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もし芸人に不思議な力があったら2

1 :名無しさん:05/02/10 19:26:11
現まとめサイト
http://geininstone.nobody.jp/


・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってます
・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドル・トリップを使用する事を推奨
 <トリップの付け方→名前欄に#(半角)好きな文字(全角でも半角でもOK)>
・既に使用されている石、登場芸人やその他の設定今までの作品などは全てまとめサイトにあります。
書く前に一度目を通しておいてください。

2 :名無しさん:05/02/10 19:29:31
前スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1099502933/

以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能。
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。

・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている
 (ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られた
 かりそめの魂であり、石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。

・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。

・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「白いユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。)


3 :名無しさん:05/02/10 19:39:53
乙!

4 :名無しさん:05/02/10 20:29:26
乙です。もう新スレかー早いもんですね。

5 :名無しさん:05/02/10 22:19:53
保守兼ねて新スレ乙!

6 :名無しさん:05/02/10 23:00:25
スレの消費が早いなー。職人さんたち新スレになっても頑張って下さい!
それと、新スレ乙!

7 :名無しさん:05/02/10 23:09:01
自分も実はホスト規制でスレ立て断念したんだよね〜
乙で〜す

8 :名無しさん:05/02/10 23:14:16
乙です!

9 :名無しさん:05/02/11 09:14:35
即死防止に乙

10 :名無しさん:05/02/11 14:32:00
 

11 :名無しさん:05/02/11 21:29:46
捕手

12 :名無しさん:05/02/12 02:26:41
即死回避ってどれだけやればいいんだっけ。
新作待ちつつ保守。

13 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:26:39
前スレ>>668からの続きです。

家城はニヤリと笑って、脇田のペンダントを引きちぎった。
「ひとつ、いただき。」
家城が石をしっかりとポケットにしまったのを見届けてから、林は品川に向き直った。
「さぁ、品川さん。」
林は一歩ずつ品川に近づいていく。
「今度はあなたの番です。」
逃げようにも、背後は壁。逃げるスペースはどこにもない。
「もう一度言います。今、石を渡してもらえれば、これ以上何もしません。」
「誰がお前らみたいな、窓際サラリーマンとオカマのコンビに石を渡すか・・・!」
「品川さん、ひどぉい!」
まだオカマキャラの抜け切っていない家城がくねくねと体をくねらせながら言う。
今や手を伸ばせば簡単に触れられるほどの距離にまで近づいてきた林は、冷酷に言った。
「それじゃあ・・・力ずくで奪うまでですね。」
林の石が光るのが見える。
この至近距離で、何回攻撃を見切ることができるか・・・あと1、2回というところだろうか。
(でも、死んでもこの石は渡さねぇ!)
品川はポケットの中の石をしっかりと握り、目を閉じた。


14 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:27:57
「品川っ!!脇田さんっ!!」


倉庫の入口の方で、聞き慣れた声がした。
「・・・庄司?」
そう、そこに立っていたのは間違いなく品川の相方、庄司。
庄司は手近にあった角材を手に、近くにいた家城の方へ迷いもなく突進する。
慌てて家城はストロベリークウォーツを握り締める。
「あぁら、怖ぁい、庄司さ・・・」
「キモいんだよ!」
家城が石の力を発動する前に、庄司は家城の腹部に角材を叩き込んだ。
「くっ・・・」
その場にうずくまる家城。
「脇田さん、大丈夫ですか?!」
脇田は惚けた状態ながらも、気力を振り絞って答えた。
「俺は・・・大丈夫、品川を・・・」
庄司は力強く頷くと、林の方へ向き直った。
「庄司さんもわざわざやられに来たんですか…」
不敵に笑う林の周りで風が舞い上がる。
「庄司しゃがめ!!」
品川の叫び声に、庄司は間違いなく反応した。
庄司の頭上をドラム缶が飛び去る。
庄司の代わりに品川が攻撃を見切ったのだ。
「邪魔しやがって!」
林は品川に風を打ち込む。
「くっ…」
「品川!!」
品川も、限界が近い。
庄司のために使った力と、林からの攻撃で体はぼろぼろだ。
ギリギリで自分の意識だけはなんとか保っている。

15 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:29:52
「家城!しっかりしろ!!庄司さんを止めろ!」
林が叫ぶ。
「わかってるわ・・・」
家城が女声で答え、そして腹部を押さえたままながらも立ち上がり、庄司を見つめる。
「家城の目を見るな・・・!」
脇田が弱々しくだが、はっきりと言った。
「黙れ!」
林が今度は脇田へと風を打ち込んだ。
しかし、それに最初のような威力はない。林も限界に近づいているのだ。
それでも、脇田を黙らせるには十分すぎる威力だった。
「脇田さん!!」

(俺に力があれば・・・力があれば、品川も脇田さんも助けられるのに・・・)

庄司の足元で何かが強く輝いた。
庄司は引き付けられるようにそれを拾い上げた。

この感覚はなんだ?
俺は、昔からこの石を知っていたような気がする。
この石は、俺に力を与えてくれるような気がする・・・

庄司は無意識のうちに、強く祈っていた。

(お前が何者でも構わない・・・俺に力をくれ・・・二人を助ける力を!!)

モルダヴァイドが、目もくらむほどに強く輝いた。

庄司の意識が薄れるとともに、体の中に力が漲る。
自分が何をしているのか、何のためにここにいるのか、そして自分が何者なのかさえもわからない。

そして、庄司は自分の意識を手放した。


16 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/12 03:34:10
今回はここまでです。

前回感想を下さった皆様、ありがとうございました。

林さんの能力について質問がありましたが、
すごく個人的な思い入れなのでわかりづらいと思うのですが、
ルミネでゲームをやっていたときに、ほかの芸人の皆さんは動くと髪もなびいたりするのですが、
林さんだけはぴっちり7:3状態が崩れなかったので
「あの髪はどれくらい風が吹いたら崩れるのかな・・・」
と思ったことがきっかけです。くだらなくてごめんなさい。

17 :名無しさん:05/02/12 07:16:08
シャロンさん乙です。
なかなか面白い石の選び方ですね〜。ちょっと笑ってしまいました。
林さんなかなか髪型変わらないですもんね。

18 :名無しさん:05/02/12 20:29:17
シャロンさん乙!
暴走庄司復活キターー!?

19 :名無しさん:05/02/13 00:20:07
乙です
なんだかすごいことになってきましたね〜・・・
庄司は次は暴走してほしくないですが・・・
頑張れ庄司!

20 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 00:56:19
前スレ >>587-597 の続き

「ったく、何なんだよ・・・。」
精神力を使い果たして床に寝そべっていたために、不運にも巻き上がった砂塵を目一杯浴びてしまった
野村がゆっくりと起き上がってペタリと座り込み、呆然と呟きを漏らす。
バイオレット・サファイアの力を解除し、機動隊の衣装を消せば衣服に付いた埃は払えるけれど
口に入ってしまったそれはどうしても拭えないらしく、何度も唾を足元に吐いている。
そんな彼の目前にあるのは、不自然な角度で地上から伸びる3本の太い鉄骨と
ほんの少し前までは天井だったのだろううねった鉄板の切れ端。
下にめくれるようにこじ開けられた天井からは、午後の太陽の光が射し込んでいて
それらを照らしだしている。

「・・・島田、大丈夫か?」
ちょっとした前衛芸術のようなその光景に苦笑いをするしかないらしい野村の傍らで
両脚を床に付け、立ち上がる島田を見上げて磯山が問うた。
「ん・・・僕は大丈夫。磯山くんこそ腕とか大丈夫だった?」
天井から落下してきた島田を両腕のみならず全身を使って磯山は受け止めたのだ。
いくら細身で体重も軽い島田とはいえ、磯山の腕に伝わった衝撃は大きなモノだっただろう。
不安げに問い返す島田に対し、磯山はへらっと笑って彼に応じた。
「あぁ、大丈夫大丈夫。」
石の力で腕力とか強くしてたし、と付け加えてぶんぶん腕を振り回す磯山に、島田は安堵の笑みをこぼす。

しかし。
「・・・・・・・・・。」
虫入り琥珀と黒珊瑚のネックレスを床から拾い上げる小沢の顔には笑みは浮かんでいなかった。
床に刺さった鉄骨の根元付近に、血が飛び散ったような痕や人の身体の一部のようなモノは見られない。
ただ、サビの破片とおぼしい細かな物体が幾つか散見されるだけ。
天井から落ちた島田は無事にキャッチされた事だし、怪我人は出なかった・・・のだろうけども。
沈痛げな小沢のその表情は他の3人に比べると異様なように映る。
「あかおか・・・くん・・・・・・」

21 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 00:57:22
「小沢さんっ!!」
ぽつりと小沢が人名とおぼしい単語を口にしようとした、その時。
聞き慣れたがなり声が聞こえ、はっと小沢は顔をもたげて声の上がった方を向いた。

ぜーはーぜーはーと荒い呼吸を繰り返しながら、そこにあるのは小沢の相方、井戸田の姿。
「潤・・・・・・。」
「一体何があった! 相手は! 誰も怪我とかしてねぇだろうな!」
潤さん、遅いッスよ! などと野村が上げる声など一切無視し
井戸田は真顔でずんずんと歩み寄ってきて、立て続けに小沢へと問う。
そのさなかに4人の姿をチラッと見やり、どうやら誰も重傷を負ってはいないだろう事を察すると。
「大丈夫なら、さっさと逃げるぞ。凄い音がしたんだ、人が来て厄介な事になる!」
「・・・駄目だよ、潤。」
乱暴な調子で言葉を続ける井戸田を、小沢は静かに制した。
「赤岡くんが、まだ・・・」
戻ってきていない。だから、ここから離れられない。そう真面目な調子で告げる小沢に対し。

「えっ・・・アカオカって、誰ですか?」
島田がキョトンとした表情で、どこか無造作に問いかける。
まさか彼の口からそんな台詞が聞けるとは思わず、小沢は一瞬言葉を失った。
「天井が落ちた隙に逃げ出した黒の側の奴の事だったら、別に放っておけばいいじゃないですか。」
「そうっスよ。小沢さん、気を使いすぎじゃないですか?」
そんな小沢の内心など気付ける筈もなく、憮然と言葉を続ける島田に同意するように磯山も口を開く。

「な・・・っ、みんなこそ何を言って・・・赤岡くんだよ、島田くんの相方の赤岡典明・・・。」
あまりにも当然のように言い放つ2人に対し、慌てて説明しようとする小沢だったが
「小沢さん、熱でもあるンですか? 島秀はピン芸人っすよ?」
即座に野村が告げる一言に再び小沢は言葉を失った。

22 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 00:59:15
・・・前の時と、同じだ。
小沢が思い出す『前』というのは、江戸むらさきの2人の石が目覚めたきっかけとなったあの夜の事。
あの時島田が虫入り琥珀を用いた事で、井戸田も野村も磯山も彼ら2人と会った事を忘れてしまっていた。
その事を覚えていたのは、小沢のみ。
『初めてですね。あの琥珀の力が作用しなかった人は。』
あまりの珍しさに発せられたそんな言葉をつい先ほども小沢は聞いた筈だった。
「・・・・・・・・・。」
ギュッと眉を寄せ、小沢は右手に収まっている黒珊瑚と虫入り琥珀に目をやった。
間近で見る琥珀は淡い蜂蜜色の輝きを発しており、以前と同じように強い魔力を秘めているように思える。
その琥珀の内側に封じられている黒っぽい虫の死骸が小沢には今、長身の男の姿に見えるような気がした。
小沢に思い出されるのは、その男が消失する直前に彼に向けた、穏やかな眼差し。
それが何を意図していたのか、小沢には何となく察せたような気がして。

所持者に関する記憶が失われ、存在も消され、その分を異なる記憶で補完されても。
赤岡の石である黒珊瑚はまだ輝きを失ってはいない。だから、何とかなるかもしれない。
その想いから、小沢は強い調子で井戸田に頼んだ。
「・・・お願い、潤さん。とにかくしばらくはここに人が来ないようにして!」
厭だから。石を巡る戦いで本当に取り返しの付かない目に遭う芸人が現れるなんて。
しかも、自分の目の前で。そんな事、それこそ認めたくなんかない!

「・・・何を考えてるんスか? ったく、しょうがねぇな。」
まったく意味が分からないなりに、それでも小沢の真剣な様子は伝わったようで。
井戸田はしぶしぶと首を縦に振り、シトリンに意識を集中させる。

「今の騒ぎで人がやってくるなんて、アタシ認めない!」
キーワードを口にすれば、輝きを放つシトリンから山吹色の光が波紋が広がるように周囲へ走っていった。
光の輪は工場だけに留まらずその外側の市街地にまで広がっていき、
人々の関心を工場で響いた物音や衝撃から逸らしてくれるのだろう。
「ついでに・・・こんなドデカイ器物破損なんて、アタシ認めないっ!」
返す刀でもう一度シトリンを輝かせれば、地面に落ちた鉄骨や垂れ下がる鉄板が光を帯び、
ビデオを巻き戻しているかのようにゆっくりと天井へと戻っていく。

23 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:01:42
「・・・・・・くっ。」
ギシギシと音を立てながら元の位置に落ち着いた鉄骨を見上げ、安堵の溜息を付く間もなく
井戸田に襲い来るのは石を使った代償。
全身の力が抜けるような感覚に、ゆらりと蹌踉めいてそのまま彼は床に座り込んでしまった。
「・・・ありがとう。」
必死になって駆けつけたばかりの状況が殆どわかっていない中で、
己の希望・・・寧ろ我が儘か・・・を聞き入れてくれた相方に感謝の言葉を漏らすと小沢は島田の方へ目をやった。
赤岡を消失から救うには、アパタイトの力だけでなくそれを補助する想いと力が必要であろう。
そしてその補助は、やはり彼でないと務められないように、小沢には思える。
故に、島田のみに向けて小沢は口を開いた。

「本当に、島田くんは赤岡くん・・・赤岡典明って人間の事、覚えてないの?」
念を押すように問う、小沢の声は僅かに震えている。
「幼なじみで・・・一緒にコンビ組んで・・・ねぇ、何か思い出せない?」
それでも島田の返答は、首を横に振る仕草だけだった。
「本当に? 全部無かった事になっちゃったの? 夏に単独やったよね? 2人で漫才やってたじゃん。
 俺、観に行ったよ。でも出だし3分の所で島田くんが間違えたのも、アレ全部俺の見た夢だったの?」
「小沢さん・・・・・・。」
徐々に声のトーンが上がる小沢の熱の入りっぷりに、磯山が困ったような声を上げた。
小沢には自分が赤岡という男に関しての記憶を失っていないという確信があるけれど
端から見れば、ずいぶんと奇異なモノに映るだろう。
何かの電波を受信したと思われても、小沢に文句は言えないかも知れない。

「じゃあさ、島田くんが本当にピン芸人だったら・・・ネタ、演ってみせてよ!」
「おーし、演ってやれよ。島秀。」
半ば涙目になりながらの小沢の言葉に、野村が島田に軽い調子で促す。
「一つ笑わせてやれば、小沢さんも少し落ち着くだろうし。」

24 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:04:17
何げに失礼な物言いの野村に、うんと頷いて返して一つ息を吸った島田だったけれど。
「・・・・・・・・・。」
そのまま急に数秒、いや十数秒とその場に立ちつくし、ピクリとしなくなった。
「ど、どうしたんだ?」
さぁっと顔色が青ざめていく島田の様子に井戸田が座り込んだまま慌てて呼び掛ける。

「おい、島田?」
「あれ・・・・・・いや、その・・・・・・」
何にテンパっているのか、磯山からも発せられる呼びかけにもしどろもどろに言葉を返す事しかできない
島田を見やり、小沢は無意識の内にぎゅっと手を握りしめた。
やってもいないのはもちろん、作ってすらいないピン芸のネタなど、出来るはずがない。
・・・これは、偽りの綻び。
「じゃあ島田くん・・・・・・舞台に出てきて『はい、どーも』の続きは何?」
今がチャンスと重ねて問いかける小沢の手の中で、黒珊瑚が輝きを増していく。
凛とした漆黒の光に呼応するように島田の白珊瑚も淡い光を放っていくけれど
それは所有者の意志とは関係なく発光であり、島田の戸惑いを増していく原因となった。
「はい、どーも?」
もう冷静に思考する余裕もなくなったのか、島田は小沢の妙な質問にも素直に小さくオウム返しして。

「はい、どーも・・・・・・ごうきゅ・・・う・・・です・・・・・・?」
改めて彼が口にする言葉には、自然と続きの語句が付け加えられていた。
たとえ記憶からはぬぐい去られていても、身体は、何年も喋り続けてきた舌は覚えていたのだろう
不意に口をついた『ごうきゅう』という単語。
「・・・・・・・・・!」
その単語に何かの引っかかりを覚えたのか島田がはっと息を呑んだ、瞬間。
白珊瑚の光が小さく弾けて島田を包み込んだ。

・・・そうだ。思いだした。
自身を覆う乳白色の輝きに、島田は声にならない呟きを漏らす。
この光を、白珊瑚の力を初めて目の当たりにしたあの時。
僕らの前に立っていたのは、僕らが助けようとしていたのは。一体誰だったかを。

25 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:05:22
「島田?」
弾けた光はすぐに収まり、廃工場の中は元の薄暗さを取り戻す。
その中で先ほどのテンパった表情とは異なる、怖れから来るそれを顔に浮かべだした島田に
磯山が不安そうに声を掛けた。
「小沢さんの意図はわかんねーけど、そんな振り回されてんじゃねーぞ、島秀。」
野村も島田に落ち着くように告げ、背中をポンと叩いてやる。
けれど島田はフルフルと首を横に振り、小沢の方へ一歩二歩と歩み寄った。

「・・・どうしよう、小沢さん。僕・・・何で・・・よりによって・・・あいつの事・・・・・・」
狼狽しきった島田の言葉と表情は、彼が思い出すべき事柄を思いだした現れ。
「あいつ・・・赤岡は・・・あの時、僕を庇って・・・」
「落ち着いて、島田くん。大丈夫。まだ間に合う。助ける事もできるから。」
元々カツゼツの悪い島田の言葉が、震える唇で一層聞き取りにくくなる。
小沢はそれでも何となく彼の言いたいだろう事を察し、コクコクと頷いてみせると
穏やかに、しかし自信を持ってそう応じた。

「・・・・・・本当ですか?」
今にも泣きそうな声で訊ねる島田に、小沢はもう一度頷いてみせる。
「島田くんが黒珊瑚に働きかけて、僕が虫入り琥珀に働きかければ・・・きっと彼をサルベージできる・・・」
違うな、必ずサルベージしてみせる。
言葉の終わりをそう訂正して、小沢は島田の顔を見上げた。
小沢の目と涙ぐんだ島田の目とが合い、数秒。わかりました、との意図を込めて島田の首が縦に揺れた。


何だか島田までも妙な事になっちまったぞ・・・そんな眼差しを向ける井戸田と江戸むらさきの2人の前で
小沢は島田と簡単に打ち合わせをすると床に虫入り琥珀を置き、その傍らに黒珊瑚のネックレスをも置く。
「・・・・・・・・・。」
手に握り込んだ小沢の石、アパタイトのもたらす力はネタ中で口にする甘い言葉の内容に応じた現象を
現実にも引き起こすモノ。
その力で、虫入り琥珀の強靱な魔力を打ち破る事ができるだろうか。
・・・いや、ここで弱気になっても仕方がない。
ふぅと小さく息を吐くと小沢は手の中のアパタイトに想いを注ぎ、輝かせ始めた。

26 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:07:19
アパタイトの青緑の光に負けじと乳白色の光を発しているのは、島田の白珊瑚。
この石は、幸運を呼ぶお守りと称され黒珊瑚とセットになって島田の手に回ってきたモノだった。
折角のお守りを2つとも持っているのも何だと黒珊瑚を相方に譲ったのが全ての始まり。
「・・・・・・っ!」
既に一発弓矢状にして石と精神力を酷使した事もあり、光はいまいち安定しないけれど
赤岡が戻ってくるか来ないかの瀬戸際とあれば島田は歯を食いしばり、石と己を信じて力を高めていく。
ここで自分の力不足から赤岡にもしもの事があったなら。
一生悔やんでも悔やみきれないし、実家にも下手に帰れないだろうから。

2つの石の輝きと、その内側から放たれる力に共鳴するかのように床に置かれた虫入り琥珀と黒珊瑚も
強く輝きを帯び始めた。
本気で石を輝かせる2人の様子に、これから何が起こるのかわからず見物するだけの3人も
固唾を呑んで事の推移を見守るばかり。

互いの石の力が高まったのを確認し、無意識の内にタイミングを計って2人はそれぞれ言霊を紡いだ。

 「・・・恋はここにあるっ!」
 「・・・だって君は僕の頭の中にいたからね!」

・・・だから、こんな所で消えたりするな。 戻ってこい!
祈りと共に発せられる甘い言葉とクサい言葉。二つの言霊に応じるように、アパタイトから放たれた
青緑の光は虫入り琥珀に、そして白珊瑚から放たれた光は黒珊瑚へそれぞれ吸い込まれていって。

「・・・・・・っ!」
一瞬の静寂の後、虫入り琥珀から光が逆流するように迸り、工場の中はしばし蜂蜜色の光で一杯になった。

27 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/13 01:15:34
今回はここまで。
次回か次々回にてようやく完結かと。

そして>>1さんスレ立て乙でした。

28 :22:05/02/13 16:28:40
長らく間があいてすみませんでした。ロザン編、投下したいと思います。
よろしくお願いします。

その黒い石が宇治原に侵食し始めたのは、その日の出番が終わった少しあとだった。何か軽く食べられるものを買いに行くと出かけた宇治原は、戻ってくるなり菅に黒い石と白い石を手渡した。
「これ、持ってて。」
宇治原から差し出されたその2つの石に、菅は訝しげな表情を浮かべる。相方から物を貰ういわれはない。ましてや石。そんなものを集めているとも興味があるとも言った事は一度もない。
「何なん、急に?」
「ええから。大事なものやねん。」
しかし宇治原の表情は本当の本気。黒い石は、さっき宇治原が弄んでいたものだろう。浅越に渡されたはずのものだったが・・・
「持ってて。」
宇治原は強引に菅にその2つの石を握らせる。つき返そうとした菅は、やたら自分にしっくりと来るその石に、思わず押し返そうとした手を引っ込めてしまう。
「お前は?」
「俺も黒い石は持ってる。俺にはこの黒い石だけで十分やから。」
宇治原はポケットから、箱に入った大量の黒い石を出して見せた。浅越に、何か聞いたのだろうか。
「この石は、俺たちに力をくれるんや。この石さえあれば、俺たちに立ちはだかるのも、すべて排除できる。」
「お守りか?」
「いや、もっとすごいもの。」
「ふぅん。」
菅は宇治原の考えをあまり否定しない。だから、宇治原の言葉を素直に聞いた。宇治原は勝気な表情を浮かべている。きっと、何か意味があるのだろう。
「この石で、俺たちの道を遮るものを排除するんや。」
「遮る、もの?」
「黒の力の前に、みながひれ伏す。」
菅にはその意味が深くは理解できなかった。まだ、その時には。



29 :22:05/02/13 16:53:25
時間かかっちゃってごめんなさい(;_;)

30 :22:05/02/13 16:55:57
「・・・んっ。」
灘儀の背中で寝息を立てていた浅越が、声を上げた。全員がその声に視線を集中させる。
「あれ?・・・・・あーっ!」
浅越は慌てたように灘儀の背中から飛び降り、メンバーから離れる。それを見て、メンバーは苦笑し、ヤナギブソンが浅越に近づいた。
「終わりましたよ。」
「え?」
「全部、終わったんです。あの石も、消えてなくなりました。」
「終わった・・・」
「ギブソンが、お前を元に戻してくれたんやぞ。」
突然勢いよく浅越に飛び降りられて、思わず転んでしまった灘儀が立ち上がりながら言う。よく見ると、みんな何もなかったように無傷だ。
「あの、えっと・・・」
「あの石が消えたら、みんな何もなかったように元気になったんです。」
「じゃあ・・・」
「終わったんや。悪夢は。」
久馬が浅越の頭を、子供にするように優しく叩く。浅越は慌てて上着のポケットに手を突っ込んだ。携帯のストラップには、黒い石はなく、あの青い石だけがついている。
「すいませんでした。俺・・・」
「もうええよ。めったにない体験もさせてもろたし、ちょっとB級映画の中に入り込んだみたいでおもろかったし。」
鈴木はくわえていたタバコをもみ消し、優しく笑う。みんなも、怒った表情は少しも浮かべていない。
「本当に、すみませんでした。俺があんな石に翻弄されたばっかりに。」
それでも浅越は深々と頭を下げる。あの石の力に振り回されて、みんなにかけた迷惑は計り知れない。何度謝っても、謝りきれないくらいに。
「あ――――っ!!」
浅越が目を開け、ほのぼのとした空気が漂っている中、鈴木が突然大声をあげる。
「なんなんですか?」
「思い出した!大事なこと!」
「ああ、さっき言ってたアレですか?」
「なぁ浅越、お前なんで俺らに「早く花月に戻れ。」って何回も言ってたんや?何か花月にあったんか?」
鈴木の問いに、はっとしたように浅越は時計を見る、その表情は見る見る険しくなっていく。そして、思い切り地面を蹴り飛ばした。


31 :22:05/02/13 17:09:57
「もしかして今から、花月へ戻ろうとしてました?」
「そうや。やって稽古せなやん。」
浅越の焦ったような口調に、眉をひそめながら久馬が答えると、浅越はメンバーの行く方を遮るように立ちふさがった。
「戻ったらダメです。」
「なんでや?」
「俺はあの黒い石を、いつのまにか大量に持っていました。そしてそれを、宇治原さんに全部渡したからです。」
「やったら、すぐに戻って宇治原さんからあの石を取り上げないとやないですか!」
言われて、ヤナギブソンが走り出そうとする。しかし浅越はヤナギブソンを止めた。
「なんでですのん?」
「もう、きっと手遅れだ。あの石は黒の意思を広めたがってた。これだけ時間が経っていれば、当然宇治原さんの中に黒い石の力は浸食してる。そして・・・」
「仲間集めを、始めてる。」
気まずそうに浅越が濁した言葉を、鈴木が言った。浅越はゆっくりと頷く。
全員が言葉を失った。悪夢は終わっていなかったのだ。むしろ、これからが本番なのかもしれないと。



32 :22:05/02/13 17:16:38
菅 広文
 石:マスコバイト(白雲母)
   自由な発想や斬新な思考を導く。転じて、黒の石に新しい能力を見出す。
   力は菅が思考をめぐらせることにリンクして発動。
   条件として、宇治原が一緒に居なければ発動しない。

宇治原 史規
 なし。黒い石のみ。

ということで、これからがんばってロザン編を投下していきたいと思います。
今日はとりあえずココまでです。


33 :名無しさん:05/02/13 17:39:56
>>28-32
乙。しかし偽物対策の為にもトリップつけてくれないか?

34 :名無しさん:05/02/13 18:40:38
うわー黒は頭いい人ばかりですね。
大丈夫かー、白。

35 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 18:40:31
1さんお疲れさまです。

シャロンさんの林さんの力の由来笑いました。
カリカ黒似合いますねー。
ところでポイズンといい何故シュールと言われる人達は黒なんですかね。
アンガは違うけど。

ekt663D/rEさんいつもながら面白すぎです。
虫入り琥珀の力怖いですね。
でも、小沢さんと島田さんの友情にはグッときました。

22さん、関西でもすごい事が起こってますね。
一体どうなるんでしょうか。

以下前スレ652からの続きです。


高橋が駅から出ると既に路面は乾いていた。
もう外は真っ暗だ。
高橋は大きくため息をついた。
石が手元にきてからもう一週間ぐらい経つ。
今の自分はいつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなものだ。
もし、人前で力を使ってしまったら。
それだけならまだいいが、誰かを傷つけたり、殺してしまうかもしれない。
一体自分はどうすればいいのか。
石の力が使えない事、最近の事務所内の雰囲気、矢作の事、
そして先ほど駅の立ち食いそばを食べたときに七味のふたが取れて
そばの上に七味が山盛りになってしまった事、そのすべてが高橋を苛立たせた。
飲めない酒でも飲みたい気分だが、飲み屋の雰囲気は嫌いだし、
そもそも人の多い場所にいく気がしない。
家へ向かう途中にあるコンビニでビールを買い込み、家路へと急ぐ。


36 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:00:40
ふと、小さな公園の街灯が目に入った。
小学生の頃よく遊んでいた公園にポツリとともった灯。
高橋は吸い寄せられるように公園の中に入り、街灯の下のベンチに腰掛けた。
何もすることがないので、ビールを一缶開けて飲む。
吐く息が白い。胃が冷たくなって体が震えた。
−ひょっとしてこの石には、力なんか無いのかもしれない。
高橋はお守りに入った石に触れながらそう思った。
今野や渡部たちに比べて、自分の様に地味で華のない石。
高橋はもう一口ビールを飲んだ。
このお守りは大学受験の時に母が買ってきてくれたものだ。
結局受験には失敗してそのまま引き出しに放り込んでおいたものを
何か石を入れるのに手ごろなものは無いかと探していた時に見つけたのだ。
浪人したとはいえ合格はしたのだし縁起が悪いという事も無いだろうと思ったのだ。
何より、石を持ち歩くのに今野とおそろいの携帯ストラップにするのも
薄気味が悪いし、ファンにすら煮しめた様なTシャツを着ているといわれる自分が
渡部達の様にアクセサリーにするのも抵抗があった。
−お守りっていらなくなったら神社に持ってくんだっけ…
 この季節に夜の公園でビールを飲むのは無理があったようだ。
薄着のせいだろうか、高橋の手が冷たい、足が冷たい、
なんだか腹も痛くなってきた様な気がする。
もう帰るか、そう思い飲み残したビールを近くの木の根元にかけた。
−小学生の頃この木の陰に秘密基地とかいって拾ったエロ本隠してたよな…
高橋が懐かしい思い出に耽っていると胸元のお守りがぼんやりと光りだした。


37 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:09:50
それは淡い光だが、Tシャツと上着を通り抜けて溢れてきている。
石は黒いのに温かみを帯びた白熱灯のような色の光だ。
高橋が、あわてて服の下から石を取り出そうとすると
視界の端で木がざわめいている様な気がした。
石から目を離し目の前の木を見ると一瞬その輪郭がブレた。
次の瞬間それは小さな若木になっていた。
あっけにとられつつも高橋はぼそりとつぶやいた。
「コント、関係ないじゃん」
しかしその口角はいつもより上がっていた。
高橋はポケットの中の携帯へ手を伸ばした。

以上です。

高橋 健一
石 :アパッチティアーズ(悲しみを癒し、希望に変える・黒)
能力 :封をした酒(缶ビール等)を飲んで、任意の年齢
     (小学生など漠然としていてもいい)を想像して相手に
    中の酒をかけると対象の年齢がその年齢まで戻る。
    精神、肉体どちらか一方だけでも戻らせる事ができる。
    人間以外の動植物にも有効。効果は高橋の酔いが覚めるまで。
    14歳の○月○日などの細かい指定も可能だがかなりの集中力が必要。
条件 :酒が体にかからないと効かない。
    また年をとらせる事はできない。
    相手を若返らせた分だけ自分の肉体が年を取るが見た目は変わらない。
    精神、肉体のどちらか片方を若返らせた場合はその半分の年齢分年を取る。
    酔いがさめると元に戻る。
    体力を消耗するため、精神肉体片方なら一日二人
    両方なら一日一人が限度。
    ちなみに自分に力を使っても相殺されてただ疲れるだけ。
    また、投げる酒は一口飲むだけでよいが中身の酒
    全部の酔いがかえってくるため二日酔いになりやすい。


38 :「遅れてきた青年」 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:24:07
今野浩喜
石 :クンツァイト(無限の愛、自然の恵み、純化された存在
   を象徴・ラベンダーの色味のあるピンク)
能力 :気象を自在に操る事ができる。
    雨、雪、非常に強い台風くらいの風、人が気絶する程度の雷、
    成人男性位の高さの竜巻、などを起こしたり、止めたりできる。
    雨、雪の範囲は直径3mくらい。
    自然に降っている雨なども止められる。
    任意の方向に手をかざし、イメージして「んっ」というと発動する。
    雨+風などの合わせ技も可能。
条件 :連続して力を使えるのは3分まで。
    3分づつに区切れば体力がなくなるまで力が使える。
    また、力を使うと一定時間話すことができなくなる。
    (正確には声は出るが言葉で無く音にしかならない)
    竜巻と雷は操作がかなり難しくよほど集中しないと
    操作を誤る場合がある。
    雷と竜巻はかなり力を使うため一度出すと他の力が使えなくなる。
    竜巻を消す場合のみ力が使えるが体力を使いすぎるため失神する
    場合がある。 
     
高橋の力は、普段は若く見えるのに酔うと二十も老けると言われているので。
今野はコントの設定からです。


39 :遅れてきた青年 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/13 19:37:52
また感想を下さった方ありがとうございます。
全然戦わないこの話に付き合ってくださった方もありがとうございました。
書き手の方、高橋の能力使いづらくてすいません。
そして、まとめサイトの方タイトルを変更していただいて申し訳ありません。
ありがとうございます。
ところで、タイトルについて言われてた方がいますが
自分も遅れてきた中年にしようかとも思いましたが、TVで見る分には
若いのでそのままのタイトルにしました。そもそも遅れてきた割には意外と
力が分かるのが早い気もしますが。
あることないこと小ネタ使いまくりましたが、エロ本、お守りの話などはつくりです。
そして、また申し訳ないのですがお試し期間中。さんのキング黒の話を読んで
いろいろ考えちゃいまして。
人の褌で相撲をとるようで申し訳ないのですが、キング黒への布石話
書いてもいいでしょうか。
それぞれ別の話ですが、一回で終わりますし、スルーしていただいて結構ですので。
以上長々と失礼しました。


40 :名無しさん:05/02/13 19:53:25
乙です!煮しめたTシャツワロタw
やっぱり、対象の芸人さんをよく知ってる方が小説を書くとすごく深みが出て面白いですね〜。

白寄の人力舎の中で、キングがどう黒になっていくか興味あります。

41 :名無しさん:05/02/13 21:13:51
>>39
乙でした。なかなか、ユニークな能力で面白いと思います。
戦っている話が全てではありませんからね。
初期にはマッタリした感じのお話も投下されていたようですし。

キングが黒になっていくお話、書いていただいて構いません。
寧ろ此方からお願いします。
それと一つ気になることが有ったのでしたらばのネタバレのほうに書いておきます。

42 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/13 21:17:07
トリップを付け忘れました…↑は自分です。

43 :遅れてきた青年 ◆5X5G3Ls6lg :05/02/14 21:26:50
すいませんちょっと失敗しまして↓にトリップ変更します。

44 :遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/14 21:29:01
よろしくお願いします。

45 :名無しさん:05/02/15 02:27:51
キング編乙です!石の能力や条件など、丁寧かつ本人に合った設定で素敵ですね。

46 :名無しさん:05/02/15 07:57:24
前スレよりage

47 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:22:59
こんにちは。
黒視点からの話が少ないようだったので、いつもここからの話を投下したいと思います。
流血シーンがあるのと、黒側の話なので少し暗い表現があります。
苦手な方は注意してください。

48 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:24:03
せっぱ詰まった状況が続くテレビの仕事とは違い、営業の予定にはある程度の余裕が組み込まれている。
そのせいで予定より早く仕事が終わってしまい、空間には退屈の種ばかりが蒔かれていた。
それらが育って花を咲かせるころ、自分の世界に閉じこもっていた菊地が我を取り戻す。
コンビごとに分けられた楽屋は彼にとっては好都合だった。
誰かいたとしても特有の人懐っこさで乗り切れるが、
安定していない正義感を持つ芸人がやってくる予定なので周りと世界が分かれている方が都合良い。
まだ名前も知られていないのであまり強くないだろう。彼が高を括る理由の一つに高水準な能力がある。
水を操るアイオライトだけでも十分侵攻可能な上、具現化が出来るツァボライトまで保持している。
二つの能力を持つ人物は少ないだろう、欠点が見当たらないなら誰でも恐怖が掠れてしまうものだ。
それに他人に影響されない菊地自身の性格と、独特すぎた極端な思考回路を足せば跡形も無く消える。
決して他人には着こなせない細みのジャケット、
半端な位置に付いているポケットからメモ帳を取り出した。
使い慣れた鉛筆を握って絵を創ろうとしてもイメージが浮かばない。姿形があれば何でも構わないのだが。
最終的に目を付けたのは、ある意味一番近い場所にいる二つの石だった。
ちぎったメモ帳を絨毯代わりにして無秩序に並べる。消して華美ではないが人を魅了する光があった。
しかし菊地は引き込まれずに、慣れた手つきで鉛筆を動かす。
何を描いているか判断出来る位になったころだ。急に響いたノックが人の気配を連れてきたので、
落ち着いた態度で石を隠す。
返事を待たずにドアを開けたのは予想通りの相手で無作法に燃えた敵対心が険しい顔に浮かんでいた。

