」

寒風吹きすさぶ夕闇。向うの空に弧を描く月が出てきた。
いつの間にかススキを手折り、みんなでぶんぶん振り回して歩いていく。
『う──さぎうさぎ、何見て跳ねる…………』いい声で歌い始める女教師。
「え──?先生ダセーって。なあタミヤー?」「……え?」「そうね、童謡はちょっと、コドモってゆうか………」
「じゃあ何がいいのさあんたら」「え?それは………」「えーとな…………」
「……そ」呟くマロヒコ。「『空に掛かった三日月』」「……へ?何だソレ尿ヒ」 スパ────ン!爽快。

「あかいろうさぎ」
いきなりチーコちゃんが呟いた。振り返る一行。
「……え?何チーコちゃん?」タミヤの質問に、真っ黒な校舎の屋上を指差す。

「まっかなうさぎが、おくじょうにいいた」

34 :第X話 妄想月世界:2006/11/19(日) 07:07:36 ID:S0RV7jCB0

住之江紬明、通称『スミ先生』。
一部に熱狂的なファンを持つ日本有数(自称)の、日本のポオ(自称)と呼ばれる(呼ばせている)、
怪奇小説家。

長身にオールバック、全時代的なチョビヒゲにスーツ、妙な言動で数々の伝説を残す怪人である。
数年前古い知り合いに協力して怪奇総合雑誌『クリプトン』を創刊し、雑誌の重鎮と化している。
雑誌記者を呆れさせ編集長にゴマをすらせ、変人女を脳溢血に陥らせそうなこのおっさん。

たまーにしか出てこないが、一応この雑誌編集部の顔なじみなのである。


「んじゃこの写真と、イラスト差し替えで────っておい聞いてるか?」
「あいよ」苦虫噛み潰しすぎた様な顔の変人女。おっそろしく機嫌が悪い。
打ち合わせ場所はいつもの応接セットではなく、雑誌記者の机の横。イスの背にもたれて座っている。
原因は、パテーションの向う、応接セットを占領している人物。

「いやまあね、わったしも日本怪奇文学界を牛耳るゴッドファーザーな以上その台詞は言いすぎじゃないかと」
「いやーですな!そうですな!うんそうですな!!ハイハイハイ!!!」
明朗快活爆走中のスミ先生と、既にゴマすりすぎて摩擦で発火してる編集長。
よりにもよってあの二人にTVが見られる位置を占領され、TVが見られないのに怒っているのである。
「…………全く、何見る気だったんだ?」
「みのもんた」
どう返せというのだ。お前はババアかと突っ込めばいいのか?

と、用件をもう一つ思い出す雑誌記者。
「あ、あー……すまん、一つ協力して欲しい事が」「何よ」
「うちの会社の労働組合が毎年この時期に近所の小学校で交通安全教室やっててな、各部署持ち回りなんだが」
「で?」
「今年うちなんだが、クジで俺が当たっちゃってな、今度の月曜日。すまん協力して────」
「やだ」
がっくり肩を落とす雑誌記者。あのクソガキ共一人でマトメにゃならんのか…………

35 :第X話 妄想月世界:2006/11/19(日) 07:10:09 ID:S0RV7jCB0
「……ま〜あそういうワケでね頼むよ今度の大賞?ワタシもプッシュプッシュしたげるから!プッシュプッシュ!!」
応接セットからスミ先生が出てきた。一直線にこちらに向かってくる。
「あらー?今度の怪奇大賞優勝候補の彼女が居たと思ったんだけど何処行きましたかねー?んんん?」
あれ?気がつくと何処にも居ない?辺りを見回すと────
変人女はシャーとイスのキャスターを転がして、スミ先生から見えない机の影へ逃走していた。


Let,sトーキングターイム。フォウ!
止まらないスミ先生。何か今度の怪奇小説大賞についてくっちゃべって居るが耳トンネルだ。
既に編集長は社外へ逃走。周りを見ると同僚も机に噛り付くふりをして不干渉を決め込んでいる。
───いや、よく見ると向うの一角で煙が充満している。どうも変人女がハイペースで煙草を吸っているらしい。
もうちょっとで火災検知器が作動するんじゃなかろうか?

ふと、同じ記者・編集者仲間で飲み会に行ったことを思い出す。
酒の席で、スミ先生と変人女は出版業界の双頭のシーサーペントの如き扱いを受けていた。
ヤレどこそこの編集者と大喧嘩しただの、受賞パーティでブラックスピーチ行っただの……

「……まあ私も子供は嫌いじゃないんですよ?でも何といいますか隠喩やジョークが通用しない生命体というか」
我に帰る雑誌記者。虫食いで聞くと話の内容が何の事やらさーっぱり判らない。
まあ聞いてたとしても三千世界のスミワールドは全く把握しきれない訳だが。


「あーらスミ先生お久し振りですぅー♪お元気でしたかー?」
いきなり変人女が割り込んできた。え?何で!?
「おおーう有望新人改めクリプトン怪奇大賞最有力候補君何処行ってたのかいさーがしましたよー?」
「いやーん♪お上手ですねー先生ってばー♪」

”きゃるーん♪”とかいう擬音が聞こえてきそうな話し方。あっけに取られる雑誌記者。
「ところでぇー、スミ先生に私からお願いがあるんですけどぉー、聞いてくれますぅ?」
「んんんー?いいよいいよキミみたいなコに貸し作れるならなあんでもOkですよーん?」

「今度の月曜日ぃ、この記者さんと一緒に用事があったんですけどぉ、代わりに行って貰えませんかぁー?」

36 :第X話 妄想月世界:2006/11/19(日) 07:38:12 ID:TmXEhzXo0
「いいですよっ!!カワイイ後輩の為なら引力圏脱出だろうが大気圏突入だろうが!いやー君すまんねー」
素直に喜ぶスミ先生。
…………いいんですかスミ先生、目の前でオバハン系人型チェシャ猫が笑ってますよ?


案の定。
月曜日、鼻歌交じりで雑誌記者について来たスミ先生は体育館のソデで頭を抱えていた。

雑誌記者の携帯に着信。変人女から。
『やほー、スミ先生の調子どお?』「最悪だ。お前こうなるの判ってたな?」
『もっちろん!いやーいい気味だわー』「先生が子供むっちゃ苦手って、何処で知ったんだ?」
『自分で云ってたじゃん、あの時』
ああ、華麗に三半規管までスルーしてたから気付かなかった…………
『ところでそこの小学校、西部小学校?そこ確かチーコちゃんとこだったわ。ヨロシクねー』
へ?ソデから盗み見る雑誌記者。────確かに、真ん中辺りの列にチーコちゃんらしき頭が見える。

「キミ、覚悟を決めたよ」
いきなり呼びかけられて驚く。背後に涙と鼻水を一杯に溜め込んだスミ先生が立っていた。
「男なら行かねばなるまい、例え其処が死地であろうとも。そう、お国の為に死んでいった特攻隊員の様に…!」
一緒にしないで下さい。

「は〜い皆さん住之江で〜す、よっろしっくね〜」
極太重低音で茶目っ気を醸し出そうとして失敗したスミ先生。センセ、低学年がヒイてますよ?
「このアシスタントのえ〜っと、ちゃたろーでいいや。コイツと交通ルールについてお勉強します。OK〜?」
「さっさとしろー」
さすが昨今の小学生は一味違うぜ。というか先生云うに事欠いてちゃたろーって何ですかちゃたろーって。
「いいでしょ〜では一番始めに、ルールを守らない場合どんな恐ろしい事になるかお勉強しま〜す」
いきなり電気が消えた。体育館の自動カーテンが閉じられていく。おお?何だ?
スミ先生が自分の長い顔を懐中電灯でライトアップする。
「ええ〜…………、では先ず”テケテケ”からいきましょうかぁ?」

何する気だおっさん!!!

37 :名無しより愛をこめて:2006/11/20(月) 08:53:10 ID:uBt4WvVj0
ゾンビを出したのは「並行世界ネタ」と気付かせないためです(笑)。
円谷系ワールドと一番縁が遠いのがたぶん「ゾンビ」だからで。
最初はK警部(というより岸田警部)でアクション系、次に万石先生で屁理屈系、最後に「変な女(…ってモロじゃん)」でサゲに入る三段構成。
「変な女」は「彼方からの彼女」に出現する前の時点、「岸田警部」については「こっちの世界にトリップしちゃったから作品が中断してる」ということ(笑)。
最初に考えたオチだと、「死者の世界」と混線したためシーボーズまで姿を現してザラガスと対決。
シーボーズと彼の配下である無数のゾンビにザラガスは食い殺されるという展開でした(苦笑)が、他の方の作品に良くない影響を及ぼしそうなのでボツ。
またチャンスがあったら投下させてください。

と、いうわけで応援。


38 :名無しより愛をこめて:2006/11/20(月) 08:55:53 ID:uBt4WvVj0
いかん、上のレスは32に対してのものです。
もうしわけなし。

39 :名無しより愛をこめて:2006/11/22(水) 07:16:32 ID:GXq0z9D70
あげ

40 :名無しより愛をこめて:2006/11/22(水) 16:27:38 ID:jmizwzI80
円谷とゾンビが縁ない? ネクサス見れ。

41 :第X話 妄想月世界:2006/11/23(木) 05:04:46 ID:LsDbNSWd0

案の定。

誰も出来るとは思っていない脳ミソ梅干怪獣の復活宣言より恐ろしい事が起こってしまった。


「せんせー、よしあき君がもらしたー」
「え゛〜んぶぅえ〜〜〜んへえ゛〜〜〜ん」
阿鼻叫喚の地獄絵図。体育館に集められた小学生、主に低学年の殆どが泣き出してしまった。
更にもらい泣き、もらいション、もらいゲロ。体育館中に異様な匂いが漂う。
先生方は校長も含めて事態収拾に必死だ。

「………先生」「んん?何だね?」
スミ先生だけ元気一杯。「………先生、今度出す超絶怪奇ホラー単行本のネタ使ったでしょ」
「ああ、効果覿面だったようだね。私は今、ようやく何かが吹っ切れたような気がするよ…………!」
満面さわやかな笑みのスミ先生。
スミ先生、人として大切なものを吹っ切ってる様な気がします。早く拾いに行ってください。

.
結局事態収拾後、校長先生に平謝りすることとなった。
もっともスミ先生の口車に閉口されてあっという間にお開きになったのだが。まったくもって世渡り上手だ。
「ヤレヤレ矢張り我々の崇高な仕事と目的は、こんな閉鎖空間に閉じこもりっきりの集団には理解が……」
先生、今日行った目的は交通安全教室です。決して日本の道路では、UFOに車ごと誘拐されたり
岸に上がった怪獣に遭遇したりジャージーデビルやチュカパブラに追いかけられたりしません。
ヒバゴンとツチノコは否定しませんが。

ぶつくさ云いながら帰ろうとするスミ先生。後に続く雑誌記者。それを────
「あの、すいません。少しよろしいですか?個人的に」
振り返ると、結構美人の女教師が呼び止めていた。

スミ先生?そんなに鼻の下伸ばしすぎたらホントに馬そっくりですよ?

