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もし芸人に不思議な力があったら4

1 :名無しさん:2006/01/19(木) 20:41:46
現まとめサイト
ttp://geininstone.nobody.jp/


・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってま


・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドル・トリップを使用する事を推奨
 <トリップの付け方→名前欄に#(半角)好きな文字(全角でも半角でもOK)>
・既に使用されている石、登場芸人やその他の設定今までの作品などは全てまとめサイトにあります。
書く前に一度目を通しておいてください。

2 :名無しさん:2006/01/19(木) 20:42:37
前スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1122401090/

以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能。
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。

・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている
 (ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られた
 かりそめの魂であり、石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。

・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。

・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「白いユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。)

3 :1:2006/01/19(木) 20:43:35
落ちてたようなので、たてときました。
ここに書き込んだの初めてだww

4 :名無しさん:2006/01/19(木) 20:48:59
あ、ホントだ落ちてる。
>>1GJ!

5 : ◆ekt663D/rE :2006/01/19(木) 22:20:57
乙です!

6 :名無しさん:2006/01/19(木) 23:11:04
>>1乙です。
よし、話書くか。
もしセンター試験受ける書き手いたらがんがれよー。

7 :名無しさん:2006/01/19(木) 23:15:22
最近本当に投下無いなー。
受験シーズンだからかな、やっぱり。

8 :名無しさん:2006/01/19(木) 23:16:02
>>1乙です!

9 :名無しさん:2006/01/20(金) 00:40:48
乙です!
話楽しみにしてます!

10 :名無しさん:2006/01/20(金) 02:01:56
よかった、誰も気づいてないのかと思った。
>>1本当にありがとう。

11 :名無しさん:2006/01/21(土) 11:10:26
>>1さん乙。
このスレ好きなんだよ。

12 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 13:56:01
また私です。
今けっこう暇な時期なんでつらつらと書いてます。
前スレ、あべさく編の続きいきます。

13 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 13:58:29

「おかしい、おかしい、絶対にお・か・し・い!」
携帯の液晶画面をこれでもかとガン見しながら、阿部は頬杖をついた手を反対側に変えた。
約束を破って帰ったと思いこんでしまった阿部は腹を立てて楽屋の椅子に座っていた。
だが暫くするとさすがに頭のほとぼりも冷めてきたのか、冷静に思考を巡らせ始めた。
あの彼が何も言わずに勝手に帰るなんて、そんな不躾な真似をするだろうか?今までも「ザリガニの子が生まれそうで〜」とか「子どもたちの餌買わなきゃ〜」とか、(言っちゃ悪いが)どうでもいい理由までいちいち言ってきていたものだ。
第一、待ち合わせの約束を持ちかけてきたのは佐久間の方だ。

まさか…。阿部は携帯を取り出し、佐久間の携帯へ電話を掛けた。20回ほどコールを鳴らしても一向に出ない。
今度は家へ掛けた。だが、こちらもやはり出る様子はなかった。
嫌な予感が振り払えない。


14 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:00:10
「分かるか…?」
携帯に簡単に取り付けた自らの石を撫でるように摘み、静かに呟いた。
透き通るように青く美しい石は主人の語りかけに反応し、淡く瞬いた。

「………さっくんのピンチ!」
そう思った。思わずにはいられなかった。椅子を倒す勢いで立ち上がる。
根拠は無い。妙な胸騒ぎだけがただ一つの理由だった。それでも、頭の中には確信にも似た何かがあった。
阿部は何とか佐久間の居場所を突き止めようと、楽屋を飛び出した。


意外にもその方法は直ぐに見つかった。
「え?人捜しっすか?ならあいつに頼めば良いと思いますよ」
「あいつって?」
「あ、知らねえっすか。ハイキングのQ太郎がそういう能力なんですよ」
そう言うや否や、藤田は隣の楽屋へ鈴木を呼びに行った。
ああ、あいつね。と阿部は心の中で呟いた。
(意外と多いんだ、石の能力者って。黒も白も入り乱れてるらしいし…となると、この闘いもまだまだ続くなあ…)
「あべさん、誰か探してるんですか」
いつの間にか目の前には鈴木が立っていた。先程まで寝ていたのか、髪の毛先がまた何ともおかしな方向へ向いていた。
相変わらず濃い顔だ、と思いながら阿部が口を開いた。
「ん、ちょっと佐久間さんをね」
心の内を悟られないように軽く笑みを作る。僅かだが俳優としての仕事もしていた事もあってか、本当に何でもないような上手い作り笑顔だった。
鈴木は疑いを掛けることなく「良いですよ〜」と承諾し、目を閉じて佐久間の石の気配を探知し始めた。
彼の服と同じピンク色の小さな石が不規則にチカチカと光ると、鈴木の頭の中に地図のようなものが広がる。

「あっ、見つけました」
ふっと目を開け、得意げに笑う。そして、佐久間の居場所を阿部に伝えた。
「佐久間さんは、………」



15 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:02:12


綾部はトイレに行こうと廊下を歩いていた。丁度曲がり角へ差し掛かった所で、人とぶつかりそうになった。
咄嗟に身を捻って避けたものの、突っ込んできた相手は謝りもせず…と言うよりも、一切見向きもせず走り抜けて行ってしまった。
綾部は顔をムッと顰め、怒鳴りつけてやろうとその人物の後ろ姿を睨み付けた。
「んっ…?」
途端、綾部はキョトンとした。既に階段を降りていったが、それは間違いなく阿部の姿だった。
あの阿部があんなにも慌てているなんて、珍しい。
と思ったが、深く考えず首を小さく傾げると再び歩き出した。


「あっ」「お?」トイレの中には鈴木がいた。お互い軽く会釈する。
少し間をおいて、鈴木が話しかけてきた。
「さっきあべさんとぶつかりそうになったでしょ。ね、当たってる?」
「アタリです…それも能力で?何か監視されてるみたいで怖、…嫌だな」
鏡越しに会話する。ワックスを取り出して少し疲れた髪型を整えた。
やはり鈴木が白に入るような事があると、黒にとっては分が悪い。何しろ彼がその気になれば黒の動きなんて筒抜けなのだから。
いつだったか自分が松田を黒に誘ったとき、彼はこう言った。「相方に何も言わなければ、手伝ってやる」と。
嫌だと言えば即こてんぱんに叩きのめされそうだったから、その時は思わずハイと答えてしまったが―――。

(…でも、いつか『白』に取られるくらいなら…、今…)
横目で鈴木を見、恨まれるのを覚悟で、思い切って向き直った。


16 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:03:39
「あの、Qさ…」
「あべさんも大変だよねぇ」
思いっきり声が被さってしまった。綾部は出かかった言葉を飲み込んだ。
「はあ、何かあったんですかね。あんなに急いで、…知ってるんすか?」
「ああ、人捜しの手伝いしたんだよ。かくれんぼ以外で力使うの初めてだったなー」
鈴木は嬉しそうに言った。

―――人捜し………。『人捜し』?
はっ、と息を呑むと身体から血の気が引いていった。
一瞬にして身体が石化したように感じた。

「誰ですか」
「え?」
「誰を捜してたんですか!?」
今にも掴み掛かってきそうなその剣幕に、一瞬戸惑う。
「誰って……佐久間、さん…」
綾部は驚愕の表情を浮かべた。そして弾かれたように廊下へ飛び出していった。
名前を呼ぶ鈴木の声が小さく聞こえた。
(…手、洗わねえのかよ…)
一人残された鈴木は、綾部の不振な行動に気付きもしなかった。

綾部は走りながら、考えていた。
何で分かったんだ?友達だから?そんなドラマみたいな展開、あり得ないだろ。
阿部のこの動きは、きっと綾部も、又吉も、誰もが予想できなかった出来事。
楽屋のドアを乱暴に開け、息を切らしながら叫んだ。
「ま、またきち!またきちーっ!!」
「何やねん、便所にゴキブリでもおったんか?」
「万に一つも起こらないようなことが起こった!」
「……は?」


17 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:05:43


何度目になるだろう。隕石の如く飛ばされてくる岩石のつぶてを、フワフワのシュークリームに変化させる。
変化させきれなかったものは頬をギリギリで掠め、鉄筋やコンクリートに衝突し、砕けた。
ピン芸人佐久間一行、HP:そこそこ。MP:ピンチ。絶体絶命だ。

「逃げてばかりじゃ意味無いでしょ。もう諦めたら?」
対する松田はまだまだ余裕だ。確かに、運動能力に自信があると言っても、猛スピードで向かってくる岩を避け、また能力を使い続けるのには限界があった。
かといって、攻撃系の能力…しかもその中で最も強いとされる四大元素の力の内の一つ、『土』を操る石とあっては、まともに突っ込んで勝てる訳がない。
佐久間の心の動揺に反応し、エンジェライトの光も段々と弱くなる。
「ああ〜もぉ頼むよ…まだ消えるなって…」
小さな声で呟き、石を握りしめる。
「噂には聞いてたけど、随分面白い力だなあ…。微妙に精神的にもダメージ来るかも」
松田が独り言を言いつつそこら中に散乱している大きなシュークリーム(元々は岩だったが)をもったいなさそうに眺め、脚で蹴った。
「あ、あべさんが助けに…っ」
「来ないと思う。綾部がちょっとしたイジワルしてるから」
目を伏せる。
「佐久間さんさぁ、あべさんが帰った、って聞かされたでしょ?」
「うんうん。……もしかして…」