49 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:24:43
名前を知らない相手に興味を持つ可能性は少ない。相手を探ろうともせず傍らのペットボトルに手を伸ばす。
「黒だって事は知ってます」
動揺させようとしているのだろう、真剣な顔だが少し余裕がある。情報の漏洩具合はもう分かっている、
それよりも敬語を使われるくらい芸暦が伸びたことを実感した。
「どういう力?」
「え」
「目立つなら場所変えるよ?」
淡々と必要事項を確認されて恐怖したらしい。相手の顔が強張り後悔が滲む。
残りの水を一息に飲みきってから、ポケットに鉛筆とメモ帳を忍ばせ、廊下に出るドアに手を伸ばす。
すれ違う寸前に水を作り出した。ほぼ立ち尽くした状態でいた相手の首もとに右手を翳し、
鋭利に凍らせた氷を喉にあてる。
血は出ないもののある程度の痛みは伝わったらしい、男は顔を歪めて目を合わせてきた。
「石使わないままだったね」
一歩間違えれば人殺しになる状況でも普段通りでいる菊地は、例え外見が弱そうだとしても迫力はある。
空気に飲まれた男は動けずに解放だけを待っていた。
「どうしてここに来たの?」
「相方が急に変になって、だから」
会話を中断せざるを得なくなる。廊下側から、遠い足音と芸人らしい笑い声が聞こえてきたからだ。
水の刃を蒸発させてから鞄を持ち、抵抗する気力さえ失った男と目を合わせた。
「やっぱり場所変えよう」
従わなかった場合どうなるかは言わずとも伝わる。項垂れた男は先を予想しながら頷いた。
水を補充したペットボトルを鞄に入れてからドアノブを開ける。
「あ、お疲れっす」

50 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:25:43
挨拶されて後ろを向くと、やはりあまり名前を知られていない芸人が頭を下げていた。
反応を返してから表情の暗い男を連れて進もうとするが、
廊下の奥にあった姿が気になって動きを止める。
主に大阪で活動している二人組は全国でも知られた芸人だった。
菊地は彼らが白に属しているのを知っている。
能力までは認知していないがわざわざ衝突する相手ではない。
気づかれないうちに身を翻して短い廊下を歩いた。
外は既に暗く、半月が辺りを照らしている。寿命に近づいた街灯が点灯を繰り返す姿は蛍に似ていた。
隠れていない星空の下、奇妙な組み合わせの二人組が歩く。
石を持っている芸人同士の戦いでここまでローテンポなものは珍しいだろう。
眠たくなるバラードより遅い変拍子の中、恐怖を克服しつつある男が目つきを粗げていた。
突然懐に手を入れて、隠し持っていたナイフを向けてくる。
「物騒な物持ってるんだね」
男が更に恐怖を募らせた。首の後ろに留めるはずだった刃の周りを水で包み込み、
丸みを帯びた形で凍らせて何も切れなくしたからだ。溶けない氷に絶望した男は抵抗を止めた。
一番背の高い建物と建物の間、弱々しい街灯が一人で辺りを照らし、温い風が通っていた。
辺りに誰もいないのを確認してから男の顔を覗き込む。もちろん首には氷の刃を翳して、
唾を飲んで上下する喉仏の上に傷がついたのを確認してから交渉を始めた。
「どうして黒が嫌なの?」
「他の芸人を傷つけてるじゃないすか」
「俺は白が同じことしてるのを何度も見てきてるけどね」

51 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:26:26
男が目を見開いた。更に畳み掛ける。
「君の相方もそれを知って黒に入ったのかもよ。だから君がこっちに来るのを望んでいるかもしれない」
「でも辛そうにして」
「相方だけ別行動取ってるのは悲しいね。しかも君は白寄りだ、正反対のことをして楽しいはずがない。
 大体白が何もしてこなければ争いもないかもしれないんだよ。
 黒だけになれば安定する、そうだ、それを分かって俺を襲ったの?」
訛った早口での質問が勝手なのは誰にでも分かる。でもどうでもよかった。
「相方を支えてあげないと」
だから心臓を抉る意見も堂々と口に出せる。
体を引いた男は、刃から離れているにも関わらず何もしてこなかった。
「黒がなくなればいい」
もう終わりだったはずが予想外に意志が固い。
素直に説得されておけばいいものを、だから痛い思いをする人間が増えるのだ。
呆れて物が言えなくなる前に自身を奮い立たせ、手に持っていた氷を溶かす。
チャンスと勘違いして顔を明るくした男の両目に水を飛ばした。
視線を失って戸惑う男が手を顔に当てる前だ。目の水分もろとも凍らせれば、相手は激痛でしゃがみこむ。
随分愉快な姿だ、氷で仮面を創ろうか。
高揚する気分の中で相手を降伏させる方法を考える。出来るだけ残酷に、
そうすれば歯向かう気力さえ無くなるはずだ。あれこれ想像を巡らせて、最終的にいい案を思いついた。
自らの顔が歪んでいるのが分かる。
異様な笑顔を浮かべていたかもしれない、ポケットの石が暗い光を放っていたから。
作り出した水を無理矢理相手の喉に通す。咳き込んでも流れる水が途中で凍ればどうなる?
喉を掻き毟る姿を想像して笑みがこぼれた。昔はあまり楽しめなかったはずなのにも関わらず。

52 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:27:09
右手を相手の首元に当てる。脈を流れる血液が操れれば面白いことになったかもしれない。
起こらない仮定を考えているうちに、喉元に留まる水を感じた男が顔を引きつらせた。
今までで一番の表情だ。力を込める。
「それはあかんやろ」
背後からマイペースな声が届いたかと思うと、振り向いてすぐの頬に何かが掠った。
菊地の足元に作られた小さな水溜まりから何か伸びている。
形を確認する前に足を取られ、バランスを崩して倒れ込んでしまった。
足に絡むのは奇妙な植物の蔓だ。乱暴に振り払ってから声の主を確認した。
一番関わりたくなかった相手だ、しかも二人揃っている。
「何しとるんやお前!」
耳に響く高音が緊張感を壊した。普段からあんな調子だったのか。よく見知った姿を二つ見渡す。
のんびりとして自己中心的にぼける平井と、相反した高いテンションでつっこむ柳原。
アメリカザリガニとして活動する二人には別々の個性があった。多分能力も違うタイプだ、
植物を生やしたのが平井だろうか。
倒れたままの男は放って、鞄に入ったペットボトルを取り出した。500mlを半分飲むだけに留める。
人目に付かない場所にしたのが失敗だったようだ。展開は急がずにこっちのペースを作ろうとした。
「襲われそうになったので」
「そんな風には見えんかったけどなあ。そやろ?」
平井が穏やかな笑みを浮かべ、柳原に同意を求める。
「今までで一番の嘘吐きや」
逆に真剣な柳原が呟いた。

53 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:29:48
「石は真っ黒やし、お前、どろっどろやで」
どろどろが何を指しているのか分からなかったが能力の見当はついた。
少なくとも戦える石ではない、真意を見抜くとか、頭脳戦でしか使えないものだろう。
一対一と同じようなものだ、これなら勝てる。
調子に乗って能力を使いすぎていることが気になったが、すぐに終わらせば大丈夫だろう。
話で終わらせようとしている相手の虚をつく。狙うのは無防備な柳原だ。
伸びる水を投げ、氷よりも鋭く一直線に尖ったそれと同時に一気に距離を詰めた。
植物が水鉄砲を弾いたのは予定通りだ。相手の死角に入った左手でナイフを作り、
柳原に向かって投げた。急所に当たらずとも激痛は走るはず。
長く伸びた植物が枝分かれする。血を生むはずの透明なナイフが掴まれた。
想像したより戦い慣れている、衝撃を予想して身を固くしたが強すぎた打撃に吹っとばされた。
しゃがんでいるがすぐ対抗できる体勢で相手を見上げる。
棒状に編み上げられた蔓は鉄パイプほどの強度を保っているようだった。
「ヤナ、下がっとれ。こいつ正気や無い」
「わかっとる」
見当外れに笑いたくなった。柳原が下がる前に水を投げようとしたが阻まれるのは分かっている。
曲がりくねる植物をどうにかするために水を刃状に変えた。本当は長刀を作りたかったのだが足りない。
地面に落とされた水のナイフが戻ってくれば少しはましになるのだが。
少し息が切れていた。幸いまだ熱は出ていなかったがあまり長くは戦えないだろう。
菊地達の本業は戦いではない、
今日の仕事は終わっているが芸人としての義務を果たすため体力を残す必要がある。

54 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:30:58
「早く終わらせませんか?」
争いのペースを早めるための挑発だ。向こうもせっぱ詰まっていたようで、
ほぼ一定の位置にいた平井が距離を詰めてくる。変幻自在に伸びる植物は刃だけでは対応しきれず、
切り落とした断面から伸びる蔓に腕を掴まれた。持ち替えた刃で切り落とすより早く腹部に衝撃が走る。
「痛い目見んとわからんようやからな」
呟く平井の声に躊躇いが混ざっていたのを菊地は聞き逃さなかった。白は直接傷つける勇気がない、
だから蔓で殺そうとせず足で蹴るだけで留まったのだ。
こっちに躊躇はない。
植物を操っている方の肩に刃を突き刺した。呻き声と呼ぶには大きすぎる音量で平井が腕を掴む。
相手が流す血は放って、手にしていた刃を数十本の鋭い針状に変えてから、容赦無く平井の体に投げた。
串刺しになったのは平井の体ではない。急に現れた盾状の植物がすべての針を受け止めている。
驚く暇が惜しい、平井の横に向かってから残しておいた水で杭を作り、怪我した肩を抉った。
相方を救う為向かってきていた柳原を凝視。
異様な迫力にされて怯んだ隙にすれ違い、固めたままにしておいた水のナイフを拾い上げる。
身を翻してナイフは右手に持つ。
もし菊地が落ちたナイフを普通の水に戻していたら勝負はついていただろう。
平井が肩を抱えて休憩を取っている間にペットボトルの水を飲み干す。
水の飲みすぎで気持ち悪かったがまだ耐えられる。向こうが動けない間に勝負を付けなければならないのだ。
出来るだけ細く鋭い線を作り出した。足の一本に穴を開ければ動けなくなるだろう。
平井も菊地の思考を汲んだらしく、見てはいけないものを見るような顔で菊地と目を合わせた。

55 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:31:57
水状のままにしておけば多少の伸縮は可能だ。二本の線を一本に見せかけてある、
仮に避けられたとしても一本を体側に伸ばせば致命傷、片側の足を貫通して二本目の足が刺せれば終わりだ。
頭の中で策を確認しながら地面を蹴る。十分な休息を得ていない平井が、苦痛を滲ませながらも対峙する。
線を低い位置で刺そうとすると、予定通り平井が横に避けようとした。
「あかん、相手の背中回れ!」
やかましいが的確な柳原の指示のせいで平井が背後に回ってしまった。
菊地自身の体が邪魔で水の線を伸ばすのが遅れる。水を脇差程度の刀に変え、
振り返りながら相手を切りつけようとするが遅い。
刀を持っていた手に植物が這い巡り、強く握られたせいで刀を落としてしまった。
「もうええやろ」
大きな息切れを繰り返す平井が切り出す。
落ちた刀を左手で拾い上げて対抗しようとしたらそっちの腕も掴まれた。
平井は怪我した方の手を使っているはずなのに動けない。
「何がお前をそうさせたんや。相方狙われとるのか?」
菊地が正気でいるにも関わらず狂人に対するような態度だ。
どこまで勘違いすれば気が済むのだろう、抑えきれなかった笑みがこぼれる。平井の顔が引きつった。
「黒に操られとるんやな。早よ治さんと、石出せや」
「操られてなんていませんよ」
笑みを浮かべたまま否定する。
ため息をつく平井が柳原を呼んだ。仲介するような位置に立った柳原が眉を寄せる。
「嘘やない」
「……気づいてないんや」

56 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:32:45
細い目を見開き、平井が驚愕を露にした。どうして誤解したままなのだろうか、
操られていないと言っているのに。不思議に思った菊地が首を傾げる。
「ええか。分かっとらんかもしれんけど、お前は黒に支配されてる。このままやったらまずいことになるで」
「まずいことって何ですか、人を殺すとか?
 流石にそこまではしませんよ、自分の意志でやってることですから。
 それよりそっちは白でしたよね、黒を負かそうとしてるんでしょう、
 やってることはこっちと一緒じゃないですか」
上下しない感情に乗せて早口で捲し立てた。何かにすがるようにした平井が柳原と顔を合わせる。
「全部本心や」
彼は嘘を見破るらしい。信じきった平井の表情が証拠だった。
草に掴まれていた右腕は相変わらず動かないが、怪我した手に掴まれた左手はそろそろ動かせそうだ。
握力が弱くなってきている、能力の代償である高熱の気配があるか確かめてから状況の確認をした。
落ちた刀は足を伸ばしても届かない。一応形を保ったままにしてあるが、
違う形にするには力の消費量が激しすぎる。水の遠隔操作は難しいからだ。
一旦思考を止めた。考えるだけなら意識を読まれない、相手を欺こうとすれば見破られてしまう。
ばれても大丈夫な純粋な作戦を考えた。力に頼るしかなかった。
左の指先から平井の目に水を飛ばす。緩くなった左手の拘束を振りほどき、
代わりに伸ばされた柳原の手を避けた。何とか拾い上げた刀で右手を拘束する植物を切断し、
本体から離れて弱くなる草達を払いのける。刀を下から上に振り上げようとした。
目の前が揺れる。倒れないように頭を抱えたが大きな隙が出来る。

57 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:33:38
ここぞとばかりに体を突き飛ばしたのは柳原だ、特別な能力は無いがかなりの衝撃で、
ある程度距離が離れてしまった。体勢は戻せたものの最大のチャンスが逃げる。
額に手を当てる。そろそろ熱が出始めていた。刀は構えるが壁に身を凭れる。
平井もある程度疲れているらしく、急に向かってくることは無かった。
あの状態では俊敏な動きは出来ない。菊地も動きは遅かったが、水なら速く動かすことは出来る。
刀を液状に戻して手元に留めた。地面に流れることは無い。
「もう疲れたわ」
平井が肩を叩き、呆れたように呟いた。次に真剣な表情に戻り、左手の植物を成長させようとする。
武器として形を成してしまう前に、柳原に向かって水を飛ばした。背中の壁を押すことで勢いをつけ、
自由の利かない体で向かう。
守るはずだった柳原を放って平井が向かってくる。水鉄砲は綺麗に避け、棒状の植物を振りかぶった。
頭をかばうため右手を翳すが打撃が無い。
強制的にすれ違い、有り得ない方向から伸びた植物が首に巻かれた。
植物の根元を目で追う。左手で持った棒ではない。濡らした血液を原料にして、
平井の肩から植物が生えていたのだ。さっき肩を叩いたのは種を仕込むためか、
根は張っていなかったらしく、平井が肩の植物に持ち替えて握りしめる。
後頭部の方へ引っ張られて息が詰まる。床に衝突するのは時間の問題だ。
虚を突かれたせいで対応しきれず、倒れた後に戦える可能性を考えた。無理をすればいけるかもしれない。

58 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:34:31
突風が吹いた。耳を掠る風の音で、失いかけていた意識を取り戻す。
衝突するはずだった床にゆっくりと落ちて、誰よりも知っている気配を感じた。
平井も柳原も数メートル先に飛ばされたらしい。人より軽い植物は更に遠くへ消えた。
第三者の介入が遅れる、いるはずなのに姿が見えない。
空から床を蹴る音が落ちてきた。三人が上を向くと飛び降りる男の姿。
屈む菊地と平井達の間に空いた広い空間に衝突する寸前、強い風で衝撃を拡散して綺麗に着地する。
どこにでもいそうな風貌だが菊地が間違えるはずがない。
「大丈夫か?」
茶色の髪を揺らし振り返る、いつもここからの山田が明らかな怒りを浮かべていた。
相方からの純粋な怒りが怖い、こちらに向いているのだろうか。
「このタイミングに援軍て」
ゆっくりとした声だから平井が呟いたのだろう。限界ではないが相当疲れているらしく、
殆ど力を使っていない山田に対して苦笑いを浮かべていた。山田の目つきが険しくなり、
現状況だけで判断した怒りを平井に向ける。
「何でこんなことするんですか」
菊地が黒である事を知らないのだ。急に介入してきた誤解は相手を困らせるのに十分だった。
「俺らはただの芸人なのに」
続く悲しそうな声色に反応したのは柳原だ。山田と同じように悲しみを浮かべて前に進み出る。
山田は自分から危害を加える人間ではない、カウンターを食らわないよう風の流れを確かめるだけで止まる。

59 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:35:14
「先手え出したのはそっちや」
「嘘つかないでください」
「嘘ついとるのはあいつやで。俺は石で嘘が分かるんやから」
「菊地はそんなことしない」
「黒に囚われとるんや。お前が気づいてやらんと」
山田が振り返り目を合わせてくる。信じたくない、そんな光が浮かんでいた。
黒なのがばれたらどうなる? さっきの男のように相反して、山田を失うかもしれない。
それだけは嫌だ。
「逆だよ」
一番の嘘吐きと言われたのだ。ならば役目を突き通してやる。
「誰よりも上手く嘘をつける」
例え真実だとしても信じられなければ意味がない。古代に記されたギリシャ神話でも、
未来を知る事が出来たが信じてもらえない女性がいた。彼女は絶望の未来を知りながら何も救えなかった。
「大概にせえ。そんなことして楽しいんか」
「こっちの台詞です。俺だけならいい、なんで山田まで騙そうとするんですか」
「お前がやっとるんやろ!」
「いい加減にしてください」
向こうが声を大きくすればするほど有利になる。間に立った山田が臨戦態勢で構えた。
目を見開いた柳原が菊地のポケットを指差して叫ぶ。
「違うなら汚れてない石見せてみいや!」
言葉ならいくらでも騙せる。けれど物は違う、一瞬体が震え、ポケットの中に手を突っこんだ。

60 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:36:20
握った石が暗く光っているのは知っている、布越しだから伝わらないだけだ。
山田が見ている。何にも関わっていない透明な目線が責めているようだった。
後ろめたい気持ちを隠すためもう一つの手をポケットに隠すと、触り慣れた感触がかさりと音を立てる。
嘘の証拠が見つかった。口元を歪ませないように耐えながら、絵が描かれたメモ帳の切れ端を握る。
本物の石が発する光が洩れないよう右手で包み込んでから、ツァボライトの光を思い浮かべた。
「何でや」
次の瞬間の状況はこうだ。
柳原は信じられない様子で息を飲み、後ろで怪我の痛みに耐えていた平井が目を見開く。
一瞬だけ安心した山田がアメリカザリガニの二人を失望の眼差しで見つめ、
左手を差し出した菊地が堪えきれずに口端を吊り上げた。
掌に乗っていたのは本来の光を偽った二つの石。相手に知らされてない能力で作り出した偽物だ。
勿論山田は菊地の具現化能力を知っているが、絵を描かないと出現させられない欠点も知っていた。
そして、菊地は石の絵を描いたことを知らせていない。
「偽物や」
いくら柳原が真実を告げても届かない。当たり前だ、相方を信じたくない人間がどこにいる?
仲が悪いならともかく、周知の事実としてお互いを好いている彼らが疑い合えるはずがない。
「休んででいいよ」
優しい笑顔が菊地の感情のどこかを握り潰す。初めて眉を寄せた菊地の動揺が伝わることはなかった。
それがいいことなのか悪いことなのかは分からない。
渦巻いた風が山田の体を包み、空気の動く音が建物同士に反射しながら空に昇った。
舞い上がった木の葉が夜空の星に焦がれた時、容赦ない風の塊が走る。

61 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:37:02
浮いた柳原を受け止めた平井もろとも吹き飛ばすために第二の風を放つが、
角度をつけた植物の盾が風を拡散させた。
柳原を後ろに引かせてから、植物を握って山田の方に向かってくる。
近づけるはずはない。風を刃状に変形させれば植物の盾でさえ壊れる。
上下に分かれた盾を風で飛ばすのと同時に、自らを風に乗せた山田が慣性の法則を利用し、
いつもより破壊力のある拳を平井のみぞおちに打ちつけた。
会得した空手に加えた衝撃を食らえば正常な大人でもかなりのダメージだ。
その上菊地に攻撃されていた平井にとって決定打になるのは当然だった。
体力の限界は越えているはずなのに。
平井は倒れず、変わらない目つきで、山田越しの菊地の内面を覗き込む。
傍観者に成り下がっていた菊地は自嘲し、声を上げて笑いそうになるのを必死に堪えていた。
「楽しそうやな」
いつのまにか横に立っていたのは柳原だ。平井が落とした棒状の植物を持ってはいるが、
戦おうともせずに菊地を見下ろしていた。笑みを消した菊地は睨むわけでもなく相手を見上げる。
「相方騙しとるのに」
「質問していいですか?」
「は?」
「人を騙すのが好きなんですか?」
「嫌いに決まっとるやないか!」
「俺もです。だったらわかるでしょう」
楽しんでないことくらい。続く言葉を胸にしまい込む。
ため息をついた柳原は、顔に後悔を滲ませながら、手に持った棒を振り上げた。

62 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:37:53
熱でぼやけた頭では対応出来ない。山田もこっちの状況には気づいていないようだ。
非現実的な世界で次の場面を待つ。
高く上がっていた棒が根元から切断され、長い方が地面に引きつけられた。
ゆっくりと落ちる棒は手を伸ばしても届かない。
かすかに残った精神力で作り出した水を伸ばし、木に巻きつけて引き寄せる。
状況を理解していない柳原の頭に少し短くなった棒を叩き付ける。意識を手放そうとする柳原は、
倒れる寸前、菊地の持つ平井の武器を凝視した。相方の武器でやられた彼は感情を潰されていたはずだ。
横たわる柳原を見ないようにして、平井と対峙する山田の元に向かう。
棒が切断されたのは山田の所作だ。証拠に、壁に痛々しい鎌鼬の跡が残っていた。
お互いが強いから本当に必要なときだけ助ける。相方の力を信じ、暗黙の了解としていた。
構い構われる能力でなくて本当によかった。アメリカザリガニのような関係で、
しかも菊地が攻撃出来ない立場だったら、何も出来ない責任感に押し潰されてしまっただろう。
山田と違って格闘技をやっているわけでもないので肉弾戦も不向きだ。
信じているからこそ放っておける、この微妙な感情を誰かに分かってもらえるだろうか。
風は草を刈るだけに使い、あくまで生身で戦おうとする山田。
対して、防御しきれないからしかたなく植物を使う平井。
疲れを滲ませた平井が柳原の様子に気づいたのは数秒経ってからだ。
「ヤナ!」
攻撃する対象を無視して柳原の方に向かう。意識がない柳原の傍らにしゃがみこみ、
すぐそばにある植物の棒を確認した。今まで怒りを隠していた平井が、
無作法に菊地を睨み歯を食いしばる。立ち尽くす菊地に向かって植物を伸ばした。

63 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:38:36
今までで一番強い風が菊地の肩を掠る。
吹き飛ばされたのは平井だけだ、確認してから振り返り菊地が息を飲む。
怒りの感情を持っているのは向こうだけではない。
相方を狙われたことで山田の何かが切れてしまったらしい。菊地でさえ怯む、
腹を括った表情が風に纏われ、伸ばす手は平井に向けられていた。
すぐに異変に気づく。植物ではつけられないはずの切り傷が山田の頬を走っていたのだ。
生々しく血を流したそれをよく見ると、破れた服の内側からも赤い傷が覗いていた。
突如の強い風に目を覆った菊地がまた見ると、首の横に真新しい傷が出来ている。
嫌な予感で鼓動が速まる。強力な力はいずれ身を滅ぼすのだ。
あまり欠点がないはずだった山田の力は、操作しきれないせいで主人の体を傷つけている。
くしくも二人の力は強すぎた。それでも菊地の方がまだ、殺傷能力が低かった。
二つの能力があるから欠点がなくなっただけだ。
山田の力は躊躇いさえなければ誰でも殺せる。鎌鼬を喉元に出現させれば終わりだからだ。
しかし彼はそれに魅せられずに自分自身の力を使っていた。与えられた力ばかり使う菊地とは違う。
箍が外れればどうなるかは誰にでも分かるだろう。
山田は菊地を守るために日ごろ抑えていた力を解放し、相方のために怒る平井と、
自らが傷ついても戦おうとしている。取り残されたのは菊地だけだ。
矛盾した傷を作り続ける山田を見て感情が動かないほど壊れてしまっているわけではない。

64 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:39:46
ただ、彼は独特な感覚を持ちすぎていた。
すぐに意見を変えて状況を抑えようとしても感情の説明が出来ないだろう。
けりあげた罪悪感を再度手にするには決死の覚悟が必要になる。
てのひらは水や血で汚れて、受け止めるほどの強度を保っていなかったから。
彼の言い訳は誰にも届かない。なんとか最初の一文字が届いても反感を買うだけで終わりだ。
唯一理解してくれる山田が頼れないから自分だけで戦ってきた。
だから、今の山田を見ていることは出来なかった。
包まれた風を突破して山田の肩を掴む。数ヶ所が切られたが痛みはなかった。
熱でぼやける目線を無視しながら握る力を強める。
風が弱くなり辺りに静寂が戻った。月が傾き隠れたせいで光が弱い。辺りの壁には多数の切り傷があり、
巻き添えを食らった平井も額から血を流していた。
「これ以上手を出さないでください」
山田が口を開く。頬に流れる血を拭いながら右手を伸ばす。柔らかい風が平井を包んだかと思うと、
抉られたはずの右肩と割れていた額が完治していた。
風で怪我が治るとは思っていなかったのだろう、驚いた平井が肩を摩る。
浮かんでいた怒りが消えた。何か決心したようで、手に握る植物を握りしめた。
「そいつをそのまま帰すわけにいかん」
対象の菊地は熱にうなされて思考が鈍っている。だから平井の使命感にも気づかなかった。
現状況が早く終わるのを願うだけだ。

65 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:41:04
「信じんでもええ、俺はそいつを元に戻したい。やから」
植物を構え、真っ直ぐな感情を向けた。
「戦う」
対して面識のない相手のため、何故ここまで体を張れる? 疑問が渦巻くが答えはない。
山田は少し戸惑ったようだったが、ため息をついて風を作ろうとした。攻撃する前に思いついた顔をする。
平井の体が浮き、数メートル離れた場所に運ばれた。綺麗に着地した平井の方に向かって山田が走る。
植物を構える平井の前で身を翻し、風で背中を押して菊地の方に向かってきた。
「後ろ向け」
言われた通りに背を向ける。肩の下に山田の腕が回され、足が地上から離れた。
抱えられるようにして空を飛んでいるのに気づいたのは、呆気に取られた平井が空を見上げていたときだ。
夜に隠れて姿は見えない。最高速度で空を滑降し、手ごろなビルの屋上に舞い降りてから辺りを見渡した。
都会よりも弱々しい夜景が近い。それ以上確認出来なくなった菊地がコンクリート上に座り込んでしまう。
駆け寄るわけでもない山田が不機嫌そうに顔をしかめた。
「何で勝手に行動した?」
何も答えられずに菊地は黙り込む。意識が朦朧としていて話せそうもなかったのもあった。
呆れたようにため息をつく山田は、自らの頭を撫でながらそっぽを向く。
このお人よしは。いつか切り出したおかしな会話にも調子を合わせてきたし、
聞きたいことが山程あるはずなのに尋ねてこない。
例え菊地の石が闇に包まれていることを知っても怒らないかもしれない。
屋上ぎりぎりに立って夜を見渡し、菊地が話し出すのを待っているだけだ。
急に振り向く。下からの自然な風にあおられて髪が揺らいでいた。

66 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:41:45
「どんなことがあっても俺はお前を信じるから」
まるでそれが当然であるかのような気のない声色。菊地が反応するより先に近寄り、
建物内へ続くドアへ向かう。鍵が掛かっていたらしく数回ドアノブを回し、情けなさそうに頭を撫でた。
「飛んでくぞ」
指示された菊地が屋上の端に立つ。逆の端に立つ山田が助走をつけ、
先程と同じような体勢で空に飛んだ。風に呷られた菊地のジャケットが揺れる。
見下ろした街に落ちたのは偽物の石でも本物の石でもない。どこから出たか分からない水滴が一粒、
二人が確認しないまま消えていった。無表情な菊地の目線は霞んでいる。
久しぶりの後悔はくだらない考えでごまかす。
いつか山田の背中に羽が生えるかもしれないな、流石に天使の羽は気持ち悪い、
偽造した石を売ったらいくらになるだろうか、もし高く売れればいくらでも金儲けが出来る。
明日になれば忘れて同じことを繰り返すだろう。山田がいない場所ならいくらでも……
ぼんやりとした意識の中で予想できるのかが分からない未来を抱え、
ぎりぎりで意識を紡いでいた水の糸が、切れた。

End.

67 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 13:45:20
終了です。読んでくださった方有り難うございました。
菊地さんが操られているかどうかは、
いつここを主に書いている◆SparrowTBEさんにお任せしたいと思います。
短編にしにくい話で申しわけありません。失礼します。

68 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/02/15 14:19:31
大切なこと言い忘れてた
以前感想くださった方、有り難うございました。

69 :名無しさん:05/02/15 20:22:04
>>47-67
新参者さん乙です。とても面白かったです。
菊地さんがかなり怖いですなあ。

70 :名無しさん:05/02/15 20:22:33
大作乙!
流れが二転三転するのでハラハラしながら読みました。
本気モードのいつここ、強っ!

71 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:24:10
こんばんは、ブレスです。本日お届けするのはロンブー過去編ラスト・息抜編です。
しばし駄文にお付き合いください。


〜回想・戦の後で〜


亮の脳裏には、まだあの時の記憶が残っている。


亮は困っていた。
この人達の家を知らない。
仕方なく、自分の家へと運ぼうか。そうも思ったが、また中本と石澤に襲われるのは困る。
とりあえず、公園のベンチに座る。
「ふぅー・・・。」
一息ついた。

ふたつのベンチに、男が5人座っている。
ひとつには中本と石澤が横たわり、もうひとつには亮を挟んで上田と有田。
「どないしよ・・・」
両は、今日何度目となるこの言葉を漏らした。
もう、太陽が赤く滲んでいる。
「・・・・・・」
皆、眠りについたままだった。
それだけあの戦いは激しかったのだろうか。
亮の体ももう限界だった。意識は、だんだんと薄れ始めていた。

72 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:24:54
――――ぴくっ。
「魂消ったぁーーーっ!!!(びっくりしたぁ!)」
「うわぁぁっ!!」
亮はびくんと跳ね起きた。
隣で上田が物凄い勢いで叫んでいたからである。
「何が起こったとやて思ったわ!!(何が起こったのかと思ったぜ)」
「はっ??」
「あれ・・・、俺なんばしとったかな?(あれ・・・俺何してたっけ?)」
「・・・上田さん?」
「あ?」
「・・・・・・なんて言ってるか分かりません。」
「・・・あぁ・・・」
「・・・・・・方言ですか?」
「・・・・・・そうだ」
「・・・・・・そうですか」
「おぉ・・・・・・」
暫くの沈黙。亮は亮で軽いショックを受けているみたいだった。
「あ、上田さん」
「なんだ?」
「あの・・・、有田さんお願いして良いですか?」
「・・・どう言う意味だ?」
「あの・・・ですね、家まで送っていってあげて欲しいんですよ」
「ばぁー?そっば俺がせぇてや?!(はぁ?それを俺がやれってか?!)」
「は?」
「俺なんもしてねーけど、すっげー疲れてんだぞ・・・」
「・・・そうすか」
一瞬の沈黙。

73 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:26:13
――――どさ。
「・・・・・・え・・・・・・」
上田は、自分にいきなりよしかかってきた亮を一度支えた。
そして、ゆっくりその場に寝かせる。
「・・・・・・寝てる・・・・・・」
亮がいつもの穏やかな顔で眠りに入っていた。
「何で俺がお守りばせなん・・・・・・(何で俺がお守りしなきゃいけないんだよ)」
普通ならば、最早日常で使うことも少ない、故郷の言葉。
それが亮の前で出ていると言うことは、きっと疲れているんだろう。
ふぅ、と一息つく。
「これからどうすっかなー・・・」



亮が気付くと、そこは車の中だった。
「・・・あれ?上田さんは・・・ここは・・・?」
「上田さん?・・・・・・いませんでしたよー」
「そうそう、亮さんしかいませんでしたよ」
運転席と助手席から、それぞれに暢気な声が聞こえた。
片方は川田、もう片方は照屋、通称『ゴリ』。
沖縄が生んだお笑い芸人、ガレッジセールの2人だった。

74 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:27:52
「・・・ゴリ・・・川田・・・」
ありがとう、と言おうとして亮はその前に
「俺しかおらんかったって事は・・・、テツさんとトモさんも?」
「テツ?」「トモ?」
2人が素っ頓狂な声を出していた。助手席の照屋が後ろを振り返る。
「亮さん、テツさんとトモさんって、テツトモですか?」
「そうやで」
「・・・うーん、いたっけ?川田ぁ」
川田はいつもの調子でうーん、と唸ってから、いなかったと返した。
「いませんでしたよ」
「そうなんか・・・」
ならば2人が自分を迎えに来る前に帰ったのだろうか?
石は、もしかしたらまだ汚れたままかもしれなかった。
だからこその不確定要素が怖い。
また襲われたらどうする?
相方だけでなく、ここにいる2人まで巻きこんだらどうする?
悩むのは俺で――――俺だけで良いのに・・・・・・。

75 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/15 22:29:38
「・・・う・・・ん・・・ょうさ・・・・・・亮さん・・・?」
「あん??」
亮は照屋の声で顔を上げる。なにやら変な声を出しながら。
「どうしたんですか?亮さん、考えこんで」
「亮さんらしくもないっすねぇ〜?」
照屋の心配と、川田ののほほんとした一言に、亮はふっと笑い。
「うるさいねん、お前らは自分の心配だけせぇ。
それと、川田!おい!一言多いねんっ・・・・・・」
なんかよくわかんないけど、また泣いてしまった。


白い煙が彼の視界を過ぎ去る。
そして、顔が水面下に沈みかけているのを
「何時までお風呂に入ってるのー?」
という、優しい声のお陰で止められた。


以上、ロンブー編でした。
駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
次回以降ははねる編中心になると思います。ちなみに方言はよく分かりません(汗)
それでは、おやすみなさいませ〜。

76 :名無しさん:05/02/16 08:19:42
アメザリの使命に燃える男達っぷりが素敵。戦闘シーンを臨場感たっぷりに書けるって凄いですね!
この世界では松竹はどんな位置付けになるんでしょうね。

77 :名無しさん:05/02/16 09:55:41
いつここの切なさに泣きました。
ありがとう。

78 :名無しさん:05/02/16 22:12:27
>>71-75
ブレスさん乙です。あの後のテツトモ気になりますね…また利用されちゃうんでしょうか

79 :名無しさん:05/02/16 22:16:41
方言わかんないなら書かないでほしい・・・。

80 :名無しさん:05/02/17 22:50:26
同じく…似せる努力をしてればまだ良いんだけど、
先に断っておくということは相当自信無いのでは…

81 :名無しさん:05/02/17 23:51:39
純粋に疑問ですが


なぜそこで方言?

82 :名無しさん:05/02/18 01:08:47
はねる編で方言で話すメンバーが登場するからじゃないですかね。

83 :名無しさん:05/02/18 03:47:05
>>81
自分なりに考えてみたが >>73で、「きっと疲れているのだろう」とあるから、
あまりの疲労につい、方言が出てしまった…という表現をしたいんだろう。

これが普段から少し熊本訛りのあるヒロツだったらしっくりきただろうけど、
常に標準語を話す上田でやってしまうと、どうしても違和感を感じてしまう。

84 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :05/02/18 07:25:09
皆様非常に申し訳ない。

方言ですが、一度調べましたが、地元の人から見たら正しいかどうか自信がなかったもので・・・。
ほんと申し訳ないです。

85 :名無しさん:05/02/18 22:51:53
方言をまねることはできない

86 :名無しさん:05/02/19 00:27:56
標準語付いてるし良いんじゃないですか?