42 :第X話 妄想月世界:2006/11/23(木) 05:06:09 ID:LsDbNSWd0
女教師の名前は高宮と云った。

彼女によると、最近この小学校敷地内にて奇妙な事件が起こっているという。
先ず、窓や壁に妙な足跡が付く。泥に妙な粘液が混じったような感じで、一晩で校内を歩き回った様に付く。
辿って見ると雨どいや校舎の壁を垂直に走っており、とてもイタズラとは思えない。
次に、学校で飼っているウサギやニワトリが毎日数頭づつ、奇妙な死に方をする。
朝登校して見ると、全身から血を抜かれた死体が幾つか転がっている。犬や変質者の仕業にしては不気味だ。
そして最後に、夜日が沈んだ後、月光に照らされる学校校内を眺めると────────

「真っ赤なウサギ?」
「ええ、子供たちは”赤色ウサギ”と呼んで、噂してます」
その”赤色ウサギ”と呼ばれる奇怪な生物が、度々敷地内を徘徊するのを目撃されているというのだ。
「姿はその────名前の通り?」
「ええ、血の様に真っ赤なウサギに見えるそうです。正し────………」
証言からまともに推測すると、ソイツは前足を胸に畳んで”二足歩行”をするという。
その姿勢のまま全力疾走したり、壁を駆け上がったり、しまいには夜空へジャンプして飛んでいったりするそうだ。
後はウサギやニワトリを襲っていたとか、耳から怪光線を発射したとか。


「…………へええ、面白そうじゃないですか」
興味が湧く雑誌記者。コレはいわゆる『学校の怪談』というヤツじゃないか?
しかも今までの花子さんや口裂け女やらとは訳が違う。純粋に幽霊じゃなく『怪物』だと噂は断じている。
しかもココ意外では聞いた事が無い。つまり怪談の発生現場に立ち会ってるのでは?
────────────売れそうじゃないか。青田刈りだ。

「で、お願いなんですが、 ……この噂の正体を、確かめて欲しいんです」
「”赤色ウサギ”のですか?何でまた?授業に障害でも?」
「ええ。ひどく恐れ怖がる子も居まして。今日の体育館の惨状もこれが原因の一つではないかと」
成る程、ありふれた怪奇話にしては児童の反応が過敏過ぎると思った。

「貴方は怪奇専門の記者さんで、そちらは有名なホラー小説家さんでしょう?こういうのは慣れてると思って」
「いいでしょう!引き受けます。ねえスミ先生、小説のネタにでも────」

43 :第X話 妄想月世界:2006/11/23(木) 06:17:43 ID:amJKm9x40
横を見ると、スミ先生が両耳を塞いであさっての方向を向いていた。
「………何してんですか?」話しかけると、

「ア────アぁ────あ────!!!聞こえない聞こえな────い!!!!」


思い出した。スミ先生、体験する怪奇現象は苦手なのだ。
ウソと判って聞く分にはわけない。おばけ屋敷や小説、写真、マンガ、小噺。
だが『コレッて本当の話なんだよ────』と云われて聞く話は苦手なのだ。増してや現在地がその現場とは。
「怖い話とはそれが虚構と知ってて初めて価値が有るのだよ君!!」と昔のたまっていた。そういえば。

結局、丁寧に誤魔化して退散する。要はスミ先生抜きで調べればいいのだ。
「当たり前です!!記者たるもの例え単独であろうと真実に肉薄する能力が無ければ────」
「はいはい、判ってますよ。スミ先生は帰って賞の選考に専念して下さい」
夕暮れの校庭を門へ向かう二人。

「あ────!!!尿モレ先生!!とその助手その1────!!」
いきなり子供に声を掛けられた。振り返ると3人組の小学生。男子三人だ。
「にょ………尿モレ?」
「だってそうだろ?その先生自分でした怖い話にビビって漏らしてたんだろ!!?」
「だ…………誰が漏らしながら怪談しますか!変な妄想はとっとと愛しのママに矯正されなさいベイビィ!!」
「だってその先生、実は怖い話苦手なんだろ?オトナのくせに」

カッコ良くキメたつもりの姿勢で硬直するスミ先生。割り込む雑誌記者。
「ま………待て、君達何処で聞いたその話?………もしかして」
「タカミヤ先生。だってグチられたんだぜ?憧れたのにあんな馬面ヘタレだなんて幻滅したっt」

スパ────ン!!!

爽快一発!昇降口を見ると、高宮先生と女子生徒二人が立っていた。
「ダぁ──らんか倉橋ィ!」
「先生、それあたしの上履き」

44 :第X話 妄想月世界:2006/11/23(木) 06:18:50 ID:amJKm9x40
「あーらららら申し訳ありませんもう、この子達いっつもこうで」
…………どうもこの高宮という女教師、百万匹の猫を瞬間着脱する能力を保有するらしい。

成り行きか、その小学生達と女教師と共に帰ることとなった。
「もうこの子達ったら何分やんちゃで手の掛かる生徒でして、勝手に先生とのお話を盗み見たりしてもう」
「愚痴ってたじゃねーか」
女教師の視線で少年沈黙。………恐るべき能力の使い手だ。
ふと並んで歩く女子二人を見ると、片方に見覚えがある。
「チーコちゃん?そっか、このクラスか」
「あい」
スミ先生がぴくりと反応し、チーコちゃんの方を見る。チーコちゃんも視線を返す。
────────暫く眼比べした後、スミ先生の方が根負けしたかのように目を逸らした。
矢張りチーコちゃんも他の子供たち同様、苦手なのだろうか。
「ところで、何でこの子達もこんなに帰りが遅いんです?もう六時過ぎですよ」
「ああ、それはですね────」
「あかいろうさぎ」
いきなりチーコちゃんがはっきりした声で口を利いた。
「あかいろうさぎ、さがしてた」


────どうもこのイタズラ五人組は、校内で噂の”赤色ウサギ”を捕まえようとしていたらしい。
「というか噂の出元、実はこの子達なんですけどね。2ヶ月程前に私と一緒に目撃したんです」
何とまあ。横を見ると、スミ先生が何やら良くわからない呪文めいた言葉を早口で呟いている。
「ま、そゆこと。あんたの出番は無いからとっとと帰りなおもらしっこ先s」

スパパ────ンン!!両脇から爽快音2発!
「痛ってぇー!二人して殴んな!」

「………いいでしょう。挑戦から逃げてばかりいては私の男がすたります」
驚き振り向く雑誌記者。何とスミ先生の瞳にまっこと似つかわしくない決意の色が浮かんでいる。
「君、私も協力するよ。小学生に負ける気は有りません。見事”赤色ウサギ”を捕獲するから見て居たまエ──!」
「…………先生、声裏返ってますよ」

45 :名無しより愛をこめて:2006/11/24(金) 11:02:46 ID:QpmQFGix0
揚げます。

46 :名無しより愛をこめて:2006/11/25(土) 23:11:15 ID:euLbGGPD0
挙げます。

47 :名無しより愛をこめて:2006/11/26(日) 23:50:15 ID:dwn6IieO0
阿毛ます。

48 :第X話 妄想月世界:2006/11/27(月) 04:16:00 ID:Gkt9ze6o0


翌日の真昼間。
西部小学校の校舎裏でなにらやうろうろする雑誌記者。

────と、いきなり背後からボールをぶつけられた。背中に乾いた泥の跡がつく。
「あ、おーい!ボール取ってーちゃたろー!!」
「…………はいよぉ」
力の抜けた投げ方で子供に返す。背中を払おうとするが手が届かない。
「こらー!お客さんに迷惑掛けんなー!!」
女教師のお叱り声が聞こえると、キャーと云って子供達は逃げていく。運動場へ行くのだろう。

高宮教師が駆け寄ってきた。
「どうもすいません、ご迷惑を………」
「いえ、こちらこそ。でもよろしいんですか?本当に我々が調査しても」
「警察も頼りになりませんし、教頭先生が許可してくれましたから。正直、皆不気味なんですよ」
そう云いながら、目の前の壁を見上げる。
壁に縦に並んだ、茶褐色のシミ。

そう、”赤色ウサギ”の足跡である。

「もっと他にも、廊下や教室にも有ったんですけどね。全部拭いちゃいまして」
「……ま、しゃーないでしょう。これだけ残ってれば十分です」
見たところ、確かにウサギの様な三本指だ。足跡自体は乾燥してパリパリになっている。
雑誌記者は懐からフィルムケースを取り出し、蓋でちょいちょいと突付いてカケラを入れた。

「そう云えば、住之江先生は…………?」
「あ───…………先生は、何か用意すべき事があるとかなんとか」
…………そう云って自宅から先生が出てこなかったのは今朝の事。
予想は付く。多分怖くなって引きこもってるのだろう。自分で云っといて何てザマだ。
長い溜息をつく雑誌記者。
結局、変人女に引きずられてるいつもと同じだ。結局、彼女と先生は同類なんだろう。