「嘘吐いたんです。ホントは帰ってなんかない。…多分、あべさんにもあなたと同じような事言ったと…」
と、言うことはだ。阿部は自分を置いて帰ったのではなく、それは綾部の吐いた嘘だということ。
佐久間は腕を組み、空を見上げて頭の中を整理した。

――――じゃあ何だ。俺が綾部の言葉を鵜呑みにしただけだったのか。なんだ、あー良かった。

…いや、良くはなかった。同じ事を阿部にに言ったということは、きっと向こうも佐久間が帰ったと思いこんでいる筈。


18 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:08:51
これはもう、助けを期待しない方が良さそうだ。
頼る人は此処には居ない。自分だけの力で何とか切り抜けなくてはいけない。
いつも遊んでいるヒーローごっこと同じシチュエーション。まさかこんな所で実体験出来ようとは…。
(…俺の石で、何とか松田さんの石浄化できねーかな)
ふと、そんなことを思いついた。
相手は石を手に持っているし、思い切って突っ込めば案外上手くいくかもしれない。

松田の一瞬の隙を突いて、飛び込んだ。今まで逃げていた佐久間がいきなり向かってきた事に驚き、今度は松田が尻餅を着いた。
慌てて石を反対の手に持ち替え、片手に砂で固めた刀を瞬時に作り出す。
佐久間が手を伸ばすとほぼ同時に喉元に切っ先を突きだした。
「ひゃあっ!!」
刀を見た佐久間は短い悲鳴を上げ思いきりブレーキをかけると、
「たは〜、無理だコレ」
ぐるりと180度向きを変えて逃げ出した。
―――しっかりしろ、どういうつもりで逃げてんだよ。
―――逃げろ逃げろ。捕まったら殺されるよ。
頭の中で二つの、正反対の声がする。コレが俗に言う天使と悪魔の声。
どちらが天使なのかは分からないが。

さっとコンクリートの壁に隠れ、そのまま背を預け力なく座り込んだ。少しだけ顔を覗かせる。
松田が立ち上がっているところだった。手には砂剣を持っている。目が合う前に頭を引っ込めた。
―――昨日と同じように、助けに来てくれるだろうか?あのカッコつけ男は。
「どう、思う?」
すっかり頼りなく弱々しい輝きになってしまった石に語りかける。
もし完全に光が消えてしまうと、自分を守るものは何もなくなってしまう。
擦り剥いた膝を抱え、今度は誰に向かってでもなく呟いた。


19 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:15:02
「本当は約束破って帰るような人じゃないんだよ…あの人は…俺、知ってた筈なのに」
人を疑う事を知らない佐久間にとっては、あまりにも厳しい現実だったのかも知れない。
土埃や泥で汚れてしまった服や顔からは、既に『潔癖性』の欠片も感じられなかった。

―――(此処にいたら危ない!)
頭の中で妙な声が聞こえた途端、考えるより先に身体が動いた。トランポリンのように地面が大きく揺れる。
もたれかかっていた壁に亀裂が入り、真ん中から崩れ落ちた。巻き上がる砂に咳き込む。
いち早く危機を察知できる力を持つエンジェライトのおかげで、間一髪でコンクリートの下敷きになることだけは免れたが――。
地面の波紋が此処まで届いたということは、松田が近くにいるということだ。
岩の影できっとまだ自分の姿を見つけられていないのだろうが、一つひとつ石壁を、それこそ積み木を崩していくように壊していって、何もない平面の広場にすれば良いだけだ。
ちょー怖え!どうしよう。どうしたら此処から出られる?


「わっ」
逃げなければ、と立ち上がろうとした瞬間、足がもつれた。
何か細い糸の様なものが足首に引っ掛かかった感触。そして、ヒュッ、と空気を掠める音がしたのを確認する間もなく、高速で飛んできた何かが、佐久間の頬をギリギリで掠め、ブロックの壁に突き刺さった。


20 : ◆8zwe.JH0k. :2006/01/21(土) 14:17:48
中途半端だがここまで。

21 :名無しさん:2006/01/21(土) 15:01:51
乙。
これから忙しい時期が終わってスレが賑わえばいいね。


22 :名無しさん:2006/01/21(土) 18:57:54
乙です!
あべさく編、おもしろくなってきましたね〜。続き楽しみにしてます。

23 :名無しさん:2006/01/21(土) 23:00:29
オパール偏が見たいよ
見たいよ

24 :名無しさん:2006/01/22(日) 11:11:45
保守

25 :名無しさん:2006/01/22(日) 20:32:00
◆8zwe.JH0k.以外の書き手が来ないなあ・・。
飽きたのか?

26 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/22(日) 20:55:14
忙しくてパソに触れてなかった…。
飽きてないですよ。
ちゃんと書いとります。

27 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:10:57
添削スレの方で投下してもいいのではという意見をいただいたのですが、
今こちらに投下させていただいてもよろしいでしょうか?
チュートリアルの二人の短編です。他の芸人さんは名指しでは登場してません。

28 :名無しさん:2006/01/22(日) 21:11:59
>>27
おk

29 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:19:44
ありがとうございます。それでは、投下させていただきます。


 徳井義実は今、まさに仕事を終えて帰路につくところだった。
 今から飲みに行くからお前も来いよ、と言った相方の福田の誘いを断り、徳井は夜の街を一人で歩いていた。時折人にぶつかりそうになるが、上手くそれを避けながら歩く。
 道沿いのとある店の前で、徳井はきらりと光る石の存在にふと気が付いた。
 店の中の明るさのせいで、その石は特に目立って輝いている。徳井はそれに興味が湧き、拾い上げて手の中で転がした。
「きれいな石やな」
 ぽつんともらした、石に対する感想。
 石は透き通ったグリーンで、その色はマスカットを連想させる色であった。女性が身につけるアクセサリーとしてもよく見かけるような、少し大きめの石である。
 道端に転がっていたのだが、この石の運が良かったのか一つも傷がついていなかった。
「まあ、持っといても悪うないやろ」
 徳井はそう呟いて、石についたほこりを息で飛ばした。
 その瞬間、微量についていた砂のようなものを吸い込んでしまったが、全く気にかけずそれをさっとジーンズのポケットに入れた。
 太股に石が入っている感覚があるなあ、と当たり前のことをぼんやりと思い、徳井は再び自宅に向かって歩き始めた。

30 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:20:44
「昨日な、きれいな石見つけてん」
 徳井は次の日に早速、相方の福田に昨日拾った石を見せた。福田はふうん、と言い、それをしげしげと見つめていた。
「ほんまにきれいやなぁ。どっかで買うたん?」
「いや、道に落ちてたから拾っただけやねんけどな」
 そう言うと、福田は苦笑した。
「なんや、ほんなら汚いやん。さっさと捨ててまえよ」
「え。昨日、家帰ってからちゃんと洗ろたんやけど」
「そういう問題やないやろ。たかが落ちてた石に執着心持つやなんて、変な奴やなぁ」
「うるさいわ」
 いちいち突っ込んでくる福田をかわし、徳井はそれを再びポケットにしまった。しまう時、その石が不思議と熱を帯びているように感じられたが、特に気を留めることもなかった。


 その後、楽屋で髪型を整えていると、そうや、と思い出したように福田が呟いた。
「石ゆうたら、昨日俺ももらったわ。ファンの子のプレゼントの中に、一つてごろな大きさの石があってん。まあ相手は小っちゃい子なんやろな、『きれいだったからあげます。がんばってください。』なんて手紙が一緒に入ってて」
 福田はそう言うと、自分の持ってきたバッグの中を探し、徳井の目の前に出した。徳井はそれをしげしげと見つめ、ふうん、と言った。
「お前のも緑色やな。それにしてもグレーのふが入ってたりして、なかなかセンスええやん」
「そやろ? 俺あんまりアクセサリーとかつけへんけど、これはなんかお守りとかになりそうやから、袋に入れて持ち歩くことにしてん」
「ほう」
 どういう風の吹き回しなのやら、と徳井が笑いながら呟くと、福田は拳を振り上げて叩くような仕草をしたが、彼も徳井同様笑いをこらえきれない様子だった。
 そこで改めて福田の持っている石を見つめる徳井。福田の石はまろやかな緑色で、先程徳井も自分で言ったとおり、グレーのふが入っている。
 形も質感も違うが、同じ緑っぽい色の石ということで、徳井は不思議な親近感を持った。
 徳井はしばらく眺めてから福田に石を返し、再び鏡の前に立って自分のみだしなみを整えることに集中した。
 ――自分の“石”がますます熱を帯びていることに、全く気づかぬまま。

31 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:22:06
「はいっ、どうもチュートリアルです」
「よろしくお願いしまーす」
 いつもの挨拶で始まった漫才。二人の登場で観客が沸き、二人はいつもの調子でネタを始める。
 そう、最後までいつもの調子でできていたはずだったのだ。
 徳井がズボンのポケットの中に、何か熱いものを感じるまでは。
 ――ん?
 一瞬顔をしかめる徳井。その後、そういえば拾った石を入れたままだったなあと思ったが、何故それが熱く感じるのかまでは説明できず、徳井は一瞬ネタを続けることを忘れた。
「なんや、どないしたん徳井くん?」
 相方の福田にツッコまれ、徳井ははっと我に返る。福田は苦笑しながら、続けてツッコんできた。
「また変な妄想でもしてたんちゃうやろな?」
「いや、ちゃうねん。だからお前がな――」
 相方のフォローに感謝しつつ、徳井はネタを続ける。観客はそれもネタの内なのだろうと思っているようで、気に留めることもなく二人のやりとりに笑っていた。
 自分たちの出番中、徳井はずっと石の熱さを感じたままだった。
 ネタが終わってから石がどうなっているのか確かめよう、と思いながらネタを終わらせ、舞台のすそに引っ込んだ。