87 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 16:27:08
ロザン編、続きを投下します。
よろしくお願いします。

「・・・つまり、この黒い石を俺は芸人に広めたらええんやな?」
「ああ。でも、ただ闇雲に渡してもしゃーない。頭の切れそうな芸人、それから、まだ石の存在とは無関係な芸人限定や。」
「頭の切れる芸人ねぇ。お前レベルに?」
「俺以上でもええし、人並み以上なら誰でもええ。」
パソコンに菅の書いてきたネタを落としながら、宇治原は答える。たった2人だけで黒い石を持っていても、芸人は掃いて捨てるほどにいる。埒が開かない。だから宇治原は今は静かに潜伏し、黒の力を広めるという点に重点を置いたのだ。
菅は一度だけ、黒の力を宇治原に見せてもらった。強く、魅力的な力。芸人である以外に、楽しめることを見つけたと思った。
「自分ますおかの岡田さんのイベント出たやん。ますおかに渡したら?」
「それは俺も考えてる。特に増田さんは、頭ええからな。」
「プラン9はアカンよな。大卒の芸人がええんかなぁ。」
「誰でもええ。とにかく、早よ黒サイドの力を強化するこっちゃ。」
この前プラン9と出くわしたときに、分かっていた。浅越は黒の力を使いこなすことに失敗した。しかし石の存在は把握している。先手を打たないと、邪魔される可能性が大きい。
ゆっくりと菅を振り返った宇治原は不敵に笑い、言った。
「最後に笑って立ってるのは、俺らや。」


88 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 16:45:35
ただ楽しそうではあるけれど、菅には終着点が見えなかった。どうすれば黒の勝ちなのか、最終的にどうすればいいのか。
「なぁ、お前はどこを目指してるん?」
宇治原に問う。すると宇治原は1枚の紙を差し出す。それには芸人の名前と、今所持しているであろう石がぎっしりと書かれている。
「これが現状や。俺が調べた限りでは、すでにこれだけの芸人が石の力を手にしてる。赤字が黒の力を持ってる人間やな。」
「へぇー、結構おんねんな。で?」
「この紙にはまだ登場してない、でも世間では1番といっても過言ではないくらいポピュラーな石がある。それを、俺らは白の力を使う芸人よりも早く手に入れなアカン。」
「この紙に登場してなくて、ポピュラーな石ねぇ。」
「ダイアモンド。」
宇治原は言い切り、楽しそうに話し始める。
「ダイアモンドの力は、まだどれほどのモンか分かってない。でも、どんな石よりも強くて、高貴な力を持ってると黒の石は言ってる。将棋で言うたら王将、大富豪ならスペードのエース。チェスなら、キング。」
「王、か。それに俺らがなる、と。」
「それはどうかは分からん。けどな、持ってたら勝ち。すべてを支配できる。」
支配。その言葉は菅を大きく後押しした。石を、芸人を支配できる。勝ち組になれる、奇跡の石。それならば、絶対に欲しい。
「よっしゃ、じゃあ手始めに、バッファローの竹若さん辺りから攻めてみようかな。」
「それともう一つ。攻めるときは俺と一緒に行動してくれ。どうやら、俺とお前が一緒やないと、マスコバイトの力は使えへんらしいからな。」
「分かった。」
黒の石の力に魅せられ、ロザンの2人は完全に本気になっていた。そして、それは黒の力の拡大を示していた。


89 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 17:21:25
「おはようございまぁす。」
珍しく一緒に楽屋入りしてきたロザンに、先に来ていた久馬が怪訝な表情を浮かべる。気付いていたがそれに構わずに2人が前を通り過ぎようとすると、久馬は宇治原の腕をつかんだ。
「もう始まってるんか?」
「なんなんですか、唐突に。」
わけが分からないといった表情でそう問い返した宇治原に、久馬はあっさりと掴んだ腕を離し、笑顔で言う。
「振ってんねんからボケろや。」
「あー、またギブソンの考えたゲームですか?っていうか、急にそんなん言われても出ませんよ、俺。」
笑顔の応酬。その奥には、石の力をバックボーンに置いた駆け引きが見え隠れしている。簡単に手の内を見せることは出来ない。お互いが探り合っている状態。
「そうやねん。オモロイから楽屋で流行らせよーかなぁ思て。」
「じゃあ今度から菅に振ってください。俺、とっさのボケとか出来ないんで。」
「はぁ?なんでやねん。たまにはお前もボケろや。」
「お前なぁ、俺がそういうの向いてないって、一番知ってるやろ。久馬さん、俺、ホンマにええボケとか無理ですから。」
「分かった。じゃあ次からは菅に振るわ。」
「お願いしますよー。」
会話をそこで切り上げて、2人はさっさと久馬の元から退散した。

90 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 17:26:49
自分たちの楽屋に入るなり、菅は舌打ちする。久馬にカマを掛けられたことに、気分を害したのだ。荒っぽく鞄を置くと、宇治原に優しく肩をたたかれた。
「あんなことでイラっとくんな。軽いジャブやぞ。」
「やってやー、笑って声かけたりすんねんぞ。ムカツクやんけ。」
「すぐにそんなんできんようになる。俺らが黒の力を使い始めたら、簡単に潰せるんやから。」
「そうやけど・・・」
これは意外に菅の闘争心に火がつくのが早い。宇治原は冷静に諭しながらも、早く先手を打たなければと思った。昨日岡田にメールを打ったら、すぐに返事がきた。週明けにでも4人出会えるという。
人のいい岡田は、先日のイベントで親しくなった宇治原に対して、何も疑問も抱いていない様子。これは案外スムーズに、増田も巻き込むことが出来そうだ。
明後日は竹若と出番が一緒になる日。さっきの感触から、まだプラン9のメンバーは探りを入れている段階だろう。そう急激に動き始めるとは思えない。芝居が一緒でも、まだ石のことは話していないはずだ。
けれどプラン9が動き始めるのも時間の問題。他の芸人にも、もっと黒の石を配っていかなければ。
菅は不快感を露わにしていたが、もちろん宇治原も久馬のジャブを不快に思っていた。出る杭は、さっさと打ってしまいたいと。そして抗えば、本気で潰してやると。
「なぁ、浅越をもう一回黒側に引き戻すことって出来ひんの?」
「それは俺も考えてる。内側から潰すのが、1番効果的やからな。」
(もちろん始まってますよ、久馬さん。)
宇治原は黒の石を見つめ、冷たい笑顔を浮かべた。宇治原の頭脳コンピューターは、目障りな存在、プラン9を潰す方向でものすごい速さの活動を始めていた。残酷に、再起不能なほどに潰すために。

今日は以上です。プラン9ももう少し絡んでくるカタチになりました。
ありがとうございました。

91 :22 ◆LsTzc7SPd2 :05/02/20 17:29:56
90:出会えるという⇒で会えるという

入力ミスでした。失礼致しました。

92 :名無しさん:05/02/21 22:55:21
乙です!
ロザン・・・やっぱりしたたかですね(笑)
文章が読みやすくすごく良いです!
続き楽しみにしてます!

93 :名無しさん:05/02/22 12:16:06
たまには

94 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/02/23 00:42:14
22さん、ダイアモンドについては過去にしたらばの掲示板の方で色々議論されたので、そちらの方も見てはもらえませんでしょうか。
恐らく話の根幹に関わる事なので・・・・・・

95 :クルス:05/02/23 20:22:04
突然すいません。ハロバイの話を投下しようと考えている者ですが…
時間はカリカVS品川庄司&ワッキーの後の話なんです。
これはやはりその話が終わるまで待ったほうが良いんでしょうか?

96 :名無しさん:05/02/23 20:38:37
まずsageれ。話はそれからだ。

97 :“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY :05/02/23 20:44:10
失礼します。
以下キングオブコメディ黒への布石話の高橋編です。


-暑い
久々に晴れて外は小春日和といった感じなのにTV局の中は暖房が効きまくっていた。
厚手のパーカーを着ているせいか余計に暑い。
高橋は自動販売機を探して歩いていた。
廊下から奥まった所にある休憩コーナーのような所でやっと自販機を見つけて
缶ジュースを一本買う。
静かな廊下にやけに大きく缶の音が響く。
ベンチに座って飲もうとテーブルの上にジュースを置くと自分の背後にあるドアから
声が漏れてきた。
「…がまた石を探せって…」
ドアの方を向くと細く隙間が開いていた。
高橋は、ドアの方に行き覗き込もうとしたが隙間が細くて中は見えない。
声からすると若い男のようだ。
「石」とはあの石の事だろうか、高橋はとりあえずドアの横に立って聞き耳を立てる。


98 :“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY :05/02/23 20:59:57
「下の事も考えろっつーんだよ」
「見た目とかは?持ち主とかはいんの?」
「全然わかんないって、力だけはわかってるらしいけど」
廊下が静かなせいか妙にはっきりと声が聞こえる気がする。
「そんなの見つかる訳無いじゃん。でもどんな力なの」
「なんか、死んだ人間と話ができるとか、生き返らせることができるとか」
「本当かよ?確かにすごい力だけどそんな力どうすんだよ?」
「上が…輩を…」
高橋はドアから離れて携帯を取り出し時間を確認した。
もう収録の時間が迫っていた。
にわかには信じがたい話だが、最近自分の身の回りで起きている出来事を考えれば
非現実的だと一言で片付けられない気がした。
[上」という言い方をしていた事から考えると、白側ではなく黒ユニットと呼ばれる側の
事なのだろうか。
―黒側の情報かもしれないし、後で渡部さんにでも話してみるか…
そう思いながら高橋はスタジオに向かって歩き出した。
廊下の向こう側からこちらに向かって足音が響いてくる。
石川が廊下の角を曲がってこちらの方へ歩いてきた。
「あれ、今日出るんだっけ?俺、先行くよ」
高橋のお守りの中の石が警告するように淡くまたたいた。
高橋がその事に気付かなかったのは分厚いパーカーを着ていたせいだけではない。
「…また後で…」
高橋の背中を見送った石川は口元だけで笑った。
「焦り過ぎだよ」
石川はテーブルの上のジンジャーエールの缶を開けてゆっくりと飲み干した。




99 :“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY :05/02/23 21:06:19
以上です。
名前が長すぎて入らなかったので恥ずかしいタイトルだけにしました。
今野編もいっぺんに書きたかったのですが、また週末にでも書きます。
>>95
クルスさん、自分は終わってからの方が分かりやすいと思います。
ハロバイにどんな力があるか楽しみです。


100 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:35:51
enemy or friend?
>>15 続き

「庄司!!」
脇田が叫んだ。
しかし、今の庄司の耳にその声は届かない。
脇田はあの時の庄司の力を思い出し、背筋が凍る思いだった。
殺人的な力・・・今は石が暴走していないとはいえ、庄司はその力を自分の意思によってコントロールできないのだ。

「奪うべき石が一つ増えたな!」
林は庄司に向けて風を放つ。
しかし、庄司がダメージを受けた様子はない。
完全に感情を失った目でまっすぐ林を見つめ、近づいていく。
いつものあの人懐っこい笑顔は完全に消えている。
今の庄司の放つオーラは、まるで死者を迎えにいく死神のそれのようだ。

「な・・・なんなんだ?!」
なんとか庄司を止めようと、林は風を乱射する。
どれも間違いなく当たっているのに、全く庄司にダメージはないようだ。
むしろ、力の使い過ぎで林が疲れ切っている。

庄司がとうとう林の前までたどり着く。
「やめろ・・・やめてくれ・・・!」
ゆっくりと手を伸ばし、林の首を掴む。
「庄司やめろ!!」
脇田は叫んで庄司の方に駆け寄ろうとするが、まだストロベリークォーツの効き目が切れないらしく、足が言うことを聞かない。
「ぐ・・・っ」
庄司は林の首を掴んで上に持ち上げ、そのまま軽く右へ放り投げた。
林はドラム缶に体をぶつけ、動かなくなった。
「林!!」
「やめろ!!」
家城と脇田が同時に叫ぶ。

101 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:36:37
庄司は振り返り、今度は家城をじっと見つめる。
脇田が家城に向かって叫んだ。
「家城!お前庄司のこと止めらんねーの?!」
「さっきからやってますけど、効かないんです!庄司さん、目の焦点が合ってないんですよ!」

庄司は一歩ずつ近づいてくる。
一歩ごとに殺気が強くなっているようだ。

「庄司!!」
脇田が立ち上がった。
やっと石の力が切れたのだ。
「やめろ!!」
脇田は庄司に駆け寄り、両手を広げて庄司の前に立ち塞がった。
そして、庄司の目を見ながら強く言った。
「これ以上の暴力はいらない。無駄に傷つけ合ったって仕方ないだろ?だから庄司、やめてくれ!」
こんな呼び掛けが今の庄司に伝わるはずがないとわかっていた。
しかし、言わずにはいられない。
これ以上、誰かが傷つけられるのは見たくない。

「家城、逃げろ!」
脇田の叫び声に、家城は一瞬躊躇したものの、踵を返して走り出した。
庄司は脇田を突き飛ばし、あとを追って走り出す。
「やめろ!庄司!」
庄司はあっという間に家城に追い付くと、腹部を強く殴った。
その場に崩れ落ちる家城。
庄司はそれでも飽き足らず、家城を強く蹴り続ける。
何度も、何度も。
「やめろ!!」
腕に縋り付く脇田をこともなげに振り払う。

102 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:37:39
脇田はその場に強く体を打ち付けられたが、もう一度立ち上がって縋り付く。
「やめるんだ!!」
なんど振り払われても、いくら強く体を打っても、脇田は庄司に縋り付く。
・・・それは、敵も味方も、白も黒も関係なく、ただ大切な後輩を守るため。


「庄司!!」

倉庫中に響き渡る声。

品川だった。

痛む体を引きずりながら庄司に近寄る品川。
そんな品川に気付かないかのように、家城を蹴り続ける庄司。

「庄司。」
品川は庄司の肩を強く掴んで、自分の方を向かせた。
「もうやめるんだ。」

「あ、あ・・・」
庄司は狂ったように品川に殴り掛かった。
「庄司!」
品川はその攻撃を見切り、避けながら庄司に語りかける。
「そんなに暴力をふるって何になる?
確かに俺は・・・俺と脇田さんは庄司に助けられた。
だけど、もう抵抗する力もない奴を殴ったって仕方ないだろ!
目を覚ませ庄司!今お前が殴ってるのは俺だ、お前の相方の品川祐だ!!」


103 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:38:24
庄司の動きがぴたりと止まった。

しばしの沈黙。

「・・・しながわ・・・・・・」
そう呟いて、庄司はその場に崩れ落ちていった。
「庄司?!おい、庄司!!」
慌てて品川が庄司を支える。
「ごめ・・・俺、眠い・・・」
庄司はそう言うと、深い眠りに落ちていった。
脇田はあきれたように呟く。
「ただの力の使いすぎか。びっくりさせやがって。」
「良かった・・・」
品川は心底ホッとしたようだった。
「・・・脇田さん、あとは頼みま・・・す・・・」
そう言って、品川もその場に倒れ込んだ。
「・・・お前も電池切れか。」
脇田はしょうがないなぁ、というように笑った。


倉庫の中にバラバラに倒れていた4人を、一ヶ所に並べて寝かせる。
自分も含めてそれぞれが痛々しい傷を負っているが、命に別状はなさそうだ。
それに、電話で江戸むらさきの野村を呼び出しておいた。きっともうすぐ来るはずだ。
あいつなら、怪我の手当てもできるだろう。

さっきまで闘っていた自分の後輩4人が、横一列に並んですやすやと寝息を立てているのは、なかなかに面白い光景だった。

「・・・と。笑ってるな場合じゃないか。」
脇田はそう呟くと、林のポケットに手を突っ込み、ユーディアライトを取り出した。
続いて家城のポケットからストロベリークォーツを引っ張り出す。


104 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:40:33
・・・どちらも、濁った光を放っている。
脇田は二つの石を静かに床に置いた。
そして、先ほどとは反対側の家城のポケットに手を入れる。
指の先にお馴染みの感触。
さっき家城に奪われたカルセドニーだ。

そっと目を閉じ、カルセドニーに意識を集中させる。

カルセドニーから赤い光があふれ、ユーディアライトとストロベリークォーツを包んだ。



脇田が目を開けると、そこには本来の輝きを取り戻した石があった。
そっとそれぞれのポケットに石を戻す。

静かな風が吹いてきた。

<脇田さん、品川さんごめんなさい・・・>

風に乗って、林の声が聞こえてくる。
「え?」
脇田は慌てて林のほうを見るが、まだぐっすりと眠っている。
「林・・・?」
林のポケットの中で、ぼんやりとユーディアライトが輝いているの見える。
これも、林の石の力なのだろうか。

<ごめんなさい・・・本当はこんなこと、したくなかった・・・>
「わかってるよ、林・・・」
林には聞こえていないかもしれない。そう思いながらも、脇田は答えた。
謝る林の声が、あまりにも苦しそうだったから・・・。


105 :シャロン ◆jK2VTA8.7s :05/02/24 02:41:39
風がやんだ。
ユーディアライトの輝きが消え、林の声も聞こえなくなった。

ヒデさん・・・か。

脇田は倉庫の暗い天井を見上げた。

「明日も、よろしくね・・・ヒデさん・・・」

脇田の呟きは、闇に吸い込まれていった。

106 :シャロン ◆kz71qVmjiU :05/02/24 03:45:13
林の石の能力(追加)
能力:風に乗せて、強い感情を他人に伝えることができる。
条件:伝えられるのは悪意のない感情のみで、林が眠っている状態でなければ伝えられない。
また、伝えられる相手は石を持つ者だけ。
石そのものが汚れている状態では、汚れに邪魔されて感情を伝えることができない。



久しぶりに一気に投下。
enemy or friend? 終了です。
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
当初の予定では、ワッキーがもっと活躍する予定だったのですが、思った以上に品川さんが頑張ってくれたので、任せてみました。
家城さんをもっと上手に使いたかったなぁという悔いはありますが、まぁ次回以降で頑張っていただこうと。

ペナルティでもう少し話を膨らませたいと思っています。
とりあえず、「ペナルティ・シリーズ第一部完」といったところでしょうか。

もう少し、お付き合いくださいませ。

>>95
クルスさん
これでこのお話はおしまいです。
ハロバイ編、楽しみにしています。
頑張れ、ルミネ組!w

107 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/02/24 03:47:59
すいません、sage忘れました・・・

個人的事情で申し訳ないのですが、旧PC〜新PC移行期間のため、いまいちトリップが定まっておりません。
PCが変わるとトリップも変わってしまうことに気づかず・・・
とりあえず、新PCのトリップが上記、旧PCのトリップが今までのもの、ということにしておきたいと思います。

ご迷惑をかけて申し訳ございません。

108 :名無しさん:05/02/24 04:02:13
とりあえず22さんは一度したらばの進行会議スレに来ていただけませんか?

クルスさんはテンプレを見てトリップを付けてください。

109 :名無しさん:05/02/24 05:34:31
シャロンさん乙です!
登場人物はおもしろ顔系コンビ揃い踏みwなのに、
格好良いバトルシーンが魅力的な作品でした。次回ペナ編も期待してます。

110 :名無しさん:05/02/25 11:24:27
キモイスレだ。

111 :名無しさん:05/02/25 11:33:55
>>110
ageるおまいもキモイ。

112 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/02/27 03:35:00
お久しぶりですが、ふと思いついた波田陽区と青木さやかの短編を投下します。
一応時間軸的には、前スレに投下された長井秀和、劇団ひとり、波田陽区の話の1週間程後ということで・・・・・・



毒舌家達の憂鬱

【メッセージハ、一件デス。ピー・・・・・・】
『あ、波田君? いきなりで悪いんだけど、石の事で話があるからちょっと時間作ってもらえないかな。 えっと――――』
とある日の、早朝。
夜を徹した収録から帰り、留守番電話のメッセージを聞いた波田陽区は、聞こえてきた声に深い溜め息をついた。
最近、彼女から電話が良い報せを運んできた事は一度も無い。
大体、同じ事務所でこちらのスケジュールを分かっているにも関わらず徹夜明けに呼び出す時点で、何か悪意のようなものが感じ取れるのだ。
『――――あ、そうだ。無視したら【あの約束】5回上乗せするから覚悟しときなさいよ?』
【ゴゼン 0ジ 4フンデス。ピー・・・・・・】
付け足されたその言葉に思わず苦笑を浮かべた後、波田は今さっき床に置いたばかりのギターケースに再び手を掛けた。



昼、と呼ぶにはまだ少し早い時間。
指定されたのは、いかにも女性が好みそうな小洒落たレストランだった。
思わず自分の服装を確認してから中へ入る。
出来る限り――――ギターケースを持っている時点で充分目立ってしまっているのだが――――目立たないように気を付けながら店内を見回すと、少し奥まった、余り人目につかない席に座る見慣れた後ろ姿を見つけた。
「青木さん」
周囲の客にバレないよう、座っている年上の後輩に小声で声を掛ける。
「思ったより早く来たわね。まだ時間まで5分ある」
「遅刻でもしたら後が恐いじゃないですか」
嫌味ったらしく敬語で話されるよりはマシだが、完全に下扱いされるとそれはそれでやりきれない。
ぶすっとした表情で呟く波田の言葉を耳聡く聞きつけたのか、優雅にコーヒーを飲んでいた相手――――青木さやかは、胡散臭い程の笑みを見せた。
「あら、ちょっと遅れたぐらいじゃ怒らないわよ?」

113 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/02/27 03:36:50
(嘘つけ!)
一瞬そう叫びそうになったが、そんな事を言ったら何をされるか分からないし、周囲の目もあるのでとりあえずはじっと堪える。
「そんなに不機嫌そうにしなくても、今日は奢らせたりしないって。呼び出しのはこっちなんだから・・・・・・まぁ自分の分は自分で払ってもらうけど?」
「・・・・・・そうですか」
青木の言葉に、波田はあははと乾いた笑みを見せた。
ネタで青木の名前を使わせて貰う代わりに食事を10回奢る――――それが、波田と青木の間で決められた事、青木が留守電で言っていた【あの約束】だった。
ただし、波田はなんだかんだ言ってその約束を無視し続けているのだが。
「今日は一体何の用なんですか?」
席に着き注文を取りにきたウェイトレスにコーヒーを頼むと、波田は眉間に皺を寄せて尋ねた。
嫌がらせのように徹夜明けに呼び出されたのはともかく、石の事で話があるとなれば、その内容が決して穏やかなものでは無い事は想像がつく。
「ちょっと、ね・・・・・・」
青木は、少し表情を険しくして言いよどんだ。
その表情から、彼女が誰の事を話したいのかが何となく伝わってきた。彼女にこれ程心配そうな表情をさせる人間はかなり限られている。
「長井さん・・・・・・ですか?」
「まぁ、そういう事」

114 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/02/27 03:38:24
――――長井秀和。
青木さやかと、もっとも親交が深いピン芸人。
かなり古くからの付き合いがあり、もはや性別を超えた親友と言っても過言ではない関係――――ついでに、男と女であるが故に色々と誤解される間柄――――だ。
そして、つい先日に起きた出来事に、彼と波田は深く関わっている。
「この間の収録前、あいつ石のせいで暴走したんでしょ?」
「・・・・・・えぇ、まぁ」
芸人達の間にばら撒かれている、尋常ではない力を秘めた石。
拾ったらしい石と拒絶反応を起こした長井は、「劇団ひとり」こと川島省吾の楽屋に乱入し大暴れしたのだ。
「やっぱりね。昨日スタッフが話してるのを偶然聞いたのよ。
『そういえば、劇団ひとりさんの楽屋の壁の穴、長井さんが開けたってホントですか?』
って・・・・・・で、ピンと来たワケ。それに、その日の出演者調べてみたら石の暴走止められそうなのは波田君しか居なかったから」
話を聞きながら、波田は青木に聞こえないように小さく溜息をついた。全く、彼女の勘の良さと行動力には敵わない。
川島の能力の欠点は、「追求する意欲を喪失させる」事は出来ても「相手の疑問を消して納得させる」事は出来ないという点だった。何があったか聞く気は失せても、壁に開いた穴に対する疑問は消えなかったのだろう。
「・・・・・で、俺にどうしろと?」
「あいつの石に対する順応性の高さ、波田君なら分かるわよね? どんな石の能力でもある程度扱えるみたいだけど、合わない石を無理に使って暴走起こしたら普通の人間には手が付けられないわ。波田君だって、また巻き込まれるのは嫌でしょ?」
「まぁ、確かに」
「だから、もし手に入れた石の中に完全に合うヤツを見つけられたら真っ先に渡してやって欲しいのよ。自分に合う石を手に入れれば他の石に振り回される事も無いだろうから。それでなくても最近妙なヤツらがウロチョロしてるし、何かあってからじゃ遅いし、ね?」
黒いユニットを『妙なヤツら』の一言で片付けてしまう所が青木らしいが、その表情には長年の親友への心配が色濃く現れている。
「分かりました、努力はしてみますよ」
波田がそう口にしたちょうどその時、ウェイトレスが注文したコーヒーを運んできた。



中途半端ですが、今日はここまでで。
次回(後編?)はちょっとしたバトルに突入する予定です。では。

115 :クルス ◆pSAKH3pHwc :05/02/27 14:09:37
先日はsage忘れすいませんでした。
ハロバイ編の序章が完成したので投下させていただきます。

では、しばらく駄文にお付き合い下さい。



願い人


「俺、やっぱり嫌だ」
関は手首の小さな紫色の石をいじりながら言った。皮紐のブレスレットに加工されたそれはシンプルで、普段アクセサリーを全くと言って良いほどしないはずだが少しの違和感も無く、元々そこに存在していたかのように馴染んでいた。
「嫌だって言ってもさぁ」
振り返った金成の腕にも同じ革紐。やはり薄黄色の石がつながっていた。悲しそうな、複雑な表情を浮かべる関の隣に腰掛ける。
「先輩命令だし、もう今更手放すわけにもいかないだろ」
先輩である脇田に石を託されたのは1週間前。
勿論石の事は知っていたし、それを巡る戦いの事も知っていた。しかしそれについて興味は無かった。
そんな二人に石を託して脇田はどうしようと言うのだろうか。真意は分からない。だが今の二人は何とか石を使いこなし、襲われる度に覚えたばかりの力で乗り切っていた。
しかし襲い来る敵を追い返す度、力を使う度に関の顔からは笑顔が消えていった。
「関、辛いのは分かるけど仕方ないだろ。受け取った以上、能力者である以上、これは俺らが―」
金成の言葉を遮るように椅子がガタンッと音を立て、関が立ち上がった。
「俺は庄司さんみたいになりたくない!!」
石の暴走によって我を失った庄司。関はそんな庄司が後輩を殴っているところを偶然見つけ、止めに入ったところで逆に殴られて傷を負わされてしまった。
腹を中心に殴られた傷の痛みはなかなか消えず、しばらくは動く事も満足に出来なかった。今でもその痕は痛々しく残っている。
当時何も知らなかった関の心には相当な恐怖体験として刻まれているのだろう。
そして石を持った今、庄司の様に石が暴走してしまうのではないか、自分が自分でなくなってしまうのではないか。石の持つ強すぎる力に怯えていた。


116 :クルス ◆pSAKH3pHwc :05/02/27 14:10:18
「カリカの二人も、石持った所為であんなになったんだろ?俺は嫌だ!芸人同士で争わなきゃいけないなんて嫌だ!!」
滅多に見せない弱い姿に少し動揺する。関の持ち味である強気で生意気な姿勢は今はなりを潜め、まるで小さな子供のように弱弱しかった。
金成だって関の気持ちは理解している。庄司だけでなく同期のカリカまで石の力で暴走してしまったことは、金成の心にも少なからず衝撃を与えていたから。

だけど石を持ってしまった以上、何かをしなくてはいけないと思った。黒に染まるのではなく、何か別のことを。
「…関、よく聞け」
16cm背が低い関と目線を合わせる。金成の心には、ある強い決意があった。
「石がある以上、また庄司さんやカリカみたいな人が現れる。むやみに持ち主を襲う奴も出てくる。だったら、石の力が無ければどうなる?」
ゆっくりと子供に言い聞かせるかのような口調で関に問う。すると、関は怪訝そうな顔をしながらも口を開いた。
「…能力が、使えなくなる?」
そうだ、と金成は頷く。二人は白も黒も興味は無い。どうすれば良いのか分からずに、ただ襲われれば力で追い返すだけだった。
だが、金成はずっとそれに申し訳無さを感じていたのだ。
彼の石は戦闘向きではない故に、大抵の場合は戦闘向きの関の石を使うしかなかった。
関を守りたくても、いつも逆に守られる。自分の為に力を使わせる事が辛かった。
「なら、石の力を封印すれば誰も苦しまない」
少しでも関の苦しみを減らしたい。相方に辛い思いをさせたくない。それだけが金成の望んでいる事だった。
「白に、入ろう」


117 :クルス ◆pSAKH3pHwc :05/02/27 14:20:13


関が暗い部屋の電気をつけると、趣味で集めている玩具やらフィギュアがいつものように無言で関を迎えた。
「ただいま」
誰に言うでも無く呟き、床に寝転がりため息を吐く。今の自分はきっと酷い顔をしてるだろうと思う。父親にも顔色が悪いと言われた。男手1つで育ててくれた父親だ、あまり心配はかけたくないのだが。
関は左腕を上げると、手首の石を見つめた。
「…白に入れば何か変わるのかな」
先ほど、金成に「白に入ろう」と言われた。少し考えさせてくれと言って今日は別れたが、明日にでも返事をしなくてはいけないだろう。
今日は、つい弱音を吐いてしまった。金成は今まで1度も石を使いたくないとは言わなかったのに。
金成だって仲間の芸人を傷つけるのは嫌なはずだ。石の力は怖いはずだ。それなのに自分だけ我侭を言って、金成を困らせた。

もうどちらにも興味は無いなんて言っていられなかった。

関は携帯電話を手に取ると、急いで金成の番号を選ぶ。響くコール音がもどかしい。
「もしもし金成?俺、白に入る。石を封印する」
金成の為に石を使おう。お笑いの世界に誘われた時のように、金成に付いて行こう。そう決めたら、道が開けた気がした。
「二人で頑張ろう」
ああ、と金成が嬉しそうに言ったのが聞こえた。
「あっ、金成!」
電話を切る直前に止められた金成が、え?と間抜けな声を出した。
「ありがとう」
久しぶりに、心から笑えた気がした。


以上です。とりあえず二人が白に入るまで。
ちなみに石は関さんがスギライト、金成さんがベリルです。
能力はまた次に。
乱文失礼いたしました。


118 :“愛犬元気”遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/27 19:43:19
8Y4t9xw7Nwさんの強気な青木さんと押され気味な波田さん
面白かったです。でも、やっぱり長井さんにはやさしいんですね。

クルスさんのハロバイのお話、関さんの弱気さが何か新鮮です。
二人はどんな能力があるんでしょうか。

以下キングオブコメディ黒への布石話今野編です。


冬の夕暮れは早い。
今野が家に帰ると玄関はもう薄暗くなっていた。
家には誰もいないが玄関で愛犬が出迎えてくれる。
−やっぱり冬は肉まんだよな
手に持ったコンビニの袋の中には肉まんが入っている。
今野はふともう一匹の愛犬が出迎えに来ないことに気付く。
昼寝でもしているのだろうかと思いながら靴を脱いで犬用ベッドのある部屋に
行くがもぬけの殻だ。
何となく気になってテーブルの上にコンビニの袋を置き、他の部屋を探す。
まさか落ちたのではないかと思い風呂場まで探すがどこにもいない。
今野はだんだん心配になってきた。まさか逃げだしたのだろうか。
その時携帯が鳴り出した。


119 :“愛犬元気”遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/27 19:46:48
−この忙しい時に
しかしとりあえず出ることにした。設楽からの電話のようだ。
「プロデューサーですか?」
「…そんな呼び方してたっけ?」
「だってマジキモいマンズのプロデューサーじゃないですか」
「余裕あるね、大事なペットがいなくなったって時に」
「何で知ってるんですか?」
「だって今俺の膝の上にいるもん」
「…何言ってるんですか」
「あ、信じてないね。今声を聞かせてあげるよ。1+1は?」
犬が一声鳴いた。
「おお、賢いねえ」
聞き間違えようの無い愛犬の声だ。今野は思わず愛犬の名前を呼ぶ。
「声だけでわかるの?」
設楽の問いを無視して今野は声を荒げる。
「ちょっとお、何でそんなことするんですか」
「人質っていうか犬質?さすがにうちでは飼えないけど
某犬好き有名芸能人に預かってもらうから。
今野君の所よりいい物が食えるって喜ぶかもよ」
その時鼻にかかったような声で愛犬が鳴くのが聞こえた。
「ん、何だ、うわっ、顔はやめろよ顔は」
どうやら設楽は愛犬に顔を舐められているようだ。
今野は愛犬のあんなに甘えた声をしばらく聞いていない。
大体俺の顔を舐めたことなんて一度も無いじゃないか
今野は設楽に対して激しい嫉妬を覚えた。
簡単に他人に懐く愛犬にも腹が立つ。
設楽が愛犬に対して説得の力を使った事など今野が知るはずも無い。
今野は携帯を握り締めていった。


120 :“愛犬元気”遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/27 19:56:33
「何でこんな事するんですか?」
「頼みを聞いて欲しいんだよ」
それは頼みではなく脅迫ではないかと今野は思うが声に出して
言う事はできない。
「でも本当かわいいよね、この犬。飼い主に似てなくて」
「ほっといてくださいよ」
今野は吐き捨てるように言った。
「でもあんまりかわいいと絞め殺したくなっちゃうよね。
食べたい程かわいいっていうの?ポシンタンとかいうんだっけ
韓国の犬鍋。あれ、温まりそうだよねえ」
普段なら冗談で聞き流せる言葉のはずだ。
しかし設楽の声にはいつもと違う冷たい響きがあった。
「や…」
今野の口の中は渇いてかすれた声しかでなかった。
受話器の向こうから笑い声が聞こえてきた。
設楽は笑い声を噛み殺しながら言う。
「何マジになってんの。今のなんかエロかったよ。
おい、こらお前また…」
そういいながらまたじゃれあう声が聞こえた。
―こいつは誰だ…
今野にはそのじゃれあう声が遠くに聞こえた。
今野は携帯を握る自分の手がびっしょりと汗をかいているのに気付いた。
いつの間にか部屋の中は暗くなっていた。
「どうすればいいんですか」
「簡単な事だよ…」
テーブルの上の肉まんは冷え切っていた。


以上で終わりです。
設楽さんの「説得」は動物にも使えるという解釈です。
お試し期間中。さんに伝言があるのでしたらばのネタバレの方に
書いておきます。

121 :遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/27 20:10:16
言い忘れました。
キングオブコメディ黒の布石話、中途半端ですが以上で終わりです。
読んでくださった方ありがとうございました。


122 :名無しさん:05/02/27 20:38:01
犬質ワロタ。設楽氏はほんとにマメだなあwGJでした。

123 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/02/27 20:40:17
そういえばこの前のバク天では太田さんが田中さんの猫を「人質ならぬ猫質」にしてたなぁw
とっても面白かったです。乙でした。

124 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/27 22:32:01
書きかけの話があるのですが、◆y7ccA.UenY さんの話を読んで即興で書いてみました。


「頼みごとの前に一つ面白い話をしてあげよう」
「面白い話?」
愛犬を人質ならぬ犬質にとられ、気が気ではない今野は急かす様に繰り返した。

「最近君達の事務所の空気がおかしくなった事は、気付いてるね?」
「ええ、まぁ…矢作さんの事ですよね?」
元に戻すのを手伝って欲しいと協力は求められたものの、
その経緯についてははっきりとは教えてもらえずに居た今野は問いに答えつつ尋ね返した。
「…そう、その矢作さんの事についてなんだけど、面白いこと知ってるんだ」
矢作の件について今野が知らされていたと知った設楽はニヤリと口元に笑みを浮かべる。
「実はね…」設楽の意味有り気な間に、
「実は?」今野は待ち切れず急かすように訊ねた。
「矢作さんがああなったのは白いユニットが原因なんだよ」
即興で思いついた嘘。
だが少しの情報しか持たない今野はそれを見破れるはずが無い。
「え?だって、協力してくれって言ってた渡部さんや児嶋さんは白の…」
「そう。君はきっと彼らからこう説明を受けてるはずだ。
白は石を封印する為の良い集団、黒は石の力を私利私欲に使う悪い集団だと」
携帯越しに今野の動揺を感じた設楽は更に嘘を続ける。
「確かに、そんな話は聞きましたよ」
俄かには信じ難い突然の話。混乱による焦りから今野の口調が早くなる。
「そんなのは白の人間が都合の良いように言い換えた嘘さ」