49 :第X話 妄想月世界:2006/11/27(月) 04:17:13 ID:Gkt9ze6o0
ちなみに変人女にも事情を説明して助力を求めた、のだが────
「あんた、他人のケツについてるウ○コがデカイからってあたしに手伝わせる気?」
これも予想の範疇だ。結局厄介事は自分に降りかかるのだ。
もっと良く見ようと、壁際の段差に登る雑誌記者。そこに、

「せえのー」
うん?
「 膝 カ ッ ク ン ! ! 」

「おぅわあああああっつ!?」
膝の裏を何かで突付かれバランスを崩す。足場が悪い!雑誌記者の奮闘空しく、
ハデにこけた。おもいっきり尻を打つ。女教師が吼えた。
「こらーあんたらーっ!!ソレやるなって何度云ったら分かるかぁ────!!」
「ライバルを崩すのはせんりゃくのじょうとうしゅだんなんだよーっ!!」
小学生にしては小賢しいセリフを吐いて子供二人が逃げていった。多分あの五人組だろう。

高宮教師が助け起こしてくれた。
「申し訳ありません、あの子達頭はいいんですが、悪巧みに関しても飛びぬけてて………」
尻から衝撃が頭にまで来たか、くらくらする。
というかチーコちゃん、あんな連中と付き合ってるのか?いかん。良くない。叱らねば。
親でも保護者でもないのに将来を心配する雑誌記者。と、

「うわ────────!?」
大声を上げて子供が戻ってきた。何だ?
「センセー!Mr.ションベンが来た!Mr.しょんべんがでっかいバスd」
パコーン!
パンプスなのでちょっと爽快じゃありません。履き直しながら先生が聞く。
「何?どしたのさ血相変えて」「ってェー」

回答を聞く前に走り出す雑誌記者。校舎を回って運動場へ行くと────
送迎バスが何台も留っている。手前の一台からスミ先生ご登場。
「やーどーも遅れてすまん!どうせならと思ってTVで実録怪奇番組にと思ってねェー!!」

50 :第X話 妄想月世界:2006/11/27(月) 04:18:08 ID:Gkt9ze6o0
今度は雑誌記者が頭を抱える番だった。
長い溜息が壊れた水道のように出っぱなしである。

予想の斜め上の行動を取ったスミ先生は、TV局の知り合いプロデューサーを説き伏せ、
何とこの調査をドキュメント風番組に仕立て上げる積りらしい。
スミ先生が校舎から出てきた。にかにか笑いで、
「校長先生と職員の皆さんのOK貰いましたよっ!さっそく明日から張り込み、収録開始です!」
ああそうだ、事を大きくハデにしたがるのも先生なんだ。すっかり忘れてた。
校長も教頭も、スミ先生の口車にはねられ轢かれて戦意喪失したに違いない。

「申し訳ありますぇん…………」
今度は雑誌記者の番だ。夕方になり、下校する為に出てきた高宮教師に謝る。
「いえ、いいですよもう。あの子達にもいい機会です。大人の力、分からせて下さい」
意外な言葉。
────要するに、TVの資本と人脈を結集して何としてでもこの怪奇を暴き、
あのクソガキズに自分らの無力さを分からせて欲しい、そうすれば大人しくなる、という事だ。
何だかそれも結構なプレッシャーだが。

と、体育館倉庫辺りから何人か子供がつまみ出されてきた。スタッフが発見したらしい。
「……って、あんたらまたかい!!」
あの五人組。クラと呼ばれるあの少年がまた尿発言をしてしばかれている。
先生がまた引率して校門を出て行く五人組。その横を、影のようにチーコちゃんも付いていく。
────何考えてんだろうなぁ、あの子。


その晩遅くに帰宅した後、変人女から電話があった。チーコちゃんから何か聞いたらしい。
一応事情を話す。これ以上面倒ごとは御免だからな。
「 ………────つーわけだ。だから俺明日一日中居ないからな?」
「ふーん、あ、そ」
興味なさげ、一安心。
暴れ馬2頭では流石に御する自信は無い。


51 :第X話 妄想月世界:2006/11/27(月) 04:19:06 ID:Gkt9ze6o0
翌日午後、再び西部小学校校庭、バスの中。
「はい、じゃあコレ台本です♪しっかり読んどいてくださいね〜♪」
妙に色っぽい女性ADから台本が手渡される。スミ先生の発案からたった二日。
構成作家に同情しそうな雑誌記者。ご苦労様です。

内容はまあ有り触れた内容だ。雑誌記者自身のセリフは余り無い様だ。
問題は、スミ先生のセリフ部分。多分自分の書いた文章をそのまま丸写しさせたに違い無い。
般若真経みたいにびっしり漢字だらけの文章が並んでいる。
抜粋すると、



『所謂”家畜を襲う獣”の伝承は欧州各地に伝承されております。例えばジェヴォーダンの獣。
人も襲いましたが羊も被害に遭っております。後狼ですね、アレも原因を狼に求めた結果です。
他にも現代イギリスでビーストやABC、海を渡って植民地ではジャージーデビル、
最近のチュカパブラやUFOによるキャトルミューティレーションも求める原因が違うだけです。
日本でも”牛打ち坊”と呼ばれる獣が徳島県にて伝承されており、それも───────』

脳内でゲップが出そうになったので一休み。
要するに、スミ先生は”赤色ウサギ”をチュパカブラと一緒と考えているらしい。
多分あの最初の交通安全教室で思いついたに違いない。ハタ迷惑な。


必死で台本を覚えていると、日も落ちてきた。夕闇が降りてくる。
────住宅街の電信柱に、赤いまん丸なお月様が掛かった。今夜は満月らしい。
「あ、すいませ〜ん♪そろそろなんでお願いしま〜す♪」
妙に色っぽい声のADに呼ばれて外に出る。背伸びをしていると、横の藪を何かが走った。
「…………?猫かね」


「では本番入りま〜す、        ………3、2、1、」
収録開始。鬼が出るか蛇が出るか、はたまた出るのは吸血怪獣か?

52 :名無しより愛をこめて:2006/11/28(火) 22:21:49 ID:YDSWoxwG0
age

53 :第X話 妄想月世界:2006/11/30(木) 06:06:36 ID:JJUGf9h10
「えー皆さん、本日はココ…………」

早速スミ先生の長口舌が始まった。どうも西部小学校の紹介から始めているらしい。
────と思ったら、アルバム片手に校史を語り始めた。
その内話が脱線し、冥王星の彼方の太平洋戦争と当時の米国外交の話にすっとんでいる。
……良く見ると、カメラが回っていない。
周りのスタッフものんびり後続の撮影準備に取り掛かっている。先生放置気味。
流石プロデューサー、慣れてらっしゃる。

と、バスの影で数人の見慣れないスタッフが何かゴソゴソしている。
そっと覗く雑誌記者。
      …………────皮膚の無い、グロテスクな赤いウサギがこちらを見た。
「いっ!!?」
「!!!」
後ろから口を塞がれ、暗がりに連れ込まれる!何だ!?
顔に当たっているのはこれまた生暖かい────赤剥けウサギの上半身!!
「!!??」
「シッ!静かに!!」
  …………良く見ればウサギの向うに人の顔。落ち着くと赤剥けウサギがゴム臭い。
「スミ先生に見つかります!早くこっちに」


どうも、撮影の為の仕込みらしい。色んなタイプの赤ゴムウサギが並んでいる。
「例えばですね、今校内で設置している赤外線カメラの前で────こう、ちょいちょいと」
機材の物陰から赤ウサギ人形がピョコピョコおじぎした。
ちょっとキモカワイイ。
赤外線カメラ仕込みが終わり次第、彼らも校内に潜入する。そして適度に出現する。
「でも、それじゃスミ先生本気で怖がりません?」
「だからですよ、いいクスリにしなきゃ。毎回呼び出されちゃたまったもんじゃないし」
……結構ノリノリの特殊撮影係りの皆さん。

何というか、スミ先生専用キモ試し大会になってきた。

54 :第X話 妄想月世界:2006/11/30(木) 06:07:23 ID:JJUGf9h10
長口舌がいよいよ中南米におけるCIAの裏工作について差し掛かった時、
「スミ先生、校内の赤外線監視カメラ、用意できました〜♪」
いよいよ決行の時が来た。

早速監視席に座るスミ先生。にっこにっこと上機嫌。
彼の中の予定では、足跡なり何なりヤラセ発見してウヤムヤに済ますつもりらしい。
そこにホンモノ出現!先生ガクブル!モウヤダー!!
いい感じだ。今後の為にも許してください、スミ先生。お詫びは申し上げられませんが。
そこに、横の監視スタッフが、
「…………先生!コレ!!見てください!!」

西部小学校北校舎二階渡り廊下前。柱の影からあのウサギらしき頭がちらちらしている。
おおお!と驚きを表すスタッフ一同。後ろめたいワクワク感タップリなのは秘密だ。
「え?  …………ええ?いや、アノ」
「さ!スミ先生行きますよ!立って立って!!」
「じゃ、行って参りまーす」
一人挙動不審のスミ先生を連れて、レポーターと雑誌記者とカメラマンは夜の校舎へ。
精々、怖がるフリでもしますか。

手を振り見送るスタッフ一同。
誰も見ていない赤外線監視カメラの映像内で、赤剥けゴム製グロウサギが、

ひたひたと廊下を横切った。



「どうやら、イタズラ者がこの校舎に紛れ込んだ様ですね」
いきなり鋭いスミ先生。昇降口で硬直する三人。スミ先生が大きな身振りでカメラに語る。
「私はこの”赤色ウサギ”の正体が、何者かによるイタズラと考えています。いいですか?」
良くありません!予想の斜め上を行かないで下さい先生!!
「私がその犯人をとっ捕まえて差し上げましょう!……えーダイゴロウの名にかけて!!」
…………誰ですかそれ。

55 :第X話 妄想月世界:2006/11/30(木) 06:07:55 ID:JJUGf9h10
ろそろと夜の校舎内を、懐中電灯で照らしながら進む。
満月の月光が冷たく校内を照らす。案外明るい。
やっぱりスミ先生も緊張しているらしい。数々の伝説を持自らの大叔父について語っている。
てか、その人がダイゴロウですか。

ぴちゃ。
何かが足先に触れた。液体っぽい。
驚きの声を雑誌記者が上げると、懐中電灯とカメラが前方に向けられる。
「うわ…………!?」
驚きの声を上げる一同。目の前の廊下には、ズラリとあの足跡が並んでいる。
今付けられたばかりらしい。生々しくぬめり光っている。
スミ先生はしゃがんで足跡を見つめる。レポーターも付き従う。カメラマンは………
『オイ、オカシイゾコンナ演出予定ニアッタカ?』
とか小声で通信機に話している。    …………へ?