32 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:23:08
 出番が終わってから、徳井は案の定福田に先程のことを訊かれた。
「ほんまにどないしたん? 急に喋んのやめたから、びっくりしたで」
「いや……」
 徳井はそう言いながら、ズボンのポケットに入れていた石を出した。手のひらに載ったその石はやはり熱を帯びていて、徳井は首を傾げた。ずっとポケットの中に入っていたから熱い、というような熱さではない。石自身が熱を発しているようである。
 福田は不思議そうに石を見ている徳井を覗き込んだ。
「なんやお前、こんなもん入れてたん? さっきの石やないか」
「うん……なんかこれな、熱持ってるような気がすんねんけど」
「え、熱? お前のズボンの中で温められてたんちゃうん?」
「いや、そういう熱さやないねん」
 そう言って徳井は石を福田の方に向けたが、福田はまだ信じられないといった様子だった。
「どれ、ちょっと貸してみ」
 福田がそう言うので、徳井は福田に石を渡した。福田は石を受け取って手のひらで転がしていたが、すぐに首を傾げて徳井に石を返した。
「俺は別に、なんも感じひんねんけど……」
「えぇ? 俺の手の感覚がおかしいんかな」
 徳井に返されたその石は、確かに今も熱を帯びている。徳井の手の中では熱く感じるのに、福田はそれを感じないとは。全く訳が分からない。
「まあ、その石のことは後にしよ。考えて分かるようなことちゃうみたいやし」
 福田がそう言うので、まあそうやな、と徳井も同意し、二人は楽屋へ戻ることにした。

33 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:23:58
「なぁ。その石、まだ熱い?」
「ん、ああ、まだ熱持ってる。焼け石ほど熱くはないけど……まあ、カイロぐらいの熱さやな」
 楽屋に帰るなり、福田はその石のことを話題に出した。徳井の手に握られた石は、まだ熱を保ったままだ。少しも冷たくなるような気配を見せない。
 徳井の返事を聞いて、福田はふうん、と言いながら、どこか腑に落ちないといった顔を見せた。
「なんか変な石やなぁ。やっぱり捨てた方がええんちゃう?」
「そうかなぁ。でもな、なんか捨てたらあかんような気がすんねん……」
 徳井がそう言うと、福田は再び苦笑した。
「変な奴やな。別にそんな石、持ってたって何の得にもならへんやん。お前の場合、誰かからプレゼントされたとか、自分で買ったとかでもないし」
「うーん……」
 福田の説得は確かにそうだと納得させられたのだが、徳井はまだこの石を捨てる気にはなれなかった。勿体ないからとか、そういう理由ではない。何故か、これは自分の手元に置いておくべきものだという気がしたのである。
 座ったまま考え込む徳井、その隣で徳井の反応を窺う福田。そうして二人の間に、沈黙が流れた時だった。

34 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:25:25
 コツコツと、楽屋の扉がノックされ、二人は同時に扉の方を振り返った。
「どなたですか?」
 福田がそう答えると、相手はくぐもった声でこう言ってきた。
「すいません、ちょっと中に入ってもいいですか?」
「はあ、別にいいですけど」
 いきなり何やろう、と徳井にだけ聞こえるよう呟き、首を傾げながら、福田は立ち上がって扉を開けた。外には見たことのない男が立っていて、顔を隠すようにうつむいていた。
「僕らに何か用ですか?」
 福田が訊くと、相手の男はうつむいたまま言った。
「石、貸してくれませんか?」
 徳井と福田は一斉に顔を見合わせた。石と言われて思い当たるのは、徳井が今手にしている透き通ったグリーンの石である。二人は怪訝そうな顔をし、福田は男に再び問いかけた。
「石なんて、何に使うんですか?」
「いいから、早く貸してください。説明は後です」
 男は苛立ちを隠せない口調だった。名も名乗らない人物からそんなふうに言われ、福田もさすがにカチンときたようだ。
 不機嫌そうな顔をしながら、同じく苛立ちのこもった口調で返した。
「もう何なんですか、いきなり石を貸してくれなんて。理由もないのに、そんなもん貸せませんよ」
 そう言った瞬間、男がガバッと顔を上げた。あまりにも突然のことだったので、福田は「うわっ」と声を出して二、三歩後ずさった。
 男は二十代後半といった感じの顔立ちで、表情を見れば明らかに怒っているようである。二人が知っている若手芸人にも、スタッフの中にもこんな人はいない。
 誰やねん、という疑問を口から発する前に、男の方が二人の方を向いて口を開いた。

35 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:26:41
「この二人はお人好しやから、すぐに石渡してくれるって聞いたのに……話が違うやないか」
「な、なんやねん、いきなり」
 福田が多少驚きつつそう言うと、男はふんと鼻を鳴らした。
「まあええわ。こうなったら、力ずくでも石を渡してもらわな、な」
 そう言うなり、男は一番近くにいた福田の方に飛びかかってきた。福田はなんとかそれを食い止めたが、徳井は慌てて立ち上がり、福田の方にかけよった。
「福田! ……お前、何すんねん!」
「ちっ、こいつ石持ってへんみたいやな……ほんならお前からや!」
 男は福田に乗りかかりながら一人でそう吐き捨てた。その後今度は福田から離れて立ち上がり、徳井の方を睨んだ。
 徳井は今、手にあの石を持っている。力一杯握りしめているせいか、石にこもっている熱がより一層増して感じられた。
「福田、お前も石、出しとけ」
 横で倒れている相方にそう囁き、福田が頷いたのを確認して、徳井は立ち上がって男を睨み返した。男は徳井を睨んだまま動かない。
 自分の隙を窺っているのかもしれないと、徳井は用心しながら後ずさりした。福田が自分の鞄から石を取り出す時間稼ぎをするつもりだった。
 男の後ろにいる福田は、ゆっくりと自分の鞄に向かって動いていた。徳井はそれでいいと小さく頷き、男に視線を戻した。
「なんや。いきなり俺らの楽屋に入ってきて、挨拶もなしにこれか」
 我ながら冷たい口調だ、と思いながら、徳井は改めてキッと男を睨む。男はそれでも動かない。
 視界の端で、福田が鞄からそろりそろりと石の入った袋を出すのが見え、徳井は再び声を発した。

「どこの誰か知らんけど、『人の楽屋に挨拶もなしに入ってくんな!』」

 その瞬間だった。

36 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:27:17
 バン、と何かが破裂したような音が響き、徳井を睨み付けていた男は楽屋の外に吹っ飛ばされた。徳井も一瞬、何が起こったのか分からずぽかんと口を開けていた。
 男はくそっ、と言いながら立ち上がり、再び二人の楽屋の中に入ろうとしたが、何故か楽屋の中に一歩踏み出すだけで外に吹っ飛ばされていた。
 徳井は慌てて自分の手の中にある石を見ると、石からは光がこぼれていた。相変わらずじんじんと熱さは伝わってくる。まさかと思いながら、徳井は石をじっと見つめていた。
 相方の福田も自分の石を持ったまま立ち上がり、徳井の方を信じられないという目つきで見ていた。
「なんや……何が起こってん?」
「俺にも、さっぱり分からへんねんけど」
 徳井は首を横に振った。その間にも男は何度も楽屋の中に入ろうとしていたが、その度に何かに吹っ飛ばされていた。まるで扉に、何かの結界が張ってあるかのようだった。
 二人が首を傾げて男を見つめている間に、男はここに入るのは無駄だと悟ったのか立ち上がり、
「く、くそっ、覚えてろよ!」
 お決まりの捨てぜりふを吐いて、その場を立ち去っていった。
「な、なんやったんや、一体……」
 二人が同時にそう発した時、外から他の芸人の声がした。
「おっす! なんかあったんか?」
 その芸人はきょとんとした顔で二人を見つめ、二人が驚きで固まっているのを見て、苦笑した。
「なんや二人とも固まって。お化けでも見たような顔してるぞ?」
 そう言い、二人の楽屋に足を踏み入れる。
「あ、入ったら――」
 あの男のように見えない結界のようなものにはじかれるのではないかと思い、徳井は咄嗟に声を出したが、その芸人は難なく二人の楽屋に入ってきた。
 二人はきょとんとし、顔を見合わせる。さっきのは一体何だったのだろう、と。
 とにかく、楽屋に入ってきたその芸人を何でもないと言って追い返し、二人は楽屋の扉を閉め、一気にため息をついた。
「な、なんか知らんけど、疲れたな」
「ほんまに何やったんや、あれ」
 二人はそう言いながら、手の中にある石を見つめる。徳井の石は先程までの熱が失せ、すっかり冷たくなっていた。福田の石は以前と全く変わりがない様子である。

37 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:29:09
 石の確認が終わったところで、徳井がぽつんと呟いた。
「俺が『挨拶もなしに人の楽屋に入ってくるな』って言うた途端、あいつ吹っ飛ばされたよな?」
 そうやな、と福田は頷く。それを確認してから、徳井は続けた。
「でもさっきのあの人は難なくここに入ってこられた……なんでや?」
「うーん……ようわからんなぁ」
 福田が首を横に振って分からないという顔をしたので、徳井もがくりとうなだれたが、その後すぐにがばっと顔を上げ、そうや、と叫んでいた。
「あいつ、挨拶したよな? 『おっす!』って、ちゃんと」
「あ、ああ、してたけど……まさか、挨拶したからここに入ってこられたって言うんとちゃうやろな?」
「まあ、とりあえず試してみたらすぐ分かるやろ」
 そう言うなり、「おい!」と叫ぶ福田を無視して、徳井は楽屋を出て後輩の芸人を連れてきた。連れてこられた後輩芸人は怪訝そうな顔をして、徳井を見つめていた。
「とりあえず、何も言わんとここに入ってみ?」
 徳井は後輩芸人にそう命じた。後輩芸人は相変わらず不思議そうな顔をしながら、言われたとおりに楽屋に足を踏み入れた。
 その途端、後輩芸人は後ろに吹っ飛び、ちょうどそこにいた徳井に受け止められた。