125 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/27 22:33:10
「彼らは石を封印して何をしようとしてると思う?自分達の持っている石以外を全て封印して。
石を持つ者と持たない者の力の差は歴然。
石の力を持つ者は力で力の無い者を支配することが出来る」
もっともらしい事を冷静に説明されて、これが嘘と気付ける者は居ないだろう。
「黒はそれを防ぐ為に石を持つ者を統一し、管理する為の組織なんだ」
「そんな…それじゃあ、渡部さんたちは俺達に嘘をついていたとでも…」
設楽は犬の頭を撫ていた手を止め、机の上に置いてあった己の石を摘み上げる。
「ちょっと本題から離れたね…話を戻そう」
明らかに動揺していると分かる今野の言葉に、設楽は満足げに微笑んでいた。
「矢作さんは…白のやっている本当のことに気付いたんだよ」
真剣な口調とは裏腹に、設楽の表情は笑っている。
「同じ事務所の芸人として、周りの目を覚まさせようとしたんだ」
設楽は手元の石の光を眺めながら、ゆったりとした口調で話し続けた。
「でも君の事務所は殆どが白のユニット。矢作さんは彼らに…」
今野の携帯を握る手に力が篭る。
「嘘だっ!先輩達がそんなことするわけない…そんな話俺は認めない!」

そう簡単に信じられるはずが無かった。あんなにも皆が和気藹々としている事務所内で、
自分達の知らない間にそんなことが起こっていたなんて。
「そして…君達が石を拾ったことを嗅ぎ付けた彼らは、
君達を自分達の側につけるために嘘をついて言い寄った」
能力の仕上げの為、設楽は反論させる隙を与えないように話し続ける。
「そ…んな」無意識に携帯を握る今野の手が震える。
信用していた事務所の先輩から真実を教えてもらえなかった悔しさと、
重大な事がすぐ身近で起きていたのに気付くことのできなかった悔しさ。

126 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/27 22:34:57
「それまで君達を避けていたのは、石を持たない者に便利な石の存在を知られない為」
そんな理不尽なことがあっていいのだろうか。
「嘘…だ」今野は完全に設楽の能力に捕らわれていた。
「そういえば、CUBEの石川君だっけ?」
「…?」皆に避けられていると感じていたとき、
それまで通り普通に接してくれた人物の名前に心の緊張が緩んだ。
「彼は黒いユニットの一員だよ」
「そう…なんですか」
今野の言葉から動揺の色は消えていた。諦めたような、悟ったような静かな口調だった。
さあ、仕上げだ…設楽は心の中でそう呟き、石に力を込める。
設楽の石が強く光を放った。
携帯越しの今野は、目の前に青い光が広がる気がした。
「君モ…黒イユニットニ入ラナイカ?」

127 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/27 22:36:27







「それじゃあ俺はこれで」
落ち着いた様子で電話を切ろうとする今野を、設楽が呼び止めた。
「ちょっと待って。大事な事を忘れてるよ?」
「なんですか?」
「後で犬を返しに行くよ。ちょっと遊んでもらっただけで、本当に何もしてないからね」
「分かりました」
短く返事をした今野が携帯を切る。

設楽は携帯を机の上に置き、膝の上の犬に視線を落とす。
いつの間にか眠っていた犬の背をゆったりと撫で、その感触に眼を細める。
「人間の心ってのは本当に簡単に出来てるんだな…
お前の方がもう少し時間が掛かった気がするよ」
設楽は膝の上で眠る今野の愛犬を起こさぬようそっと手を離し、
「さて、相方のほうはどうなったかな…」
机の上の携帯を手に取ると電話を掛けた。

128 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :05/02/27 22:40:14
皆さん書くのが早いですね。読むのが追いつかなくて苦労してますw

◆y7ccA.UenYさんキング話乙でした。
早速続けて書かせてもらいましたが、次回作もお待ちしております。
考えて下さった能力も面白いので、キングを動かすのが楽しみですよ。

129 :遅れてきた青年 ◆y7ccA.UenY :05/02/28 00:31:43
>>124-128
お疲れ様です。
即興で書けちゃうんですね。すごいなあ。
何かお試し期間中。さんの書いたキングが読めるだけでもう。
自分で書いといてなんですが今野も愛犬を返してもらえるみたいで
良かったです。
書きかけのお話も楽しみにしてます。



130 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:17:20
>>20-26 の続き

どこか濃厚で、それでいて暖かい金色の光。
それはライブの終わりに舞台に現れた時、浴びせられるライトや客席からの満足げな視線に似ていて。
ネタを演って疲れた身体や心を癒やし、次への励みを与えてくれるそれらのような煌めきは
芸人達をしばし包み込んだ後、ゆっくりと薄れていった。

「・・・赤岡っ!」
やがて視界が元通りになっても、まだ少し感じる余韻を破るかのように上がったのは、島田の声。
彼の目前の床の上には、キョトンとした様子で座り込んでいる、黒い髪の長身の男がいて。
「何だよ、この・・・馬鹿ぁっ!」
よろよろと力なく歩み寄り、床にひざをついて。
どこか叱責するような声と共に島田は男に・・・赤岡に腕を伸ばしてしがみ付いた。
その細い腕は空を切る事なく、しっかりと赤岡の身体を捉える。
設楽によって付けられた打撲の傷は多少残っているけれど、虫入り琥珀によって消失していた左腕は
しっかり復元されているようである。
「余計な手間・・・掛けさせやがって・・・・・・」
「・・・・・・悪い。」
しばし島田の行動の意図が掴めなかったのか、不思議そうな表情を浮かべていた赤岡だったが
フッと口元に笑みを浮かべ、そう島田に応じてみせた。
「でも、ああしなきゃ、お前の事・・・助けられないと思ったから。」

あの時、落下してくる鉄骨を避ける事自体は赤岡にとってそう難しい事ではなかった。
しかし、鉄骨と一緒に島田も降ってきていた以上、彼を受け止めて逃げようとすれば
どうしても間に合わなくなる。
黒珊瑚のポルターガイスト能力でも、さすがに空中の島田を動かす事まではできない。
ならば。
虫入り珊瑚で島田の落下の軌道を変え、己の残りの存在をかき消して鉄骨を回避すれば。

131 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:19:02
「俺が助かっても、お前が消えたら意味ないだろ・・・本当に・・・。」
赤岡にしがみ付いていた腕を放し、その頭に軽く拳骨を見舞って島田が憮然と赤岡に告げる。
「その点では・・・まぁ・・・信頼してましたから。」
島田と、そして小沢の事を。そんな言葉の最後の方は口にせず、赤岡は視線をもたげて小沢の方へ向けた。
虫入り琥珀の力が通じなかった小沢なら、何とかして自分を消滅から救うだろうと。
都合の良い信頼ではあるが、実際にこの人はそれに応じてみせた訳で。

「小沢さん・・・?」
淡い青緑の光をこぼすアパタイトを手に、じっと佇む小沢に赤岡は声を掛けた。
「・・・・・・・・・・・・。」
小沢は、答えない。
焦点のあっていない瞳を虫入り琥珀に向けたまま。
「・・・小沢さん?」
島田も小沢に呼び掛ける。それでも、小沢はピクリともしない。
「小沢さんってば!」
再度呼び掛けた島田の声の調子に、3人から少し離れた位置にいた井戸田と江戸むらさきの2人も
何か異常があった事を察して駆け寄ってきた。

「小沢さんっ!」
慌てた調子で耳元で井戸田が呼び掛け、肩を掴んで揺さぶれば。
そこでようやくハッと我に返ったように小沢はビクッとその身体を震わせた。

「あ、あぁ・・・ゴメン。」
一度首を横に振り、それでもまだどこかボーっとしている様子を見せながら小沢は井戸田に、
そして周囲の面々にそう答える。
「何か・・・慣れない事したから・・・頭の中が変な感じで。」
でも本当に大丈夫だから、と付け加えて小沢は小さく微笑み、不安げに見やる井戸田の手を払って
号泣の2人の方へと歩み寄った。

132 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:19:47
アパタイトの力を虫入り琥珀に対して行使した、その時。
小沢は貧血を起こした時のような全身の力が抜ける感覚に襲われ、視界も不意に白く染まってしまっていた。
それは時間にして数秒ほどの出来事だったかも知れないけれど。
小沢には何か、メッセージのようなモノが聞こえたような気がしていた。
聞き覚えのある声であるように小沢には思われたが、それが誰の声で、一体何を伝えようとしていたのかまでは
生憎どうしても思い出せないけれど。

「度々、済みません。」
「・・・これっきりだからね。君の変な信頼に応えるのは。」
近づいてくる小沢に対し、赤岡は床に座ったままぺこりと頭を下げる。
彼にしては珍しいぐらいの素直な態度・・・尤も、彼がやらかした事を思えば当然の話ではあろうが・・・に
小沢は肩を竦め、そう告げた。
「まったく・・・色々ありすぎて当初の目的が何だかわかんなくなってきたよ。」
そうだ。最初、赤岡が話があるとここまで小沢を引っぱり出してきたのだ。
本題に入る前に設楽が現れ、気が付いたらこんな状況である。
「その事については、いずれ改めて話します。どうやらあなたには・・・・・・」
その資格があるようだから。小沢を見上げ、赤岡が続く言葉を口に出そうとした、その時。
急に苦しげな表情を浮かべたかと思うと彼は手で口元を押さえて俯き、咳き込み始めた。

「・・・赤岡?」
ゴホゴホと肺の底からむせ返る中で、赤岡の口から黒いドロリとした液体が吐き出され
手の隙間を通って床に滴り落ちる。
「どうした、悪阻か?」
「・・・潤さん、それ違うから。」
「・・・・・・・・・・・・。」

133 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:24:46
口ではそれぞれ言いながらも、一斉に不安そうに覗き込む一同の中央で、
赤岡はひとしきり液体を吐き出すと、俯いたままゆっくりと乱れた呼吸を整えようとする。
口元を押さえていた手を離し、赤岡はべっとりと付着した黒い液体を払おうと小さく振ったが
液体は短い間に固体・・・いや、黒い結晶に変化していて赤岡の手から離れない。

「何、これ・・・・・・。」
もちろん床に落ちた分の液体も黒い結晶に変化しており、小沢は思わず屈み込みながら赤岡に訊ねる。
「黒い、欠片。」
その問いに答えたのは、赤岡ではなかった。
淡く輝く白珊瑚を手の平に乗せ、その輝きを黒い結晶の張り付いた赤岡の手へ浴びせかけながら。
島田が誰かに聞かせるというよりも、自分で確認するかのような静かな口調でそう、呟いた。
「詳しくは知りませんが・・・石を濁らせたり、暴走させるために用いられる物だと、聞きました。」
「・・・って、誰にだよ?」
俺、知らなかったぞと問う野村の方を見上げ、島田は答える。
「いつここの・・・菊地くんに。」
白珊瑚の光を受けて、赤岡の手の黒い結晶はジュッと蒸発して溶け消えた。







134 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:26:26
雨は、まだ止まず。雨粒が天井を激しく打つ音がバラバラと遠く聞こえてくる。
己の石を・・・水を操るアイオライトを酷使した代償である、発熱の気配を感じながら
菊地は何とかその場に立ち、乱れた呼吸を整えていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
彼の目の前には、床に倒れた長身の男とそれを介抱しようとする同じぐらいの長身の男がいて。
軽く視界を巡らせれば、別に3人ほど気を失っている男達の姿もあるようだった。

・・・もう少しなら、無理も出来るだろうか。
一度額に手をやり体温を確認して、菊地はアイオライトに意識を集中させる。
すると彼の近くにある雨漏りして床に広がった小さな水たまりから、ふわりと重力に反して
水の固まりが浮かび上がった。
眉間に軽く皺を寄せて、菊地はいつもなら無条件で攻撃に用いる為の水を、違う用途で用いるために
石の力を借りて変質させる。
「・・・・・・・・・・・・。」
間もなく淡くアイオライトの青紫の輝きを帯びた水の固まりを、菊地は一瞥して小さく弾け飛ばした。

ぴちゃり。
菊地により黒珊瑚を氷でコーティングされて暴走を押さえ込まれ、気を失った赤岡の頬に
どこからともなく水が降りかかってくる。
化粧水か何かのように水は即座に赤岡の肌に吸収されて。
何とか抱き起こそうとする島田の目前で、赤岡の瞼がピクリと動いたかと思うと、彼はゆっくりと目を開いた。
癒やしの水は赤岡だけでなく、黒の下っ端であろう若手の3人にも振り掛けられる。
こちらは赤岡よりも負った傷が重いため、即座に治癒はしないだろうけれども。
それでも明日には何事もなかったかのように振る舞うことができるだろうか。

「菊地くん! 赤岡が・・・」
「・・・みたい、だね。」
パァッと表情を明るくさせ、菊地の方を振り向いて声を上げる島田に菊地は軽く応じてみせる。

135 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:28:05
「良かった。」
けれど続けて口からこぼれた言葉に、ふと菊地は戸惑いを覚えた。
・・・これで、本当に良かったのだろうか。
『シナリオ』は下っ端の勝手な判断によって乱され、黒き石の仲間として迎え入れるべき
赤岡の黒珊瑚は予定外の暴走を引き起こしてしまった。
何とかこうして押さえ込みはしたけれど、これは当初の目的からは程遠い結果であろう。
あの3人、そして本来あの3人を監視するべきだった人間と菊地。
いずれにも何かしらのペナルティもしくはそれに準ずる厄介な任務が下されるのは間違いない。
集会の独特の重い空気を思うと、菊地は自然と憂鬱な気分になってしまうのだけれど。

それでも、島田の笑顔や赤岡を酷く傷付ける事なく黒珊瑚を押さえ込めたという妙な達成感が、
菊地には心地よく思えるのだ。

シャカに18KIN、そして相方と、号泣の2人と親しくしている人間が自分の回りに何げに多い。
2人にもしもの事があれば、きっと彼らは悲しむ事だろう。
それが厭だから・・・だから、わざわざ自分は力をセーブして本気で相手を傷付けないように戦ったのだ。
そしてそれが上手く行った。そうだ。それだからに違いない。

136 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:30:46
必死に己を納得させるように菊地は自分に言い聞かせる。
ずっと黒の側の石の使い手として、時に相手を病院送りにする事も辞さず、戦ってきた。
ただそれが、相手を石を巡る戦いから退場させ、白の側に取り込ませないようにさせる手段だと思えたから。
すんだ自分の2つの石の光が戦いの後に濁るようになっていても、それが相手の為だからと。
けれど、今は。今だけは、それは違うような気がしてならない。
るつぼから流れ出たようなドロドロする菊地の違和感が、島田の白珊瑚の光を間近で浴びた為だと。
浄化の光によって凝り固まった彼の心の中の黒い欠片が一時的に溶けたためだと菊地が気付くのは、
もうしばらく先の事になるだろうけれど。

「菊地くん、菊地くん!」
今は、己を呼ぶ声に、素直に応じるだけ。
「あ・・・どうしたの?」
何気なさを装いながら島田達の方へ一歩足を踏み出した時、菊地は軽い眩暈を覚える。
念のために帰りがけにドラッグストアで冷えるシートを買っていこうか。
「何か・・・赤岡のヤツ、変なのを吐いてて・・・。」
「それは・・・。」
島田に言われ、見れば赤岡の傍らに黒い欠片が吐き出されていた。
その欠片の量は菊地の知る適量を上回っているようで、それなら石が拒絶反応を起こしても
仕方がないかもしれない。
・・・まったく、何も知らないでやるから。
そう呟きたくなる衝動を、菊地は自然とその言葉ごと喉の奥に呑み込んでしまっていた。

「それは・・・黒い欠片。力のある石を濁らせたり、さっきの赤岡くんみたいに暴走させたりするモノ。」
代わりに菊地の口から発せられた言葉は黒いユニットの一員というよりも
むしろ白いユニットのメンバーが発したような、相手に注意を促す口調でのもの。
今回黒の側に引き込む事に失敗した以上、警戒して2人が白の側に走る事は充分に考えられる。
次に黒が勧誘するべく働きかけるのがいつになるかはわからないけれど、せめてその時のために
最低でも白のユニットに興味を持たないよう仕向なければ。

137 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:32:28
「何のために・・・そんな事を・・・。」
「2人は、不思議な力のある石の事は、聞いているよね。」
まだ回復したばかりで力のない赤岡の目と、不安げな島田の目が己に向けられているのを感じながら
菊地は2人にそう告げた。
菊地からの問いかけに、島田はコクリと首を振って、赤岡は目線だけで頷いてみせる。

「その石を巡って対立している2つの陣営、白いユニットと黒いユニットがその駆け引きで・・・使ってるって。」
そう聞いた事がある。
実際に黒の欠片を用いているのは黒いユニットだけだけれども、続けて2人に話す言葉の最後を
伝聞の形にしたのは、無意識から来る菊地なりの保身だろうか。
「2人とも・・・ユニットになんか、属しちゃ駄目だからね。」
けれどある程度冷静に情報を処理する余裕さえあれば、だったら何故菊地が黒い欠片の事や
ユニットの事を知っているのか、疑問に思うところもあるだろう。
とはいえ、今の2人は卵から孵ったばかりのひよこと同じ。
石とそれにまつわる詳しい情報を知っているのは目の前の菊地だけ・・・という状況であれば、
そう簡単に彼の言葉を疑いはしない。
上手い具合に刷り込みを施しておけば、しばらくの間は警戒してユニット同士の争いには近づかないだろう。

もっとも、わざと白いユニット側を悪く言って黒に興味を持たせることもできただろうし
本来の菊地の立場をすれば、そう話しておくべきだったのかも知れないけれど。
そうできなかったのは、やはり島田の胸ポケットの中で淡く光を放つ白珊瑚のせいだろうか。
「わかった。白いユニットと黒いユニット・・・・・・両方とも、気を付けるよ。」
確認するように呟く島田の言葉に、菊地はそういう事、と頷いてみせる。

しかし、この彼の言葉が赤岡と島田にとって立場を貫く指針となり、後に改めて2人を勧誘に向かった
黒のユニットの芸人達がことごとく返り討ちにされる、原因にもなってしまったのだけれども。




138 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:34:53
「・・・黒い欠片、ねぇ。」
島田からかいつまんで説明を受け、小沢は床で凝固している欠片を指でつまみ上げた。
とても人の喉を通れるモノとは思えない、ガラスの欠片のような物体。
白いユニットの中の人間で、この欠片を用いて何かをしようとした芸人を、小沢は知らない。
ならばもう一つのユニット、黒いユニットが持ちいているモノなのだろうと考えるべきなのだろうか。

井戸田も小沢に倣って欠片を指でつまみあげ、欠片を目の近くへ持っていって凝視しようとしてみる。
刹那。彼の首元で急にシトリンが警告を発するように輝きと熱を持ち始めた。
「う・・・うわぁっちゃ!」
よほど熱かったのだろうか。指から欠片を取り落として井戸田は身悶える。

「・・・潤?」
確か説明によれば、この欠片には石を濁らせる力があるという。
その為、近づけられた欠片に井戸田のシトリンが過剰に反応したという事なのだろうか。
そう考えれば、小沢にはやはりこれは混乱を引き起こそうとする黒の連中が扱うモノとしか考えられない。
証拠も少ないのにそう安易に決めつけるのは良くない事だとは思うけれど。

「・・・何やってるんですか。」
「だってよぉ・・・。」
熟考する小沢の側で、緊張感ないですよと呆れたように肩を竦める磯山に、唇を尖らせて井戸田が
何かを反論しようとした、その時。

「おい、ちょっと待てよ。」
何かに気付いたのか急に井戸田はハッとして、その口元を手で覆う。
「どうしたの、潤。」
「いや、確証はねぇんだけど・・・・・・その、よ。」
少し戸惑ったように周囲を見回し、それから口元を手で覆ったまま井戸田は小沢の元に近づいて。
そっと小沢の耳に囁いた。

「この欠片・・・さっき設楽さんが外で吐いてた気がする。」

139 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :05/02/28 11:48:06
昨日からの投下ブームに乗っかるように、自分も投下。

設楽さんは今野さんの愛犬にどうやって説得かましたんだろう・・・
やはりムツゴロウさん方式なんだろうかw

140 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:14:33
前スレ>581あたりからの続き。


<<jamping?>>--02/the beginning


始まりは、唐突に。


ある日の深夜、自宅で。
何故か、秋山が1人で酔っている。
傍らには、何処かで見たような人形が数体あった。
秋山の言葉に、誰かが囁く。
「・・・なぁ・・・俺、頑張っとるよなぁ・・・?」
『うん、リュウジはとっても頑張ってるよ』
「・・・だよな・・・そーだよなぁ・・・」
『大丈夫?リュウジ、飲み過ぎじゃないの?』
「う・・・ん、気持ち悪いかも・・・」
それを聞いて誰かは慌てふためいた。
『大丈夫?』『お水持ってこようか?』『袋要る?』
「・・・ありがと。」
その後、秋山は暫く看護を受けていた。

時を同じくして。
「――――なんで」
西野が自宅内の鏡の前で固まっていた。
「なんでなん・・・・・・?俺、なんかしたか・・・?」
首元には、光を放つチョーカー。そして、それに囲まれるようにして彼の身体は色を変えていた。
それは、鼠色とも似てつく鉛色。
ずしりと重量を増した自分の身体に、西野はただ立ち尽くすだけだった。
「・・・・・・これは一体・・・・・・?」

141 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:15:14
そして同じ頃。
ピピッ。っと何処から聞こえる、電子音。
「やっべ」
携帯電話の電池が切れかかっていた。それを見て焦っているのは、板倉。
「早く充電しねぇと・・・・・・っと」
とはいえ、そこは街中で、充電できるような場所もなく、板倉はちょっと困った。
これから家に帰るまで、連絡が取れなくなるのは寂しい。
――――不意に、自分の右足首から光が零れ出したような気がした。
パリッ。
そして、次の瞬間には、蒼い光の帯が板倉と、その手に有った携帯電話を包んでいた。
雷が落ちたような物凄い衝撃音。
それが収まり、彼が「なんだ今のっ!?すげぇ!」と言っている頃には・・・。
既にその掌で電池が満タンになっている事に気がついただろうか。

これは始まりでしかない。むしろ、始まってもいないかもしれない。


142 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:16:08
つい先日の話である。
それはアンクレットを作って間もない頃。
山本は1人、堤下を近所の空き地に呼び出した。
今芸人の間で流行る石の話、そして石には不思議な力が宿っている事。
それが、西野発秋山経由で山本と堤下にも伝わっていた。
ドランクドラゴンは随分前からそれを知っていたことも、また山本は知っていた。
「で、つっつんにたのみがあって」
「ふーん・・・珍しいな博、俺に頼み事なんて?」
「そうかな?」
堤下は一瞬考える。
何故、頼み事頼み事ひとつにこんな場所へつれてくるのか・・・・・・。
それを考えるのには時間が少なさ過ぎたが。
「・・・なんだよ頼みってサ?俺に出来ることならなんでも手伝うよ」
「あ・・・そう?それなら・・・」
山本の目が刹那、何時もとは違う空気を生み出す。
「とりあえず、つっつんが持ってる石欲しいんだ」
そう言いながら右腕を横に突き出す。その腕は、今まで見た事のない光に包まれていた。
「はあっ?」
堤下の悲しい間抜けな声。
――――どごぉん。
一瞬、彼の視界と反応は遅れていた。
目の前にはどでかい抉れた穴、固い地表のはずの地面、そして右の掌をなでる山本。
「お・・・おまっ・・・、今の・・・?!」
「そう、これが石の力・・・!俺のはこんなんだけど?つっつんのは?」
再び右の掌が光に包まれ始めていた。

143 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:20:14
堤下が山本を一瞬睨んだ。
一体どんな力か、少なくとも今ので大体分かった。
肉体強化、あるいはそれに似た能力。
「お前・・・っ、俺に攻撃すんのか・・・?俺に・・・牙を向けるか・・・?」
「向けるさ、自分に必要ならば。ね」
牙を向けた山本が、力を秘めた拳を振りかぶる。
刹那堤下が、決意の表情で山本の振りかざした拳へ石を投げた。
「こんなんでどうなるとでも・・・?」
その矢先に、彼は驚愕した。
投げられた石は、緑色の光に包まれている。
避ける間もなく石が光にぶつかって、どんっと大きい音と同時に山本を吹き飛ばす。
「なっ・・・」
「俺のはこんなんだよっ!」
――――インパルス。
その意味のひとつは電撃。もうひとつは衝撃。
そして、堤下に与えられたのは『衝撃の増幅』の力。
堤下の石が異常なまでの光を保っていたのを、山本は見た。
革の腕輪が翠を称えて輝いていた。
着地して、その自らの力を今度は足に集めながら、彼は聞く。
「それは・・・・・・一体」
「へっ、インパルスの名に相応しいだろ?」
それが、この時堤下が言った最後の言葉である。
何故なら、その直後凄まじいスピードで走りこんで来た山本の一撃が堤下を捉えたからだった。

144 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:21:49
気が付いた時には遅すぎるほどの早さで、拳を相手の腹へぶち当てていた。
「・・・?!」
「避けられると思ってた・・・?遅いよ」
どさっと倒れた堤下を、山本が見下ろしていた。
少し黒ずんだ黄色を放つ、アンクレット。
「・・・さて、石を頂こうかな」
山本が倒れている堤下の腕輪に手を伸ばしかけたその時。
「あれー?博じゃーん?何してんの?」
不意に声がしたほうを見る。
インパルスの片割れ、板倉がそこにいた。
不適な笑みを漏らすその男を、山本がきらり睨んだ。
「・・・堤下?」
「あぁ、今来たら倒れてた」
「え?・・・じゃあ石持ち芸人に襲われたのっ!?」
「まぁ、そんなとこかな」
山本はそう言って、ここを切り抜ける寸法である。
あとから自分が襲った事がばれても、この状況よりはましだろう。
なにせ、自分は能力を何度か使ったあとだし、板倉の能力は不明だ。
そんな事も知らずに、そっか、と一言漏らしたのは板倉。
「でも、別段俺にもつっつんにもケガないから」
大丈夫。それだけ伝えて山本は家路につく。
「ありがとー、相方護ってくれてー!」
板倉が細身の背中に叫んだ。
そしてそれが遠くなり、見えなくなってから、彼は堤下をどうしようか考え出した。
一方の山本は、少しだけ寂しそうな目をしてからぽつり
「わりーな、相方気絶させちゃって」
誰に言うでもなく、自然とそう口が動いていた。

145 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:25:33
本文は以上です。
と言う訳で、はねる編メンバーの能力を。
名前だけ出てきた秋山さん&西野さんも一緒にいれておきます。

ロバート
秋山竜次
石:ピーチクォーツ(友情を高める)[アンクレット]
能力:無生物に命を吹き込む。
ただし、自分で操る事はできず、命令程度。
また、命を吹き込まれた無生物は、秋山の半径15M以内から離れると行動不能になる。
条件:連続使用は最大でも30分程度が限度、一度にはいつつくらいが限界。
使いつづけていると、制御が利かなくなる。
どんな性格になるかまでは、秋山には選べない。

山本博
石:レモンクォーツ(浄化力があり、意思を強く持つ)[アンクレット]
能力:自分の身体の力を溜めて、好きなタイミングで解放できる。
握力を一時的に低下させ、何時もの握力分の力を石に溜めて、
その力を脚力に変換して開放したり出来る、と言った使い方。
溜められる力の上限は特に無い。
また、変換できるのは「力」と付いた自分の身体能力すべて。
なので、決断力を溜めて脚力に変える、という使いかたも出来る。
条件:力を溜めている間は全くの無防備。
また、開放時も一旦溜める必要があるため無防備になる。
また、溜めていた力が空になると強制的に3分間力を溜める。
連続して使用すると、力のセーブが難しくなり、暴発もする。

146 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:27:50
能力続き。

インパルス
板倉俊之
石:カクタス(平和を意味する・黄色、別名サンシャイン水晶)[アンクレット]
能力:電気操作。
静電気から電流まで、電気系統を操る事が出来る。
また、使い方によっては、人間の身体の電気信号を狂わせる事も可能。
条件:電気が発生しやすい状態に、力が比例する。
(例えば空気が乾いていると静電気がでやすくなって、力が上がる)
また、乾電池などの電気を発生させる物があると、威力が上昇する。
ピンポイントに当てようとするとそれだけいつもより力を使う。


堤下敦
石:ワーベライト(素質を生かし、前向きな心で挑戦する・緑がかった銀)[革の腕輪]
能力:物がぶつかり合う衝撃を倍増する事が出来る。
でこぴん一発ではあまりダメージはないが、力を使う事によって人一人が吹っ飛ぶ程度に出来る。
条件:増幅させた衝撃は、自分にも返って来るため、多用できない。
力のセーブがしづらい。

西野亮廣
石:ダンブライト(完全性に近い理想に近い現実に到達できる・無色透明)[黒紐のチョーカー]
能力:体を鉄の様に硬化させることが出来る。また、尖った部分が切れ味がよくなる。
耐久性、材質等は鉄に似ている。
条件:もちろん、重量が増す。動きが遅くなる。
また、水にも弱く、水をかけられると錆びる。

147 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :05/02/28 22:50:24
あ、西野さんの名前の前にコンビ名入れ忘れた;;
以上はねる編でした。長文お付き合いくださりありがとうございます。
感想の方も一緒に書こうかと思ったんですが、如何せん長くなりまして。またしてもご迷惑おかけしてます。

>22様
プラン編から気になっていたもので、今か今かと待ってましたよ!
こんなに早く新展開読めるとは思ってませんでした。
したらばの方でもお待ちしています〜。

>遅れてきた青年様
愛犬元気・・・、犬好きな自分はタイトルから心奪われました・・・。
設楽さんと犬がじゃれ合ってる姿がなんだかほのぼのでした。犬質・・・(笑)

>シャロン様
ありありとバトルシーンが目に浮かびました。カッコイイ!
ペナルティシリーズ心待ちにしてます。

>◆8Y4t9xw7Nw様
青木さん、なんだかんだいって長井さんが心配なんですよね〜・・・。
そして弱い波田陽区w面白かったです。

>おためし様(略しすぎ)
即興で話がかける才能に脱帽。凄いです。見習いたいです。
新作の方も楽しみにしてますね。

>クルス様
今にも追いぬかれそうだ〜!早速物凄い新作お疲れ様でした。
白にも新しい芸人さんが来たようで安心です。

>◆ekt663D/rE様
毎回展開に驚かされています。赤岡さん戻ってきてよかった・・・けど大丈夫だろうか・・・。
どきどきしながら次のおはなし待ってます。

148 :名無しさん:05/03/01 23:54:45
>◆ekt663D/rE様
文に仕掛けがあって驚きました・・。カコイイ!

149 :クルス ◆pSAKH3pHwc :05/03/02 00:57:45
本当にここは投下スピード速いですね。
小説書きの皆様、乙です!どの方も描写がお上手でうらやましいです。
自分も頑張らなくては。

150 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/04 01:46:38
>>114続き。

毒舌家達の憂鬱・中編



途中まで帰り道が同じだからと、ランチタイムが近付くレストランを出て通りを並んで歩く。
まだそれ程人通りも多くない道を無言で歩きながら、青木はチラリと横を歩く小柄な男に目を向けた。
そのズボンのポケットで何かが微かに音を立てているのに気付いて、すぐにそれが何なのかに思い当たる。
「・・・・・・まだ続けてるのね」
思わず口にした言葉は主語の無いものになってしまったが、言いたい事はきちんと伝わったらしい。
俯いた波田は胸元に手をやった。シャツに隠れて見えないが、首には彼に与えられた石――――ヘミモルファイトが掛かっている。
番組で共演する事も多い青木は、波田が暴走した石を回収し、より強い力を引き出せそうな芸人に渡してその能力を観察している事を知っていた。
先程からズボンのポケットで音を立てていたのは、集めた石を入れた小さな袋だ。
「・・・・・・悪趣味だと思われても仕方ないですけど、それがこの石の望みでもあるんですよ。より強い力を引き出せる人間に石を託して、
悪意を持って使うようなら斬り捨てる・・・・・・『黒』に対抗する人間を増やしたがってるんでしょう、きっと」
自分の持つ石と波長が合えば、石から感情が伝わってくる事もあるらしい。波田の言葉も、そうやって石の望みを知ったという事なのだろうか。
「石がそれを望んでるって事は、やっぱり『黒』が正しいっていうのは嘘なんでしょうね。それに、この石は暴走した人も黒い欠片に操られた人も同じように斬る」
ポツリと呟くと、波田は口の端を歪めどこかシニカルな笑みを浮かべた。
「まぁ、だからって『俺のやってるのは良い事だ』なんて言うつもりもありませんけど。俺自身の下世話な好奇心が理由の1つだって事も確かですから」
毒の強い『下世話な好奇心』という言葉をサラリと言ってのけた波田は、ふと真顔になると小声で言った。
「・・・・・・次の角、曲がってください」
次の角を曲がると、そこは人通りの少ない裏路地へ続く細い道のはずだ。
理由を問おうとした瞬間背後に嫌な気配を感じ取った青木は、その言葉に従い角を曲がった。

151 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/04 01:49:24

裏路地へ入ると、大通りを走る車の音が遠ざかったせいか背後の足音が良く聞こえてくる。
(1人や2人・・・・・・じゃないよな、明らかに)
思い切り眉を寄せた波田は、手元のギターケースに視線を向けた。
やっぱり持ってきて正解だったな、と心の中だけで呟くと、人通りが全く無い事を確認して波田は足を止めた。
つられるようにして足を止めた青木を促すように、後ろを振り返る。
「やっぱり、尾行されてたみたいですね」
そこには、予想通り虚ろな目をした4・5人の男達
――――恐らくはまだ養成所などに通う若手芸人なのだろう――――がこちらの様子を窺っていた。
(やっぱり・・・・・・・)
その生気の無い瞳を見て、予感が確信に変わる。
「・・・・・・すいません」
「え?」
「多分こいつら、俺を引き込みに来た『黒』の人間です」
一瞬目を丸くした青木は、再び視線を男達に向けると、納得したように呟いた。
「あぁ、引き込むついでにあんたの集めた石も奪おうってワケ?」
真っ昼間っからご苦労様ねぇ、と呆れたように呟くその声に怯えや恐れの色が全く無いのを感じ取って、波田は思わず小さく安堵の溜息をついた。
ここで彼女に逃げ出されでもしたら、この人数を相手にするのは少々分が悪い。
「・・・・・・どうします?」
「そうねぇ、ここはもちろん・・・・・・」
遠慮がちな波田の言葉に、青木はネタ中のようにニッコリと笑みを見せた。気味が悪いぐらいの、満面の笑顔。
「・・・・・・ぶっ飛ばす!!」
青木はネタ中と同じく――――いや、それ以上の勢いで表情を一変させて叫ぶ。
その迫力に思わず顔を引き攣らせる波田を尻目に、青木は若手達を睨みつけ再び大声で叫んだ。
「どこ見てんのよぉっ!!!」

152 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/04 01:52:47

その声と同時に、青木の身体を薄いエメラルドグリーンのヴェールが覆った。
波田も数度見た事がある青木の石――――マラカイトの力だ。
石の力によって青木の姿を見失った男達は虚ろな表情のまま身構えるが、能力は睨みつけられた相手のみに発動する為波田には青木の姿がしっかりと見えている。
「あたしが時間稼ぐから、一気にやっちゃって」
小声でそう言うと、青木は男達の間をすり抜けて背後に回り、1人の背中を思い切り蹴り飛ばした。
いきなり背後から蹴り飛ばされた男が、つんのめるようにして地面に倒れる。
他の男達は姿の見えない青木を捕まえようとするが、青木は器用に男達の間を逃げ回りそれを許さない。
どこか楽しげに男達を引っ叩き蹴り飛ばす青木を怯えの混じった目で一瞥してから、
波田は持っていたギターケースを地面に降ろし、中から愛用のギターを取り出した。
男達は姿の見えない青木に翻弄され、波田の方に意識を向けている暇が無いらしい。
「ちょっと骨が折れるなぁ、この人数相手だと・・・・・・」
ぼやくように呟くと、ストラップを肩に掛け弦に指を掛ける。その目が、一気に鋭さを増した。
「・・・・・・拙者、ギター侍じゃ・・・・・・」

153 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/04 01:56:18

〜〜〜♪

その指が、独りでにお馴染みの曲を爪弾き出す。
この石の力を最大限引き出すには『残念!』や『〜斬り!』だけではなく全てのネタの流れを実行するのが一番なのだが、
あまりに隙が大き過ぎる為に普段は使えない。
しかし、一度使ってしまえばしばらく眠り込んでしまうという副作用がある以上、この人数を一度に相手にするにはそれをやるしか方法がない。
そういう意味では、一緒に居たのが青木だったのは幸運だった。彼女の能力は相手を撹乱して、力を引き出すだけの時間を与えてくれる。
「僕ら若手 お笑い芸人 まだまだヒヨッコ若手です
この先に続くスターの道を ライバルかき分け進みたい、って・・・・・・言うじゃなぁ〜い?」
即興で考え出したフレーズを掠れた歌声と共に紡ぎ出すと、その首に掛かっているヘミモルファイトが服の内側で微かに光り出した。
男達が波田に視線を向けようとするとすかさず青木が攻撃を加え、注意を逸らす。
「でも、アータ・・・・・・芸人として一番大事な事が分かってませんから! 残念!!」
一際眩い光と共に、ギターが一振りの鋭い日本刀に姿を変えた。
それを力一杯振り上げた波田は、大きく息を吸い込み叫ぶ。
「笑いを侮る若手達・・・・・・斬りぃ!!」
勢いよく振り下ろした刀が光を放ち、一気に若手達を斬り伏せていった。



今日はここまでです。
ちなみに、波田陽区の能力に
「『残念!!』『〜斬り!』だけでなく相手の事を指した歌も歌うと威力が上がる」
というのを勝手に付け加えてしまいましたが、あまりに隙が大きく実戦ではまず使わない、という事なのでできれば大目に見てください(ニガワラ

154 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/04 10:34:23
ペナ編番外編というか、おまけというか…。
本編の補足ってところでしょうかね。
ちょっとほのぼの?ってほどでもないですが
本編とはちょっとズレた話を投下します。






Intermission



某テレビ局で、脇田は数日振りに品川庄司と顔を合わせた。
二人とも戦闘での傷も癒え、もうすっかり元気になっていた。

「ところでさ、」
脇田が言った。
「庄司は何であの時、あの倉庫に来たんだ?」
「あー、それ、俺も気になってた。なんで?」
品川が庄司の顔を覗き込む。
「それが・・・よくわかんないんですよ。」
庄司が頭を掻きながら答える。
「なんか、仕事の帰りに、どうしてもあそこに寄らなきゃいけない気がして・・・」
品川と脇田は顔を見合わせた。
「石が呼んだ・・・んですかね?」
「・・・かもな。」


155 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/04 10:37:09
「でも、俺、石を拾ってからの記憶がないんですよ。」
「え?」
脇田は庄司のほうを見た。
「気が付いたら、品川の家で寝てました。」

石が暴走している間の記憶がないのは知っているが、あの時は庄司の石は暴走してなかったはず・・・

「・・・なんか、そういう石らしいんですよ。」
品川がため息混じりに言った。
「発動したら力の限り暴れるだけ暴れて、力がなくなると爆睡、記憶も消えると。」
「・・・タチ悪い石だな」
「そーゆーこと言わないで下さいよー!」
脇田の言葉に、庄司は不満そうに口をとがらせた。
品川が続ける。
「石が発動したら庄司はコントロールできないから、敵味方なく攻撃してくるし。ほんとお前、つかえねーなー!」
「品川〜!!そんなに言うと、いま石使うぞ!」
庄司がポケットから石を取り出しながら言った。
「まーまーまーまー」
二人の言い合いに脇田が割って入った。

石を浄化する以外には攻撃も防御もできない自分の石。
ただ攻撃をよけることしかできない品川の石。
恐ろしい力を持ってはいるが、誰にも制御できない庄司の石。

こんな石で、俺たちは切り抜けていけるのだろうか。
いつ終わるとも知れない戦いの中を・・・

脇田の苦悩は、今日も続く。

156 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/04 10:44:17

以上です。
・・・みじかっ!!(ニガワラ

>>109
感想ありがとうございました。
確かに…そのつもりはなかったんですけど、面白い顔の芸人さんが多いですね(ニガワラ

>>ブレス様
感想ありがとうございました。
また、したらばの方でのアドバイス、ありがとうございました。
堤下さんがちょっとかっこよさげで心惹かれますw

157 :名無しさん:05/03/04 16:32:44
毒舌家達の憂鬱・中編 &Intermission 乙です!
青木さんのノリノリっぷりに笑えました(笑)
でもすっきりしますわ(笑)

三人の会話がほのぼのしてていいですねv話してることは深刻ですが
閑話休題みたいで安心して読めました。

お二方とも続き楽しみにしてますv


158 :名無しさん:05/03/05 05:24:45
はねトびの話の続きが凄く気になります。頑張ってください!