背筋がぞっとした。何かの気配がする。何処からか見られている。
あっちの柱の影、教室の出入り口付近で何かが動いた。
……────マジ、なのか?
と、スミ先生が足跡に触れ、おもむろに顔の前に持っていくと、
ぺろり。
「!!!?先生!?」
「シッ!静かに!」
遂に先生変態趣味発現かと驚く雑誌記者に、意外に落ち着いているスミ先生が指示を出す。
カンペで、”懐中電灯を渡し、そこの教室の出入り口付近まで行け”との事。
さっき雑誌記者自身が気配を感じた地点だ。

そろそろと教室側のカベに張り付き、奇怪な足跡を前にして横ばいに進む。
影は満月のおかげで廊下側には張り出さない。そして────……
出入り口前の、柱のところまで来た。スミ先生がまたカンペで指示を出す。
”突入!奇襲!!”
正体不明の、何者かにですか?だがそれ以外、やりようもない。
腹を決め、さっと引き戸の前に突っ込み────さっと開けた!

56 :第X話 妄想月世界:2006/11/30(木) 06:08:43 ID:JJUGf9h10
「うわ────!!!」
「きゃ────!!?」
「ぬわ────!!!?」
いきなりの悲鳴!って、え!?子供の悲鳴!?
薄暗い教室内を、イスと学習机につまづきながら二つの小さな影が走っていく。
あわてて追いかけ始める雑誌記者。二つの影がもう一つの戸から出ようとして────
「はいっ!チェックメーイトゥ!!」
スミ先生達一行にぶつかった。

捕まえて見ると、何の事はないあのスミ先生をからかった五人組の二人だった。
確か、クラと呼ばれた下品な男子とタミヤと呼ばれた元気な女子。
どうやらスミ先生が番組撮影をするとの事で、この月夜の校舎に潜入したらしい。
目的は勿論、スミ先生を脅かす為。というか、”赤色ウサギ”捕まえるんじゃ無かったっけ?
「そうなんですよ、でもクラが途中から目的変更しちゃって止められなくて………」
「お前だってノリノリだったぞ!俺と二人でこの仕掛けするの喜んでただろ!!」
何だこのツンデレ共。

他の三人も間もなく自首してきた。
残りの男子はぜやんとマロヒコは両手にバケツとスタンプを持っていた。
どうやら足跡を製作していたらしい。足跡の材料はスミ先生曰く、
「60%のケチャップと30%のマヨネーズと10%の天然水によるオーロラソースですね」
天然水はハズレだったが。
チーコちゃんはその階の女子便所に隠れていた。
しかも、妙なもこもこのぬいぐるみを着こんで。何かと聞くと、
「あかいろうさぎ」
騙すつもりだったんですか。絶対無理です。むしろカワイイです。ラブリーです。


と、これで一件落着!奇獣”赤色ウサギ”は小学生のイタズラでした────!
スミ先生が解決宣言をしようと思った矢先、動きの鈍いマロヒコが、
「あ、そういやさっき渡り廊下の向こう側跳ねてったの、チーコちゃん?」
ピキッ。  ……あ、スミ先生また固まった。

57 :名無しより愛をこめて:2006/11/30(木) 18:59:57 ID:Uc6zBSMe0
ttp://www.asahi.com/obituaries/update/1130/007.html
作曲家の宮内国郎さん死去 2006年11月30日18時17分

宮内国郎さん(みやうち・くにお=作曲家)は27日、大腸がんで死去、74歳。
葬儀は近親者のみで行う。喪主は長男俊郎(としろう)さん。自宅は東京都狛江市岩戸南1の5の2。

テレビ番組「ウルトラQ」「ウルトラマン」の主題歌や「ラブラブショー」の音楽などを手がけた。


58 :名無しより愛をこめて:2006/12/01(金) 17:35:49 ID:s/eQUv6N0
保守

59 :第X話 妄想月世界:2006/12/03(日) 04:02:41 ID:wojfeG2o0
「向うって────どの辺り?」
「あのへんだよ」
マロヒコが指差すのは渡り廊下の向こう、丁度家庭科室の辺りだ。
あの部屋の辺りを、月明かりの中ぴょんぴょん飛び跳ねていたという。
「取り合えず…………行ってみますか?」


動きがロボットみないなスミ先生を後ろから押しながら、家庭科室到着。
照らしてみるが見当たらない。寒々と丸イスや蛇口が立ち並ぶ。
話によると、一っ飛びで長机二つ分位を飛んだという。────人間技じゃない。
「…………何でそれ、チーコちゃんだって思ったの?」
「いや、チーコちゃんなら出来るかなって。運動神経いいし」
そうなのか?結構トロいと思ってたが。
「はっ!!そんなだからお前は脳ミソもションベンもトロいんだよ尿ヒk」

バゴン!!    ………タミヤの上履きが飛ぶ前に、クラの後頭部に家庭科室の扉が直撃。
「あの〜♪すいませぇ〜ん」
あの妙に色っぽい声のADだ。そーっと開けてそーっと入ってくる。
「あの〜、ちょっと様子見てこいって云われましてぇ〜♪」
「はあ。で、その手に持ってるのは?」
「うさぎさんのエサの、ホウレン草とニンジンでぇす♪」
……────”赤色ウサギって、吸血性じゃなかったっけ?

「え?何でしょこの野菜────ひえええっ!?」
いきなりレポーターが悲鳴を上げた。スミ先生の背後を震えながら指差している。
かり。
かりかりかり。
もふもふもふもふ。
「あの……────キミタチ?これ何の音?」
スミ先生が部屋の隅に寄り集まった一行に語りかける。と、後ろからひょこり。

照らし出されたその顔は、真っ赤な真っ赤なケモノ顔。

60 :第X話 妄想月世界:2006/12/03(日) 04:04:22 ID:wojfeG2o0
「出たああぁア────────あああァァァ!!!?」
スミ先生の雄叫びを筆頭に、家庭科室は一気にドリフ状態に!
レポーターは腰が抜けたのか這いずり回っている。カメラマンはカメラ持ったまま逃げ惑う。
小学生達は男子達が必死で家庭科室のドアに群がるが、混乱して開けられないらしい。
小学生の女子が一人座り込んで泣いていて────
チーコちゃんが横でよしよししていた。流石。
しかし何故ドアが開かない?あの入ってきたADは…………
「きゃあ〜ん♪きゃあ〜ん♪いやぁ〜ん♪」
……
………
…………「……何やってんだ、お前」

奇怪な艶声を出してその辺中走り回ってたADが、雑誌記者の声で立ち止まる。
「あ、バレた?」
「前にも聞いたぞそんな声。それにお前みたいにデカイ女がそうそう居るか」
「あちゃー。上手く変装したと思ったんだけど♪」
「その喋り方止めろ。ホラ、スミ先生!!」
陸上短距離走選手の姿勢で走るスミ先生を、襟首を掴んで捕まえる。
「うわああああああああ何するぅぅぅぅうううん?え?」
雑誌記者が懐中電灯で照らし出したその顔は、髪を纏めて帽子を被りADっぽい格好の、
「あ、どもーお邪魔してまーす」
変人女だった。


変人女がエサのニンジンをふりふりすると、家庭科室の”赤色ウサギ”が寄ってきた。
────良く見ると、ウサギでも何でもない。
全身を塗料で赤く塗られ、耳を継ぎ足された少し小さめのワラビーだった。
「知り合いのペットショップから借りてきたのよ、このイタズラの為にね」
「動物虐待にも程があるぞ。自重しろ」
「いやあ〜騙されましたねぇははっはっははっははははははははー」
相当怖かったらしい。スミ先生の脚がチワワみたいに震えている。
「さーあこれでようやく一件落着!!とっとと帰って寝ちゃいましょ────はははっは」

61 :第X話 妄想月世界:2006/12/03(日) 04:05:17 ID:wojfeG2o0
「んきゃ!?痛った………って、あー!」
何事かと思えば、変人女がワラビーを捕まえようとして失敗したらしい。
鼻をしこたま蹴られ、そのまま腕をするりと抜けられる。ワラビーはそのまま────
家庭科室をぴょんぴょん出て行った。
「…………てか何で扉開いてんのよ!あたしがちゃんと閉めて針金で留めてたのに!」
何ちゅう事をする!
針金は小学生達がドサクサに紛れて解いたらしい。
変人女は待てー!と大声で叫びながら角は無いけど真っ赤なワラビーを追いかけていった。


捕まえた小学生達を連れて階段を下りていく。
途中、廊下に倒れこんで必死でワラビーを取り押さえている変人女が居た。
「お〜い、もう帰るぞー?」
「ハーイちょっと待っt、痛ッ!!」
変人女が滑って転んだ。見ると足元にあの”赤色ウサギ”の足跡が並んでいる。
「あ〜あ。お前ら、こんな所にまで足跡付けたのか?よくやるよ」
「?…………いえ、僕らがつけたのは向うの校舎だけですけど」
確かはぜやんと呼ばれた男子が答えた。確か足跡を担当していたハズ。
足跡を拭ってみると、妙に鼻に付く異臭がした。
「…………あ、えーとあれだ。番組のスタッフ!そうだ!よくやるな!」
「確か仕掛け担当スタッフは、小学生発見の時点で引き上げてますけど…………」
カメラマンが答えた。