38 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:30:03
「な、なんなんですか、これ」
 後輩芸人は驚いている。徳井はははっと笑うと、今度は挨拶をしてから楽屋に入るよう命じた。後輩芸人は頷き、「失礼します」、と言ってから、おそるおそる楽屋に足を踏み入れた。
「あ、あれ? 入れる……」
「ほんまや、入れるやん」
 後輩芸人と福田が同時に言葉を発し、徳井はまたははっと笑った。
「やっぱりな。……あぁ、時間とって悪かったな、もうええで」
「は、はあ」
 後輩芸人は何が何だか分からないという顔をしながら、徳井に言われたようにその場から立ち去った。徳井は楽屋に再び入り、福田に向かって得意そうな笑顔を見せた。
「やっぱりそうやったな。多分俺の言ったことに反応して、ここに挨拶せん奴は入ってこられへんよう、結界でも張られたんちゃうか?」
「まあ、そうみたいやけど、なんでや? この石がそうしたんか?」
 福田の問いに、徳井は頷いた。
「多分そうやと思う。その後、この石光ってたし、後で熱も冷めてきたし……この石、なんか不思議な力があるみたいやな」
 ふうん、と福田が納得したようなしてないような表情を見せ、頷いた。
 徳井はその石をズボンのポケットに大事そうにしまうと、立ち上がって福田の方を向いた。
「まあ、とにかく一件落着や。後で飲みに行くか?」
「おっ、ええな。昨日みたいにつれないこと言うなよ?」
「もちろんや」
 福田も鞄の中に石の入った袋を大事にしまい、二人はいそいそと帰る準備を始めた。
 福田の石がじとりと熱を持ち始めていたのを、二人は知るよしもなかった。


なんだか歯切れの悪い終わり方ですが、一応これで終了です。

39 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:33:32
徳井 義実
石:プリナイト
効能:「真実を見抜く石」と呼ばれる。また、しっかりとした意志と強い信念をもつことができる。
能力:情報操作ができる。
世の理や常識、そして人の記憶の中にまで入り込み、自分の思うように書き換えることができる。
また、持っているだけで精神的な干渉を持つ能力に対しての耐性が少し上がる。
条件:目の前にいる物・人に対してしか能力を発揮できない(理・常識に関してはこの限りではない)。
また、10秒間念じなければ能力を発動させることはできない。一日に使える回数も五回までと少ない。

40 : ◆TCAnOk2vJU :2006/01/22(日) 21:36:26
あ… >>39の徳井さんの能力に若干間違いがorz
条件のところ、正しくは

条件:目の前にいる物・人に対してしか能力を発揮できない(理・常識に関してはこの限りではない)。
一日に使える回数も五回までと少ない。
一定時間経つと、書き換えた情報が徐々に元通りになっていく。

です。何度もすみません。

41 :名無しさん:2006/01/22(日) 21:54:55
◆8zwe.JH0k、◆TCAnOk2vJU
乙です。徳井の能力面白いなー。

42 : ◆LHkv7KNmOw :2006/01/23(月) 10:24:47
ちょっと前にしたらばでカラテカの話書いたのでそれを投下します。



43 : ◆LHkv7KNmOw :2006/01/23(月) 10:27:37
今日は晴れ。絶好の釣り日和だ。白も黒も、石のことは今日は忘れて、楽しもう。
と言うことで。
「矢部くーん、釣れたぁ?」
「うーん、まだ」
何人かの芸人仲間を誘って、釣り堀にやって来たカラテカ矢部と相方の入江。
二人以外にも石の能力者は何人かいるが、誰も「石」なんて単語を出してこない。
くだらない日常会話に笑いあいながら、幸せな時間を過ごす。
浮きはぷかぷかとゆったり上下しているだけで、魚は一向に掛からない。
餌が悪いんだ、きっと。などと思ってたが、周りの芸人たちは、次々と魚を釣り上げて大漁のようだ。
「えー、嘘でしょー…?」
情けなく眉をハの字に顰めて、もう一度竿を握り直した。坊主頭には紫外線が痛くて堪らない。
すこしでも暑さから逃れようと鞄から帽子を取り出し、きゅっと深く被る。
「えっ、矢部くん、今時麦わら帽子って…え〜…?」
入江が笑いを含んだ口調で矢部の隣にしゃがみ込む。矢部はむっとした表情で帽子のつばを上げた。太陽の光が目に入ったのか、何度も瞬きをしている。
「麦わらを馬鹿にしないでよ。凄いよコレ、涼しいんだから」
「まあ、もやしっ子にはそれくらい無いとなぁ」
その言葉に、矢部は黙り込む。当たっているから何も言い返せないのだ。
体重39キロの、アンガールズにも劣らない細い身体は、長い間外に放っておくと、あっという間に蒸発してしまいそうだ。
入江が、これも使えと日傘をクーラーボックスに立て掛けた。
「……掛かれよぉ」
いつの間にか真上に昇り、さんさんと照りつける太陽が眩しくて堪らない。


44 : ◆LHkv7KNmOw :2006/01/23(月) 10:29:20
「…お客さんのハートを釣ってるみたいだな…」
「はは、言えてら」
どこかで聞いたような台詞に入江が乾いた笑い声を上げる。そのまま、何も起こることはなく、穏やかな時間だけが過ぎていく。
暇つぶしにお菓子をつまんだり、ネタ合わせしてみたり、ツバメの巣作りを観察したり。
「矢部さん、そんなにツバメが珍しい?」
じっとツバメを見つめたままの矢部に一人の後輩が声を掛けると、矢部は首を縦に振り、笑って言った。
「うん、“子供が生まれるのが楽しみ”だって」
後輩は、ふーん?と首を傾げた。
そして一時間ほど経った、その時…

「あっ、矢部さん!引いてる、引いてる!」
誰かが慌ただしい声を上げ、手招きをすると、一本の釣り竿の前に何人もの人が集まってくる。
「よぉし…絶対釣るぞ〜…!」
矢部は麦わら帽子を脱ぎ、腕捲りをして釣り竿を掴んだ。力を込めるが、一向に魚の姿は見えない。隣から後輩たちや入江が手伝うように竿に手を添える。
一瞬だった。どんな大物かと思いきや、釣れたのは一匹の小魚。

「う…うっそでしょ〜矢部く〜ん…!」
あまりの非力さにすっかり脱力する入江。
ああ、そう言えばこいつは、ワカサギ釣りに行った時も、満足に氷に穴すら開けられなかったなあ。
「ご、ごめんごめん。でもさ、やっと釣れたから、バケツ持ってきて…よ…、…?」
突然矢部の表情が強ばる。その視線は今釣ったばかりの小魚へ…。




45 : ◆LHkv7KNmOw :2006/01/23(月) 10:31:12
『助けて、助けてよ〜…殺さないでよぉ〜』


矢部にだけ聞こえる声で、小魚は言う。
「こっ…!殺すなって…言われても…」
「…ヤベタロー、どうした?」
周りの後輩たちが珍しいものでも見るかのような目で矢部を見つめた。
その時、入江が魚のたくさん入ったバケツを抱えてやってくる。それを矢部の目の前にどん、と置いた。
矢部の顔が少し引きつった。魚の声が、耳に響く。


46 : ◆LHkv7KNmOw :2006/01/23(月) 10:32:47

『後生だから、逃がしてくれー!』

『私のお腹には赤ちゃんが居るのよ…子供を産ませてよ…』

『畜生、彼女に手を出すな、俺から先に殺せ!』

『うう、済まない、父さんを許してくれ…』

『いたい、いたいよう…』

『お母さ〜ん…』


「うわーっ!!こんなの生き地獄だぁあーっ!!」
急に頭を抱えて騒ぎ出す矢部に、周りはぎょっと目を見開いた。
「入江くん、逃がしてやってよ〜!!」
「逃がすったって、ここ釣り堀だぞ!?てゆうか何で泣いてんの?」
それでも矢部は「逃がして」と懇願し続けた。入江は訳が分からなかったが、泣かれてしまっては仕方がない。
渋々魚を池に戻した。散り散りになって泳いでいく魚を、あ〜ぁ、といった顔で見送る芸人たち。

只一人、矢部太郎だけは笑いながら手を振っていたが。
「お礼なんて、いいよぉ〜、へへへ…」
あー、ちょっとイタい人だなあ、矢部さんて。
という声が聞こえたけれど気にはしなかった。


この日から、矢部が暫く魚料理を食べられなくなったのは、言うまでも無いかも知れない。



47 : ◆LHkv7KNmOw :2006/01/23(月) 10:36:57
矢部 太郎(カラテカ)
石 …パープルジルコン【石言葉は”おしゃべり”】
能力…知性を持つ生物(外国人はもちろん動物や鳥、虫など)と会話ができる。
 ただ、相手が日本語を喋り出したり矢部が相手側の言語を用いだすのではなく
 石が言葉や仕草を翻訳して互いの意識に伝達する形になっているので、
 まわりからは危険な人に見えるw
条件…人間以外の相手に能力を使った場合、後遺症で十分〜二十分ほど
 相手の性質が移って抜けなくなる。
(犬だったら臭いをやたら気にしだし、蛇なら寒い所で動けなくなる)