159 :名無しさん:05/03/05 12:17:20
波田陽区の歌、ちょっとだけカッコよかったw

160 :名無しさん:05/03/05 16:54:42
同じく

161 :名無しさん:05/03/07 13:46:44
◆8Yさん乙です!青木姐さんのタンカの切り方、カッコよ過ぎw
嬉々として若手を蹴り飛ばす様が目に浮かぶようです。
次回も楽しみにしてます!!

162 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:38:56
こんにちは。
今回はラーメンズの話を投下したいと思います。
半分ふざけて半分真面目な話です。流血シーンは無し。
次から投下します。

163 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:39:32
仰ぐほどに高い青天の下、コンクリートに日光が反射しているせいで華やかに色彩が映る。
着色されてしまった写真の自然とは違い、肉眼で確認できる木々は各々が生き生きしていて軽やかだった。
人工的に植えられた花もある程度馴染んでいるらしく、少なくともやる気を無くして枯れることはない。
小さな生き物の近くに腰かける小林は、上機嫌な風光に合わない手荷物を膝に抱えていた。
鞄から出て姿を晒しているのは使い慣れてしまったノートとボールペン。
様々な状況を共に乗り越えてきたせいで随分古く見える。
二つの道具とほぼ同じ時期に手にした石があった。今日の空よりも柔らかい色をしていて、
強く握れば潰れてしまいそうだ。印象と同じく、込められた力も脆い。
未来のシナリオが書けても当たらない確率があるなら頼りきれない。
けれど他人には無差別に頼りにされて、外れれば文句が待っている。
黒の上部にしてもそうだ、過信する根拠がないにも関わらず。
しかもこのように使いやすい形にしておかないと、突如襲ってくる事態に対応できない。
吐き出したかった愚痴はため息で替えた。胸ポケットで眠る眼鏡を叩き起して装着する。
視力が悪いわけではないので世界は変わらないが、
大きなリュックサックを背負う男性の姿が遠くにあった。誰でも分かる特徴的な髪が風に揺れている。
「飲む?」
一本しかない缶コーヒーを差し出した片桐は、特別な感情を込めないまま顎をしゃくった。
小林も手を振るだけで返すが、重い腰に力を込めて立ち上がる。
片桐の仕事が終わったなら外にいる必要はない。
好きな舞台でも好まないテレビでもなく、雑誌の取材を受けていた最中だった。
写真を撮るために街へ出たのだが、片桐が変な注文ばかりするおかげで終了時間に差が出てしまったのだ。
中途半端な時間だったため出かけることも出来ず、結局は待ちぼうけになってしまった。
小林の都合を知らない片桐は上機嫌でコーヒーを飲み下している。

164 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:40:58
片桐は小林が黒に属していることを知らない。どういうわけか疑われさえしなかった。
似た状態のコンビは片方が信じきっているせいで成り立っているが、
この二人の場合はこじれてさえいなかったのだ。騙す側の小林にとっては有難い状況である。
三十過ぎた大人が並んで歩く姿はどこか滑稽だった。見上げるほどの高身長を持つ小林と、
有無を言わせぬ風貌の片桐の存在感は周りを圧倒させるには十分である。
広く感じる歩道を歩く途中、空き缶を捨てた片桐が少し眉を上げた。
撮影場所から数分歩いた先の建物。先程とは違う取材を待つため、わざわざ用意された楽屋もある。
こちらはお笑い関係の仕事なので知った姿を発見できた。
特に面識があるわけではなく会釈だけで対応する。
説明された場所に向かうが楽屋が見当たらない。記憶にある部屋番号と一致しているのに、
名前を記す紙片に違うコンビ名が表記されているのだ。首を傾げる出来事はすぐに解決、
相手側のミスで楽屋が一つ足りなくなってしまったらしい。
平謝りする女性に頭を上げさせてから散歩に向かおうとしたが、数分経って違う場所に案内された。
少し歩くが遠すぎることはない、人通りが少ない廊下に数人の足音が響く。
広い部屋には白い雰囲気が漂っていた。本来なら何人かまとまって使う場所なのだろう、
二人では広すぎて逆に落ち着けない。とりあえず鞄は床に置いて、手荷物だけはテーブルに乗せた。
傍らにあるパイプ椅子に深く凭れる。
小林より大きなリュックサックを下ろした片桐も大げさな息をついて寛いでいた。
片桐も片桐で大変なのだ。与えられた力を使うために粘土を持ち歩かねばならない。
しかしあまり苦には思っていないのか楽しそうに粘土をこね始めた。辺りに微妙な臭いが充満する。
「賢太郎」
お互いの時間に入り込む前だった。少し真面目な声色の片桐が切り出す。
小林は動じるわけでもなく眼鏡を上げた。

165 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:41:45
「何?」
「多分、もうちょっとで来る」
石を持った芸人が。何度も繰り返された会話なので省略されている。小林はシャープペンを手にとり、
片桐は必要な物を作り出した。これから嘘吐きの演技が始まるのだ。
片桐の予告通りだった。数分も経たない内にドアを叩く音がする。
既に形を作り終えている片桐が頷いていることを確認してから、出来るだけ低い声を出した。
「何ですか?」
「小林さんに用があるんですけど」
この時点では敵意を見抜けない。
恐らく何も知らないような素振りで入ってくるのだろう。ならばこちらも同じことをすればいい。
「どうぞ」
丁寧に対応すれば若い雰囲気をまとった青年が一人。あいにく名前を知らない相手だったが、
目の奥にある感情は小林を睨んでいる。
穏やかに済ませることは出来そうもない、相手にばれないよう小さくため息をついた。
男は部屋の状況を見渡し片桐と目を合わせる。擬態させた粘土は足元に隠しているようだった。
小林同様呆気に取られた演技をする片桐に安心した男が見上げてくる。突然の攻撃を予告していた、
反応を待たずに体を数歩引けば、腰の数センチ右を通る黒い線を確認。
長く続く線はまやかしではなく実在しているらしい。
男の指先を始点に、一本の線が凄まじい早さで直進し、壁に跳ね返って小林の背中に向かう。
すんでの所で交わすが別のことをしている暇はない。
線が入り乱れているせいで避けることしか出来なくなってしまったのだ。
線を投げる能力? 違う、指先から出ているなら操れるはずだ。
投げた球よりも早く伸び続ける線に触れたらどうなる? 切れるだけならまだしも爆発したら最悪。
シャープペンの芯くらいの細さだから見失う可能性もある。

166 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:42:34
手にしたノートの存在を思い出す。小林に向かう線の先端をぎりぎりまで見極め、
目に刺さるより早くノートに替えて逃げた。貫通した線は変わらずに直進を続ける。
ある程度の強度はあるが副作用はない。
「仁、眼鏡外すなよ」
よく分からない状況にあたふたする片桐に忠告した。
線を避けてはいるものの、頭上には疑問が浮かんでいる。
「目に刺さったら失明」
絶対にあってはならないことだった。針金が目に刺さるのと同じだ、どうなるかは安易に予想できる。
状況を想像して身震いしたが能力は理解できた。
線が刺さったままのノートは見捨てて近くにあったプリントを手にする。
動けないくらいに張り巡らされた線を踏みつければ先端の動きが止まった。
同時に片桐が線の合間を掻い潜って男の近くに向かう。
擬態化されたそれは脅すための道具だ。
普通に造ればいいのに、どこかのプラモデルのようなデザインをした拳銃は一応現実的な存在感があった。
銃口を向けられた男が目を見開く。
ばれるのは時間の問題だし、新しい線が投げられてしまえば状況は悪化する。
地面に落下した線が復活しないうちに小林の能力を使う必要があった。先程手にした紙を机上に叩き付けて、
シナリオの世界だけに集中する。思考以外の全神経を集中させているせいで詳しい確認は出来ないが、
男はまだ動けていないようだった。
男という呼び方は止めようか、シナリオらしく男Aとしよう。対して変わらない。
数分経って出来上がったシナリオに目を通す。何故か争いは喜劇に変化していた。
主人公は小林、片桐。敵役は男A。騙し合いはほどほどに。
銃を向けられた男Aは小さな疑問を持つ。銃があるのに表立った脅しを始めないのは何故だ? 

167 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:43:11
そして騙されていることに気づく。
ここで小林が馬鹿にした笑みを浮かべれば、男Aが顔を真っ赤にして立ち上がる。
「右に傾け」
指示された片桐は右に、脚本家の小林は左に体を動かす。
開いて閉じる二人の中央を綺麗に通った線は壁を反射して男Aに向かっていった。
慌てて避けているが酷く滑稽である。
「次は?」
「下へ参ります」
エレベーターガールのように囁いてからしゃがみ込めば、線が頭上を通過して飛んでいった。
もちろん小林の声色には馬鹿にした響きを混ぜてある。むきになった男Aは途中で線を切り、
離れた線は無差別に部屋中を飛び回った。
もちろん予想済みだったので驚かないし、あと数本線が飛ぶことも知っている。
「ここで仁の髪を貫通」
「ぎりぎりセーフ?」
もさもさした髪の横側を通りすぎる。いっそ線を髪に混ぜてしまえばいいのに。
くだらないことを考える頭を振ったが、片桐が楽しみ始めているようだったので開き直った。
どうせなら楽しんでやる。
「そこで兎跳び」
「側転」
「見返り美人図のように」
「開脚前転からのY字開脚」
「出来ねえよ!」
律義に行動していた片桐も気づいた。小林は楽しんでいるだけで必要なことを言っていない。
そして開脚前転しかけている自身、遠い目をして空を仰いでいた。

168 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:43:51
線は増え続けているが小林達は疲れていない。真面目に攻撃し続ける男Aだけが息を切らしていた。
いつのまにやら体力を消耗していたようだ。笑いを堪えるのに必死だった小林が漸く悟る。
そして手にしていた紙を確認すると、どれだけ芸術的に線を避けられるか挑戦している片桐に指示を出した。
「細いワイヤー作って」
「え?」
「前ライブで使ったみたいなやつ」
これだけで片桐は理解する。綺麗に線を避けながら粘土を細くしていった。淡い光が辺りを包み、
端に釘を仕込んだワイヤーが擬態される。左右の壁に繋げてから線を避ける作業に戻った。
「結局何だったの?」
「すぐ分かる」
向かってくる線を避けているうちに行く場所がなくなる。
戯ける余裕がなくなってきた、片桐の顔に余裕が無くなる頃、二人に向かって短い直線が飛んでくる。
同じく真面目な顔をしていた小林が声を張り上げた。
「斜めになって戻る!」
いつかコントでやったのだ。見えないワイヤーで釣り下げられた体を傾けて、何事も無かったように戻す。
粘土で作ったワイヤーはそのための布線、なの、だが。
「強度は粘土のままなんだよね」
あまり使わない口調で嘯く。作った片桐自身それを忘れていたらしく、思いきり体を後ろに倒していた。
もちろん粘土は耐えきれずに切れ、目を見開いた片桐は大げさな音と共に転ぶ。
しかし倒れて一番高くなった鼻の先を線が通りすぎていった。
ワイヤーが無ければ思いきり倒れ込めなかっただろう。ここは計算だ、痛手も少ない。
頭は髪でカバーされ、て、いればいいなあ。適当な願望を抱きながら次の行動に出る。
そろそろ線が少なくなるはずだ。

169 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:44:37
片桐の鞄に入っているはずの作品を擬態化して突進させればいい。何を擬態するかは任せる。
片桐に旨を告げれば嬉しそうに笑った。予定通りに少なくなった線の間を抜けて、
リュックサックの中身を探る。ある意味分かりきっていた選択だ、どうせ決め台詞も言うんだろう。
「片桐、行きまーす!」
分かる人には分かる台詞から始まって、手にした粘土を擬態した。白い機械のような容貌をしたそれは、
マニアが見ればオリジナルであることを理解できるはずだ。
「ガンダム!」
右腕を力強く引きながらそれを突進させた。付属されている機能で空を飛び、
いかにもな風体で男Aに向かっていく。流石に怯んだ男Aが体を引いた。
当然だろう。かつてテレビの中にいたそれの戦闘時の強さを知っているはずだから。
小さいままとはいえ何かあると、真面目に捉えて普通なのだ。
青白い光を纏ったそれは、どこか冷たい雰囲気も浮かばせ、目を光らせた後に。壁に衝突して潰れた。
部屋に奇妙な間が充満する。
もちろん小林は予期していたが、それでも笑いを抑えるのに必死になってしまった。
脱力した相手の指から伸びる線が下向いて消える。無造作に残った線が数本飛び交う以外は動きが無い。
作られた傑作を潰した悲しみにくれて、片桐が眉を寄せるだけだ。
「ガンダム弱え……」
心底哀しそうな呟きのせいでとうとう吹き出してしまった。
怒る片桐に形だけの謝罪をしてからシナリオの確認をする。
小林にしか読めない文章が場面の急変を表していた。顔を引き締めて片桐に忠告。
「ここからは真剣に」
片桐も不機嫌な表情を固め、怒りを露にする相手を見た。馬鹿にされたことで憤慨している。
シナリオはこうだ。男A、激怒して暴走。

170 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:45:25
男Aは線に頼らず、小林の方へ突進してきた。出来るだけ間を詰めてから右手を振りかぶり、
避けられない距離で線を放つ。予想していなければ体を貫通していたかもしれない、すんでの所で右に跳び、
一拍取らない内に逆に飛んだ。二本目の線が足元を走る。
右人指し指から出ている線は見慣れているものだ。逆の手の人指し指から二本目の線が放出されていた。
しかしそれが能力の限界なのだろう、男Aの額に脂汗が滲んでいる。
標的は小林のみだった。必要以上に狙われれば避けるのは難しい。逆の道を取る、
辺りを見渡して発見したビデオテープを手にとり、線が体に当たる前に弾き返した。
線は角度を変えて見当外れの方向に飛ぶ。一部始終を見ていた片桐も同じことを始めた。
能力を阻止されて戸惑っているらしい、男Aが目を見開く。少しの動揺を見逃さず、
手にしたビデオを男に投げつけた。避けきれなかった相手の腹部に当たったが対したダメージにはならない。
どうすれば攻撃できるか考える。手元の紙に答えはあるが、出来るだけ自分で考えたかった。
近くに鋭利な刃物は無い、投げて丁度良いダメージになりそうなものも無い、
ガラスを割って突き刺すわけにはいかないし、相手の線を拾って武器にしても弱すぎる。
生身で殴るのは危険極まりない。思考にふけりそうになったがすぐに我を取り戻した。
目元に向かってきた線が眼鏡で弾かれて方向を変えたからだ。
片桐の能力を使うにしても粘土では対抗できまい。一応能力も擬態出来るから、そこから考えていけば。
目に入った重たそうなシャープペン、片桐の粘土、思いついた。
「仁!」
ペン立てに立てられたシャープペンを片桐に投げる。指示せずとも悟った片桐は、
近くにある粘土を手の感覚だけで形作った。手元の紙で答え合わせをする小林が口元だけで笑みを浮かべる。
ずれる眼鏡を掛け直しながら、作られた粘土の作品を見た。
シナリオ通りに進めるため、紙に書かれた記号の羅列を朗読し始める。

171 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:46:18
「小林、片桐、男Aの線を数秒避け続ける。小林、二本伸びている線のうち一本を踏みつけ、」
革靴を床に叩き付ければ乾いた音が広がる。
「動きを止める。男A、止められた線を見限り、新しい線を出す」
男Aからしてみれば無意識で命令にしたがっているような感覚だ。
操作されているのではないかという恐怖は、攻撃を和らげるためには最適である。
新しく作られた線は大きく標的をずれ、しかも動きが遅くなっていた。
「小林、」
ここを言ったら相手に悟られてしまう。途中で口を閉ざして作業に入る。
気を逸らさせるため、書かれていない描写を口にした。
「片桐、男Aに向かって悪態をつく」
「カモン妖怪針人間!」
片桐が相手を指差して笑った。男A、怒りに任せて片桐を攻撃。避けることを信じた小林は別行動を取った。
足元に留めたままにしておいた線を手にとり、片方を机の柱、もう片方を丸出しの下水管にくくりつける。
背中を向ける男Aごしに、片桐へ合図を送った。シナリオ朗読を再開する。
「片桐、見境無く物を投げる」
鉛筆、消しゴム、紙コップ、しまいにはパイプ椅子を投げつけている。
大きな音が喚いても人が来ないのは、ここが他の楽屋から外れているせいだ。
相手を追い返すためには好都合、部屋がせまいほど相手の能力はやっかいだが、
線の早さに慣れてしまえば問題はない。頬の右側、右耳の下を線が通りすぎても動じなくなっていた。
飛んでくる物を避けるため、男が体を引き続ける。手が上向いたせいで線も天井に当たった。
床と天井を往復させてしまえば、こちらに向かってくる危険はない。

172 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:46:58
「男A、後ろに数歩引くが」
左右に繋げた線が罠に変わる。アキレス腱を引っかけた男が大きくバランスを崩した。
しかしこのままでは倒れない、追い打ちは既に準備してある。
「片桐が作品を発射する」
ずっと手にしていた作品は炎のようなものを上げて突進した。
奇抜な色をしたミサイル、線の合間を掻い潜って男Aの元に向かう。
男Aの顔に安堵が浮かんだ。粘土を当てられても大丈夫だと思っているらしい。
余裕は避けるための動作に遅れを作る。
「男A、あまりの衝撃に、」
ミサイルがみぞおちに入った。大きく咳き込んだ男Aが、信じられない様子で胸元を見た。
指から伸びる線が消えて、自動操作の線だけになる。
めり込んだ粘土は胸元に付着し、力に流された男Aは、受け身を取ることも出来ずに、
「倒れる」
鈍い音が部屋に響き渡った。仰向けになった男Aは、手を左右に広げたまま起き上がることは無い。
能力の使いすぎで精神の方にがたが来ているのだ。辺りに飛び回る線も段々色が薄くなり、
落ちている線と共に消えていった。
ミサイルは粘土だけで作られていたわけではなかった。
潰れる粘土の透き間から食み出ているのは重くて太いシャープペン。
雪合戦の雪玉に石を入れるのと同じように、威力を倍増するために仕込ませた。
擬態すればミサイルのスピードを出せるから、ボクサーのパンチ程度の力は生まれていただろう。
能力が無くとも戦いに参加は出来るのだ。
自負していた小林は、手にしたシナリオを強く握りしめてからため息をついた。
小林自身どのような感情を込めていたのか分からなかった。

173 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:48:00
かがみ込んだ片桐は、胸元にある粘土を回収してから、男Aの顔を覗き込む。
どこか生気が抜けている、立ったまま見下ろす小林でも分かるほど衰弱しているようだった。
前兆が無いまま戦いが始まってしまったため、男Aが何を意味して来たのかが分からない。
誘導尋問で口を割らせるか、綺麗とはいえない頬の肌を掻いてから目を横に逸らす。
シナリオを確認すれば展開の変化が記されていた。
空気が籠もっていて気持ち悪い。粘土の臭いで満たされてしまったらしい。
換気するため窓を探したが開けられない仕様になっている。せめてドアでも開けようか。
倒れたままの男Aを遠目で見やってから、重くて固いドアを開けた。
「賢太郎!」
危機迫った片桐の声が響く、振り返ればスピードを落とした線が顔に向かってきていた。
男Aが右手を上げ、首だけでこちらを伺いながら目を光らせている。
「大丈夫」
小林は、避けるわけでもなく呟いた。
「来客がある」
開いたドアの向こう側から水が飛んでくる。
長く続いた水鉄砲が、黒い線が顔に当たる寸前に方向を変えさせた。
顔や服に水が飛び散り、眼鏡に水滴が付着して視界が滲む。
拭いたレンズの先にいるのは、男にしては有り得ないほど細い体を持つ新たな登場人物。
白い肌に浮かぶ目の下のくまが異様な雰囲気を作っていた。同じ番組に出演しているが、
コーナーが違うので久しぶりに顔を合わせる。
無表情のまま部屋に入る菊地は、片桐と目を合わせて会釈してから小林の顔を見上げた。
小林は少しふざけたように頭を下げる。

174 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:49:02
「ありがとう」
「いえ、服濡らしちゃいましたし」
決められたような会話を交わしてから、外に出るように促された。気を失っている男Aの横、
不思議そうに眉を寄せていた片桐が、思いついた顔に変わる。
「ああ、黒側の話か」
急に指された図星に息を飲むのは小林だ。目は見開き、鼓動が脈打つのを感じながら口を開く。
「なんで」
「一緒に仕事してれば分かるよ」
事実を知っている片桐は怒りも失望も浮かべずに、散乱しすぎた髪を後ろで結んでいた。
何も言えない小林の顔を眺め、なんてことない表情で軽く笑う。
「賢太郎のことだから、ちゃんと考えがあるんだろ? なら別にいいよ」
急に許されても戸惑うだけだ。多数の芸人を手にかけてきた小林にとって、
むやみに信じられるのは心地好いことではなかった。しかし拒否するわけにもいかない。
微妙なジレンマに潰されそうになる。
「……なら、ここで話してもいいですね」
第三者である菊地は、どこか冷たい態度で目を伏せた。片桐は片桐で粘土の世界に浸っている。
一人だけ取り残された小林は、手にしていた紙切れを握りつぶした。
「明後日の夜、上部で話し合いがあるそうです。
 小林さんが出席しないと話が進まないんで、絶対に来るようにと」
簡潔に用件を告げた後、一番真剣な声色で訪ねてくる。
「シナリオはどうですか?」
言われてから存在を探した。床に落ちているノートには細い穴が空いている。
数枚めくれば専用のページがあった。菊地についてではなく、相方の山田が危険を回避するためのシナリオだ。

175 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:50:15
お互いに似た環境にあったため、このように協力するようになった。
小林がシナリオを提供する変わりに、菊地はこちらが危険な時に助ける。
お互いを支えるには打ってつけの交換である。
条件を破ったら、相方に真実をばらすというリスクを伴う事で釣り合っていたが、
今ではそれも崩れてしまった。
「特に変わったことは無い」
「本当に?」
「強いていうなら、君を助けに向かう可能性がある」
菊地の顔が歪んだ。詳しい話は知らないが、いつか有名なコンビと争っていたとき、
山田が途中で入ってきてしまったことがあったらしい。小林のシナリオには書かれていなかったので、
本当に突発的な行動だったのだろう。
今回に限らずこれからもずっとその可能性がある、そういった意味が込められていた。
真意を悟った菊地が再度目を伏せる。戯れで手元に水を出現させてから、小林のことを睨んだ。
裏切られた子供が見せるような鋭い目付きだった。
相方に許された小林が裏切り者として対処されてしまったのだろうか。
これから菊地がどんな行動に出るか分からない。こちら側のシナリオを書き直し、
菊地自体のシナリオを手にする必要がある。能力の多用による疲れを予想してため息をついた。
闇を背負う背中を見送りながら、心の中だけで謝罪する。
山田にとっての最高のシナリオはこうだったからだ。菊地が黒を抜ければ争いは極端に少なくなる。
そして、菊地が黒に残り続けた後の展開は、明るいものではなかった。
小林が真実を告げない理由は一つ。こちらの安全を守ってもらうため。勝手すぎるが仕方がない。
ある意味で全てを背負ってしまう小林の能力。責任の重さにため息をついてから、
必要なくなった伊達眼鏡を外す。倒れ込んだまま動かない男Aのポケットを弄り、
黒くて荒々しい石を取り出した。黒側の人間が発するような暗い色は放たれていない。

176 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:51:35
どこかで逆恨みを買ったことで襲われたのか。ノートを見やれば、確かにハプニングの可能性が記されていた。
対応しきれなかった失敗は忘れ、左手の石に力を送る。黒いが透明感のある光が瞬く。
右手親指以外から一気に線が放出された。四本は各々違う方向に直進し、壁に跳ね返って止まる。
人によって使える線の数が変わるらしい。男Aには合っていなかったのだろう。
線を消してから、粘土を捏ねている背中に石を渡す。手にした片桐は一頻り石を観察してから、
よく分からない力み声を出して両手を開いた。親指以外から、つまりは左右四本ずつの計八本が放出される。
何故か悔しくなった小林がひそかに口を尖らせた。
「それ持ってれば?」
「何で?」
「ちょっとは戦いやすくなるだろ」
「やだよ、使いにくいし」
提案はすぐに拒否される。保持を望んでいた小林が、黒い石の利点を探した。返してもらってから線を作り、
逆の手で掴んでから加工していく。
「狭い部屋なら相手が避けきれないまま終わるだろうし」
作り上げたのは平面の正方形だ。黒い枠を軽く持ち、遠くの壁に向かって投げる。
回転しながら進む正方形は、一瞬にして壁に突き刺さった。
「こういう使い方もある」
男Aが気づいていなくて良かった。実際にやられていたら勝てていたか分からない。
利点を並べられた片桐は、それでも首を横に振る。
理由を問えば、いつもの自分中心的な笑みを浮かべるだけだ。微妙な沈黙が流れたが、すぐに埋められた。
「俺はこれだけでいいよ」
翳した粘土は先程潰れてしまったガンダムの修復形。心なしかアレンジされているようにも見える。

177 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:52:27
呆れた小林も苦笑し、黒いセーターのハイネックラインを掴んだ。戯れで伸ばしてから石をポケットに入れる。
黒上部の更に上にいる彼に相談するべきだ。しかるべき持ち主を探してくれるだろう。
何となくシナリオを見て、次にやってくる災難に頭を抱えた。この黒い石には、もう少し活躍して貰う形になる。
ため息をついた。小林の表情で悟った片桐も、少しうんざりした表情に変わった。
開けっぱなしのドアの向こう側、気絶したままの相方を救う為に走ってくる存在を確認する。
身の安全を確保するためだ、シナリオでは男Bとの対決も予想されているから。
直線上にある男Bと向かい合う。
シナリオに縛られる生活は暫く続きそうだ。殆どの運命を握り、それでも自分達中心で事を考えている。
これからはどうなるのだろうか、遠すぎる未来まではシナリオ化出来ないので分からない。
とにかくこちらの安全が確保出来ればいい。出来るなら、いつもここからの二人も。
眼鏡を掛け直す。石は左手で握る。体は横に、顔だけドアの向こう側に合わせて。
右手をゆっくりと翳し、走る新たな登場人物に向かって四本の線を投げた。

End.

178 :新参者 ◆2dC8hbcvNA :05/03/08 15:53:35
男A(仮保持)
黒曜石(オブジディアン)=深く光沢のある黒 古代、加工することで武器としても使われていた。
指先から線を放出させて操ることができる。
色は黒でシャープペンの芯位の細さ、釣糸より固く針金よりも柔らかい。
本人以外は切ることが出来ない。無限に伸ばせるが長いほど体力の消耗が激しくなる。
線は真っ直ぐ進むことしか出来ず、曲げる際は人為的な力(本人以外でも可)を加えなければならない。
また、曲げた後は二度と直線に戻らず、本人の手元から離れた線は数分で消滅する
(直進中に線を切れば本人の意思と関わりなく運動を続ける)、線を図形に変化させることも可能。
ダンボール程度なら貫通するが、ガラスほどの強度を持つ物体には跳ね返り、直進運動を続ける。
速度は一般男性のキャッチボール程度。
石に適合すればするほど操れる線の本数が多くなる(最大十本=両手の指のぶんだけ)
(この若手芸人は普段一本、限界で二本しか操れません。)

黒曜石の行方は皆さんの想像に任せます。能力考えるのって楽しいですね。
失礼します。

179 :名無しさん:05/03/09 14:02:48
今までとは毛色が違って面白かったです。
微妙な繋がりがどうなるか気になります。

180 :名無しさん:05/03/09 21:35:33
文章上手いですね…エンディングがすごくイイ!

181 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:42:53
ペナ編新シリーズです。
今回のメインはヒデさんです…そうなるはずです。




ONE NIGHT R&R

彼はゆっくり、テレビ局の廊下を歩いている。
思い出すのは、この前物陰からそっと様子をうかがっていた戦いの場面。

身を呈して、後輩を守ろうとする相方の姿。

あいつらしいや・・・

彼がふっと口元を緩めた瞬間。

「おはようございます。」
冷たい声が後ろから響いてきた。

・・・あいつだ。

振り向かなくてもわかる。
忌々しい、あの男の声。

「・・・なんの用ですか?」
彼はゆっくりと後ろを振り向く。
バナナマン・設楽が薄笑いを浮かべてそこに立っていた。

182 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:43:46
「失敗したらしいですね、吉本の後輩をけしかける作戦は。」

そんなの、言われなくてもわかっている。
その為に、またひとつ面倒臭い<仕事>を言いつけられたばかりなのだから。
石の力を使わなければならない<仕事>を。
恐ろしい石の力を使う代償の疲労以上に、石を使ったときの精神的ダメージは大きすぎる。
だから、今までなるべく石の力は使わないで済むようにしてきたというのに・・・

「アナタともあろう人が、失敗なんて・・・!」
設楽の皮肉に満ちた言葉が彼を刺す。
彼の胸元が淡くオレンジに光った。
「しかも、何の躊躇もなく相方を襲わせたでしょう?さすが、貴方は『黒いユニット』のためなら相方も差し出すんですね。いやぁ、さすがだ!」

設楽の「悪意」を受けて、彼の胸元の輝きがどんどん増してくる。
いつしか、彼はオレンジの輝きに包まれていた。
その光景に、さすがの設楽も一瞬たじろぐ。

輝きに後押しされるように、彼がゆっくりと口を開く。
「・・・シナリオライターがいないと何もできないような人に、ぎゃあぎゃあ言われたくありませんね。」

凍りつく空気。

睨み合う、二人。



「あ〜、いた!」
彼の背後から、明るい声がした。
その瞬間、彼を包んでいた輝きが消える。
振り向くと、こちらに駆け寄ってくる「丸い」男の姿。


183 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:44:30
設楽の相方、日村だ。
日村は彼に「おはよーございまーす」と声をかけ、設楽に言った。
「早くネタ合わせしないと、間に合わないよ?」
「今行くよ。」
設楽は彼のほうを全く見ようともせず、その場を去った。

バナナマンの二人が廊下の角を曲がり、見えなくなったところで彼は深く深くため息をつく。

今更、引き返せないんだ・・・

彼、ペナルティ・ヒデこと中川 秀樹は、静かにその場を立ち去った。



楽屋に戻ると、相方の脇田がコントのキャラクターのメイク中だった。
「・・・どこ行ってたのヒデさん。」
「いや・・・煙草買いに。」
「ふぅん。」
高校時代からの長い付き合いだ。
嘘がばれてることくらいわかっている。

だけど、今の俺たちはお互いに騙し合う関係・・・
俺の手元に石が転がり込んできた、あの日から。

「脇田、メイク終わったら、ネタの確認するぞ。」
「わかった。」

でも、そんな私情をネタに挟むことはできない。
俺たちはプロの芸人なんだから・・・


184 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:45:04
相方がどんどん気持ちの悪い顔になっていくのを尻目に、中川は煙草に火をつけた。

この仕事が終わったら、もうひとつの仕事が待ってるんだ・・・。



テレビ局からも程近い、古びた倉庫。
人気のないこの場所は、「石」を持つ者たちの恰好のたまり場となっていた。


二人の男が、そこに立っていた。
一人は、中川。
そしてもう一人は、雨上がり決死隊・蛍原 徹。

「・・・なんか、用?」
穏やかな笑顔で、静かに蛍原が口を開く。
「ここに来た時点で、何の用かはわかってると思います。」
蛍原とは対照的な厳しい表情で、中川は言った。
ま、な。そうつぶやいて、蛍原は上を見上げた。
「黒、やったんか、ヒデは。」
「そうですね。」
「そっか・・・。」
蛍原は再び視線を中川に合わせた。
「俺は、黒いユニットに入るつもりはないで。」
その表情は、先ほどとは比べ物にならないほど、険しかった。
「・・・力づくで、黒いユニットに入れるつもりか?」
蛍原は右手をそっとポケットに入れながら言った。
中川は静かに首を振る。
「俺の石の能力では、攻撃できないので。」
「じゃあ何で・・・」


185 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:45:41
「蛍原さんは、」
中川が蛍原の言葉を遮って話し出した。
「わかっていないんですよ。」
「なんやねん。」
「黒いユニットの勢力は、蛍原さんが思っている以上に強くなっているんです。
芸人だけでなく、スタッフさん、もちろんワンナイに関わるディレクターさんや構成作家さんにも・・・。
今、黒いユニットと手を組まなければ、後々損をすることになりますよ。」
「・・・そんなんわからへんやろ。」
語調は強いが、蛍原の目には動揺が浮かんでいるのが見て取れた。
「今に、黒いユニットに属さない芸人は干されることになりますよ。・・・いや、むしろ。」
中川は蛍原の目をしっかりと見た。
「俺が、芸能界から追放します。白側の人間を。」
「・・・なんでそんなことする必要があるんや?」
蛍原も、中川に負けないほどの強い視線を送る。
「そんなの、決まってるじゃないですか。」
中川の声は冷たかった。

「ライバルは、少ないほうがいい。」

「・・・お前、」
蛍原の声は、今まで聞いたことがないほどに低く、静かだった。
「そこまでして、売れたいんか・・・黒いユニットに自分を売ってまで。見損なったわ。」
蛍原のポケットからぼんやりと光が漏れている。

蛍原はそっと自分の腕時計を確認する。
30秒・・・それまで持つやろか。



186 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:46:27
「俺は雨さんやDonDokoがどうなろうと構わないんですよ。・・・もちろん、相方も。」
「・・・」
蛍原は怒りを抑えて、ただじっと中川を睨む。
「ただ、黒いユニットの勢力は強ければ強いほどいいんです。」
「・・・」
「黒いユニットは基本的に『量よりも質』ですから・・・蛍原さんがこちらについても正直何も変わらないんですが。」
「・・・」
「人がいないよりは、マシでしょう?」
「・・・」

もう一度、蛍原は腕時計を見た。
叫ぶなら、今や。
蛍原は彼の石−モスアゲート−を強く握り締め、大きく息を吸った。

「・・・しゃべっとるがな!!」

蛍原の声がモスアゲートにより拡声され、倉庫中にこだました。
あまりの大声に、中川も耳を押さえてしゃがみこむ。

蛍原は手近にあった鉄パイプを握り締めて中川に向かって走って行った。
「ヒデ、目ぇ覚ませや!」
力いっぱい鉄パイプを振り下ろす蛍原。
中川は間一髪で避ける。
「お前がそんな奴だとは知らんかったわ!
俺らやDonDokoはともかく、相方まで見捨てるような奴やとはな!
ホンマ最悪や!!」
蛍原は滅茶苦茶に鉄パイプを振り回す。
「それがお笑いの世界でしょう?!ライバルは蹴落とす。邪魔な人間は、たとえ相方といえど容赦しない!」
中川は角材を手に応戦する。


187 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:47:55
「ちゃう!!」
そう叫んで、蛍原が大きく横に振った鉄パイプが、中川の脇腹を捕らえた。
「くっ・・・」
その場にうずくまる中川。
「・・・ちゃうで、ヒデ。それはちゃう。」
蛍原が静かに中川に語りかける。
「裏切ったらあかんねん。相方だけは。
先輩や後輩、同期の仲のええ芸人とは違うんやで、相方の存在は。
『こいつや!』思える相方に巡り合えたら、そいつだけは絶対に裏切ったらあかんねん。」

中川は、聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた。

「知ってます。」
「え?」

聞き返してきた蛍原に、中川は力いっぱいタックルをした。
「うわっ!」
その場に倒れこむ蛍原。
中川はサッカーの名門、市立船橋高校サッカー部の厳しい練習に耐え、大学卒業時にはJリーグからのスカウトもあった程の男。
身体能力は高い。
あっという間に蛍原を組み敷くと、中川は胸元からペンダントを引っ張り出し、強く握った。

そして意識を集中させる。




彼の頭の中に蛍原の声が響いてきた。


188 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:48:38

−見損なったわ、ヒデ!