また表情が変わるスミ先生。もう今日で一生分の欝顔を披露したんじゃないだろうか?
スミ先生の通信機に連絡が入る。監視スタッフからだ。
「あのー、向かいの校舎3F監視カメラにまた何か映ったんですけど、誰か居るんですか?」


「……────やめー!!もうやめー!!!」
いきなり叫び始めたスミ先生の首根っこをひっつかみ、変人女が渡り廊下へ向かう。
「まだ誰か居るのねぇ、面白そうだからトコトン追求しましょうや!」
「……これ以上、何が出る気だ」

62 :名無しより愛をこめて:2006/12/05(火) 02:11:38 ID:N4CYSL+o0
age

63 :名無しより愛をこめて:2006/12/05(火) 02:21:12 ID:Ix5I5anMO
円谷繋り兄弟スレ
http://c-au.2ch.net/test/-/sfx/1165251320/i

64 :名無しより愛をこめて:2006/12/06(水) 16:35:07 ID:uRzTQz9G0
age

65 :第X話 妄想月世界:2006/12/07(木) 04:51:10 ID:l2HTP4BP0
「あれ、お前ワラビーは?」
「あれ」
ぴょん。スミ先生の肩に、変態メイク真っ盛りのワラビー鎮座。鼻をふんふん。
「きゃ────────────────────────…………!!!???」
スミ先生、痛恨の超音波メス!!
小学生達は驚き散り、レポーターは廊下を逆送し、カメラマンは階段を転げ落ち、
変人女は逃げるワラビーを追い、雑誌記者は変人女を追っていき、

「………あれ?」
スミ先生、太平洋じゃなし月夜の校舎に一人ぼっち。……いや?
「え?あれ?あのー、だれかー?居ませんかー?」
「あい」
真後ろから幼女の声で返事があったので心臓がハミ出かける。恐る恐る振り向くと、
チーコちゃんが、残っていた。


「だああああああっとォ!いい加減にしろっ!」
「…………ハア、お前がいい加減にしろ」
やっとワラビーを捕まえた変人女に追いつく雑誌記者。ワラビーはまだわきわき抵抗する。
「……首輪とか持ってないのか?ケースとか」
「首輪は持ってるわよ。右のスカートのポケットの中。出してくれる?」
確かに変人女の両手はワラビーで塞がっている。恐る恐るポケットに手を入れまさぐると、
「…………変なトコ触んないでよ」
「誰が触るか──────っておい!動くな!!」
「ちょ!今あっちのトイレ前に何か動いた!!」
そのまま走り始める変人女。雑誌記者はポケットに手を突っ込んだまま、抜けない!?
「おい!?待て!!止まれってば────……」


落っこちた廊下の踊り場で気付くカメラマン。自分の頭より先にカメラを気遣う。
────どうやら壊れてない様だ。一安心。肘を少し打ったが他は大丈夫らしい。
と、カチャリ。硬いものが床に当たる音がする。階段を降りた廊下に、影一つ。

66 :第X話 妄想月世界:2006/12/07(木) 04:52:19 ID:l2HTP4BP0
月夜の廊下を、恐怖症の怪奇作家と無表情の小学生が歩いていく。
スミ先生は恐る恐る、少し内股気味に。チーコちゃんはそんな先生の歩調に合わせて。
しかもチーコちゃん、スミ先生をその恐ろしい程大きな瞳で黙ったままじっと見つめている。
「…………」
「………」
「……、あの〜………チーコちゃん、でしたっけ?」
「あい」
「怖かったら、ちゃんと云ってね?すぐに皆の所に帰るから。ね?」
チーコちゃん、右手をまっすぐスミ先生に指差して、一言。
「こわがり」
小学生に開口一番図星な悪口をかまされ、苦笑いのスミ先生。心の中ではくず折れる。
「だいじょうぶ」
「大丈夫?チーコちゃんは怖いもの無しかい?凄いね」
「あたしもこわい」


「うわあああああ!」
校舎からカメラマンが叫びながら飛び出してきた。先に出てきたレポーターが驚く。
何と腕から流血している。上腕部を数箇所刺されたようだ。
応急手当を受けながら、カメラマンが血に濡れたカメラを置いた。かなり酷い。
「本物だ────……本物の”赤色ウサギ”が出やがった!!警察を!!!」


「ん〜?何か居た気がしたんだけど。おかしいわね」
「………ちょ、お前、止まれって、首輪掴んだから、後抜ければ」
「いつまで突っ込んでんのよ」
シバキ倒され、その拍子にポケットから手が抜ける雑誌記者。手に何かぬるりと触った。
「────ココにも足跡か。一体………ん?どした?」
見上げると、変人女が前方を睨んでいる。目線を追うと、月夜の廊下に影一つ。
背丈は150cm位、耳のようなものが頭部から飛び出ている。
よく見れば全身赤剥け皺だらけの肌で────割れた唇から、鮮血がぽたり。
「………────いよいよ本命登場、かしら?」

67 :名無しより愛をこめて:2006/12/09(土) 22:59:21 ID:0aQIqPPi0
保守

68 :第X話 妄想月世界:2006/12/10(日) 06:53:18 ID:U7bg4Yjz0
スミ先生の懐中電灯が消えかけてきた。
スタッフの連中、電池のチェックもしてなかったらしい。もう殆ど役に立ってないようだ。
月明かりのお陰で視界に不満は無いが、恐怖を紛らせる為にチーコちゃんに話しかける。
「チーコちゃんも”赤色ウサギ”怖いのかい?」
「あかいろうさぎは、こわくない」
「え?だってさっきは怖いって云ってたんじゃ」
「つかまえるから、こわくない」

微妙な顔して歩くスミ先生。
何なんだ?最近の小学生は皆こうなのか?あのガキ共といいこの子といい…………
────いや。この”チーコちゃん”に関しては初対面からこうだったハズだ。
変人女が編集部に連れてきた時。顔を覗き込んだ瞬間妙に物怖じしてしまった。
感情表現にに乏しい。掴み所が無い。
なのに何処かこちらの中身を全て知られているような妙な感覚。
そう、あの眼だ。
あの底なし井戸の様な瞳に見られると、全部見透かされているような気分になる。
言動もそうだ。ぽつりと語ったその言葉がやけに的を得ている事も多々あった。
一体この子、何なんだ?

チーコちゃんが、あさっての方向を向いて止まった。
「こわい」
「…………何が?そっちは下の階だよ?それとも暗がりが怖いかな?」
「こわいのいる」
こわいこわい云ってる割には、表情も瞳も微動だにしない。
「だから怖いのって?”赤色ウサギ”かい?」
尋ねた瞬間、ふいと正面に視線を戻すと、
「いた」

いきなり廊下をてててと走り始めた!
「え?あのちょっと、待ちなさいってちょっと待っていや───!!!」
慌てて追いかけるスミ先生。不可解な子供でも知り合いが傍に居た方がマシなのだ。
スミ先生、結局何真面目に考察してもヘタレ確定。

69 :第X話 妄想月世界:2006/12/10(日) 06:53:48 ID:U7bg4Yjz0
ガシャンと音を立てて花瓶が割れる。
間一髪頭をずらし避けた雑誌記者。わたわたと横に這いずって逃げる。

花瓶を破壊したのは、さっき出くわしたあの怪物。
ウサギの様に縦に割れた唇から、ナイフとも槍ともつかないモノを飛び出させて
いきなりこちらを攻撃してきたのだ。妙にくぐもった呼吸音をさせながらこちらを狙ってくる。
「ほらこっち!!」
変人女が雑誌記者の手を引く。あの刃物が壁を削った。
「何なんだ!?もしかしてアレが本物の”赤色ウサギ”だってのか!?」
「知らないわよ。でもこっちに害意をもって注射器振り回してる以上、危険に変わりない」
「注射器?」
「あの刃物、先端に穴開いてるわ。血でも吸う気じゃない?」
マジか。ウサギやニワトリ殺したのもこいつか!?



「いない、にげた」
校舎裏手の非常階段途中の踊り場まで上がって、チーコちゃんやっと停止。
「マ、待って、クダサーイ───────……〜〜……」
下から過労と恐怖で本屋のエロ本よりよれよれになったスミ先生、到着。
「ホントに、何が居て何を追いかけてたんですか?はあぁ……」
「あかいろうさぎ」
ホントにもうこの子はワケワカラン。”赤色ウサギ”が怖いのか怖くないのか!?
「本当に”赤色ウサギ”ですかそれ?白昼夢とかじゃないんですか?ゼッ、ゼヒ」
「はくちゅうむ?」
「眼を覚ましてるのに見る夢ですよ。あ、今は夜だからいいのかな?ヒフー」

息を整えるスミ先生。ふと気が付くと、チーコちゃんが停止している。
目の前で手をひらひらさせても動かない。眼の焦点も合っていないようだ。
満月の明かりが冷たく非常階段を照らす。
その月の息のように冷たい風が、二人の間を駆け抜けた。

70 :第X話 妄想月世界:2006/12/10(日) 06:55:04 ID:U7bg4Yjz0
「…………あれ?」チーコちゃんのほっぺをつんつんするスミ先生。すると、
「おわっ!!?」
まるで仕掛け人形のようにいきなりくるりと振り向いた。元に戻っている。
「!!!ビックリした…………一体如何したんですかいきなり?」
「かんがえてた」
「え、何を?」
「たぶん、はくちゅうむ」
何の事、と聞こうとして思い出したスミ先生。
「”赤色ウサギ”がですか?………なら結構、早く下に行って皆の所へ────」
「ちがう」
スミ先生を、まるでバイカル湖の深淵を覗いた様な瞳が見つめた。
「たぶん、あたしぜんぶ」