以上です。本編と殆ど関係ないので番外編と言うことで…

48 :名無しさん:2006/01/23(月) 13:03:27
いったん保守age

49 :名無しさん:2006/01/24(火) 00:00:05
保守

50 :名無しさん:2006/01/25(水) 00:10:08
保守

51 :名無しさん:2006/01/25(水) 01:28:25
乙です!
◆8zwe.JH0kさん
阿部さんナイス!それに比べてQ太郎はなぜ気づかない…
ピースの掛け合いは面白かったです!
佐久間さん…全部を理解して初めに考えることが「あ〜良かった」って…どこまで純粋なんですかw

◆TCAnOk2vJU  さん
徳井さんの能力は面白いですね〜そういう風に使うんですね。
福田さんの能力はどんななのか楽しみですw

◆LHkv7KNmOw さん 
魚からしたらそうですよね〜…
しかし傍から見たら近づきたくない人ですねw

52 : ◆mXWwZ7DNEI :2006/01/25(水) 17:23:27
もう終わってしまった某番組で番外編投下させていただきます
メインはチュートリアルです


53 : ◆mXWwZ7DNEI :2006/01/25(水) 17:26:07

ONE for エロス ALL for エロス

某有明のスタジオの楽屋にて
集合時間は11時。
大阪から毎度通う2人はいつも早めに到着し楽屋でおもいおもいの時間を過ごしていた。
「極上のエロスやぁ〜」
そう呟く徳井が見てるのはエロ本でも何でもなくTVのニュースでやっているどこかの祭りの風景。
「はぁ〜」
ちらっと横目で徳井を見てため息をつく福田。
「お前な?最近やたらとエロスエロスって真昼間から勘弁してや。」
「お前かて巨乳巨乳真昼間から言うとるやんけ!」
「アホ!巨乳好きは常識じゃ!」
ついていけへんとさっき東京駅で買ったおはぎを福田は口に押し込めた。

54 : ◆mXWwZ7DNEI :2006/01/25(水) 17:26:48
「ん?ええこと思いついた。」
「常識」「おはぎ」という言葉で何かひらめきニヤリとする徳井。
そしておもむろにポケットから石を出した。
瞬間嫌な予感がする福田。これから徳井がやろうとしていることは幼馴染の勘・・・
・・・否この流れからいってだいたい察しがつく。
「ちょっやめぇ!なに考えとんねん。」
時すでに遅く石は光を放ち始めた。
「よっしゃ!いくでぇ!『おはぎはエロスです!!!』」
チャチャーーーーーーン!!
少なくとも福田にはいつもの効果音が聞こえた。

55 : ◆mXWwZ7DNEI :2006/01/25(水) 17:27:20
おはぎ自体の見た目は全く変わっていない。
ただ何かが違う・・・
そう、おはぎを見てると何故かムラムラしてきた。
「うわっやってもうたぁ」
甘いものは苦手なのにたまたま気分でおはぎを買ってしまった自分を軽く恨んだ。
慣れないことはするものではない。
「おはようございます!・・・てあれ?」
そろそろ11時。人が集まりだす頃だ。真っ先に楽屋にきたのは綾部。
「先生!今日も気合入ってますね!エロスの台頭『おはぎ』をわざわざもってきて
 本番前に眺めるなんて!いやぁ〜さすがおはぎ!もうオーラが違いますよねぇ。」
おはぎを見て興奮する綾部。
徳井は満足そうに微笑み、福田はあきれ返った。

56 : ◆mXWwZ7DNEI :2006/01/25(水) 17:27:55
「でも油断するのはまだ早いでぇ。綾部はあれは素かもしれんやろ。
 又吉来んとホントにおはぎはエロスなものになったのか証明できひん。」
興奮している綾部を尻目にひそひそと2人で話していた。
するとタイミング良く又吉も到着した。
あの又吉がどんな反応をするのか期待に満ちた目で徳井は見ている。
福田もなんだかんだ言って少し興味があるのか又吉を気にしていた。
しかし又吉は挨拶して特におはぎのことは触れずに着替え始めた。
「なんや、もう効果が終わってしまったんか。」と安心やら残念やら思っていた時、福田は見てしまった。
又吉の頬が赤く染まっていることに・・・
そんなこんなで打ち合わせも終わり本番が始まって今日も有明に「エロスです!!」の声が響き渡る。
ただエロスなものとなったおはぎは誰も手をつけずに楽屋でエロスオーラを放っていた・・・

そうして1日5回のリミットをすべてしょうもないものをエロスな物にかえることに
消費していく徳井だった。

57 : ◆mXWwZ7DNEI :2006/01/25(水) 17:29:15
以上です
改行をきにしすぎてやたら細かく分けてしまったのは勘弁してくださいorz

58 :名無しさん:2006/01/25(水) 18:19:27
>>57
乙!

徳井ww

59 :名無しさん:2006/01/25(水) 18:38:01
◆mXWwZ7DNEI
乙です!
徳井さんらしい能力の使い方ですね。面白かったですw

60 :名無しさん:2006/01/25(水) 18:42:55
>>57
乙です!
題名がイイw

61 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:15:04
前スレ >>415-419 の続き

【21:35 都内・某TV局(美術倉庫)】

不意に緑色の亀裂から腕が伸びてきたかと思うと、その手は川元の襟首を掴む。
川元に抱えられた小沢は相変わらず身動きを取る事が出来ず、腕が川元ごと己を亀裂の方へと引き込んでいくのを止める術がない。
もちろん、この墓地のどこかにいるだろう井戸田や他の芸人達に、助けを求める事も叶いようがなく。
「………っ。」
能力を使ったせいで顔色の悪い川元が亀裂に飲み込まれる間際にぎゅっと目を閉じた、次の瞬間。
小沢達は赤い亀裂から墓地とは異なる空間に引っ張り出されていた。

その視界の急激な変化に戸惑っている最中にも川元を掴んでいた手が離されたようで、ごとりと二人は床に落ちる。
ここは屋内だろうか。何やら木製の物体が多数収められており、少し木材と埃っぽい匂いがするけれど。
「ご苦労。」
痛ぇ、と思わず小さく呟く川元に、頭上から彼を掴んだ腕の主の短い声が掛けられた。
「ついでで悪いけど、早速此処も閉ざしてくれるかな? 鬱陶しいバッタが居るんでね。」
「……僕の役目はこの人を捕まえる事、だけじゃないんですか?」
続いて投げかけられる言葉に、川元は床に座り込んだままいつものような抑揚のない口調で返答する。
一度チラリと小沢の方を向き、そして見上げられた川元の目線の先にいるのは、土田。
川元が携帯で送った合図に応じ、墓地とこの場所とを結ぶゲートを開んで彼らを呼び寄せた、張本人である。

「だから悪いけど、と言っているだろ。石を使えるほど心の力がないのだったら、黒の欠片を飲めばいい。幾らでもくれてやる。」
何故この二人が? というよりも何故自分がこんな目に? 床に転がされたままそんな考えで頭がいっぱいになる小沢の存在を無視するように
土田は近くにあった背もたれのない椅子まで歩いていきながら、川元に対し少し苛立ちの混じった口ぶりで告げ
それとも、と付け加えた。
「お前の大事なオトモダチ連中が揃って『白』の連中への鉄砲玉に使われても良いんだな?」

62 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:18:17
「……それは脅迫、ですか。」
緩慢な仕草で立ち上がり、ボトムに付いた埃を手で払いながら川元は土田に答える。
ボソボソとした口調の彼にして珍しく、露骨にトゲのある口ぶりで。
「…そう捉えて貰っても構わねぇ。」
そんな川元の態度には構わず、椅子に腰掛けて大仰に足を組んで。少なくとも、こちらにはその権限があるからな、と土田は薄く笑った。
しかし目だけは笑っていない、土田のその表情に川元はしょうがないですねと言わんばかりに軽く肩を竦める。

「……まぁ、僕としてはあいつらが無下に扱われようが別にどうでもいいんですけどね。」
逆にそっちの方が、この『白』と『黒』のくだらない争いから離脱できるんだから。
続きはさすがに口には出さないながらも、そうぼそっと呟きながら川元は右腕を目線の高さまでもたげた。
その指先には彼の石、ウンバライトと同じ赤い輝きが点っており、その光は腕の動きに従って虚空にスクエアを描く。
「……この空間を、閉ざせ。」
川元がそう命じると同時に空中に描かれたスクエアはストンと床に落ち、小沢の動きを封じた時と同じように拡大していけば
一辺が5mほどになった所で今度はそれぞれの角から床から垂直に紅い光が伸びはじめた。
やがて天井近くでも赤い柱の先端を繋ぐように正方形が描かれ、またたく間に倉庫の中に三人を内側に包む立方体が出現する。

「……これで良いんでしょう?」
「…済まない。」
赤い立方体が作られたのを目で確認し、ぼそりと呟く川元に今度は先ほどとはうってかわった穏やかな口調で土田は声を投げかける。
その変貌ぶりにフン、と川元は苦しげながらも小さく鼻で笑った。
「……それじゃ小沢さんの方を解きますんで、後はどうぞご自由に。」
そう告げ、力尽きるように川元が膝から崩れ落ちるのと同時に。
川元のウンバライトの力によって閉ざされていた小沢の全身の感覚が急速に取り戻されていった。