−ヒデがこんな奴やとは思わんかった!

−お前なんか、二度と俺の前に現れんな!

−ヒデは最悪の人間や!!




「ぅあああああああああっ・・・!!」
中川の頭を鈍い痛みが襲う。
それと同時に、ペンダントに埋め込まれた石、クリソコラから真っ黒な闇があふれ出した。

闇は一直線に蛍原に襲い掛かった。

「わぁぁっ!」




蛍原は闇の中に漂っていた。
闇が蛍原を覆い、蛍原自身からも闇が溢れ出てきているようだった。


189 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:49:09

憎しみ

妬み

恨み

それらが蛍原の胸の奥から湧き上がってきて抑えきれない。
暴力的ななにかが蛍原の中を満たし、そしてはちきれる。

「くっ・・・」

そこで蛍原の意識は途切れた。



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息をしながら、中川はなんとか立ち上がった。
倒れている蛍原のポケットからモスアゲートを取り出す。

それは、黒く濁った光を放っていた。

そっとモスアゲートを蛍原のポケットに戻し、その場に座り込む。

久しぶりに使った石の力。
荒い息はしばらく収まりそうにない。

−見損なったわ、ヒデ!



190 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:49:51
さっきの蛍原の声が延々と頭の中でリピートする。

傷つくことは忘れたはずだった。
憎まれることには慣れたはずだった。

「・・・にしても、きっついな・・・」

暗い天井を見上げながら中川は呟いた。
その言葉が、強い石の力を使ったために漏れた言葉なのか、慕っている先輩の悪意に満ちた言葉を聞いた為に漏れた言葉なのかは、中川自身にもわからなかった。



191 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/10 23:57:00
ペナルティ
中川 秀樹(ヒデ)
石 クリソコラ(感情の活性化・ごく薄い橙色)
能力 相手の自分に対する悪意に同調することにより、悪意を増幅させ、石を暴走させる。
条件 相手の悪意が強ければ強いほど暴走させやすくなる(ちょっとムカつく<殺してやりたい)。
相手の悪意に同調する際にかなりの精神的ダメージを受けるため、完全に暴走させることができるのは1日に1人が限界。
自分に対してなんの感情も持たない人間に対しては効果がない。
また、自分に強いプラスの感情を持つ人間に同調した場合、成功率が低くなり、普通に能力を使用した場合以上のダメージを受ける。

雨上がり決死隊
蛍原 徹
石 モスアゲート(コミュニケーション・濃緑)
能力 30秒以上黙った後、「しゃべっとるがな!」と叫ぶことによって拡声され、相手にダメージを与える。
条件 黙っている時間が長ければ長いほど効果が高い。
「なんかしゃべれや!」という前フリがあると効果があがる。
喉に負担がかかるため連続使用は3回程度が限度。
補足効果として、頭を力いっぱい振って髪の毛を揺らすと、その揺らしている間だけ相手を黙らせることができる。
頭を振っている間は完全に無防備になる。


192 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :05/03/11 00:03:10



とりあえずここまでです。
次回は宮迫さんが出てくる予定です。

>>◆8Y4t9xw7Nwさん
波田陽区がすごくカッコいいですね。
青木さやかの啖呵の切り方もカッコいいです。
読んでいてすっきりしました。

>>157さん
感想ありがとうございました。
私自身、閑話休題、ちょっとまったりという気分で書いていたので
そういう風に思っていただけるのはうれしいです。

>>新参者さん
いつもながら、お見事ですね。
ラーメンズらしいなんともいえない雰囲気が素敵です。

193 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/11 02:19:06
>>153続き

毒舌家達の憂鬱・後編



光が収まり、目の前にかざしていた腕を下ろした青木は、男達が1人残らず倒れているのを確認してホッと息をついた。
倒れている男達を踏まないように気を付けながら、元に戻ったギターを抱え肩で息をする波田に歩み寄る。
「大丈夫?」
「全然大丈夫じゃないんですけど・・・・・・・すいません、限界まで力使ったからしばらく起きれないと思うんで、先に――――」
恐らく『帰ってください』と続けようとしたのだろうが、そこで限界が来たらしい。
ふらりと体勢を崩した波田は、そのまま壁にもたれるようにして倒れ込んでしまった。
「ちょっと悪い事しちゃったかな・・・・・・」
石の副作用ですっかり深い眠りに落ちた波田を見て、青木は苦笑しながら呟いた。
路上に点々と――――という表現がぴったりな状態で――――転がる男達を見て、頭痛を堪えるようにこめかみに手を当てる。
「この状況放置して先に帰るなんて出来るわけないじゃない・・・・・・」
同じく石の副作用で少々ふらつく頭を押さえ、倒れ込んだ男達に近寄る。
そのポケットを探ると、案の定あの黒い欠片が転がり出てきた。
眉を寄せて地面に転がったそれを踏みつけると、ガラス質の小さな欠片は足の下で微かに音を立てて、呆気なく砕け散った。
「・・・・・・気に入らないわね、この欠片・・・・・・」

大切な何かを得る為、決して譲れない何かを守る為なら、人は鬼と化す事もある。
それを分からない程無知ではない。
でも――――こんなものに頼ってまで手に入れて、守って、本当に満足なのだろうか。
嫌味でもなんでもない、純粋な疑問。

194 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/11 02:19:58

売れなかった時期が長かったせいだろうか、自分は芸人としての地位や名誉にはそれほど興味が無い。
地位より安定した生活の方が余程価値がある、というのはある意味夢も希望も無い考えかもしれないが、不安定極まりないこの仕事を長くやっていると切実にそう思うのだ。
もちろんトップに立ってみたいとは思うし大金も稼ぎたいが、人を蹴落とし傷付けてまで・・・・・・とは思わない。
むしろ、脅されたわけでも洗脳されたわけでもなく地位や名誉の為に自分から『黒』に入る若手達を馬鹿馬鹿しいとすら思う。
目先の地位や名誉に惑わされて客を笑わせる事の楽しさを忘れた人間の、なんと多い事か。
「みんながみんな、あんたみたいに単純に仕事を楽しめる奴だったら楽なんだろうけど・・・・・・」
しゃがみ込んで、気持ちよさそうに眠る波田の頭を軽く小突く。
この年下の先輩は、比較的芸歴の浅い若手にしては珍しく【芸人】という仕事に強い誇りとこだわりを持っていた。
そのこだわりが、多くの石を集めながら決して『黒』に加担しない理由なのだろう。
客と自分が楽しむ事を何より大事にしている彼なら自分から『黒』に協力するという事は決して無いはずだ。
(あんただって、『黒』に入ってまでトップに立とうなんて思わないわよね?)
売れない頃からの親友の姿を思い浮かべて、心の中で呟く。
そう簡単に『黒』傾く人間ではないと分かりきっているのに問い掛けたくなったのは、不安だからだ。らしくもなく弱気になってしまう。
(ま、もしそうなったら一発ぶん殴って引きずってでも連れ戻せばいいだけの話よね)
不安を振り切るようにそう結論付けて、視線を上げる。
頭上高く上った太陽が、正午過ぎを告げていた。



一応後日談的なものも用意する予定ではありますが、今日はここまで。

シャロンさん
感想ありがとうございます&乙です。
ヒデさんが戻ってきた時の楽屋での会話、内容はシリアスなのにワッキーはあのメイクの最中なんですよねw
続きが気になりますね。楽しみにしてます。

195 : ◆8Y4t9xw7Nw :05/03/11 05:17:34
ミス発見・・・・・・小説部分下から5行目、
『黒』傾く→『黒』に傾く です。

196 :名無しさん:05/03/11 08:02:06
まとめサイト表示されないの俺だけ?

197 :名無しさん:05/03/11 14:02:25
age

198 :名無しさん:05/03/11 14:06:17
いや、自分トコは表示されるけど…<まとめサイト

>◆8Y4t9xw7Nw さん
完結乙です。
青木さん、大人ですね…。

199 :名無しさん:05/03/12 00:51:17
乙です!
青木さんがすごくまじめに考えていて意外です(笑)
親友が誰なのか結構気になります。
何せ文章が読みやすくて好きですv
頑張ってください!

200 :名無しさん:05/03/15 15:52:11
キンコンは不思議なくらいつまらない。相当凄い力を持っていなければあそこまで
つまらないことはできない。ある意味尊敬する。

201 :クルス ◆pSAKH3pHwc :05/03/16 15:44:25
皆さん乙です!!
ちょっとバイトで来れなかった間に沢山投下されてて驚きました。
皆さん文章がとてもお上手で尊敬しますー。

202 :名無しさん:05/03/16 18:29:39
一つ提案。

感想だけにコテハンを使うのは止められないかな。
他の作者への質問やら辻褄合わせとかのために使うならまだしも
なんか厨臭くて・・・此処は個人サイトの掲示板ではないんだよ。
トリップは作品投下の為だけに使った方がいい気がする。

提案だからスルーしても構わないけどね。

203 :名無しさん:05/03/16 18:56:51
>>202
自分は、無駄なスレ消費を抑えるために、出来るだけあとがきと併せて他作者さんへの感想を書いてるんだが…それも気に入らないかい?
気に入らないという人が多いなら、感想と後書きは別にするが。

204 :名無しさん:05/03/16 18:59:47
取りあえずsageて行こうぜっ

205 :202:05/03/16 19:02:56
>>203
ウヲー、すまん。
久し振りの携帯でsage忘れた…逝ってくる

206 :203:05/03/16 19:04:45
しかも、番号ひとつズレてるし。
慣れないことはするもんじゃないな。
ほんとスマヌ。

207 :名無しさん:05/03/16 19:17:39
>>203
とりあえずモチツケ。そしてもう一度よく読んでみろ。

>感想だけにコテハンを使うのは止められないかな。
てことはあとがきと一緒に感想を書いた場合には当てはまらないと思う。

208 :名無しさん:05/03/16 19:33:54
まぁ感想だけにコテ使われると、他の書き手さんが話を書き辛くなるってのはありそう
だって自分の文章を他の作家がどう思ってるか等、そういうのが見えちゃうし。

微妙に便乗だけど、感想で「文章が上手い」とか「読みやすい」とかは止めてもらいたいなぁ
それらももちろん長所なんだけど、そうなると、他の人のが「文が下手で、読みにくい」みたいに見えるから

209 :名無しさん:05/03/16 22:20:14
>>208
>感想だけにコテ使われると、他の書き手さんが話を書き辛くなる

禿堂。馴れ合いの場じゃないんだ、ここは2ch。

210 :名無しさん:05/03/17 01:50:08
>>他の人のが「文が下手で、読みにくい」みたいに見えるから
まあ、そこまで深く考えると例の人権擁護法みたいに
行き過ぎた気遣いになりそうだから、それはいいんじゃないかと。
感心した箇所は素直に褒めるでいいのでは。


211 :名無しさん:05/03/19 16:53:37
hosyu

212 :名無しさん:2005/03/22(火) 13:39:59
ほす

213 :宇治マリモ:2005/03/22(火) 15:07:45
みなさん上手いですね。誰か磁石ネタで書いてくれませんか?


214 :名無しさん:2005/03/22(火) 16:17:28
磁石は能力案すら上がってないので、まずそちらから考えてみては。


215 :名無しさん:2005/03/22(火) 17:59:55
どっかでS極N極がどーのって話が出てたような気がする

216 :名無しさん:2005/03/22(火) 18:14:10
書いてくれと言われても芸人のこと知らないで書くと色々と矛盾したりするからなぁ…
だれか磁石のファンで書こうって人が出てくればいいんだけど。

217 :名無しさん:2005/03/22(火) 18:45:24
この流れで言うのも何だけど・・・。
誰か三拍子ファンで三拍子書いてくれる人いませんか?

218 :名無しさん:2005/03/22(火) 18:54:03
小説作成依頼はしたらばの方で言ったら?

219 :名無しさん:2005/03/23(水) 00:34:30
作成依頼etcしたらば掲示板はまとめサイトから行けるので。

220 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :2005/03/23(水) 01:16:24
>>190続き

ONE NIGHT R&R 2

・・・最近、雰囲気悪いな。
ワンナイ収録スタジオで、宮迫はふと思った。
この現場に限らず、どの現場でもなのだが。
今まで中の良かった芸人が急に険悪になっていたり、妙にコソコソしていたり・・・。

・・・これも、「白いユニット」と「黒いユニット」とかゆーのが関係してるんやろか。

自分も持っている、不思議な力を持った「石」。
それを巡って、「白いユニット」と「黒いユニット」が対立している、という程度のことは宮迫も知っていた。
ただ、自分はどちらに味方するつもりもない。
襲ってくる芸人には容赦なく立ち向かうが、それ以上のことはしない。
それが、相方と決めた雨上がり決死隊の立場だった。

「宮迫。」
名前を呼ばれて振り返る。
そこには、相方の蛍原の姿があった。
「ちょっと、話があんねん。」
「あとにしぃや。疲れとんねん。」
「今やないとあかん。」
蛍原の表情は真剣だった。
「・・・石のことやねん。」
「・・・わかった。楽屋、行こか。」

楽屋で二人はテーブルを挟み、向かい合って座った。
「・・・で?」
宮迫は鞄から煙草を取り出しながら問いかけた。

221 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :2005/03/23(水) 01:17:49
「・・・宮迫。黒に入らへんか?」
「・・・は?」
宮迫の動きが一瞬止まった。
「お前、何、冗談言って・・・」
「冗談やない。」
蛍原の目は真剣そのものだった。
「黒いユニットに、入ろう。」
「なんでやねん!お前、白にも黒にも入らないって決めたやんけ!」
宮迫の煙草を持つ手が震える。
「・・・黒に、入ろう。」
「お前・・・まさか!」
宮迫は煙草を放り出し、テーブルの横を回り込み、蛍原の腕を掴んだ。
「石見せや!お前の石!」
蛍原は身をよじって逃げようとするが、宮迫の動きのほうが早かった。
蛍原の上着のポケットに手を突っ込み、モスアゲートを引っ張り出した。

モスアゲートは、本来の濃緑ではなく、濁った輝きを放っていた。

「・・・なんでやねん・・・」

宮迫の頭の中は真っ白になった。

222 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :2005/03/23(水) 01:18:31





どうにかせな・・・でも、どうする?


・・・脇田・・・そうか、脇田なら。
白いユニットのアンジャッシュやスピードワゴンとも仲のいい脇田なら。
何度か石を浄化させた経験もあるという脇田なら。
アイツなら、どうにかできるかも知れん・・・




白いユニットに入るつもりはない。
けど、相方が黒いユニットに取り込まれるのは問題や・・・




「ほ・・・蛍原、ちょっと待っとけ!」
宮迫はモスアゲートをしっかり握り締め、楽屋を飛び出した。
「脇田!脇田どこや!脇田!!」
楽屋のドアを出たところで宮迫は喚く。
ただ、蛍原を元に戻したい・・・今の宮迫の頭の中にはそれしかなかった。

223 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :2005/03/23(水) 01:19:50


「宮迫さん。」
どこから現れたのか・・・宮迫の隣には中川が立っていた。
「あ、ヒデ!脇田来とるか?脇田どこや?!」
中川は無言で、宮迫を楽屋に押し戻し、後ろ手でドアに鍵を閉めた。
「ちょ・・・おま・・・お前なにすんねん!」
「蛍原さんの石を暴走させたのは俺です。」
「・・・?!」
突然の中川の言葉に、宮迫は言葉を失った。
「・・・なんで・・・なんでや!なんでお前が!しかもよりによって蛍原を!!」
宮迫は中川に掴みかかる。

中川は無表情で・・・いや、少し寂しそうだったかもしれない・・・胸元のクリソコラを握り締め、宮迫の<悪意>に同調した。



その瞬間、楽屋が闇に包まれた。




「あ、宮迫さん、さっき俺のこと探してました?」
暢気に廊下を歩いていた脇田は、すれ違った宮迫に声をかけた。
「・・・いや、いい。」
「そっすか。」
鼻歌交じりに脇田はその場を去る。
その後姿を、強く見つめる宮迫。


このときに、脇田が宮迫の異変に気づいていれば。
もしかしたら、また違う結果が生まれていたかもしれない。

224 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :2005/03/23(水) 01:21:31





静かな自室で、中川はソファーに深く腰を下ろし、大きくため息をついた。
足元では愛猫が静かな寝息を立てている。

2日も続けて石の力を使ったからか、中川の肉体も精神もボロボロだった。


目を閉じれば、まるで自分が闇の中に深く深く落ちていくかのような錯覚に陥る。
その闇は、自らのクリソコラから湧き出ているようで。

今まで対峙した芸人たちの、自分に対する悪意が満ちている闇。

そっと目を開ける。
まだ自分の身体に闇がまとわりついているような気がして身震いする。

この道を選んだのは俺じゃないか。
俺自身じゃないか。
俺の手元に、石が転がり込んできたときから。
相方が、石を握り締めているのを見たときから。

後戻りはできない。
後戻りするつもりはない。



でも、心がぐらつく。
こんな静かな夜には・・・


225 :シャロン ◆ygLwUQlNuI :2005/03/23(水) 01:25:13
今回はここまでです。
次回は宮迫さんの能力も出てくる予定です。

>>◆8Y4t9xw7Nwさん
感想ありがとうございました。
青木さやかがとてもカッコいいですね。
私こそ、続きを楽しみにしています。

>>ブレスさん
お聞きしたいことがありますので、したらばの進行会議のほうに書き込ませていただきます。

226 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:08:36
>>130-138 の続き

「・・・どういう事?」
普通に無造作に口にするのではなく、囁きかけてきた井戸田の意図を察し、小沢は小声で井戸田に囁き返す。
「って言うか・・・設楽さんに会ったの?」
「・・・あぁ。」
赤岡の暴走に気を取られていてすっかり忘れてしまっていたが、彼が暴走する直前に顔を合わせていたのは設楽。
小沢達が駆け込んできた時には彼の姿は消えていたけれど、それは赤岡が暴走したから身の危険を察して
この場から逃げたのだろう、と思っていた。
しかし。
「途中の大通りの所で。昨日の弁当がどーのこーので吐いたっつってたけど・・・」
確かに胃液っつーよりあの欠片っぽかった、筈。
真面目な顔で記憶をたぐり、告げる井戸田の言葉に小沢の表情は自然と強張っていく。
もしも。設楽の姿が消えていたのが、暴走した赤岡から逃げたためではなく、
赤岡を暴走させるという目的を果たした為に立ち去ったのだとすれば。

「赤岡くん。」
あくまでこれは仮定。
全てはただの想像に過ぎないけれど、険しい表情を浮かべながら小沢は赤岡の方を向き、呼び掛けた。
「・・・何でしょうか。」
「もし覚えていたら、YESかNOで答えて欲しい。」
言葉を選びながら、小沢は己に応じた赤岡に問う。
「君に欠片を飲ませた人は、自分でも欠片を口にしてた?」
ここで設楽、という固有名詞を出さなかったのは、小沢自身がまだ信じられない・・・信じたくないという事と
江戸むらさきの2人と島田に余計な動揺を与えたくない為だろう。

227 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:09:57
「・・・・・・・・・・・・。」
けれど慎重に問いを発する小沢の顔を見上げ、数秒ほどの間を挟んで。赤岡はコクリと首を縦に振った。
確かに設楽は、かつて黒珊瑚の力を暴走させた黒い欠片に対して赤岡が抱く懸念と不安をぬぐい去ろうと
赤岡の目前で欠片を口に含んでいたのだから。
「・・・やっぱり。」
赤岡からの返答に、小沢は険しい表情のままぼそっと言葉を漏らす。
「彼は・・・黒の側の人間なんだね?」
「・・・ええ。」
一体何の事なんだろう、と不安げに島田達が見やる中、重ねて確認するように問う言葉に赤岡が答えれば
井戸田は眉を寄せて唇を噛みしめ、小沢はいよいよもって悲しそうに目を伏せた。
・・・それも仕方のない事だろう。そう赤岡は思う。
付き合いの長い親しき先輩が敵側の人間だと知らされて、戸惑わない者はいないだろうから。

「・・・一体何の話してるんだよ。」
俺らにもわかるように説明してくれないか?
3人の間だけで話が進む様子にさすがにもどかしくなったのか、磯山がそう口を開く。
「誰が・・・黒の側の人間だってんだ?」

「・・・・・・・・・・・・。」
磯山の気持ちも分からなくもないが、ここは即答して良い物か。
小沢の方を見上げてその内心を探ろうとする赤岡のその腰の辺りから、不意に着メロが鳴り響きだした。
微妙に張りつめた空気にそぐわない電子音に、あぁ、あんなに暴れたのに携帯は無事だったんだ・・・
そんな呑気な考えがふと脳裏を過ぎらなくもないけれど。
ちょっとすみません、と目線で謝ってから携帯を取りだして液晶を覗き見た赤岡の目が、僅かに見開かれた。
「・・・誰から?」
「・・・噂の張本人から、電話ですよ。」
話が省けますね、これで。
そう幾分強張った口調で周囲に告げ、赤岡は一つ呼吸を置いてから携帯を耳元にやる。
「向こうは精神に作用する石を持ってますから・・・念のために各自抵抗はしておいて下さいね。」
そう口にして通話ボタンとスピーカー機能のボタンを続けて押せば。

228 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:11:51
『やぁ、復活おめでとう。気分はどう? 赤岡くん。』
携帯から穏やかながらもどこか冷たい設楽の声が周囲へと響き渡った。


「・・・お陰様で。」
虫入り琥珀によって赤岡が片腕を喰われたのは彼も目の当たりにしている。
けれど、復活と口にしたからには、赤岡が一度消失した事を設楽が把握している訳であって。
どうやってそれを・・・と一瞬言葉に詰まる赤岡だったが、まずは何とかそう設楽に返した。
『それは良かった。でもどうしたの? そんな怖い口調で。何を警戒してるんだい?』
自然と慎重になる赤岡に対し、設楽の口調はどことなく楽しげである。
しかし口調とは裏腹に、その声の質は彼が口にしているような赤岡の帰還を喜んでいたり
口調のように楽しそうに喋っているとは到底思えない物で。
外野で聞き耳を立てている野村の口からうわぁ、と引きつるような小さな呟きが漏れた。

「・・・別に。」
『まぁ、良いけど。』
不安げな眼差しを回りから浴びながら赤岡がまた設楽に返せば、設楽は素っ気なく話題を流す。
『じゃ、とりあえずわかってると思うけどさ。お前、黒、クビね。』
「・・・・・・なっ?」
しかしその勢いのままサラリと告げられれば、脊髄反射的に赤岡の口から驚きの言葉がこぼれた。
『だってお前、小沢達倒せなかったし?』
一応実力主義なんでね、こっちも。あんま無能な無駄飯食いばかり置いとけないの。
慌てた赤岡の様子がおかしかったのか、小さな乾いた笑い声を挟んで設楽は赤岡に告げる。
『あ、それとさ。そこに小沢いるんでしょ? 替わってよ。』

「・・・・・・・・・!」
いきなり己の名を呼ばれ、自然と視線の集まる小沢の肩がピクリと揺れた。
どうしますか、と赤岡から目線で問われれば、しばし迷ったような仕草を見せたが
覚悟を決めたのか小さく頷き、携帯を受け取ろうとその手を赤岡の方へと伸ばす。

229 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:14:47
「小沢さん・・・。」
心配そうに声を掛ける井戸田に大丈夫、とぎこちない笑みを返して
小沢は赤岡から携帯を受け取ると顔の側へ持っていき。
「・・・もしもし、替わりました。」
告げた小沢の声は、電話越しというのを差し引いても普段のそれとは異なった響きを帯びて届いた事だろう。

『んー、どうしたのかな? そんな緊張して。小沢らしくない。』
そんな小沢の態度にククッと楽しそうに笑いながら・・・多分今の彼の目は笑っていないに違いないが・・・設楽は問う。
『そんなにショックだった? この設楽 統が黒のユニットの芸人だったって事が。』
「・・・・・・ええ。」
状況からそうだろうと推測していたとはいえ、直に本人から宣言されるとやはり衝撃を受けるモノで。
小沢は感情を押し殺すような短い返事を返す。

それでもすぐに小沢はでも・・・と口を開き、言葉を紡いだ。
「でも・・・必ず。僕らがあなた方を・・・止めますから。」
『・・・おや、随分と頼もしいお言葉だねぇ。』
「褒めてくれてありがとうございます。」
皮肉の色を僅かに混ぜた設楽の言葉に応える小沢の顔からは動揺の気配は薄れ、凛とした力強さが戻っていた。

・・・このぐらい、覚悟はしていたから。
アパタイトの想いに応じ、たった1人、黒に染まった石を封印する白の側に立つと決めたその時から。
「たとえ潤さんや仲の良いみんなが敵に回ろうとも、黒の側の石を封印して・・・この騒ぎを終わらせてみせる。
 そう僕は僕の『いし』と約束した。だからあなたが相手でも屈しない。あなたを止めてみせます。」
そうきっぱりと言い切る小沢に応じ、そして励ますようにアパタイトも淡く輝きを発する。

『・・・ふぅん。』
思ったほど小沢が動揺しない事がどうにも面白くないのか、設楽の反応はは素っ気ない。
『まぁ、せいぜい頑張ると良いよ。』
その代わり、後で泣いても助けてあげないから。
涙腺の弱い小沢に向けたのだろう呼び掛けの声は冷たく、気の弱い人間なら違う意味で今すぐ泣きたくなるほどで。

230 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:17:34
井戸田には、この声の主がさっき路上で逢った時の気さくな雰囲気を発していた人間と
同一人物だとは到底思えなかった。
どちらかが偽物である、といったような何かの間違いであればいい・・・そう思いたくても
それを実証させるだけの証拠が自分達の手の中にないのが現状で。

仕方なく口をつぐむ井戸田同様、江戸むらさきの2人も号泣の2人も口を閉ざす中。
『あぁ、ちなみにこの事は日村には黙っててね。もしあいつにバラしたら、そこが事務所だろうが劇場だろうが
 ライブ中だろうが全国ネットの生放送だろうが・・・とにかくお前らの事、殺すから。』
自分勝手極まりない・・・しかし、その言葉が本気である事だけは充分に伺える設楽の声が響いたかと思えば、
それが掛かってきた時と同じように突然プツリと電話は切れた。



「・・・な、何なんだよ、ったく!」
聞き慣れた無機質な電子音がスピーカーから流れ落ち、設楽の発するプレッシャーが薄れた途端、
憤慨したように磯山が声を上げる。
「何であの人が・・・黒の側って・・・嘘、だろ?」
「あの人は、黒の側の人。」
混乱しているだろう事が伺えるその言葉に、赤岡はそう告げて静かに首を横に振った。
「しかも、本人曰く・・・どうやらそれなりに一目置かれる立場にいるみたいですよ。」
黒に誘った本人から黒をクビになった以上、もう別に黙っている必要はない、と付け加えられた言葉は
周囲の面々に更なる追い打ちをかける事になるだろうか。

「・・・って事は・・・いつも設楽さんの回りにいるみんなも黒に近いって考えといた方が良い・・・のかな。」
日村さんには口止めするよう言っていたって事は、あの人は違うみたいだけど。
島田が力なくこぼした言葉は、誰もが脳裏に過ぎらせつつも口に出す事だけは我慢していたそれ。

231 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:19:47
「多分な。あの人結構影響力あるから・・・。」
島田が喋ってしまった事でどうしてもその事に向かい合わざるを得ず、野村が苦虫を噛み潰したような表情で呟いた。
元々M2カンパニーと合併する以前から、沼島の嫁ばりに慢性的な先輩不足に陥っていた
ホリプロの事務所事情も相まって、事務所内の超若手達には設楽を慕っている者も多い。
野村達が親しく付き合っている・・・と言うよりも連れ回しているメンツにもそれは含まれていて。
「あいつらとかあいつらとか・・・いちいち警戒してくのは、正直キツいな。」

「じゃあ、石をここで封印して何もかも忘れればいい。」
想像するだけでも頭が痛くなる、と思わず眉を寄せる面々に、おもむろに小沢が告げた。
それは己ほどの覚悟を持っていないと思われる、彼らに対しての小沢なりの配慮のつもりなのかも知れないけれど。
その途端、一斉に尖った視線が彼の方へと向けられた。
「何でそうなるんですか?」
そうカツゼツの悪い声を張り上げた島田に続いて
「そんな事したら、小沢さん達が孤立しちまうじゃねーかよ。」
磯山もンな事出来る訳がねぇ、と即答する。

「でも、そうすれば・・・」
「止めときなよ、小沢さん。」
少なくとも悩まずに済む、実際に親しい相手と向かい合った時に苦しまずに済む。
口々に反論してくる磯山達にそう告げようとした、小沢の肩に手を置いて井戸田が苦笑を浮かべた。
「少なくとも・・・今のこいつらに『忘れる』って単語はNGな筈だしな。
 それに、俺は見てないからわからねぇけど・・・さっきはみんなで戦ってたんだろ?」
・・・だったら大丈夫だ。
何の根拠もない太鼓判を押す、井戸田を小沢はジッと見やる。
その己を見る小沢の目が微かに潤んでいるのを見て取って、井戸田は肩にやった手を
今度は小沢の頭へ持っていき、もう一度大丈夫だと告げながら宥めるようにぽんぽんと軽く頭を叩いた。

232 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:21:28
白のユニットの1人として堂々と振る舞おうとしていても、小沢も本当は不安なのだろう。
設楽の黒のユニット宣言もそうであるが、石を濁らす力を持った黒の欠片の存在とその威力を
赤岡の豹変という形で知った以上いつどこで誰が黒の側に変わってしまってもおかしくない・・・
そう考えれば誰かを仲間だと信じる事も難しくなる。
それならば、石を奪ってしまった方が得策なのではないか・・・そんな思考に走ってしまったとしても
仕方のない事ではあろうけれど。

「あんまり自分を追い詰めすぎてると、もっと肌荒れンぞ?」
「・・・・・・ゴメン。」
自分を見やる眼差し、そして冗談めかしつつもその声は暖かい井戸田の言葉に小沢は素直にコクコクと頷いた。

「まぁ・・・僕が言うのも何ですけれど・・・少なくともそこの2人は今まで通り信じてあげてください。」
磯山と野村を順に目で示し、赤岡も小沢に告げる。
しかし、それは逆に考えれば赤岡自身と島田は信用してはならないと言わんばかりで、
回りが赤岡に対し何かを言おうとするより早く。
「僕もまぁ、助けてもらった恩は必ずどこかで返すつもりですが・・・それもまずは携帯を返して貰ってから、と言う事で。」
長い腕を小沢の方へ伸ばし、真面目な顔で赤岡が続けるその台詞に、それぞれの口から出かかった言葉は
どれも脱力を伴った吹き出し笑いに変わっていた。

233 :“Black Coral & White Coral” ◆ekt663D/rE :2005/03/23(水) 06:49:02
今回はここまで。

前に今回ぐらいで完結かと書いたのですが、ご覧の通りの状況で・・・。
次こそ完結できる・・・と思います。

234 :名無しさん:2005/03/23(水) 23:04:43
乙です!
設楽さんとかかわっちゃいましたね〜
しかし自分の正体がばれても冷静ですね・・・強いですね。
続き頑張ってください!