「あ、いいもんみっけ」
「わー!ちょっと待て置いてくなー!!」
雑誌記者が怪物と組み合ってる間に、変人女が後ろの廊下に逃げた。
目の前の怪物の顔から、まるでカラクリ仕掛けの様に刃物がシュンシュンと飛び出してくる。
間一髪でかわしまくる雑誌記者。耳をかすった。
────やりあいながらふと気が付く。動物の皮膚を掴んでる気がしない。
怪物の肌と中身がたるみ、微妙にズレている。しかもこの匂いは────………
「ほら伏せて────!!!」
「ぶわっ!!!??」
いきなり背後から白煙!変人女が消火器をぶっ放していた。
怪物も雑誌記者も手を離し伏せる。粉末系らしく妙な味が喉にこびり付いた。思わずむせる。
   ……────煙の中から、飛び掛る怪物!!
「う────おりゃっッ!!」
真っ赤なフルスイング一発!!間一髪、変人女が消火器で怪物を吹っ飛ばす!
消火器の煙を吹き飛ばして、怪物は廊下に仰向けに倒れこんだ。
「うぉーしオッケー。大丈夫?半分位血抜かれてない?グールにでもなっちゃった?」
「勝手に殺すな。それより────……」
目の前の廊下でピクピク痙攣している怪物。確認したい事がある。

71 :名無しより愛をこめて:2006/12/13(水) 01:25:33 ID:oD1WxYKR0
age

72 :第X話 妄想月世界:2006/12/14(木) 07:43:46 ID:cHBVBhgm0
ぽかんとするスミ先生。
「…………えーと、チーコちゃん?」
チーコちゃんは何事も無かったようにまたキョロキョロしている。
「あのー、白昼夢というのはデスネ、何と云いますか起きているのに見ている夢といった」
「いた」
「まあ胡蝶の夢とも云えなくもないかとって、あ!ちょっとー!」
スミ先生の話も半ばにまたチーコちゃんが飛び出した。今度は非常階段を下に駆け出す。
慌てて追おうと振り向こうとすると、

「スミ先生────」
階下の校庭で懐中電灯を振り回して呼ぶ声がする。雑誌記者のようだ。
「おう、ここですよー?如何しました一体?」
「撮影中止するそうですー!警察も来ましたからー」
非常階段から身を乗り出すスミ先生。
「中止?何で!?」
「”赤色ウサギ”が、捕まったんですー」



すでに夜明けが近い運動場。幾つも光る赤色灯。
警察の無線通信の声。警察官にへこへこ謝る撮影スタッフ。
ヘッドライトにライトアップされ真ん中の折りたたみイスに座らされているのは、中年の男性。
刈り上げた頭に無精ひげ。左目の周りにギャグみたいな青い丸アザ。
脇には引き剥がされた着ぐるみがぐしゃぐしゃにされて横たわっている。
「いやー結構危なかったですよ?あんな妙な刃物持ってたしー」
変人女が、警官の事情聴取にワラビーを抱えてケラケラ笑いながら応えていた。

「…………結局、変質者の仕業だったんですよ」
雑誌記者がスミ先生に説明する。
着ぐるみはどこぞのホビー会社から購入したパーティグッズを改造したもの。
始めは”赤色ウサギ”の噂に便乗してウサギやニワトリの血を抜いて殺していたのだが、
その内調子に乗り始めてこの始末、だそうである。

73 :第X話 妄想月世界:2006/12/14(木) 07:44:43 ID:cHBVBhgm0
「満足そうですね、スミ先生」
「んん〜、そうですか?まあそうかも知れませんねぇ?」
ニッコニコの破顔で光景を見つめるスミ先生。
「まあ”赤色ウサギ”の正体が掴めましたからねぇ?うんうん結構結構!」
結局、番組はこの通り『”赤色ウサギ”の正体はおもろい変質者ですた』で締めるそうだ。
視聴率取れるのかソレ?

生意気小学生達も保護され、無事保護者達にどつかれている。
「私はイヤだって云ったのに、倉橋くんが押さえつけて無理矢理…………」
「タミヤお前だって賛成しただろーがー!俺がやりたかったのに馬乗りになって無茶して、」
────何だかエロイ会話に聞こえるのは自分がヨゴレたオトナなせいでしょか。

と、その光景を見て一つ気になる事を思い出す雑誌記者。
警察に証言が終わった変人女も駆け寄って来た。
「先生、チーコちゃん知りません?散り散りになった時はぐれちゃって」
「あの娘の事だから大丈夫だとは思いますけど。一緒に居ませんでした?」
「え?あ〜……そりゃ」
言葉を止めるスミ先生。結構二人とも真剣な眼だ。
見失った事を告げても詰め寄られるだけのような気がする。もしそうなれば、
また夜の校舎に突入し捜索に加わる羽目になりそう。ソレは御免だ。とっとと切り上げよう!
わーい俺って外道!!ということで、
「あー、そういえば途中まで一緒だったんですけど、非常階段ではぐれちゃいまして……」
気迫に屈したスミ先生。ごめんヘタレです。

「ま!まーまーま!やることやってから探しましょ!まだ番組の最後収録してないし!」
「………分かりました。でも撮り終わったら協力してくださいよ?半分は先生のせいなんだし」
「そのまま逃げたら、地獄に流しますから」
そういって、雑誌記者と変人女はいまだ暗い校舎へと入っていった。

何だかごっつい呪いをかけられた様な気分のスミ先生。
とっとと撮影すべく、絶賛休憩仮眠いや爆睡中のスタッフ達を叩き起こす。

74 :第X話 妄想月世界:2006/12/14(木) 07:46:09 ID:cHBVBhgm0
「はぁーいそれではいきますぅ、3、2、1………」
学校を背にして立つレポーターとスミ先生。
もうそろそろ空が白んでいる。結局完徹撮影となってしまった。
スミ先生以外沈没寸前。まあさっき眠りの海淵からサルベージしたばかりだから無理もない。
後はレポーターが舌噛みすぎて死なないのを祈るばかりである。


『えー、このように西部小学校における”赤色ウサギ”の噂は変質者による捏造と………』
寝起きなのに流石。プロの魂は今でも生きている。
────AD達がもそもそ呟く。
「なあ、犯人って”赤色ウサギ”の噂に便乗したんだよな?じゃあその前の噂は?」
「それこそヨタ話だろ?それとも………」
そこにプロデューサー無言の一喝。
とっとと終わらせて家に帰りたいらしい。眼が据わっている。

『我々もそろそろ退散しようかと思います。どうでしたか、住之江先生?』
「そうですねー、まず最初に申し上げました通り家畜を襲う怪物というのは狼が主で………」
しまったという顔のレポーター。絶望するプロデューサー。
「話振っちゃったよ…………」
スミ先生の夜明けの長口舌独演会、 開 始 。


「その殆どが人狼つまり人間による虐殺であったと推測できるのです。今も昔も怪物は……」
『あっ』
レポーターが小さな声を上げる。と同時にスミ先生のズボンに何か感触。
「え、ん、あれ?」


振り向くと、少女が裾を摘んでいた。何か持っている。
「チーコちゃん!探してましたよ!何処行ってたんですか!?」
しゃがんで頭を撫でるスミ先生。良かった、探す手間が省けた。
「ちょっと待ってて下さい、後で皆呼んで来ますから」

75 :遊星より愛をこめて ◆Ep12/emeBU :2006/12/16(土) 20:17:46 ID:Om3ld80h0
どうもお久しぶりです。遊星です。
ファイル整理の時に今書いてた分も消してしまっったため、
修復するのに時間がかかってしまいましたが、今日から復活します。

76 :遊星Q「第三惑星の追跡」 ◆Ep12/emeBU :2006/12/16(土) 20:19:40 ID:Om3ld80h0
「・・・・・・リンさん遅いなぁ」

警視庁の部屋の高さから考えて、狙撃してきた相手はホテルの20階近辺にいると睨んだ岸田警部は、凍城刑事と歩を連れてホテルMJへと
やって来たが、到着するなり『ちょっと便所行ってくる』と、歩を凍城刑事に任せて1人でトイレへ行ってしまったのだ。
「もう15分にもなるのに。何やってんだろ?」
歩が1階ロビーの椅子に黙って座っている横で、凍城刑事は時計を見ながらぶつくさ言っていると、トイレの方から右手で頭を押さえながら
岸田警部がやって来た。
「リンさん遅いですよ。何してたんです?」
「便所で滑って転んで頭打って気絶してた。ほんで夢見てた」
「ああ、それで・・・・って頭大丈夫なんすか?」
「多分ね」
「それは良かった。ところで、見てたのってどんな夢でした?」
「バケモンに追っかけられる夢」
「夢にまで出てくるとは・・・・・リンさんも大変っすね。ところでその手に持ってるのは何すか?」
「ビール瓶のカケラみたいだ。危ないから拾ってきた」
「何でそんなものがトイレに・・・・」
「まあいいや。とにかく調査だ調査。いくら科学が発達しても、最終的には我々現場の者の汗がものを言うんだ、うん」
「じゃあ早速20階へ・・・」
「待て、そう慌てるな」
歩き出そうとした凍城刑事を岸田警部が制する。
「まずは許可を取ってからだ。人の家に石を投げたり、勝手に覗いたりするのはルールに反する事だわ」
「・・・・・言ってる事正しいけど何か喋り方変っすよ」
「まあそれはいいから、一番偉い奴は誰か受付で聞いてみよう」
「あの、春日さんはどうするんすか?」
「勿論連れてくさ。置いてく訳にはいかんだろう」
岸田警部はガラス片をポケットに入れると、受付へ歩き出した。