63 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:20:07

「一体全体、これは…どういう事ですか。」
感覚が戻った、と察すると同時に両手を床について小沢は身を起こし、立ち上がる。
「石は、渡しませんよ。」
土田に問いかけながらも無意識に付け加えられる言葉は、『白のユニット』の人間として石を狙われ続けた末の口癖みたいな物だろうか。
ボトムのポケットからアパタイトを取り出し、握りこむ小沢のその動作に、土田はふっと苦笑を浮かべた。
「…安心しろ、そのつもりで呼んだンじゃない。」
椅子に腰掛けた何様だと言わんばかりの体勢のまま、土田は小沢へ落ち着くよう手で仕草して。
「今日は…個人的に。そう、土田 晃之一個人としてお前…君に…小沢 一敬くんに頼みたい事があるんだよ。」
「その割には随分と乱暴な手を使いますね?」
妙に改まった口ぶりで告げる土田に、小沢はすかさず言葉を返した。
それも当然だろう。今さっきの土田と川元のやり取りを聞く限り、明らかに二人は何かしらの上下関係こそあれ手を組んでいるようだったし、
そうして考えると、川元が墓地の通路から外れるよう小沢に促したのも、そもそも川元が小沢と組もうと話しかけてきた事も。
全て何かの策略に則っての事に思えてならない。

「不作法なのは承知の上だ…それに、しかたねぇだろう。『黒』のやり方に馴染んだ身じゃ、『黒』の流儀でしか物事を運べない。
 人に手助けを頼もうにも、何せ回りには『黒』の連中しか居ないんだしな。」
ふぅ、と一つ息をつき、土田は余りにもあっさりと己の所属する組織…小沢のそれであるそれと相反する『黒』の名を口にする。
そのさりげなさに思わず息を呑む小沢に構わず、更に、なぁ? と付け加えるように土田に同意を求めるがごとくに呼びかけられ、
うずくまっていた川元は顔をもたげると、余計な事を、とでも言いたげに土田をにらみ返した。

64 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:21:41
つまりは川元もまた『黒』の側の人間だと言外に告げながら、土田は返ってくる視線には構わずにフフと笑い、
小沢の方へ向き直すとそのまま言葉を続ける。
「それに、これは俺達『黒』のみならずお前達『白』にも関係のある事だからさ。わかって貰えると信じてるんだけどな。」
「……………。」
柄にもない真剣な話を切り出そうとしているからか、それとも他の要因からか。どこか芝居ががった印象がない事もないけれど。
一応は敵対するつもりがない事を示す、土田の言葉。
その一方で小沢の手の中からは解けるどころかいっそう増す彼の警戒心を反映するかのように、アパタイトの淡い輝きが周囲にこぼれおちる。

「今更信じてる、だなんて随分勝手な物言いです事で。」
いつもそっちが何をしているのかわかっていて言っているんですか? それは。
眉をひそめ、石から光を放たせながら。小沢は土田にそう言った。
「そもそも、僕に頼みがあるなら堂々とすればいいじゃないですか。」
土田を見据える小沢の視線が、一瞬彼らを包む深紅の立方体に向けられる。
「こんな真似までされて、素直に話を聞けると思いますか?」
聞ける筈がない、とくぐもった声が徐々に力強さを帯び、それに比例するようにアパタイトの青緑の輝きも強まっていく。

「だから僕の答えはこうです。『そんな事よりパーティ抜け出さない?』」

土田の返答を待たず、小沢は言霊を紡いで、パチリと指を鳴らした。
アパタイトの放つ光が小沢の身体を包み、ここではない場所へと小沢を運ぶべく、秘めた力を発揮する……
……筈だったのだけど。

65 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:24:32
「……っ!」
いつもの感覚と異なり、不意に全身に衝撃が走って、小沢は思わず声にならない呻き声を上げた。
まるで壁に叩きつけられたかのような痛みに続き、固い床に投げ出されるような感覚を覚え。
間もなく青緑の輝きが視界から晴れれば、彼の倒れている場所は石を使う直前に立っていた場所から数mも離れてはいない。

「なに…これ…」
「逃げようとしても無駄だよ。」
再び床に転がる羽目になり呆然としたように呟く小沢に、さっきより少し遠くに見える土田が声を掛けてきた。
「この立方体の中は今、川元くんが外界から『閉ざして』いるからね。外から中に入れないし、中から外に出る事もできない。」
傍らの川元の方にまた視線をやり、土田は小沢に説明する。
その言葉を耳にしながら何とか再度立ち上がり、姿勢を整えると小沢はふぅと一つ息を吐いた。
そういえば、先ほど川元が石を使った際に彼は『身体の感覚を、閉ざせ』と命じていた。
そしてこの自分達を包む立方体を作り出す時も『閉ざす』よう、川元は口にしていたはずで。
……彼のウンバライトは何かを閉ざす力を秘めている、という事か。
まだテレポートに失敗した時の痛みが引かず、幾らか頭がぼんやりする中で小沢は何とかそう判断する。

「って事だから、君は否応なしに用件を聞かないといけない訳だ。」
まぁ、こっち2人を倒すって選択肢もあるけど。好きじゃないだろう? そういうのは。
土田は小沢にそう言うと、組んでいた足を解いて自分の方へ近づくように手招きをした。
確かに川元が石を用いた反動で疲労してはいても、この場にいるのは『黒』が2人に『白』が1人。
戦いになれば2対1となるのは自明の事。どちらが勝つにせよ、小沢も無事ではいられないだろう。


66 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:26:10
それでも先制するべきか、否か。
考えながら一歩土田の方へと足を進める小沢の耳に、彼の内心に気づいているのかいないのか。土田の言葉が届く。
「来いよ。警戒するのは勝手だし、手荒な真似をした事は素直に謝る。でもこれ以上は何もしない。
 今夜は『白も黒も関係ない』って設楽さんと約束してンだろ?
 だから今夜、俺も『白も黒も関係なく』お前に頼みがしたいってだけなんだから。」
「………っ?」

「つまりはさ、俺と一緒に『白い悪意』…奴のホワイトファントムの弱点になるような石を探して欲しい。そういう事。」
重ねて届いた言葉に、小沢はハッとして土田の方を見やり、彼の手より相変わらず漏れるアパタイトの輝きからもスッと警戒の色が、消えた。



67 :Phantom in August  ◆ekt663D/rE :2006/01/25(水) 22:28:18
今回はここまで。
真冬に真夏の話を書くのは何とも妙な感じw

68 :名無しさん:2006/01/25(水) 23:23:13
乙です。
いつもながらクオリティ高いですね。続き楽しみにしています。

69 :名無しさん:2006/01/26(木) 01:38:16
◆ekt氏キタ―(゚∀゚)―!!

70 :名無しさん:2006/01/26(木) 09:26:23
◆ekt氏 GJ!!

71 :名無しさん:2006/01/26(木) 23:04:28
◆ekt氏
乙でした!

72 :名無しさん:2006/01/27(金) 15:35:39
下がっているのでageますよ

73 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:41:20
前スレの続き〜

夜風が強いな。と川島は思った。
風に乗って、ぎすぎすとした気配も摩天楼という狭い空間に舞っている。
掃除されていないこの場所には枯れ葉が散乱している。
それが吹き荒れる風の不規則な動きを明らかにした。上空に一気に舞上げられたかと思えば、
くるくると小さな竜巻のように回転し、力なく元の場所に落ちてくる。
気分が悪い。一刻も早く此処から立ち去ってしまいたい、そんな感じだ。
「終わりにするぞ…。今度こそ。全部、や」
目はしっかりと目の前の人物を見据えたまま、後ろで顔に飛んでくるゴミと格闘している田村に告げる。

何でこうなったんだ。と田村は思った。
目も開けていられないほどの突風に、思わず身体を庇うように俯く。
細く目を開き、空を見上げると、厚い雲が見たこともない早さで渦を巻いて移動している。
(俺、まだ死にたないんやけど)
不吉極まりない。それでも何故が、田村の中には妙な安心感があった。
威嚇する凛とした態度で、向かってくる風にも憶さないその背中を風除けにしつつ、思った。
自分よりもずっと前から、幾つもの修羅場を抜けてきたのだと聞いた。
川島が本気モードで「終わりにする」と言っているのだから、絶対大丈夫なんだ。



74 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:45:42
ふと、川島の表情が僅かに変化した。予想外な二人の姿が飛び込んできたからだ。
蹲るように膝を着いている男と、それを心配そうに見詰めている男。
―――あの二人…!
「何でやられてんねん」
と、不思議そうに田村が言った。

向こうもこちらに気付いたのか、吉田が顔を上げ、「あっ」と声を漏らした(ように見えた)。
少し遅れて阿部もこちらに目線を向けた。何か伝えようとしている。
大変やーみたいな事を言っている気がするも、
離れている所為で、上手く聞き取れない。

「石に呑まれかけてる、早く止めないと…」
阿部がそこまで言いかけた途端、
「うるさい、余計なこと言うなっ!」
バシッ、と音がするくらいに、陣内の平手が飛んできた。
阿部は二、三歩よろけて地面に倒れ込む。

「ちょっと、何てことしてるんですか!」
一歩前に踏み出し、勇猛果敢に田村が怒号を飛ばす。正義感だけは人一倍あるだけに、今の行動を許すわけには行かない。
「あの人、前よりおかしなっとるな。ここは少し様子見て…」
川島が言い終わらない内に、真っ直ぐ駆けだした。
「…って言うてる側からオーイ!」
待て!と川島が珍しく、酷く慌てた声を出した。
「猪突猛進とかお前らしいな!」
陣内が手を振り上げた瞬間。
田村の石が独りでに光った。四方八方に広がった光はやがて一点に集まり一本の光の束になる。
主を護るための一種の「防御反射」というものだろうか。