235 :宇治マリモ:2005/03/24(木) 08:35:18
書き込み遅れました
214さん>能力案ですか・・・。

石って完全にオリジナルでいいんでしょうかね?
いいんでしたら少し考えられるんですけど・・・。



236 :ブレス ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/24(木) 12:26:15
>>235
進行や相談はしたらばで受け付けています。
それとテンプレを一度読みなおしたりするといいかもしれません。
更に欲を言うと、sageでお願いします。
なんか偉そうにすいません・・・。

237 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:54:22
先日はなんかめっちゃ偉そうですいませんでした。
>>140-144の続き、はねる編3話


<<Jamping?>>--03/a hard steel


西野は、その日も「はねトび」の収録に急いでいた。
細身の身体に肩からかけた鞄が小刻みに揺れた。
局の中に入り、楽屋に向かうその過程で、堤下に出会った。
「あっつっつん、おはようござ・・・」
彼は脇を通りすぎた。
「なんやねーん、あの人ぉ」
西野がぼそぼそと大きめの背中に突っ込んだ。
見た限りでは、堤下は機嫌悪そうな顔はしていた。
だが、シカトとは一体どう言うことなんだ。
彼がそう悩んでいると不意に
「西野ー。」
「あーん?」
後ろから、彼の相棒・梶原が現れる。

238 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:54:59
「なんしたーん?」
「・・・いやな、こんな物を頂きまして。」
「なんやねんそれ」
梶原がふと、お前宛てやと西野に小さな箱を渡した。
「中は見てへんから、なにはいっとるかは俺も知らん」
「・・・あっそ」
西野はその場で箱を開く。目を見張った。
――――やや濁った光をを放つ黒い石がそこにいた。
「これは・・・誰から・・・?」
「・・・あぁさっき博が渡してくれてん」
「そうなん?」
あとで詳しく、そう言って西野は箱を閉めて鞄へ放り込んだ。
立ち話もなんだし、と2人は楽屋へ向かう。
その刹那である。
「――――博!」
曲がり角の方から怒号が聞こえた。
直後の衝撃音。ぼぐっと重いボストンバックが殴られたような音だった。
2人は、その場でのやりとりもそこそこに、音のほうを向いた。
「どないすんねん?」
その一言に、西野は何ら考えることはなく一言
「止めに行く。」
それだけ言った。
「いこか?」
梶原が言って、足元から蒼の光を見せる。
西野は不意にチョーカーの石を触り、そしてゆっくりと力を解放した。
光に包まれた皮膚の表面が少しずつ色を変えていく。
「つっつん・・・何するつもりやねん・・・!」
抗う事が出来ない闘いの中で、彼は仲間が傷付け合う事に悲しんでいた。

239 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:55:34
2人が駆けつけたときには、既に遅かった。
山本を相手に堤下が石を使っていた。
革の腕輪に収まる石はワーベライト。本来素質を生かす石である。
そしてそれが放つ翠の閃光で、物質同士がぶつかる衝撃が増幅されていた。
能力の代償からか、既に堤下の額にはうっすらと汗が滲んでいる。
山本の背後の壁にはいくつか大きめの穴が開いており、堤下がそれを開けたようだ。
「つっつん」
西野がやさしめに堤下を呼ぶ。
「西野か・・・。何しに来た?」
「きまっとるでしょ、止めに。」
ふっ、と嘲笑する声。
「無理だな。この喧嘩、先に売ったのは博だ」
喧嘩を先に売ったのが、博?
虫一匹殺せなさそうなあの山本が、まさか先に、それも仲間であるはずの堤下に手を出すわけがない。
「ところで、お前どうした?その身体。」
「俺の石ですよ」
西野は言いつつ山本を見据える。
「・・・博が先に手ぇ出すなんて考えられへん」
山本はまず堤下を見、次に梶原を見て、最後に西野を睨んだ。
「哀れだね、西野」
「・・・何がやねん?」
西野の声には明らかな不快感が滲んでいる。
同じようにそれは表情にも出て、眉を潜めていた。
「元々、石を持ったときから俺達の衝突は避けられなかったんだよ。
何時ぶつかるかわからない。それが、今だっただけの話だ。」
山本の言葉を西野は聞きたくない、と一蹴した。
彼が敵だなんて考えたくもないから。

240 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:56:06
「・・・西野、梶原・・・。お前らはどっちだっけ?白とか黒とかで分けると」
ドキッとする。そういえば『黒』の連中から石を取り上げたりはしているが・・・。
梶原は一瞬迷って
「多分博とは逆ちゃう?」
「そう、じゃー『白』だ?」
「・・・・・・そういうことに」「なりますかねぇ・・・・・・」
キングコングが顔を見合わせる。
黒とか白とかの分け方は彼等にも不透明だが、きっとそうなんだろう。
「じゃあ、敵だから石賭けて戦う理由はあるよね」
そう呟く山本は、何時もの山本博であって、そうではない。
何時もの操られている『黒』の連中とは明らかに違う。
「梶」「わかっとる」
山本は自らの石の能力を現し、その右腕に力をこめた。
ざっ、と走りこみそう離れていなかった間合いを詰める。
狙いはどうやら西野だ。
「西野っ!」
「大丈夫や!せやから梶、お前は準備しとけ!」
梶原に指示を出しつつも、西野は山本の攻撃に備えた。
両腕を頭の前でクロスさせて、ぐっと拳に力を入れる。
それを見た堤下もその場から1歩後ろに引く。
がきぃぃいんっ。
やたら音の低い金属音があたりに響いた。
「――――身体を金属にしてるのか?」
「みたいやね?」
両者共にその場で動かない。
山本の右の拳は、西野のクロスさせた両腕に防がれていた。
西野が叫ぶ。

241 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:56:43
「梶!猿の真似やれ!」
「・・・ウキ!」
短い叫びと共に、蒼い光が辺りを包む。
その直後に、今度は梶原が相方をブラインドに後ろから飛び出す。
「!?」
山本が1歩引いた。
そこにいた梶原は、異様な様だった。
獣のような唸り声を上げているものの、眼は冷静で、何故か尻尾が生えている。
その彼は、西野の右脇から飛び出して山本を捕まえた。
「や・・・止めろ!梶原っ、お前は関係な・・・」
「――――っきぃっ!」
それほど力の強いはずのない梶原が、山本を後方へ吹き飛ばした。
また数メートルの間合いが出来る。
「博、お前なんでだよ?なんで俺達を襲うんだよ?」
堤下が、最後の望みをかけたような声で山本に聞いた。
その言葉に山本はにやりとした。
「簡単だよ」
彼の右足首から、レモンクォーツの黄色い光が漏れ出した。
同時に、その右の拳も黄色い光で包まれる。
「こんな便利なもんを封印しようなんておかしいって思ったからさ!」
次なる攻撃を仕掛けに、山本は再び西野めがけて走り出した。
西野も体制を整えて攻撃に備える。
「どけ西野。俺がやる!」
そう言って突然堤下が西野を横にどかせた。
距離はそう遠くない。山本の一撃を、堤下が避ける時間は残っていなかった。
ふいに、堤下は手に何かを取った。それは野球で使うのと同じ位の大きさの球である。
「おらぁっ、食らえ!」
山本の拳めがけて、堤下の球は投げられた。

242 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:57:29
すぐさま皮の腕輪が翠の光を帯びて輝く。
「衝撃・5倍っ!」
皮の腕輪の光は更に増して、山本にぶつかる球を包む。
ぱあぁぁんっ!!
細身の身体と翠色になった球とは、それぞれ元来た方向へ吹き飛んだ。
「ぐうっ・・・・・・!」
代償はどうやら大きく、堤下が一瞬苦しそうに息を吐き出した。
投げた球は、跳ね返り天井へ一度当たって落ちてきた。
そして山本は、その衝撃を殺しきれずにざざっと後ずさりしていた。
右腕が痺れているのか、力を入れずにだらんと下げている。
「・・・つっつん凄いよね・・・、もったいないなー・・・」
「・・・まだそんな事言う余裕があんのか?お前右腕つかえねぇのによ」
息絶え絶えの堤下のその言葉に、山本は無言で返す。
「博、もうやめようや。俺、博と戦ったりしたくない」
西野と梶原は、何時の間にか石の力を解いていた。
「・・・甘いよ、お前ら」
「なにがやねん」
「俺敵だよ?」
「・・・せやけどっ・・・」
「敵に手ぇ抜いちゃ駄目だよ」
「・・・・・・」
ぐっと力を入れて、痺れが取れ始めた右腕を持ち上げる。
堤下がそれを制止した。
「やめとけ。もうお前と俺等が戦っても勝てねーだろ」
それを聞いて山本は笑い出した。
「・・・んだよ!なにが可笑しいんだよ?!」
「くくっ・・・、そうだね。これ以上やっても勝てないよ、お前等。」
「何?!」
この状況で、1人で勝とうとでも言うのか?!

243 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 21:59:05
無理だろう、山本の分は悪すぎる。
堤下が時計を確認する。もう本番直前で、きっと皆怒っているだろうな。
「あーあ、スタッフさんになんて言い訳すりゃいいんだよ・・・」
これ見られたら完璧まずいぜ、俺等。と堤下。
「それより博をどうにかせんと!」
「・・・・・・どうにもならねーだろ、この場は」
「どうにでもするよ、そっちが降参して石くれれば」
「それはでけへんな・・・、俺等は石を封印せなあかんから」
4人はしばし睨み合う。
すると山本は、しばしニヤリとしてから石の力を解いた。
同じように時計を見て、それからポツリと。
「・・・今は仕事、か。」
「「「・・・?」」」
「この戦いは持ち越しだ。また次にしよう」
その言葉に3人は一瞬きょとんとした。
『黒』の奴がそんな事を考えることがあるのか、と驚いたからである。
「それより仕事だ。仕事。」
「・・・って博?!」
「ん?」
「・・・どういう事やねん」
「どうもこうも・・・こう言うことさ」
「だって博は・・・」
「この収録の間だけは・・・、普通の、何時もの山本博。
でもこれが終わったら・・・、『黒』に自ら身を置く、石に魅了された山本博。
・・・・・・それで良いだろ?」
「・・・・・・」
――――やっぱりこれは山本博だ。
心の底から憎むことも叶わず、裏切ることも叶わず。今は、その状況に納得するほかなく、4人はスタジオへ向かった。
そしてこれから、また戦わなければならない事実に、この間だけ蓋をした。

244 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 22:00:40
以上本文です。長文にお付き合い頂きありがとうございました。
以下石能力、梶原さんです。

キングコング
梶原雄太
石:カバンサイト(飽き足りた毎日から開放してくれる・やや濃い蒼)[アンクレット]
能力:野生開放。お尻から尻尾とか生えて、猿っぽくなる。
それなりに理性は残っている為か、なんとなく西野の言うことは聞く。
条件:猿の顔真似をして発動する。
身体能力等、猿に近いものを得られるが、能力を使ってから最低10分は「ウキ」しか言わなくなる。
また、西野が指示を与えることも可能だが、バナナをあげないと言うことを聞かない。

245 :ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w :2005/03/25(金) 22:03:20
以上はねる編3話投下完了です。
皆様良作を毎回投下されるので、一体どう感想つけたらいいやら。
自分もまだまだだなと思う次第です。それでは。

246 :名無しさん:2005/03/26(土) 00:23:18
乙です!
はねる編楽しませていただきました。
というか梶原の設定に笑えます(笑)似合いすぎです。
博の立場が・・・普通と変わっているのと両方あるだけに厄介ですね・・・
頑張ってください!

247 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/26(土) 01:12:29
>>194続き。
毒舌家達の憂鬱・後日談



数日後、某番組に出演する若手芸人達が集められた楽屋にて。
すっかりお馴染みの着流し姿で出番を待っていた波田は、見慣れた後ろ姿が扉を開けて出ていくのを視界の端に捉えて顔を上げた。
後を追って楽屋を出ると、長い廊下を歩き角を曲がった所でようやくその背中を見つけ声を掛ける。
「長井さん」
「・・・・・・おお」
振り返ったその人物――――長井秀和は、波田に気付くと軽く右手を上げた。
こちらもネタ中ではお馴染みのスーツ姿だ。
「この前は悪かったな、迷惑掛けて」
「・・・・・・え?」
心なしか小さな声で長井が呟いた言葉に、一瞬次の言葉に詰まる。
「・・・・・・どうかしたか?」
「・・・・・・この前って・・・・・・この間の収録前、ですよね?」
「そうだけど・・・・・・・あれ、俺何かおかしい事言ったか?」
不思議そうに問い返してくる長井の様子を見ると、どうやら彼は自分の発言の重要さに気付いていないらしい。

248 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/26(土) 01:13:20
「あ、いや・・・・・・憶えてるんですか? あの時の事」
長話になりそうだと察知したのか壁にもたれて腕を組んだ長井に倣い、スタッフの邪魔にならないよう壁側に寄ると、波田は小さな声で話し掛けた。
スタッフにも『黒』側の人間が居る以上話の内容を全く聞かれないというのは不可能だろうが、用心に越した事はない。
「あぁ。気を失わないようにするのが精一杯で、さすがに石を押さえ込むのは無理だったけどな」
長井は何でもない事のように言ったが、あの状態でもまだ意識を保っていたという彼にに、改めてその能力の高さを思い知らされる。
普通の人間なら身体ならず意識までも完全に乗っ取られ、暴走している間の記憶は全くないはずなのだから。しかも本人には自分が特別だという自覚が全くない。
「しっかしお前、暴走してる奴相手だからってギターで殴る事ねぇだろ・・・・・・・結構効いたぞ、あの一撃。2・3日青アザが消えなかったしな」
「すいません」
暴れる長井から逃げ出す為にギターで思い切り殴り付けてしまったのだが、どうやらその時の事も長井はしっかり憶えているらしい。
自分の胸を指してからかうような笑みを浮かべる長井に責めるつもりはないのだろうが、礼儀として謝っておく。
「でも、普通に殴ってもあの状態の長井さんにはダメージ与えられそうになかったんで・・・・・・・結構凶器になりますからね、アレ。俺も一回『残念!』の時に力みすぎて肋骨やりましたし」
冗談めかした口調だが今の話は本当だ。とある大きなイベントで、大舞台に張り切っていた波田は勢いよくギターを振り下ろした拍子に肋骨を亀裂骨折した事がある。
「そりゃただ単にお前がドジなだけだと思うぞ・・・・・・」
「・・・・・・かもしれませんね」
呆れたような顔でボソリとツッコミを入れる長井に、思わず苦笑を返す。
「・・・・・・で、すっかり話が逸れたけど何の用なんだ?」
探るような視線を向けてきた長井に笑みを消して真剣な表情になると、波田は懐から二つ折にされた封筒を取り出した。

249 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/26(土) 01:14:48
「これを、渡そうと思って」
何か固形の物が入っているのか、封筒の底が少し膨らんでいる。
どうぞと差し出された封筒を条件反射で受け取った長井は、眉を顰めた。
封筒の膨らみ方とずっしりした重みで、中に入っている物が何なのかに気付いたのだろう。
「・・・・・・これを、俺に?」
「えぇ、5日くらい前に手に入れたんですけど、今日あなたに会って確信しました・・・・・・この石だと」
中に入っているのは、波田が手に入れたものの中から探し出した石だ。
長井を、正当な持ち主として選んだ石。
「俺はいらないよ・・・・・・前みたいなゴタゴタに巻き込まれるのはごめんだ」
石に操られ暴れた時の記憶が蘇ったのだろう、苦々しい表情で長井は首を横に振った。
嫌がる相手に無理に石を押し付けるのも少し気が引けるのだが、青木と約束した手前このまま引き下がるわけにもいかない。
「あの石と違って、これはあなたを選んだ、あなたの持つべき石です。余程悪意を込めて使わない限り、この前みたいに暴走する事はないと思いますよ。・・・・・・それとも、また相応しくない石に操られたいですか?」
少々きつい言葉を投げ掛けると、長井は何とも言えない表情で黙り込む。
「もちろん、この石を使って何をするかはあなたの自由です。石の力を封印出来る人間を探して、使えないようにしてもらっても構いません。・・・・・・受け取ってもらえます?」
まっすぐな波田の視線に根負けしたのか、長井は溜息をつくと封筒をスーツのポケットに仕舞った。
その事にひとまず安心して、波田は思い出したように言葉の続きを口にする。
「・・・・・・・あ、あと最後に青木さんから伝言なんですけど、
『あんただったら平気だと思うけど、もしもの事があったらぶっ飛ばしてでも連れ戻すから』
だそうです。どうせ仕事で会うんだから直接言ってくださいって言ったんですけどね・・・・・・それじゃあ、もうそろそろスタッフが呼びに来ると思うんで」
ぽかんとした表情で固まる長井に思わず込み上げてきた笑いを堪えると、波田は踵を返して廊下を歩き出した。

250 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/26(土) 01:15:32

『絶対に言っておきたい事なんだけど、そんな事面と向かって言うのも恥ずかしいじゃない? だから代わりに言ってくれないかな』

『黒』の若手達を倒した後、目を覚ました波田に青木が真っ先に言ってきたのがその事だった。
頼むと言うよりは脅すようなその目に渋々頼みを聞いたのだが、長井の珍しい表情を見る事が出来たのだからよしとしよう。
どうやら彼は今まで自分が思っていた以上に尻に敷かれるタイプだったらしい。

角を曲がりながら、波田は長井に渡した石の事へ考えを巡らせた。
先程長井に『石を封印しても構わない』と言ったのは、石を受け取らせる為の嘘だ。
彼は『黒』のやり方に賛同するような人間ではないし、『黒』に飲み込まれたくなければ石の力で対抗するしかない。それを考えればそう簡単に封印も出来ないだろう。
彼のように強い精神力と素質を持った芸人はなかなか居ない。
その彼を選んだ石が一体どれ程の力を見せるのか、それが今の波田の最大の関心事だった。
それは決して善行とは言えないだろうが、自分は善にも悪にも興味はない。
・・・・・・いや、「関わりたくない」と言った方が正しいだろうか。
どちらかが善でどちらかが悪だとしても、2つの勢力がぶつかれば被害は避けられない。
例え抑え切れない好奇心に駆り立てられていても、自分はそこに進んで首を突っ込む程度胸のある人間ではないのだ。
ただ、どちらに勝って欲しいかと問われれば迷う事なく『白』と答える。
文字通り他人を蹴落とす『黒』のやり方は、受け入れられない。

251 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/26(土) 01:19:47

『あんたのやってる事は・・・・・・おかしい』

そういえば、彼は今頃どうしているだろう。好奇心に駆り立てられるまま石を回収しばら撒く自分を、面と向かって否定した彼・・・・・・・川島省吾、またの名を劇団ひとり。
あの時彼は石を「いらない」と言ったが、恐らくは石の力を狙う輩に襲われて封印どころではなくなっているのだろう、少なくとも波田の所には彼の石が封印されたという情報は入ってきていない。
自分が渡した石のせいで戦いの日々に足を踏み入れた川島には少々申し訳ないが、例えあの時渡さなかったとしても、別のルートを通ってあの石は彼の所へ辿り着いただろう。
長井に渡した石にしても同様だ。
どんな方法であれ、自らが選んだ持ち主の元へ石は必ず辿り着く。
恐らくは、それが『石に選ばれる』という事なのだ。
彼らの石が一体どんな力を発揮するのか、出来ればこの目で確かめたいのだが・・・・・・
大きな期待と少々の自己嫌悪が混ざった笑みを浮かべると、波田は控え室へと続くドアを開けた。

――――まだ、憂鬱な日々は終わらない。



ちょっとした後日談のつもりが本編以上に長くなってしまいましたorz
次に長井さんを書く予定も今のところはないので、長井さんに渡された石が何なのか、どんな能力なのかは、次に長井さんを書く書き手さんに一任しようと思います。

252 :名無しさん:2005/03/26(土) 01:46:04
皆さん書くのが早いです。そして物語りも素晴らしい…
投稿ペースが速くて読むのが大変ですね。

ずっと延び延びになっていたオパール編の続きが書けたので投下、
しようと思ったのですが明日にします。
1日に3話連続投下だと読み手さんも感想が面倒だと思うので。

253 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/26(土) 03:02:20
>>ブレスさんへ
報告が遅れましたが、ちょっと質問があったのでしたらばの進行会議の方に書き込みました。

254 : ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:11:23
書き手の皆さんも読み手の皆さんも、こんばんは。お疲れさまです。
したらばの添削スレをうろついておりました者です。
ルミネ芸人・トータルテンボス中心のお話を書きまして、
ぜひ本スレにも投下させていただきたいと思い、お邪魔しています。
なにはともあれお楽しみいただけたら幸いです。

255 : ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:20:01
 ギターを爪弾く樅野が一音はずした。藤田が思わず顔をあげたら、バツの悪そうな樅野の表情とぶつかった。
「はずしましたよネ?」「いいや…まさか」薄ら笑いで言葉を交わして、その後、大きな声で笑った。その拍子
にベースを弾く藤田の手元も狂った。いっそう笑えた。
 ただし笑いながらも、藤田は彼の相方のことを心配していた。20分ほど前にこの控え室からフラリと出て行
ったきり、戻らない。相方が20分戻らないくらいで心配するなんて、なんと過保護なコンビだろうと思われる
かもしれない。
 今日は、彼らトータルテンボスがボーカルとベースをやっているバンドの深夜のライブ。しかも不慣れな会場
だということで、大村が迷っている、もしくはどこかを探索しているという可能性も無いとは言えない。
 ただ迷っているのであれば、まだいい。むしろ迷っててくれ、と藤田は念じていた。迷っているのではなく、
まっすぐ控え室に戻ってくるところを『何者かに』『邪魔されて』いるのであれば、甚だ問題だ。…もっとも、
もし迷っているのであれば「藤田君、ワタシが居るこの場所はいったいどこなのかね!」と相方の横柄な口調が
聞こえてくるであろう携帯電話が、ちっともちっとも鳴らない。ということは、藤田の希望的観測は外れている
のだろう。だからこそ、藤田は20分戻らない相方を心配している。
「藤田、そういえば入ってきた時から、そんなスウェット履いてたか?」
 藤田の格好を眺めた樅野が、不意に声を掛ける。彼らのバンド「ソーセージ・バタフライ・パスタ・フェス
タ」のギターであり独特の詩の世界観を紡ぎ出しているのが、この樅野である。ついこの間、チャイルドマシー
ンというコンビを解散したばかり。ちなみに樅野の現在の肩書きは作家。元相方の山本はピンで芸人を続けてい
る。


256 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:21:24
「え?なんすか」
「おまえさ、今日の服、イケてんの?」
 くくくと笑われて真っ赤になりながら、藤田は必死に弁解の言葉を探す。確かに、原色使いの多い彼のコーデ
ィネートの中、パジャマ代わりのようなグレイのスウェットは浮いている。
「ち、違うんすよ!今日ジーパン履いてきてたんです!すっげイケてるカッコしてましたよ!」
「何?漏らしたの」
「違いますって!大村の悪戯ですよ。アイツ、俺の座る椅子にシュークリーム置いてやがったんです。俺、気ぃ
つかなくて、座ったらベチャッて中のクリームが」
「シュークリーム?」
「余計に作られてた“辛子入り”のヤツです」
 あぁ、と樅野は肯く。芸人のライブのクイズコーナーなんかでよく見かける、ロシアン・ルーレットの小道具
だ。大勢がシュークリームを口に入れて、その中で“辛子入り”シュークリームを食べているのは誰でしょう、
というアレ。
「コントの衣装でたまたまスウェット持ってたんで、とりあえず着替えてきたんですけど…」
 その後、まっすぐこのライブ会場に来たということなのだろう。笑う樅野に憮然とした表情を返してから、藤
田はちらりと時計を見上げた。大村がこの部屋を出てから、30分近くが経過している。藤田はひとつ息を吐く
と、ベースを置いて立ち上がった。
「あのぉ…樅兄、オレ、ちーっと出てきます」
 藤田の声掛けに、樅野はギターから顔を上げぬままに応じる。
「おう、大村連れて戻って来ぃ」
 樅野も大村の不在に気づいて心配していたのだろうと知り、藤田は元気のよい返事をして控え室を出て行く。
その後ろ姿を見て、「大村に悪戯されたことなんか、もうすっかり忘れてるんやろうなぁ」と樅野は可笑しそう
に笑った。

257 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:23:38
 一方その頃、大村は目の前の相手を値踏みするような目で見ていた。それからおもむろに口を開く。
「…白ですか、黒ですか」
「え?」
 問われた相手は一瞬呆けたように間を置いて、それから、
「あぁ!俺?俺ね?俺、俺、白よ。白」
 ほらこんな感じ、と言いながら、男は自分の白いネクタイを指して見せた。その物にまったく説得力はないは
ずだが、そんな無邪気ともとれる仕種で、そのバックに居るのが『白』のユニットであることが信じられてしま
う…ような気もする。
 アンタッチャブルの山崎はそんな印象の男だ。
 ただし、なぜトータルテンボスがやっているバンドのライブハウスに山崎がいるのか。…ファンとして?顔見
知りとして?…それほど暇な身でもないだろう。
 山崎は何が楽しいのか(もしくは地顔と言うべきなのか)ニコニコと相好を崩したまま。
「でもさ、大村くん、正直、俺が白でも黒でもどっちでもいいでしょ」
「…どうしてそう思うんですか?」
「まぁこれは俺が勝手に思ってるだけだけどさ。白サイドの人ってのは、俺が敵かどうかを確かめたくて『黒
か?』って訊いてくることが多くってぇ。で、黒の側の人間は自分の味方かを確認したくて『黒か?』って訊い
てくる。どっちでもいいやーって人が『白?黒?』って訊いてくることが多いぃの」
 納得できるようなできないような、そんな自説を披露して、山崎は爽やか満面にニッコリと笑った。
「…『おまえは白か?』って訊く人もいるんじゃないんですか」
「いるね」
「そういう人は?」
「うーん…黒から改心した人か、芸人辞めた人か?…もしくは、どっちかをスパイしてる人」
「スパイ?」

258 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:24:27
「そう。本当は黒側なのに白のふりしてるとか。その逆とか」
 大村は意外だと思った。各ユニットにスパイがいるという話は初めて耳にしたが、もちろん争いのあるところ
には付き物の話であろうから、それ自体はさほど驚くことではない。そのことを山崎が知っていた、気にしてい
たということに驚いたのだ。なんとなく、そういったことには鈍感、もしくはとんと無頓着に見えていたから。
「…ってことは山崎さん、スパイに遭ったことがあるんすか?」
「それはいいじゃない!ま、どっちにしろスパイとかさ。そういう人は『おまえ白?』って訊いてくるような気
がする」
 山崎の言葉の真意を大村は量ることが出来なかったが、それは今は問題ではあるまい。
「まぁぶっちゃけ?白でも黒でもどっちでもいいって山崎さんの言葉はアタリです。それで…中立の俺に何の御
用で?」
 重要なのはそこでしょ?という言葉を眼差しに込めてみる。案の定、山崎は今度はニヤリと人を食ったような
笑みを浮かべて。
「そりゃ中立の人に持ちかける話ったら大体相場は決まってるでしょう」
 この流れで今更友達になってください、とかナイでしょ。
 そう言って笑う山崎を前に、大村はなんとなく腰から尻のポケットにかけて繋がるウォレットチェーンを幾度
も撫でていた。
 ジーンズのベルトに繋がるチェーンの金具には、透明感のある黄色をした石が割と無造作に繋がっている。そ
れがじわりと滲み出すように光を放ち始めたことに、まだ大村は気付いていない。
「仲間に入れって?」
「まぁそれもあるけど…俺が訊きたいことはそれとは別」
 いつもの不敵な笑いを絶やさぬようにしながら、大村は顔が引き攣るのを感じていた。
 なぜだろう。山崎はこんなに友好的な笑顔なのに。
「俺が訊きたいのは…君の石の能力が何か、だよ」
 なぜだろう。俺の心臓がドクドクと、こんなに落ち着かないのは。

259 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:25:23
「何やってんだアイツは」
 控え室を出た藤田だが、1分と経たないうちにトイレの前の廊下で立ち尽くす大村を見つけた。じっと睨むよ
うな目線。握り締めた片方の拳と、もう片方の手はウォレットチェーンを行ったり来たりしている。
(…あ!アイツ、石使おうとしてやがんだな?!)
 瞬時に勘付いた藤田は、そこから猛ダッシュで大村へと近付く。不測の事態に備えて、彼の片手もウォレット
チェーン――といってもスウェットには付けられないのでポケットに放り込んでいた――を手に取る。藤田の心
の焦りに呼応するように、薄い碧色の石がふっと光を放つ。
「おーむ!何やってんだよ!」
「うるせぇ」
 肩を掴むと、大村は藤田の手を振り切り、尚且つ押し退けようとする。その視線はまっすぐに据えられて、藤
田を振り返りもしない。
「うるせぇじゃねぇよ!お前、何やってんだって」
「藤田黙ってろ、向こう行ってろ。なんか胸騒ぎがする。あぶねぇかもしれねぇ」
「おい大村!!」
 大村の前に回り込んで、その両肩を掴んだ。大村の視線が、初めてまともに藤田を捉える。
「離せ!」
「“おまえ一人で”何やってんだよ大村!!」
「一人?!お前こそ何言って…」
 そう言って、大村は藤田の肩越しに視線を投げ掛ける。
 あたかも、そこに石を持った芸人が立っているかのように。
 そしてその顔は一瞬の後に、甘いと思ったシュークリームの中に辛子が入っていたかのような表情を上らせて。
「どこ行った?!」
「誰がだよ」
「居たろ!さっきまでそこに!」
「お前、俺が見つけた時からずっと一人だよ。何か睨んでたけど」

260 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:26:47
「んなわけねぇよ…居たんだ」
「だから誰が居たんだって」
「え?」
 改めて訊かれて、大村は即答するのをためらった。
 藤田の口ぶりによれば、山崎は『逃げた』のではなく『存在しなかった』もしくは『見えなかった』のだとい
うことになる。任意の者にしか見えずに惑わせる“幻覚”の類か。間違いなくそれを生み出したのは「石の力」
だろう。だとすると、その「石の持ち主」は2通りのことが考えられる。つまり、「山崎」か「山崎以外」かと
いうことだ。
 そして、うかつにそんな思考の過程を口に出すべきか、大村は迷ったのである。目の前に居て話をした山崎が
「幻覚」だったと気付かされたばかり。
 目の前に居る藤田が“本物の藤田”かどうか、大村には分からない。なにしろ藤田は、目の前の幻覚山崎が消
えると同時に現れたのだから。
「おい、大村?」
 黙りこくった相方を藤田が覗き込む。自分が“本物か”疑われているなんて、微塵も考えていない表情だ。
「…藤田」
「なんだね。神妙な面持ちだねぇ」
「石、持ってるよな」
「え?あ、あぁ」
 ホラ、と石を見せられ、大村はまたしばらく考え込む。さっきの山崎(の幻覚)は白いネクタイをしていた。
身体的特徴だけでなく持ち物までも忠実に再現するのであれば、石を持っている目のまえの男はホンモノの藤田
である可能性が高いとはいえ、確実な証拠にはならないだろう。
(どうすればいい?どうすれば、目の前のアフロ男が本物の藤田かどうかを判別できる?)
 普段はネタを考える時か悪戯を考える時にしか見せないくらい真剣な表情が、大村の顔に浮かぶ。
 すると、呼応するかのように腰の辺りにポッと熱が点ったような感覚がした。大村が改めて確認するまでもな
く、自分の石…薄い黄色の黄翡翠(イエロージェイド)が輝いているのだと知れる。

261 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:27:48
(そうか)
 大村はウォレットチェーンを手繰り寄せ、石を指先で確認した。この石があれば、藤田の正体を確認すること
くらいすぐに出来るはず。
「藤田。わりぃ、ちょっと俺、ライブ前でテンパってた」
「なに?」
「疲れてんのかもしんねぇ。ジュースを買ってきてくれたまえ」
 いつも通りの大村の様子に誘われて、藤田は眉毛を吊り上げる。
「おまえっ、そのジュース買いに行ってたんじゃなかったか。フザケんなよっ」
「…そういやそうだっけ」
 実際は控え室を出たところで山崎(幻覚)に行き会ったので、ジュースのことなどきれいさっぱり忘れ去って
いたのだが、大村はそこをサラリと流す。
「いいや。じゃあじゃんけんで負けた方が買ってこようぜ」
「…負けたら奢りか?」
 乗ってきた。
「望むところだ」
「よーし、やる気出てきたぞー」
 このノリの良さだけで藤田だと信じても良いくらいだったが、念のため、と大村は腰の石を発動させる。
「じゃーんけーん、しっ」
 大村の手は、チョキ。藤田の手は、パー。大村の石は一瞬キラリと光って、すぐにまた元の姿を取り戻す。
 負けた藤田があんぐりと口を開けるが、すぐに両手をぶんぶんと振り回して要求をかざす。
「さささ三回勝負!なっ。オゴジャンなんだから、それくらいアリだろう」
「…しょうがねぇな」
 大村の溜め息に口に出さぬ思いが乗っていることに、藤田は気付かないだろう。
「ようし、じゃんっけんっ」
「しっ」
 石がキラリと光る。大村・グー。藤田・チョキ。
「もういっちょ。じゃんけんっ」
「し」
 もう一度、石にきらめき。大村・グー。藤田・チョキ。
「はい、藤田くん三連敗」
 行って来い、とスウェットを履いた尻を叩きながら大村は念じた。
(来い、藤田。気付け、藤田。お前が本物なら)

262 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:28:30
「あッ!!」
 大村の願い通り、藤田はそのアフロ頭をもたげ、弾かれるように大声を上げた。
「おーむ、おめぇ、石使いやがったな?!」
(…やっと気付いたか)
 ほっと息を吐きながら、大村は「テッテレー♪」と間抜けな擬音を口にして、笑った。昔のドッキリ番組で種
明かしの時に流れたその短いフレーズは、同じテレビ番組を見て育った二人の間で、悪戯の種明かしを示す符牒。
 藤田が大村の石の能力を看破するかどうかが、この賭けの重要なポイントだったのだ。
「そうだよな、ちょっと考えりゃわかるんだよ!三連勝して余裕綽々な顔してるなんて、お前が石使って成功率
上げたからに決まってる!詐欺だ!…んで、何笑ってんだよ!」
 藤田ががなりたてるが、ホンモノの相方だと証明できた大村は笑顔を崩さない。大村の感情に藤田が気付くわ
けもないから、はたから見るとかなり奇妙なテンションの二人連れである。
「藤田」
「なんだね。ズルっこしたこと謝りたいのなら聞いてやる」
「俺の石の能力言ってみ」
「…謝らないのかよ」
 憮然とした表情ながらも、素直に大村の要求を聞き入れて、藤田は、
「今更説明させるって、何だよ。…自分か周りのヤツの“アクションの成功率を上げる”だろ。今はじゃんけん
で自分勝利の成功率を上げたってところだろうが」
 過不足なく大村の石の能力を説明して、これで満足か?という目を向ける。それに向けて大村は、至極満足げ
に微笑んで肯く。
 先ほどの山崎の幻覚は、「君の石の能力を訊きたい」と言った。それはつまり、山崎の幻覚を操る石持ちの芸
人は、大村の能力を知らないということだ。その人物が白か黒か、敵か味方か、そもそも何が目的で何故大村の
石の能力を知りたがったのかはさっぱり分からないが、藤田に化けることはハイリスクだったのだろう。彼ら二
人とも、正確な石の能力を知っているのは、今のところ本人と相方だけなのだ。
 大村は手を伸ばして、飼い犬を撫でるのと大差ない手つきで目の前のアフロを撫でた。この感触は間違いなく
相方…いや、この場合は、石を巡る戦いの中でも唯一絶対的に信頼できる、親友のものだと言えた。

263 : ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/26(土) 21:33:45
途中なのですが、今回はここまで投稿させていただきます。
以下、トータルテンボス大村さんの能力です。


大村朋宏(トータルテンボス)
石・・・黄翡翠(イエロージェイド)
効能・・・記憶力を高め、正確な判断力を与え、成功を持続させてくれる。
能力・・・自分や他人の、アクションの成功率をアップさせる。
 たとえば殴りかかる時に石を使えば、相手は避けづらくなり、
 追われている時に石を使えば、逃げおおせる。
 ただし、成功率を100%まで上げられるかは、その時の疲労度や集中力による。
 (一日4・5回が限度か)
 成功率を「アップ」させるので、たとえば敵の攻撃の成功率を「ダウン」させることは出来ない。
 (もちろん、こちらの“回避率”をアップさせることで、同等の効果を得ることは可能)
条件・・・「電話が繋がる」「攻撃を避ける」など、アクションが明確な場合に有効。
 たとえば「美味い蕎麦を打つ」という場合、「蕎麦を打つ」は成功するが「美味い」かは別問題。

264 :名無しさん:2005/03/27(日) 15:12:36
>>247->>251
乙です!
後日談楽しかったです!尻にしかれてる長井は笑えました。

>>255->>263
乙です!
トータルテンボス面白いです!続きが気になります・・・
まさかSBPFで来るとは思わなくて嬉しいですv

265 :名無しさん:2005/03/27(日) 18:02:47
>>264
SBPFってなに?

266 :名無しさん:2005/03/27(日) 19:01:34
>>265
ソーセージ・バタフライ・パスタ・フェスタ

267 :名無しさん:2005/03/27(日) 20:39:29
携帯でもまとめのヤツは見れるのですか?

前スレが無くなっていて、微妙に話の繋がりが把握しづらくて……

268 :名無しさん:2005/03/27(日) 21:21:58
あのまとめサイトが携帯対応ってことは多分無いね。
過去ログとかで何とかならなかったら携帯用のサイトを作るとか?