77 :遊星Q「第三惑星の追跡」 ◆Ep12/emeBU :2006/12/16(土) 20:22:51 ID:Om3ld80h0
警部が受付で事情を説明すると、係員はオーナーの部屋へと3人を案内した。係員がドアをノックし、中からの「どうぞ」と言う声を確認して、ドアを開いた。
「お忙しい中失礼します。警視庁の岸田と申します」
            フタサコ
「どうも。オーナーの二逧です」
立ち上がって二逧と名乗った男の顔を見るなり、歩は声を上げた。
「け、刑事さん!あの男、第三惑星のロボットです!」
「えぇっ!?」

すると二逧はニヤリと笑った。
「ふふふっ。まんまと我々の罠に嵌ってくれたな。その通り、私はロボット大佐だ」
二逧は懐から見たことも無い銃のようなものを取り出し、3人に向けた。後ずさる3人。
「な、何すかこの飯島監督もビックリのスピード展開・・・・・・ん?」
凍城刑事が後ろを振り向く。
「ちょ、ちょちょちょっとリンさん!」
「何だよこんな時に・・・・」
先ほどの係員が二逧の持っているものと同じ銃をこちらへ向けている。
「このビルは既に我々が占拠したのだ。その娘を狙撃してわざと外し、お前たちをここへおびき寄せて抹殺するためにな」
「全て計算だったという訳か・・・・・チクショウ」
岸田警部は渋い顔をする。
「ハッハッハ。残念だったな」
二逧は勝ち誇ったように笑いながら机の上の通信機らしきものを操作し始めた。

「おい、ショーヘイ」
岸田警部が小声で凍城刑事に話しかけた。
「何です」
「俺が後ろのザコをやっつけるから、そうしたらお前は奴を撃て」
「分かりました。でもどうやって?」
「任せとけ」

78 :遊星Q「第三惑星の追跡」 ◆Ep12/emeBU :2006/12/16(土) 20:24:07 ID:Om3ld80h0
二逧が通信機に向かって何事か話しはじめたのを確認し、警部はポケットの中のガラス片を引っ張り出して床に投げつけた。
ガラスが割れる音がし、ロボット2人の視線がそちらに向く。
「今だっ!」
岸田警部が見張りを掴んで思い切り投げ飛ばした。それと同時に凍城刑事が二逧に発砲した。
「ぐうっ!」
火花が散り、二逧が肩を押さえて倒れる。
「今だ!逃げろ!」
岸田警部は凍城刑事と歩を引っ張って一気にホテルから飛び出し、一気に警視庁の入り口まで駆け戻ってきた。

「ふうっ・・・・・助かったっすね、リンさん」
「やっぱトイレ行っておいて良かったな・・・・・・しかし、これからどうしようか。俺たちの顔も知られてしまっているし、目立つ行動は出来ない」
「あ、あの・・・・・」
歩が声を出す。
「何です?」
「あの、私・・・・・・朝から何も食べてないんで・・・・・その・・・・・・」
「じゃあ、何か食べに行きますか?」
「あ、はい」
「ようし決まった。おいショーヘイ、さっきの喫茶店行こう。アイス食い損ねちまったからな」
「了解っす」

79 :遊星Q「第三惑星の追跡」 ◆Ep12/emeBU :2006/12/16(土) 20:25:23 ID:Om3ld80h0
「総監。大佐は脱走者の抹殺に失敗したようです。しかも奴はこちらの世界の者に我々の事を話してしまったようなのです」
郊外のとある倉庫に潜伏中の第三惑星総合センター議会第四参謀は、ロボット総監に報告した。
「問題は無い。奴はまだ例のホテルの近辺にいるはずだ。必ず探し出せ」
「はっ、了解しました」
すると、近くの大型の通信機が受信音を発した。第四参謀は通信機のスイッチを押すと、受像機に男の姿が映し出された。
「こちら第三惑星総合センター議会、第二参謀だ」
「こちらは第三惑星総合センター議会、第四参謀。用件は何でしょう、第二参謀」
「第一参謀からの指令だ。本日より3日以内に脱走者を抹殺せよとの事だ」
「3日以内!?それは何故です」
「脱走を図った連中の残党が異世界物質電送機の外部電力を破壊したのだ。幸い内部の電池が生きていて機能は停止しなかったが、
 その電池があと3日しか持たないのだ。そういう訳で脱走者の抹殺は早急に行うように」
「了解しました」
第四参謀は通信を切り、総監に向き直った。
「急がねばならないようです、総監」

80 :遊星より愛をこめて ◆Ep12/emeBU :2006/12/16(土) 20:33:34 ID:Om3ld80h0
他の皆さんに比べると話がえらくいい加減で無責任ですが・・・・・まだ続きます。
続きはまた後日ということで本日は失礼します。

81 :ケロロ少佐 ◆uccexHM3l2 :2006/12/18(月) 10:37:14 ID:H715NNAA0
すべての展開に期待、応援!!

82 :第X話 妄想月世界:2006/12/19(火) 02:56:00 ID:I7u4APjj0

「これ」
チーコちゃんが抱えていた何かを差し出した。

「…………なにこれ?」
真っ赤なウサギかカンガルーみたいな胴体に、これまたウサギみたいな頭。
でも頭部に目玉は無く、耳介に当たる部分に宝石みたいな塊が付いている。
顔の部分にはセミみたいな口があるばかりで、針みたいな部分をひこひこ動かしている。
スミ先生の質問に、チーコちゃんが答えた。

「あかいろうさぎ」

『シャ────────!』
「「ぎゃ───────────────────あああああああおおお!!!??」」
「だめ」
スミ先生超音波メス再び!!レポーターも同時発射!
スミ先生プロデューサーの所に瞬間移動して抱き付く!嫌がるプロデューサー!
その肩口に、何か湿ったモノが置かれたと思うと、
「あかいろうさぎ」
『シャ────────!!』
「「いや────────────────ああああああ!!!??」」
「だめ、だからだめ」
その赤い小動物がシャーシャー云いながらセミみたいな口を立ててくる。
チーコちゃんはだめだめ云いながら立ててくる口をぱたんぱたんと押さえ寝かせている。
その内チーコちゃんの手の中で暴れ出すと、身をよじって逃げ出して、

「あ」
『シャ────────!!!』
「ああああ────────────ああああうあうあうあうあううううあああ!!???」
スミ先生たちの方へと突っ込んでいった。現場に来ていた警官たちも巻き込まれる。
よく見ればあの耳からライトみたいな光線を発射していた。
どうも相手の顔を照らし出すだけで無害なようだが。

83 :第X話 妄想月世界:2006/12/19(火) 02:56:46 ID:I7u4APjj0
「そっち行ったぞ────!!」
という声と共に誰かが照明を蹴り倒し、視界が一気に暗くなる。
夜明けとはいえ未だ日は出ていない。巨大な校舎に光を遮られ一時的に闇に眼が眩む。
その闇の中を、
『シャ────!!!!』
「あれえ────────!!?」
『シャシャ────!!!!!』
「だめえ────────!!??」
あの小動物とスミ先生の声。どうもスミ先生アレに追っかけられてるらしい。
『シャーシャシャ────!!!!!!』
「ご無体な────────ああン!!!?」
「だめ」
やっとチーコちゃんが取り押さえた。足をバタつかせながらもがく小動物。
その内一瞬静かになったかと思うとまたチーコちゃんの腕の中で暴れ出して、
「あ」

空を飛んで、逃げ出した。
蛙のように後肢を使い、その通り夜明けの空をついつい泳ぐように飛んでいく。
そのまま西空の沈みかけたお月様の方へと飛んでいった。
チーコちゃん、ちょっとだけ残念そうに一言。
「あー」

校舎から変人女と雑誌記者が出てきた。
「あー!?チーコちゃん何処行ってたのよー!探したわよー!?」
変人女は駆け寄ってチーコちゃんの頭をぐりぐり、雑誌記者も安堵顔を見せた。チーコちゃんは、
「あかいろうさぎ、にげちゃった」
「え!?あの変態ラバーマン!?」
周囲を見回す変人女。────あの着ぐるみ変態中年もスミ先生と一緒に走り回っている。
というよりも、チーコちゃんと校舎から出てきた二人以外大混乱に陥っている。
よりにもよって、夜明けの小学校の運動場で。変人女が一言。

「…………何このドリフ現象?」

84 :第X話 妄想月世界:2006/12/19(火) 02:57:23 ID:I7u4APjj0
結局朝の八時まで混乱は収まらなかった。

とりあえずスタッフ含めスミ先生、変人女、雑誌記者、チーコちゃんはバスで帰宅。
残りの小学生四人は、本日は授業欠席。
保護後の検査入院……は名目で、正直皆睡眠不足だったのだ。今頃良く寝てる事だろう。

途中で雑誌記者が降りる。そのまま出社するらしい。大丈夫なのかソレ?
そしてチーコちゃんも、変人女と一緒に降りた。何のリアクションも無かったようだ。


そしてようやくスミ先生も自宅へご到着。家政婦さんが出迎えてくれた。
ふと横を見ると本日の郵便物をいまだ取り込んでいない。こういうところはちと困る。
DMをまとめ、今日の朝刊を眺めながら玄関へ向かう。
「…………?」
スミ先生の足が止まった。視線は天気予報で止まっている。
訝しげな家政婦さんへ質問。

「…………昨日の夜って、新月でしたっけ?」
「へ?えーまあ、真っ暗でしたし。そうだったんじゃないですかねえ?」


────スミ先生、そのまま卒倒バタンキュー。
それから一週間、熱を出して寝込んだまんまだったそうである。





その頃のチーコちゃん。ご飯を食べながら一言。
「あかいろうさぎ」
「チーコちゃん、梅干で遊ばない」

85 :第X話:2006/12/19(火) 02:58:43 ID:I7u4APjj0
今後の複線張ってたら思わぬ駄作になってワラタ
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \

86 :名無しより愛をこめて:2006/12/21(木) 05:52:53 ID:NDaHQ8qc0
age

87 :名無しより愛をこめて:2006/12/21(木) 12:39:02 ID:7EimzZKI0
駄作とは思わないが、今回は登場人物が異例に多い上に新顔もかなりいるのだから役割分担をハッキリさせた方がいいのでは?
例えば…
いわゆる「ホームズ役」
推理小説のみならず、実はSFでも頻繁に見かけるポジション。
謎を解いたり、奇怪な設定を解説したりする役。
ウルQだと市の谷博士がこのポジションで変人女の立ち位置もここ。
「ワトソン役」
天才や異常者(笑)であるホームズ役と一般読者を繋ぐポジション。
ホームズ役が謎を解く前に、謎を整理したり強調したりすることで読者に判り易くするのが役目。
ホームズ「犯人は××卿だよ。」
ワトソン「何を言ってるんだいホームズ!?そんなこと不可能だよ!事件がおきたとき、××卿は僕たちといっしょにいたじゃないか!?」
……ワトソン役が謎を整理しつつ、不可能性を強調してるわけ。
これがないとホームズ役の活躍が光らない。
あとは「狂言まわし」で、スミ先生が明らかにこれ。
上がり過ぎたテンションを下げたり、場面転換をスムースにしたりする役で実質的な「司会者」。
狂言回しはギャグをやる場合も多いので「賑やかし」にも見え易いが、「話を転がす」という明確な役目を負う点で単なる賑やかしではない。
役者は揃ってるんだから、役割を明確化すれば随分印象が変わってくるかと……。

……と、いうわけで自分のことも考えずに偉そうなことを書きつつ応援。

88 :第X話 幽霊大陸を追って:2006/12/24(日) 02:30:49 ID:giHpUakQ0
『はいっ!こちらは吹宮山山頂です!現在、機動隊が待機中ですっ!!』

年の瀬のある霊峰の山頂。
霊峰といってもかなり観光地化され、その山頂は展望台となっている場所。
いつもなら観光客がそれなりにうろつき、初日の出ともなれば更にごったがえすだろう。
しかし今、その山頂に居るのはマスコミの群れ。その向うに警察の機動隊。
更にその視線の先には────
御幣が並び、護摩が焚かれ、白装束が列を成す。その中心には、
「ハイヤイズモヨリマヨイオワシマスタケミナカタノミコトニカシコミカシコミモウシアゲマ……」
つるっぱげでガマガエル似の変なおっさん。
格好も神職なのか僧侶なのかはたまたカトリックの司教なのかよく分からない衣装。
そう、観光地たる山頂が新興宗教の団体に占拠されているのだ。
しかも妙な儀式まで始めている。不安げに眺める土産物屋のおばちゃん達。
店の前でマスコミにカメラを構えられて商売上がったりである。

『宗教団体”真大陸の法会”は以前より社会不安を煽る違法行為で────あっ!!』
叫ぶ女性レポーター。遂に機動隊が動き始めた。
目標は中心に居るあのつるっぱげ法会代表。信者の群れに割って入る。
突然の部外者乱入に抗議する白装束達。御幣を振って抵抗するが取り押さえられる。
「ミウアトランチスレムリアハイパボリア、ミヨイタミア…………なんじゃお前ら!?」
「「確保────────!!!」」
「ぬわ────っ!?邪性権力の犬共私を誰だと思ってぐぶへッ、この程度でぎミュッ」
大勢の機動隊員に上からのしかかられ、まさに潰れた蝦蟇状態と化した代表。
「何をするかきさまらー!この大事な真大陸降臨の刻を…………お?」
機動隊員が押さえつける力を弱めた。見ると上空を見て呆然としている。
周囲も同様、信者も他の機動隊員もマスコミも、上空に視線を向けていた。
ガマガエル代表も見上げる。

────────曇り空を紅海の如く割り、天空に出現したのは、巨大な陸塊。
上にはまるで水晶で出来た建造物のようなものが見える。
代表が潰れっぱなしで叫んだ。
「おおお────……来た。降臨した!あれこそ約束の大地、レムーリアだぁっ!!」

89 :第X話 幽霊大陸を追って:2006/12/24(日) 02:31:23 ID:giHpUakQ0
「はい?何ドラクエの話?またリメイクすんのあれ?」
「違う」
「じゃあ特務の青二才が…………」
「それも違う」

また編集部に遊びに来ている変人女。本日の昼飯メニュー、卵チャーシュー丼420¥也。
一応年末の打ち合わせのハズなのだが近所の飯屋からテイクアウトまでしている。
「お前、チーコちゃんはどうしてんだ?またほったらかしか?」
「違うわよ。例のお仲間と一緒に遊びにいってんの。放置されてんのはあたし」
はふはふ云いながらタレに漬かった飯を頬張る変人女。
最近編集部に入り浸る事が多いのはそのせいか?結構寂しがってんのかこいつ?
「何ニヤニヤしてんのよ気色悪い。さっさと話戻しなさいな」
「へいへい」

さて。
本日の議題は来年の予定、新年早々のネタ選定である。
で、上げたのが先日起こった宗教団体による怪事件。

────新興宗教団体”真大陸の法会”。
いわゆるムーやらアトランディスやらの『幻の大陸』と、その住民『始祖民族』を本尊とする
まあ凡百のオカルト団体である。彼らの教義をパンフからかいつまむと、
『幻の大陸は天空の何処かに隠れている!来るべき新時代にそれは地上へと降臨し……』
といったシロモノ。
要するに天空に浮かぶ大陸とやらを信望しているらしい。
その彼らが先日観光地で宗教儀式を強行して警察に強制排除された際、
よりにもよってホンマモンの”天空の大陸”が出現したというのである。
中継マスコミ連中に映像が撮影され、更にネットでリアルタイム中継が行われた為
世間では既にえらい祭り状態。それにあやかって、


「ラピュタネタ?流行に安く乗りすぎじゃない?気進まないなぁ」
「じゃあお前がネタ出せよ、それにこれスミ先生の提供だぞ?新年会で何云われるか……」

90 :名無しより愛をこめて:2006/12/25(月) 07:42:43 ID:rDPvjk7W0
なるほど、前作はスミ先生の紹介編だったか。
そのうち桃色ウサギの正体なんかもリンクしてくると……。

ときにこれはドラクエネタというよりイースネタでは?
……と、いうわけで応援。

91 :名無しより愛をこめて:2006/12/27(水) 01:08:20 ID:Cl6zxZvI0
age

92 :第X話 幽霊大陸を追って:2006/12/28(木) 07:07:11 ID:HawiksTK0
「あ、あたし新年会行かないから」
「へ?」


変人女が懐からぺろんと取り出だしたるものは、何かのチケット。
雑誌記者の目の前にずずいと突き出してきたのでしょうがなしに見てみると、
「…………『年越し豪華客船』……?」
「近所の安売りスーパーの福引で当たっちゃってねー、しかも二枚!!もったいないでしょ?」
「チーコちゃんと行く気か?」
「それがねー、チーコちゃんあのお仲間と一緒に初詣行くって聞かないのよ。だからダメ」
これは珍しい。あのチーコちゃんが自分の意見を主張するとは。
そろそろ反抗期か?背丈はともかくお年頃だし。
「で、どぉお?明日からだけどあんた来る気無い?」
「…………すまんがな…………年末進行って知ってるか…………」

変人女の出したチケットの日付は明日からだった。仕事納めにゃ一日早い。
しかも年内に済ましておきたい仕事が山ほどある。もしかしたら正月も出ないといけないか?
「そゆ訳だ。すまんが」
「────────あっそ」
チケットをひたひらさせながら眺める変人女。唇をカモみたいにしてる。
「てか、さっさと決めちまうぞ。俺の正月休みに協力してくれ、な?」
「はーいはい、さっさときめちゃいましょー」
さあて、新年会でスミ先生にどう云おう。


翌日、チーコちゃんを雑誌記者に任せて変人女は豪華客船で年越しへと旅たった。
次の日にはチーコちゃんが友達の家へ厄介に行く。
雑誌記者は、相変わらずの年末進行。というかゴールは程遠い。
何だか、変人女とチーコちゃんのコンビに生活をかき回されている気がする。
「…………女難の相でも出ててかなぁ、俺」
キーボードをバキバキ叩きながら溜息一つ。横目で車内の時計を見る。
もう船は太平洋へと旅たった後だろうか?

93 :第X話 幽霊大陸を追って:2006/12/28(木) 07:07:42 ID:HawiksTK0
「おい、見ろよコレ。あの話題の教祖様」
おかじーがコーヒー持って話しかけてきた。自分のお仕事は終了したのかコイツ?
「来年にするわ。年越しは実家に帰るからな!それで────……」
ああさいですか。もう何だか脳の色んな所がマヒしかけてる雑誌記者。聞いちゃ居ない。
「この教祖様、年越しは自分トコ出資の観光会社主催の豪華客船でパーティだと!まー…」
「豪華客船?」
おかじーの持ってる携帯を取り上げる。どっかのゴシップサイトだ。
出立の日付は今日だ。船名は────”シービショップ号”。覚えていない。
「…………まさかな」


その日の夜。
チーコちゃんとコンビニ弁当を買って帰る。
手を繋いで夜空を仰ぐと、星空が鮮やかに瞬いていた。透明な気分に浸る雑誌記者。
と────
「うん?どした?」
チーコちゃんが立ち止まり、こちらをじっと見つめている。
彼女の視線は万人を落ち着かなくさせる。全てを見透かされそうな大きな瞳。
まるで、それまで見ていたような夜空を想起させる透明な虹彩。

「 ………────えと、どした」
「きた」
突如胸のポケットが震えた。驚きながら取り出すと非通知設定。何だ一体?
「とって」
チーコちゃんの透明な視線に射抜かれたまま、通話ボタンを押す。

「────もしもし?」
バリバリバリと雑音。電波状況からではないらしい。背後からは人の声も聞こえる。
イタズラか?どっかの飲み屋の忘年会で学生が罰ゲームでもやったのか?
「────もーしもーし?」
「 ………モシモシー?聞こえてるー?わかるあたしの声ー?」
聞き紛う筈も無い。変人女の声である。

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