75 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:47:02
光は振り上げられた腕に貫通するように当たった。
「あ…っ!?」
陣内の腕は時間が止まったかのように空中で止まった。ぐいぐいと引っ張ってみても動くことは無かった。

「こっちや」
自分を守ってくれた白水晶に感謝しつつ、その間に吉田と阿部に駆け寄り、力任せに二人の身体を引っ張り起こす。
初めは助けに来た事に若干戸惑っていたのか、二人は不可解な顔をして、田村に手を引かれるままに走っていたのだが、
何時しか警戒も解け自分たちの意志で走り出していた。
そして田村は見事、二人を救出し、川島の元へ戻ってきたのだった。

「はっ…やるやないか」
率直な感想が川島の口から漏れる。
「…この間は、よくもやってくれましたね」
まだ痛むのか、腕を押さえ俯いたまま、吉田が言った。
この間、というのは。いつだったか、さくらんぼブービーの二人を黒に入れる入れないで乱闘していた所を、
いきなり乱入してきた川島が止めた、というやつだろう。
「おい、今は争ってる場合や無い…」
呆れたように言う田村の言葉に被さるようにすかさず「分かってます」と吉田。

「手を組むのは、今回だけですから」
「上等」
少々の間を置くと、薄く笑って川島が返した。
「………」
その後ろで、ちらり、と田村と阿部はお互い神妙な顔を見合わせ、また目線を戻した。



76 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:48:53
「遊びにきてくれたん?あははは…」
ようやく自由になった腕をくるくる回しながら黄色い目玉を向け、狂気とはまた違った、無邪気とも取れる笑い声を上げる。
ボン、とくぐもった音と共に、近くのフェンスの網が千切れ大きな穴が空く。

「遊ぼう、遊ぼう」なんて、彼が何時も言ってくる台詞じゃないか。
散々誘っておいて、自分が飽きたら、いけしゃあしゃあと「帰っていいよ」言い放つのがいつもの陣内だ。
それなのに妙に何処かおかしいのは、何故だろう。恐怖に似たものを感じるのは。
目の前に居るのは良く見知った先輩。何かやらかしても「天然だから仕方ない」と許されていたあの先輩の姿だ。
「…まあ少なくとも、俺は許しません」

黒水晶を握り、影に潜る。
遠くにいても何も始まらない。多少の怪我は覚悟しなければ。
「…!」
陣内は舌打ちをして辺りを見渡す。夜ということもあって、川島の移動できる範囲は限りない。
(離れているとねらい打ちされるなら…)
もう一度捕まえるまで!
最初、あの公園で陣内を落ち着かせた時のように、背後からぬっと身体を出現させる。

「止めろ、触んな!」
振り向きざまに睨みを利かせ、陣内は二重人格のように口調を一変させて叫ぶ。
その声は副音声のように別の声も重なって聞こえた。


77 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:50:25
公園の時とは比べものにならないくらい大きな負の力。
瞬間的に、空気が大きく震える。
磁石の同極が近づいた時と同じ要素で、川島の身体は引っ張られるように後ろに飛ばされた。
がしゃあん、とフェンスに押し付けられる。バネに衝撃を吸収され、痛みこそ感じなかったが。
ギギ、ギ、と嫌な音を立て針金が軋む。支えていた柱が根本から折れた。身体がぐらりと傾き、フェンスと共に屋上からゆっくりと傾いていく。
はっ、と気が付いた時に見えたのは、雲や排気ガスによる澱みが無くなった、満天の星空。
“落ちている”事を理解した瞬間、身体は重力に引かれ急速に落下速度を速めた。
「っ!」
咄嗟に田村が駆け出し、届く訳のない手を伸ばす。叫び声が出ないほど驚いたのか、目の前で起こった事が理解できていないのか。

「俺は大丈夫や!心配するなー!!」
既に視界から外れてしまった相方に向けて川島も渾身の力で叫ぶ。聞こえただろうか?と思う間もなく。
川島の身体は夜の闇の中へすうっと消えていった。

耳をつんざく派手な音を立てて地面へ叩きつけられた大きなフェンス。
意地悪く吹き荒れる風に流された声。
そして、少しの沈黙。
その場にいる全員が息を呑んだ。


78 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:52:00
「か…川島…えっ、嘘やろ!?」
混乱のスイッチが入り、田村は慌てふためいた。すると、
「待って」
と、抑揚の無い口調でそう言われ、吉田に腕を掴まれる。
この短い単語の中には「うるさい黙れ」という意味も含まれているのだが。
何が待てやねん。俺の相方が落ちたんやぞ。と、田村は一向に落ち着きを取り戻さない。
まあ、それが妥当なのだろうけど。心の端で、うざいなあ、と思いつつ吉田が続ける。
「聞こえない」
彼の台詞はいつも端的だ。それほど見知った仲でもない田村には何の事だかさっぱり分からない。
「何が!」
「人間がこの高さから落ちたんなら、潰れた音が聞こえる筈でしょ」
「あーそれ分かる。“グシャー”とか“ベチャ”とかねえ」
「怖いこと言わんといて!」
こんな状況でも淡々と会話を広げる吉田と、口を開けば妙な言葉しか出てこない阿部に多少の不謹慎さを覚えるも…。
ん?待てよ?と首を傾げ、考えること数秒。一つの確信的な答えが舞い降りる。
「…音、聞こえへん…。ちゅうことはー…」

川島が落下した場所へもう一度、三人が同時に顔を向ける。
そこだけぽっかりとフェンスが引っこ抜かれたように無くなっていて。
陣内が隣のフェンスの端を掴み、屋上の端に足を掛けて下を見詰めているのが見えた。
「何処行った…」
真下には、バラバラになったフェンスのみ。
何だ何だ、とごく僅かな通行人が一度立ち止まって、避けるようにして足早に立ち去っていくだけだ。期待していた光景ではない。
川島の姿は、無かった。


79 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:53:42

あーもう。
苛々する。
イライライライラ。


『宿主さま、あなたの嫌いな物は、みんな私が消してみせます』

「え?………ううっ…!」
“声”が聞こえた瞬間、息が止まった感覚に襲われ、心臓付近を押さえて蹲る。
ムーンストーンを握っていた方の手が、自分の意志とは反して血が滲むくらいに固く握られていた。
力の入れすぎで白くなった指の間から微かに光が漏れている。
開こうにも何か強い力で押さえられているようで。
ざあっ、と下から吹き付けるつむじ風が起こると、足下のコンクリートに僅かな亀裂が入った。
片方の手で閉じられた指をこじ開ける。
「何…?」
手の平を見た瞬間、驚愕の表情を浮かべた。
石が、手の平に根を張り、半分ほどめり込んでいた。
それはどんどん手の中へと沈んでいき、ついには完全に身体の中へスッと入り込んでいった。
手の平には傷一つ無く、何事も無かったかのようだ。
陣内は目を見開いて、手の平を凝視した。



80 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:54:50
身体の中で起こった異変には、直ぐに気付いた。
一つひとつの機関の感覚がなくなり、頭の中が真っ白になっていく。

その様子のおかしさに田村たちも感づき、一歩たじろいだ。
「…俺らさあ…、止められるんかなぁ…この人」
「さあ」
「嘘でもええから“はい”て言うてくれや…」
絶え間なくビリビリ震える空気に、もはや背を向けて逃げ出したい気分だった。



――今まで生きてきて、階段がこんなに憎く思えたことはない。
「あいつ、天然やからって何しても許して貰える思うなよ!殴ってでも謝らせたる!」
「あっ、礼二…ちょお待て。昨日の酒戻しそう…」
「うおーもう何やねーん!」

剛と礼二、屋上まであと二階。


81 :歌唄い ◆4.Or.2D2Hw :2006/01/27(金) 19:57:25
今回はここまで。
最初の予定と比べて、随分たらたらと長くなってしまった。

82 :名無しさん:2006/01/27(金) 21:55:18
歌唄い氏もキタ――(゚∀゚)――!!

83 :名無しさん:2006/01/27(金) 23:01:41
歌唄い氏乙です!
陣さんどんどんえらい事になってますねー今回もハラハラさせて頂きました!
 

84 :名無しさん:2006/01/28(土) 22:47:15
保守&書き手さん乙

85 :名無しさん:2006/01/28(土) 23:19:26
乙です!
陣内の体内に入っていきましたね…急げ中川家!
川島も気になります。頑張ってください!


86 :名無しさん:2006/01/29(日) 22:23:17
保守

87 :名無しさん:2006/01/30(月) 11:43:29
保守

88 :名無しさん:2006/01/31(火) 01:50:13
さまぁーずに人の心が読める能力があったら
芸人やめちゃう

89 :名無しさん:2006/01/31(火) 15:52:30
保守age

90 :名無しさん:2006/01/31(火) 17:36:33
うふ

91 :名無しさん:2006/02/01(水) 07:14:37
保守age

92 :名無しさん:2006/02/01(水) 14:39:18
<<88 どん・マイケル。「If」話だから気にするな。
伝われ〜。

93 :名無しさん:2006/02/02(木) 11:19:53
保守

94 :名無しさん:2006/02/02(木) 15:51:57
hosyu

95 : ◆TCAnOk2vJU :2006/02/02(木) 16:59:22
関西ローカル番組「せやねん!」の出演者が登場する
長編を書きましたので、今からプロローグ部分のみですが投下させていただきます。
メインはチュートリアルです。

96 :Last Saturday  ◆TCAnOk2vJU :2006/02/02(木) 17:01:57
 とある土曜日、チュートリアルの二人は関西ローカル番組「せやねん!」の収録のた
め、朝早く、収録の二時間前から楽屋入りしていた。
 何故二時間も前に来たかというと、この間の土曜日の収録で二人揃って遅刻してしま
い、他の出演者たちに怒られたためである。もちろん、この時間に楽屋入りというのは普
通の感覚で言えば早すぎるので、他のメンバーはまだ一人も来ていない。
 自分たちの楽屋でめいめい好きなことをしてくつろぎながら、二人は同時にあくびをし
た。
「やっぱり、いくらなんでも早すぎたかなぁ」
「そやな。まだ誰もおらへんしな」
 福田のため息混じりの言葉に答えながら、徳井はいつものようにズボンのポケットに入
れている自分の石を取り出した。
 徳井の持つ石はプリナイトと呼ばれるもの。その透き通ったグリーンの色は、果物のマ
スカットを連想させる。つい先日徳井はこの石を手に入れ、能力に目覚めたのであった。
 部屋の光に透かして石を眺めている徳井を見て、福田は再びあきれたようにため息をつ
いた。
「ほんまに好きやな、その石」
「はは、そう見えるか」
 徳井は笑いながらそう返し、手に持った石をもてあそび始めた。
 福田はそれをしばらく見つめていたが、自分の鞄の中をごそごそとやりだし、自分も徳
井が持つのと同じような石を取り出した。色は徳井と同じグリーンだが、白いふが入って
いてまろやかな肌触りを持つ石である。

97 :Last Saturday  ◆TCAnOk2vJU :2006/02/02(木) 17:03:42
 徳井は福田が石を取り出したのを見て、お、と言った。
「お前の石な、どんな石かわかったで」
 え、と言う福田に、徳井は言葉を続けた。徳井はインターネットを駆使して、自分の石
や福田の石のことも調べてきたらしい。
「名前はヴァリサイト。物事を冷静に見つめる助けを促すて書いてあった。まあお前には
ピッタリの石なんちゃうか?」
「どういう意味やねん。俺、そんなに冷静でないように見えるんか」
「たまにテンパってる。ツッコミやのにな」
 徳井がそう言って笑うと、福田はうるさいなぁ、と言いながら、さほど不快ではない様
子だった。こういうやりとりは二人の間では日常のことである。幼なじみだから、遠慮な
くこういうことが言い合えるというのもある。そんなやりとりを終えた後、福田は自分の
石に視線を落とした。
「そやけど、まだようわからへんなぁ。お前の能力のことも、俺のこの石のことも」
「まあな。俺も自分の能力は把握したけど、この石が一体何なのかまでは掴めてへん」
 石はある日突然、二人の元へやってきた。徳井は道端に落ちていたのを拾い、福田は
ファンからのプレゼントとしてもらったのである。そこから徳井は、二人の楽屋に突然
襲ってきた男を撃退するのに石の能力を使ったことで、能力に目覚めたのであった。
 無論、二人とも最初は石を気味悪がった。あの能力を使えたのは現実的に考えて有り得
ないことであったし、目の前で起きたこととはいえ、とても信じられる話ではなかったか
らだ。
 しかし捨てる気だけはしないという、二つの異なる気分に挟まれた末、二人は今もなお
石を手元に置き続けている。徳井はズボンのポケットに、福田は小さな袋の中に入れて常
に鞄の中に。徳井はそのせいで、ズボンのポケットの中に手を入れて石を触る癖がついて
しまったらしい。

98 :Last Saturday  ◆TCAnOk2vJU :2006/02/02(木) 17:04:41
 石の能力に目覚めてから、徳井は自分の石のことについて調べ、また自分で使ってみる
ことで能力を把握した。彼はどうやら、人の記憶や何かの定義、常識などを自分の思うと
おりに書き換える力があるようだった。
 いつだったか飲み会で、とある芸人に冗談を言われ、ズボンのポケットにある石を握り
締めながら「お前俺のこと、なんも知らんのとちゃうか」と言った瞬間、その芸人は徳井
に向かって「誰?」と言い出し、他の芸人が徳井のことをどれだけ話しても、全く思い出
さないという異常な事態が発生したことがある。
 徳井はこれは石の能力だと思い、もしかしたら彼は一生自分のことを思い出さないので
はないか、と危惧したが、何時間かするとだんだんと記憶が戻ってきていた。効果はいつ
までも持続するわけではないということも、ここで分かった。
 一方相方の福田は、石を持ってはいるものの能力の類を発揮できたことがない。福田は
それでもいい、と常に言っていた。それにこれはファンからもらったものなのだから、そ
んな変な魔力が封じ込められているわけがないと。そう何度も何度も語る様子は、まるで
福田が自分自身に言い聞かせているかのようにも見えた。
「まあ、別にええんちゃうか。知っても知らんでも、生活に支障はなさそうやし」
「まあな。今んとこ何も起きてへんしな」
 それは事実だった。徳井が能力に目覚めたあの時以来、二人の身の回りで変わった事件
などは起こっていなかった。二人がそう言って、安心するのも当然といえた。
「……おっと、もうそろそろスタンバイする時間ちゃうか」
「ほんまやな。ほんなら行こか」
 いつの間にか時間が過ぎていたことに気づき、二人は腰を上げて楽屋を出て行った。

99 :Last Saturday  ◆TCAnOk2vJU :2006/02/02(木) 17:06:19
 「せやねん!」の収録は無事に終わった。前回の遅刻に突っ込まれることもなかった。
 二人はそのことに胸をなで下ろしながら、自分たちの楽屋へ戻ろうと廊下を歩いていた
時だった。
 共演者の一人・ブラックマヨネーズの小杉が二人の前に現れたのだ。とても慌てている
様子だったので、気になって徳井は声をかけた。
「小杉、そんな慌ててどうしたんや?」
 小杉は徳井と福田に気づき、おう、と言ってから、心配そうな表情を見せた。
「いや、ちょっと……俺の持ち物がなくなったんや」
 言葉を濁すような言い方だったので、福田は首を傾げた。
「持ち物って、何なくしてん?」
「いや、それがな」
 とても言いにくそうにしている。いつもの彼からは考えられない態度だったので、徳井
は少し笑いながら言った。
「そんなに言いにくいモンて何やねん」
「ほんまや。お前キョドりすぎやぞ」
 福田もつられて笑う。小杉はまだ迷っている様子だったが、ついに観念したように言っ
た。
「……実はな、育毛剤やねん」
 その答えを聞いた瞬間、二人は笑いをこらえきれず、ぶっと言って笑い出してしまっ
た。二人の反応を見て、小杉はやっぱりなと言わんばかりに顔をしかめている。ひとしき
り笑った後、福田は言った。
「お前、そんなもんなくすて……やばいんちゃうんか」
「いや、ほんま冗談やなくてマジでやばいんやって。お前ら知らんか?」
 そう言って、小杉はとあるメーカーの育毛剤の名前を挙げた。二人はさあ、と首を横に
振り、小杉はそうか、と肩を落とした。
「実は吉田も肌に塗るクリームなくしたって言うてんねん。なんかおかしいわ」
「二人ともなくしたんか? しかもめっちゃ大事なモンやのに」
 福田が訊くと、ああ、と小杉は頷いた。チュートリアルの二人もさすがに笑うのを止
め、一緒に探したろか、と申し出た。小杉は助かるわ、と頷き、二人を自分たちの楽屋に
連れて行った。

100 :Last Saturday  ◆TCAnOk2vJU :2006/02/02(木) 17:07:53
 部屋の中には小杉の相方である吉田がいて、必死な様子で部屋の中をかきまわしてい
た。小杉が呼びかけると三人の方を振り向き、おう、と手を上げた。
「どうや吉田、見つかったか?」
「いや、全然や。鞄の中とか、全部見たんやけど」
 そうか、と言って小杉は軽くため息をついた。そんな二人の様子を見ていた徳井があっ
と思い出したように言った。
「もしかしたら盗まれたんちゃうか?」
 他の三人はその発言にはっとしたようだったが、すぐに福田がそれはないやろ、と否定
した。
「第一、盗む理由が分からへん。財布とかやったらまだしも、育毛剤と肌のクリームやで?」
「そこなんやけどな。でも、二人とも他の場所に持っていった記憶とかないんやろ?」
 徳井が訊くと、ブラックマヨネーズの二人は同時に頷いた。
「ずっと鞄の中に入れてたはずやねん。やから部屋の中を必死に探してたんやけど」
 ふむ、と徳井だけは納得したような表情を見せる。他の三人はまだ腑に落ちないといった様子で、首を傾げていた。
 その時、突然外から声がかかった。
「おい、小杉、吉田! これお前らのとちゃうんか?」
 四人はその声に反応し、びくっと楽屋の外の方に振り向いた。そこには共演者の一人で
あるたむらけんじ、通称たむけんがいつものにやにやとした顔で立っていた。徳井はため
息をつき、たむらに咎めるような視線を送った。
「もう、驚かさんといてくださいよたむらさん」
 たむらはあはは、と気にも留めていない様子で笑った。
「悪い悪い。それよりこれ、小杉と吉田のモンとちゃうか?」
 たむらがそう言って手に持ったものを差し出してきた。四人が一斉に注目し、一瞬の後
にブラマヨの二人はあっと声を上げる。

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