269 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 22:59:31
前スレの方からの続きです。多分469辺りからの続きになるかと。
まとめサイトのオパール編の続きということで、投下させていただきます。



収録後の楽屋、一足先にスタジオを後にした矢作は自分の楽屋で衣装を着替えていた。
誰も居なければ他人を信じる必要も無く疎外感を感じる事も無い。
仕事を終わらせた充実感だけが、矢作を癒してくれていた。
「ふぅ…」
急いで帰り支度まで済ませ、矢作は溜息を吐く。
「矢作さん。お疲れ様」
「…っ!!?」
突然声を掛けられ振り向くとそこには、
ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた柴田が立っていた。
ドアを開ける音はしなかったのに一体いつの間に。

矢作は柴田にされたことを忘れた訳ではなかった。
しかしその記憶以前を呼び出す以前に、
跳ね返された自分の暗示の所為で思考が混乱してしまっているのだ。

「いつから…居たの?」
ボソボソと俯きがちに矢作は尋ねた。
「いやー流石矢作さん。大人だねぇ…周りにアレだけ邪魔にされても一生懸命に仕事して」
矢作の問いには答えず、柴田はぺらぺらと喋り出す。
「そんな事は、そんな事は無い!」
周りに馬鹿にされている、皆が自分を見下している…
その言葉がグルグルと矢作の頭の中で回りだす。
そんな事実は全く有るはずが無いのに、
柴田の石の力により歪められた負の暗示は矢作の精神をじわじわと追い詰めていく。

270 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:00:49
「小木さんだって本当は矢作さんのこと…」
自分の言葉に混乱していく矢作の様子を、柴田は楽しそうに眺めている。
「違う…違う…」
「本当は皆矢作さんが居なければって思ってるのに…」
耳を塞いで嫌がる矢作に柴田は更に追い討ちをかける。
「そんな事…嘘、だ」
ガクンと膝を床につき、耳を押さえたまま矢作は嘘だ嘘だと繰り返す。
「嘘じゃない…矢作さんが消えちゃえば、そうだ、矢作さんも楽ニナレルヨ?」
柴田は耳元でそう囁くと、出口へと歩き出した。

「自分も、楽に…」
ゆっくりとその言葉を繰り返した矢作を見て満足そうに微笑んだ柴田は、
「遺書でも何でも書くなら、テーブルの上にメモ用紙が置いてあるよ」
ドアを閉める直前に、ふざけたような口調でそう言い足してから部屋を後にした。



収録後、他の出演者と話をした後に楽屋へ戻ってきた小木は、
先に戻っているはずの矢作の姿が無いことに胸騒ぎを覚えた。
机の上にはクシャクシャに丸められたメモ用紙。
広げてみると震えた字で『小木 ゴメン』と短い謝罪の言葉が綴られている。
「何がゴメンだって?何もできなかった俺の方が謝りたいくらいなのに!」
ダン、と激しく拳を机に叩きつけ、小木は勢い良く楽屋のドアを開け飛び出そうとした。
いくら考えてみたところで、矢作の行き先は見当がつかない。
しかし、このまま放って置いたら事態は最悪の方向へ向かうのは目に見えている。
(どうにかして矢作を探さないと…)

271 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:06:16
廊下に飛び出したところで小木は、隣の楽屋に入ろうとしている山崎と鉢合わせた。
「あ、小木さん柴田見ませんでした?」
「ねぇ、山崎君矢作見なかった?」
殆ど同じタイミングで二人はお互いに問いかけていた。
「あれー?矢作さんも居なくなっちゃったんですか?」
まいったなー、といつもの調子で山崎は話を続けようとするが。
「ごめん、見てないや。ちょっと急いでるから」
小木は手短にそう答えると、山崎が居る方と反対側の廊下へと歩いて行った。

探すといっても一体何処を探すべきなのだろうか、
分からないまま焦る気持ちばかりが先走ってしまう。
「誰かの楽屋に居てくれれば良いのに…」
幾つか並んでいる楽屋の前を歩いて行くと、ふとあるコンビ名が目に入った。
「くりぃむしちゅー…そうだ、上田さんなら!」
上田の能力なら何か手がかりがつかめるかもしれない。
そう考えた小木はそのドアをノックした。

そもそも矢作がああなったのも恐らくは石を巡るユニットの一つ、
黒いユニットが原因だろうと教えてくれたのはくりぃむの二人だった。
この二人ならきっと何か力になってくれる。
「小木か…どした?」
返事と共にドアを開けたのは有田だった。
「あの、上田さんは…」
「ああ、上田は今ちょっと忙しいんだけどな」
20センチほどあけたドアの隙間から、有田はしきりに廊下の様子を気にしているようだ。
「急ぎの用なんです。早くしないと」
切羽詰った様子の小木の声は楽屋内にも聞こえていた。
「小木なら別に入ってきても問題ないだろ?良いよ」
部屋の奥から上田がそう言うと、有田は小木に仲に入るように促す。

272 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:10:05
小木が楽屋内に入ると、上田と二人の先客が居た。
「あ、小木さん」 「お邪魔してます〜」
フットボールアワーの後藤と岩尾だった。
こんな一刻を争う事態に、何も知らぬ二人に言ってもややこしくなるだけだろう。
愛想笑いを浮かべ適当に挨拶を返しつつ、上田のほうへと近付いていく。
「上田さん、ちょっと…」
小木は出来るだけ平静を装って上田に耳打をした。
矢作の様子がいつも以上におかしかった事、そして楽屋に残されていたメモの事。

「何だって?矢作が…」
声に出した上田を、小木は慌てて止めようとする。
「上田さん!二人には…」
時既に遅し。二人は興味深げに、心配そうに訊ねてきた。
「何かあったんですか?」
「矢作さんがどうかしはりました?」
説明をしている時間は無い。小木は慌てて誤魔化そうとする。
「えっと、大したことじゃ」

「いや、隠す必要も無いだろ。」
小木の誤魔化しを遮り、上田は続けた。
「二人は石の能力者だ。それに組織のこともある程度は教えたところだ」
二人は軽く頷いて、ポケットから取り出した各々の石を見せてきた。
「関西には白のメンバーが少ないからな、そのことについて丁度話をしてたところなんだ」

273 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:11:25
「上田さん、そんな事よりも矢作が危険なんです!
上田さんの能力で何とか探してもらえないかと思って…」
小木は切羽詰った様子で、急かすように上田に言った。
能力で、そう聞いた上田の表情が曇る。
「メモ用紙の記憶を辿れば…確かに何かの手がかりは掴めるかも知れないな」
ニヤリと何か挑戦的な笑みを浮かべ、小木の差し出したメモ用紙を受け取った。
「でもお前は今…」
有田は能力が使えないはずの上田を止めようとする。
無理に石を使ってまたあの痛みに襲われたら。
それを堪えて無理に力を使った場合、どのような悪影響を及ぼすのか見当もつかない。

「良いんだ。それ以外に矢作を助ける道はねぇだろ?」
上田は既に腹を決めたようだった。その目には強い決意の光が宿っていた。
「上田…」
無茶だけはするなよと上田の肩を叩き、有田はそれ以上は何も言おうとはしない。
止めようとはしたものの、友人の命が掛かっているとなれば
上田の意志は固いだろうと簡単に想像はついた。

「一体何がどうなってるんや?」
ただその場を見ていただけの後藤は呟いた。
「聞かれても何とも…さっぱりわからへんもん。
黙って見てるだけの方が良いんちゃう?」
岩尾もサッパリと言った様子で首を振る。

274 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:14:01
上田は残されたメモ用紙を手に取った。
空いている方の手でホワイトカルサイトを握り締める。
目を瞑り石の力を発動させる為の薀蓄を選ぶと、上田は口を開いた。
「えー…皆さんは御存知でしょうか…」
薀蓄を語りだした直後、脳内に流れ込んでくる痛みの記憶。

(こんな不毛な争いは早く終わらせなければならないんだ)
掌に爪が食い込む程強く拳を握り締め、その痛みに耐える。
(ましてや、それに巻き込まれて人が死ぬなんてことがあってはいけないんだ)
痛みを抑えつつ朗々と薀蓄を述べ、石の能力を最大限に引き出していく。
(誘惑に負けて仲間を傷つけるようなやつらを、放って置く訳には行かないんだ)
脳内に流れ込んでくるその紙の、インクの記憶。
矢作ともう一人が会話している映像がはっきりと映し出された。
(やはりお前か…)

「分かったぞ。矢作は…屋上に居る」
「屋上…まさか!!」
聞くや否や、小木はドアを乱暴に開けて駆け出して行く。
「まさかって何がなん?」
「何かヤバイみたいや、俺らも行くで!!」
状況の良く飲み込めていない岩尾と後藤も後に続いて走り出す。

275 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:14:52
「おまえ、やっぱすげぇな」
すげぇよ!と繰り返しながら肩を叩いてくる有田に、上田は悔しそうに告げた。
「多分そこにアイツも…」
決定打だった。認めたくなかった、想像していた最悪のパターン。
「柴田も…居る」
声を押し殺して言った上田の脳裏には、
馬鹿みたいに大声を上げて笑う後輩の笑顔が浮かべられていた。

「そうか…」
有田は意外にも冷静にその言葉を受け止める。
やはり渡部の読みは当たっていた。
初めて聞かされたときは驚いたが、
能力を使って柴田の異変に気づいたと聞かされている。
「とにかく今は矢作を助けることが先決だ。上田、立てるか?」
「ああ…」
有田に肩を借りながら、上田は屋上へと向かった。

276 :お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA :2005/03/27(日) 23:18:10
とりあえず今日は此処までです。

近日中に続きが上げられればと思っていますが、
また他の話に浮気中なので気長に待っていただければ幸いです…

277 :名無しさん:2005/03/27(日) 23:24:39
乙です!
続編待ってました!自体が動き出しましたね・・・
というか矢作さん!小木さん頑張ってください!
柴田さん黒いですね・・・操られていますが。
続き、楽しみにしてます!いくらでも待ちます(笑)

278 :名無しさん:2005/03/27(日) 23:26:49
リアタイキタ━━━(゚∀゚)━━━━━!!
お試し期間中。さん乙です!
オパール編とても気になっていたので嬉しかったです。
続きも楽しみにしてます。
頑張って下さい!

279 :名無しさん:2005/03/28(月) 01:19:28
お試し期間中。さん乙です!!
めちゃ面白いです!!
続きかなり気になります。
矢作ガンガレ!!

280 :名無しさん:2005/03/28(月) 03:39:35
おお、続編キタ!
お試し期間中。サン本当乙です!
これで本編が一気に動きだすのか?
矢作も心配だが真っ黒な柴田も心配だ……。
みんな(お試し期間中サン含め)ガンガレ!!

281 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 20:57:19
唐突ですが、ブレスさんが書かれているはねる編の番外編的なものを投下します
(したらばの方で先に投下させていただきましたが、ブレスさん快諾ありがとうございます)。

<<jamping?>>another side story--Inner Shade



――――パチン

「王手」
とあるテレビ局の片隅で。
控え室の長机の上に折り畳み式の将棋盤を広げ向かい合っている二人――――鈴木と山本だ。
一部のコント以外では出番が極端に少ない山本と、ほとんどのコントでエキストラ同然の扱いになっている鈴木は、
時折待ち時間にこうやって将棋などをして暇を潰す事がある。
もちろんモニターで自分や他のメンバーの演技をチェックしたりもするのだが、それでも時間が余るという事は多々あるのだ。
今日の収録も終わりに差し掛かり、一足先に全ての出番を撮り終えた2人は既にエンディングの衣装に着替えていた。

「・・・・・・・・・・・・参りました」
数十秒後、真剣な表情で考え込んでいた鈴木が溜息と共に両手を挙げて降参の意を示すと、
山本は少し心配そうな顔をしながら駒を初期配置に戻し始めた。
「鈴木さん、今日は調子悪いですね。何かありました?」
先程の対局は、山本の圧勝だった。手も足も出ない、という表現がピッタリな程の一方的な展開。
いつもならばここまで酷い負け方をする事はほとんどないのだが、今日はどうにも上手く盤面に集中する事が出来なかったのだ。
どうしても、部屋から出ていくメンバーの後ろ姿や聞こえてくる話し声に意識が向いてしまう。
「いや・・・・・・別に何かあったわけじゃないんだけどさ」

282 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 20:59:48
口ではそう言うものの、理由は明白だった。
最近、はねるのトびらのメンバーが相次いで手に入れたもの――――芸人達の間に広まっている、強大な力を持った石だ。
他の十人より先に石を手に入れていたドランクドラゴンの二人は、石の力を巡る争いについてある程度の知識を持っている。
悪意を持って石を扱う芸人の事や、『黒』と『白』の争いの事。
そして、それを知っている二人は他のメンバーが石を手に入れた事で自分達の関係にヒビが入る事を恐れ、石の持つ力について知っているにも関わらずつい数日前までその事を言い出せずにいた。
本当の事を言ってしまってよかったのだろうか、その事が事態を悪い方向へ向かわせてしまうのではないか――――
一度考え始めれば思考の迷路に迷い込むのが分かり切っているので出来るだけ考えないようにしているのだが、いくら考えないようにしても不安が消える事はない。
収録を進めているうちに確かな変化に気付いてしまったから、尚更。

皆の様子が少し変わった事に、鈍感な部類に入る鈴木もようやく気付いていた。
のけ者にされたわけではないだろうが相方がそれを教えなかった事に腹が立つ。
事実を早めに理解していれば自分にだって何か出来る事があるはずなのに。
信用のおける相手でも全てをさらけ出せるとは限らないと、分かってはいるけど。
じっと耐えるしかないのだろうか。何かが欠けてしまったような気がする。
てのひらからいつの間にか零れ落ちてしまったそれを見つけられない、不安。
るつぼで溶かした鉱物のように、様々な感情が混じり溶け合い心を波立たせる。

――――でも、それでも俺は――――

本音が伝われば、と思う。本当は口に出して言いたい、偽りのない思い。
その言葉を口に出さなかった事を鈴木が心の底から後悔するのは、もう少し後の事になるのだけれど。

283 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 21:00:34

(大体、何で塚っちゃん何も言ってくんなかったんだよ・・・・・・絶対俺より早く気付いてたはずじゃんか)
収録も終わりに差し掛かってから気付く自分の鈍感さにも腹が立つが、相方が自分に何も教えてくれなかった事の方がもっと嫌だ。
もちろん、他のメンバーが居る前でその事を言うわけにはいかないのだが。
(絶対後で文句言ってやる・・・・・・)
「・・・・・・鈴木さん? 大丈夫ですか?」
「えっ?」
どうやら、いつの間にか眉間に皺を寄せて黙り込んでいたらしい。
「・・・・・・ごめん、ちょっとボーっとしてた」
心配そうな山本の声で我に返った鈴木は、眼鏡を押し上げるついでにすっかり疲れた眉間を人差し指で押さえ、深く溜息をついた。
待ち時間が長い者同士、性格的にどことなく似ている部分があるという事もあってか、メンバーの中では山本と一番仲が良い。
こうやって一緒に待ち時間の暇潰しをする事もあるし、収録の帰りに山本を車で自宅まで送ったりする事もある。
けれど、どこか様子が変わった彼を見ているうちに、ふと不安になる。
自分は彼の事を、そして相方や仲間達の事をどれくらい知っているというのだろうか。
「・・・・・・あのさぁ、山本君」
「何ですか?」
「・・・・・・・いや、何でもないや。・・・・・・・あ、今度は将棋崩しする? 俺、そっちの方が得意なんだよね。ガキっぽい遊び方かもしんねぇけど」
ごまかすように笑いながら言うと、つられたように山本も笑みを零す。
盤上に駒を積み上げて山にしながら、鈴木はチラリと山本に視線を向けた。
番組特製のTシャツから伸びる腕は、折れそうな程に細い。
細いと言えば鈴木や板倉もそうなのだが、ジムに通って鍛えている鈴木や、自身の病弱さを自覚しているからかそれなりに鍛えるよう努力しているらしい板倉とは違い、山本の痩せ方は必要な部分も不要な部分も全部一緒くたにして削ぎ落としてしまったような印象を受けるものだ。
それでも以前よりは太ったらしいが、悩み事でもあるのか最近はむしろ昔よりやつれているように見える。
不健康そうな痩せ方だよなぁ、と余り血色の良くないその顔を見ながら心の中で呟いた鈴木は、視線を自分の足元にやった。

284 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 21:01:09

右足を少し動かすと、それまでジーンズの裾に隠れていた銀色のチェーンが顔を出す。
既に石を加工していたメンバーを除いて、お揃いで作ったアンクレット。
自分のアンクレットにはまっているのは、茶色や緑、赤など様々な色が交じり合った不思議な色合いの石だ。
太陽のエネルギーと共鳴して力を得ると言われている――――そして、重力を自在に操る異能の力を持った石。
銀色に輝くチェーンに視線を落としながら、鈴木はこの石の力を仲間との争いに使う日が来ない事を切に願った。



同時刻、スタジオで慌しく準備に追われるスタッフ達を見ながら、塚地は軽く溜息をついた。
次のコントを撮り終われば、後はエンディングを残すのみだ。
ただ、今塚地が気にしているのは撮影の終わりではない。

今日、スタジオにやってきてすぐの時点で、塚地は他のメンバーの様子が少しおかしい事に気付いていた。
それぞれ、何か悩んでいる様子だったり、なぜか疲れていたり、隠し切れない困惑が表情に浮かんでいたり。
その原因が石である事は、ほぼ間違いない。
だから、今彼が気にしているのは撮影の終わりではなく、石を手に入れた彼らがこれから一体どうしていくか――――『白』か、中立か、それとも――――という事だった。

そして、塚地がメンバーの変化にすぐ気付いたにも関わらず鈴木にそれを教えなかったのは――――出来れば気付いて欲しくなかったからだ。
苛々させられる事も多々あるけれど、石の力を巡る熾烈な争いの中で、呆れる程に純粋な鈴木の存在が救いになっている事も確かだったから。
信頼しているメンバーの変化に鈴木が傷付くかもしれない事が、少し恐かった。
(でも、いくらあいつでもそろそろ気付いてるか・・・・・・)
黙っていた事で文句を言われそうだが、仕方がないだろう。
沈黙で繕える程、この変化は穏やかなものではなかった。

そして、きっといつか――――

静かな、それでいて確かな予感に、塚地は酷く哀しげに眉を寄せた。




285 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 21:01:45
鈴木が一つ不思議な事に気付いたのは、積み上げられた駒の山に手を伸ばそうとしたその時だった。
(そういえば、今日は山本君が秋山君達と喋ってるとこ見てないな)
いつもならば必ず一度は楽しげに話しているところを見掛けるのだが。
(・・・・・・もしかして、ケンカでもしたのかな?)
いつもの三人の仲の良さを見ていると、そう簡単に仲違いするとは思えない。
ただ――――企画で秋山と馬場の故郷を訪れた時、ほんの少しだけ寂しげな表情で佇む山本の姿を見た事がある鈴木は、それがありえない事だとは言い切れなかった。
どんなに仲が良くても、ふとした瞬間に自分一人だけ幼馴染ではないという事実を痛感させられてしまうのだろうか。
秋山達が付き合いの長さに関係なく山本の事を大事だと思っているのは傍から見ても分かるし、もちろん山本自身もそれをよく分かっているはずなのだけれど。

――――カタン。
「・・・・・・あ」
考え事をしていたせいで力加減を誤ったのか、積み上げられた山から軽い音を立てて駒が一つ零れ落ちる。
その微かな音になぜか酷く不吉なものを感じて、鈴木は無意識の内に拳を握り締めていた。

強大な力は、普段ならばすぐに忘れてしまうようなほんの少しの不安、不信、不満・・・・・・そして心の奥底に僅かに潜んだ疎外感でさえ、心の歪みへと変えてしまう事がある。
そして、本人さえ気付かないその歪みはやがて大きな崩壊を引き起こすのだ。

もしこの時鈴木がしっかり山本の表情を観察していたら、気付く事が出来たのかもしれない。
将棋崩しの方が得意じゃなかったんですか?とからかうように言ってきた山本の、その笑顔の裏に潜むもの。
相方達の故郷を訪れたあの時よりも更に深く暗い、孤独に。

286 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 21:08:45
以上、はねる番外編でした。
時間軸的には1話でメンバーがアンクレットを作った後、2話(堤下襲撃事件)の前です。

>>◆ksdkDoE4AQさん
したらばの方で呼んだはずなのに続きが楽しみですw
とてもいい話なのでこちらでもう1度読み直したいと思います。

>>お試し期間中。さん
乙です!
いよいよ核心に迫ってきましたね。真っ黒な柴田と矢作の安否が気懸りです。
続き楽しみにしてます。

287 : ◆8Y4t9xw7Nw :2005/03/28(月) 21:16:59
すいません
>>286の4行目、呼んだ→読んだですねorz

288 :名無しさん:2005/03/28(月) 21:42:09
乙です!
はねる編楽しませてもらいました!
そうですよねー・・・博だけ違うんですよね・・・実際のことなので複雑です。
塚っちゃんが案外鈴木のこと気にかけてるのにはなんか安心しましたv
とても楽しかったです!

289 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:51:06
こんばんは。
トータルテンボス中心話を書かせていただいている者です。
少し長くなっているのですが、続きを投下させてくださいませ。
週の半ば、すこしでも皆さんの楽しみになれれば幸いです。


>>255-262続き
「それで、ライブ前のあの茶番は何だったんだよ」
 モツ煮込みを頬張りながら、藤田が大村をきろりと睨む。ライブ後の打ち上げと称して二人で早朝まで営業し
ている居酒屋に来たのはいいが、結局のところ今日のライブ前(ほんの数時間前)に石を使っていた大村の行動
の理由が気になるのだろう。あの時、石を使ってまで何をしたのか、藤田はそれを聞きたがっている。さすがに
冷静に考えてみれば、ジュースのオゴジャンのためだけに三回連続で石を使って成功率に細工をしたとは信じら
れない。
「おやおや…茶番呼ばわりとは穏やかじゃないねぇ」
「穏やかじゃなかったのはおめーだろ。ガラにもなくマジだった」
「…ま、確かに」
 さてどこから話し始めたもんかな、と一瞬間を置くと、藤田は間髪入れず、
「誰が居た?」
 いいところを突いてきた。
「…誰も居なかった」
「誰か居たんだろ」
「誰も居なかったのはお前も見たろう」
 居なかったのを見た、とはおかしな言い方だが、藤田は肯かないわけにはいかない。あの時の大村は、確かに
虚空を睨んでいたから。
「ただし、俺の目にはある男が映ってた」
「誰だよ」
「…俺らより知名度のあるコンビの、ボケの方」
「石は?」
「…持ってなかった」

290 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:52:17
 じゃあ丸腰の相手に向けて石を使おうとしていたのか?藤田が眉を寄せるのを見て、大村が続ける。
「俺の目には見えてたけれど、実際は居なかったって言っただろう。つまり、幻覚だ。幻覚が、石を持っている
わけはねぇ。それに、あの時点で俺は、相手が幻覚だとは知らなかった」
 そういうことだ、と言って藤田を安心させるようにひとつ肯く。
「つまり、どこからかその幻覚を操っていたやつがいたはずだ。石の力を考えると、多分すぐ近くで。…それが
誰か、俺には分かんねぇけど」
「…」
 藤田は、アフロの下の力強い眉毛をぎゅっと寄せて、何かしら考え込んでいる。
「藤田」
「…一人だけ、可能性がある。いや、俺自身はこれっぽっちもそんな可能性信じてねぇけど」
「…藤田?」
「今日はいつものライブじゃねぇよ。俺らのバンドのオンリーライブだぜ?」
「…藤田おまえ」
 驚いた表情の大村に、藤田がその人物の名前を告げようとした瞬間。
「もうええよ、藤田」
 額を寄せ合って話をしていたふたりの上に、影が差す。その人物は、大村の背後から近付いており、声を掛け
られた藤田が先に顔を上げて、その人物を見とめた。
 それはまさに、藤田が名前を口にしようとした人物。
「…樅兄…?」
 大村は振り向かないまま、藤田の表情だけを観察している。騒がしいはずの居酒屋の中で、自分たちを中心に
半径1メートルだけがぽっかりと音を無くしているような感覚。腰にぶら下がった石が、自分の鼓動を表すよう
に忙しなく明滅しているのが感じ取れる。
「ライブ前のアレは、俺の石の能力や」
 確かにそれは樅野の声。だが、振り向けばその瞬間から、樅野が白や黒のこととは別に、“自分とは違う側”
の存在になってしまうような気がして、大村は振り向く意思すら見せずに問う。
「…なんで、あんなマネしたんすか」
 別に、幻覚山崎にも、その操り手だったという樅野にも、身体的な攻撃を受けたわけではない。ただし、幻覚
と対峙した間、そしてその後、幻覚かどうか判然としない藤田を前にした時、言いようのない恐怖が胸に拡がっ
たことは事実だ。それは精神的な攻撃とも言えた。
「…理由は、あんまりたいしたことでもないよ。…大村、怖かったやろ?」
「…」

291 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:54:48
 背中越し、淡々と聞こえてくる樅野の言葉に、大村は応えない。否定も肯定もしない。
「石の戦いをどこ吹く風、って白にも黒にも属さんことはできるよ。現に、そういう立場を選んでる芸人もいっ
ぱいおるはずや」
 目のまえの藤田は、信じられないという顔で樅野を見ている。
「ただ、石の能力は千差万別。その戦いの途中で、今まで白か黒かなんてたいして気にも留めてなかった相方ま
で信じられんようになる時は来る。相方が自分と同じ考えなのか。実は自分はたった一人で戦ってるんじゃない
か。そもそも、相方は本当に昨日まで隣にいた相方なのか。…疑いが生まれたら、なかなか消えることはない」
「そのことを俺たちに教えてくれようとしたってことですか?」
「そんな優しい気持ちやったかな。どっちかっていうと、試したってのが正しいかもしれない。元々、仲の悪い
コンビやったらそれでも構わないやろけど、おまえらは仲いいから。どうするんかなって」
「俺たちを試して、あなたに何が残るんです、何か残りますか」
「何も残らんよ。何ひとつ、残ったらだめなんです」
 謎掛けめいた返答にも、思い当たる節はある。
「樅野さんは、白っすか黒っすか」
 ついに頭を抱えるようにして俯いてしまった藤田のアフロヘアーを眺めながら、大村は今日二度目になる質問
をぶつけた。この問いに、山崎の姿を借りた樅野は白だと答えた。
「…知りたいか?」
「知りたいことがありすぎるんで、手近なとこから知りたいですね」
「俺は、おまえらは白に入るべきだと思ってる」
 そんなことは訊いてない、と言おうとしたが、幻覚山崎のせりふを思い出して、言葉を飲んだ。
――…『おまえは白か?』って訊く人もいるんじゃないんですか。
――いるね。
――そういう人は?
――うーん…黒から改心した人か、芸人辞めた人か?…もしくは、どっちかをスパイしてる人。
 あの台詞で樅野が言いたかったことは、石を巡る戦いを知った人間で、且つその戦いから身を引いた人物…
『芸人を辞めた人間』は、石を封印することを願う、ということなのではないか。だから今も、彼は自分たち二
人を白のユニットにいざなっている。

292 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:55:26
「樅兄の考えはよく分かり…」
「待てよ、おーむ」
 大村の言葉の語尾にかぶせるようにして、いつの間にか顔を上げた藤田が手を差し出して「ストップ」と表す。
その目は、どこか怒ったように尖り、大村は思わず口を噤んだ。
「ねぇ樅兄」
「…何?」
「俺の今日のカッコ、イケてます?」
「ん?…いや、おまえその格好で家から来たんか、て思うけど」
「…おかしい」
 常に無い、真剣な声色。大村が尋ね返す代わりに眉をひそめると、藤田は苛ついた様子で居酒屋のテーブルを
ひとつ叩いた。周囲の客が一瞬こちらを注視したが、すぐに興味を失った様子でそれぞれの会話に集中を戻した。
彼らのその動きはどこか不自然で、もしかしたら石の能力の中には他人の自分への興味を失わせる、そんなもの
もあるのかもしれないと大村は頭の片隅で考える。
「…どうしたんだよ藤田」
「まず根本的なところがおかしいんだよ」
「…だから何がだね」
「今の樅兄が、石を持ってるはずがねぇ」
 石を持っているのは芸人だけのはずと聞いているから。
 これまで石を持っていたとしても、つい最近、樅野は石を手放していると考えてもいいはずだ。彼の肩書きは、
『作家』ではないか。
「…でもよ、石を手放すってのもすぐにはいかねぇだろ。解散してからだって、少しくらい猶予があるのかも」
「それより、この樅兄も幻覚だって考えた方がしっくりこないか?」
 藤田が、テーブル上にあった割り箸を大村の肩越し、樅野に向けて投げる。大村は振り返らなかったが、背後
の樅野から声は上がらない。普通、箸を投げつけられたら「わぁ」とか「何すんだ」とか、とにかく声を上げる
はずだ。
「…マジか…」
 …そう考えれば、さっき周囲の客がこちらを見てすぐに興味を失ったのもなんとなく分かる。大村が一切振り
向かなかったこともあって、傍から見れば、自分たちは“二対一で揉めてる集団”ではなく“ケンカモードのた
だの二人連れ”なのだ。二対一の状況なら多少目を引いただろうが、ツレ同士にしか見えない藤田と大村だけな
ら、さして注目することもあるまい。

293 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:57:24
 ライブ前、大村が“一人で”何かと対峙していたように、その場に居る人間が認識している人数から、実は
「一人足りない」。言い換えれば、一人は幻覚。
 大村が鋭く振り返る。そこには誰も居なかった。
「…幻覚の樅兄さ、ちょっとだけ笑って、フッて居なくなった」
 ずっと樅野(幻覚)が立っていたのを見ていた藤田が、ぽつりと呟く。それを口に出してみると、ひどく象徴
的な言葉になってしまったことに、藤田自身が驚いた。驚いたけれど、そのことが藤田にある核心を抱かせた。
「居るんでしょう?」
「藤田?…誰に話し掛けてる?」
 さっきから、藤田は千里眼でも持ったかのように大村の思考の先を行く。大村にとってみれば、いつもおちょ
くっている藤田の言動に驚くやら少しムカつくやらといったところだ。
「居んの、分かってんすよ」
「藤田ぁ」
 俺にも分かるように言いたまえ。
 大村がそう言おうとした矢先だった。
「…大村じゃなくて藤田に見破られんの、ちょっと悔しいな」
 聞き覚えのある、標準語と交じり合って柔らかな響きの関西弁。
 今、背後に立つ人物が、山崎・樅野、二人の幻覚を大村に見せたのであり。
 そして、振り返る前から分かった。その声は聞き間違えようもなく、
「や…まもと、さん?」
 樅野の相方だった、山本のもの。
「ライブ、実はこっそり見てたよ。よかった」
「…マジで山本さん?」
「大村は、びっくりしてるなぁ。…藤田は、いつから分かってたん?」
 穏やかな顔に、多少剣呑な表情を浮かべて、山本が藤田に向けて顎をしゃくってみせた。
「樅兄が出てきたところ」
 山本の問いに、藤田はお気に入りのおもちゃを取られた子供のような顔で答える。
「なんで分かった?」
「樅兄がこんなことすんのおかしいって思った。下手したら俺らが石使って抵抗してくっかもしれないのに、し
らっと出てきて、無防備過ぎんなぁって。幻覚って考えれば説明がつくでしょう。幻覚に俺らが反撃したって、
本体は傷付かない」

294 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:58:36
 それに、と言いさして、藤田は自分のスウェットを見下ろす。
「決定打はこのスウェット。樅兄は俺が今日なんでスウェット履いてんのか知ってるんですよ。おーむの悪戯の
せいで途中で履き替えたんであって、この格好は家からじゃねぇってことも」
 あちゃあ、と山本の茶化したような声がしたが、たいしてダメージを負ってはいないのは手に取るように分か
る。
「…それで、その幻覚の本体が俺やって、なんで分かったん?」
「…手放した石を、樅兄がどうしたか考えたんです。あんまり考えたくはなかったけど、もし俺が樅兄と同じ状
況ならどうするかってことも考えた」
「それで?」
「俺なら…」
 藤田はそこで一度言葉を切り、対面に座る大村に視線を合わせた。
「持たなくなった石は、きっと大村に預けます」
 山本の返事はない。おそらく、藤田の推察は的を射たものだったのだろう。樅野はもう自分で持たなくなった
(持てなくなった?)石を、元相方に預けた。
「石は、芸人じゃないと持たない。石は、俺らがコンビだったって証にもなるでしょ。だから俺ならきっと大村
に預けます。…同じように樅兄も山本さんに預けたんじゃねぇかなって」
 樅野が何を考えて、石を山本に預けたのかは知らない。山本にすら分からない。
 しかし、藤田の言葉は拙いながらもある種の説得力を持っていた。芸人にならなくては持つことのなかった石。
自分の笑いへの情熱に反応しているような石。それを『自分が芸人である間となりに居た男』に託したとしても、
驚くことではない。
「…おまえらを、試しただけや」
 拗ねたようにそう呟いて、山本が二人に背を向けた。くちびる噛んで黙っていた大村が、先輩の背中に声を掛
ける。

295 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/29(火) 23:59:55
「ねぇ山本さん。俺の石はすげぇ弱っちくて、ひとりで戦ったりとか出来っこねぇんですけど、でもそれでも藤
田がホンモノかどうかぐらいは見破れるんです。俺はそれが出来ればまぁ十分かなって思ってます」
 その場に立ち尽くしたまま、山本は動かない。テーブルの傍らで微動だにしない山本を、店の客が胡散臭げに
見上げている。この山本は確実に幻覚ではなく、生身らしい。
「俺がホンモノかどうか、このモジャが分かんのかどうかアヤシイもんですけど、でもやっぱり俺のニセモノが
いたらちゃんと見破るんじゃねぇかなって、変に信じてる部分もあるんですよね」
 大村の言葉に、藤田が怒ったり照れたりしているのが見えたが、今は構っている場合ではない。
 山本は、彼らにじっと背を向けたまま黙っている。彼の傍らのテーブルの客が、立ち上がって、店を出て行っ
た。そのくらいの時間をじっとしたまま待って、それから山本はゆっくりと藤田と大村を振り返って。
「…相方のことが分かる、ゆうんか」
「そうですね」
「今日は俺が相手やったからそれも出来たかもしれん。でも、似たような能力の石を持ったやつが、俺よりもっ
と周到に相方のニセモン送り込んでくるかもしれん。しかも、その日がいつ来るかもわからん」
「そりゃそうですね。でももしホンモノ藤田の中に一日だけニセモノが混じってたとしても、俺はイヤでも気付
いちまうんだと思いますよ」
「なんかロシアンルーレットみたいだな」
 大村の今日の悪戯を思い出して、藤田が呟く。彼のジーパンをベットリとよごした、辛子入りのシュークリー
ムが脳裏をよぎったのだろう。
「俺の石の能力があれば、山盛りのシュークリームの中から辛子入りを選び出すことだって可能だからな」
 大村が、ニヤリと笑って藤田を見る。藤田は、これから先ロシアンシューの罰ゲームをすることがあれば、自
分は必ず『アタリ』を引いてしまうのだろう、と悲壮な覚悟を決めた。
「ホンマ…なんてか…お気楽なヤツら」
 山本が呟く。けれどその声音は十分に笑いを含んだもので、二人は安心する。

296 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/30(水) 00:01:47
 お気楽結構。面白けりゃそれで結構。山本さんもそうでしょ?そんなことを考えながら、大村は続ける。
「それでですね。何が言いてぇかっていうとですね。…俺も藤田も、白とか黒とかぶっちゃけどっちでもいいん
ですけど、でも…白に入って石を封印できんのなら」
「そう。そんで、それが“いろんな人”の希みだってんなら」
 藤田の言う「いろんな人」には、今は作家として歩み出そうとしているギター好きの先輩も含まれるのであろ
う。そして、自覚の無いまま「元相方」の思いを汲み取ってトータルテンボスを白にいざなおうとしていた、目
のまえの山本のことも。
「俺らは、白に入ってもいいと思います」
「困ったことに、俺も大村とおんなじ意見でっす」
 アフロを揺らして、藤田が明るく挙手して賛同する。
 一瞬、あっけに取られた顔をした山本が、次の瞬間、泣きそうな顔をして、すぐにそれから弾かれるように笑
い声を上げた。大きな笑い声はしかし、居酒屋の中では埋没する。
 ひとしきり笑った後で、目じりを濡らすわずかな涙を指先で拭って、山本はウンとひとつ肯いた。
「頼むわ。俺はもうしばらくは、石使う気はないし」
「うぃっす!俺に任せてください」
「うーん、藤田に任すんは、ちょっとな」
「なんですかそれ!」
 笑い合い、居酒屋の喧騒の渦に飲み込まれていく感覚を味わいながら、藤田は思った。
 俺は今晩のことをずっと忘れないだろう。事あるごとに思い出すんだ。…辛子入りシュークリームを見た時な
んか、特に。

297 : ◆ksdkDoE4AQ :2005/03/30(水) 00:06:03
今日はここまで投下させていただきました。次で終わりになります。
お楽しみいただけると嬉しいです。失礼しました!

298 :名無しさん:2005/03/30(水) 02:10:34
文体が独特で、しかもものすごく上手い!最高に楽しませて頂きました。
次回も楽しみにしてます!

299 :名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 11:51:33
エイプリルフール

300 :名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 11:52:12
300


301 :名無しさん:芸人降臨2006/04/01(金) 21:47:50
乙です!
山本さんが出ましたね!ってか樅兄が幻覚だとは・・・
元芸人だと持てないんですね石・・・
続き、楽しみにしてます!

302 :名無しさん:芸人降臨2006/04/01(金) 22:56:05
年号・・・エイプリルフールだからか?だからなのか・・・?w

303 : ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:04:04
お言葉くださってる皆さん、ありがとうございます。
連投すみませんが、時間のあるうちに・・・
続きを投下させていただきますね。
これで最後になるはずですので、今しばらくお付き合いくださいませ・・・

304 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:04:54
「じゃあ、俺は帰る。またルミネで会おう」
 朝もやの中、カラスの鳴く居酒屋前の路地で。
 目のまえの先輩は至極さっぱりとした顔で大村と藤田を見て、続ける。
「今日のこと、“あのひと”には内緒な」
 その指示語が誰を指しているのかはすぐに知れたので、二人も問い返したりはしない。
 その代わり、藤田がすこし躊躇って切り出す。
「山本さん」
「何、あらたまった顔で」
「山本さんの石の能力は」
「知った人の幻覚を作り出すこと。その人のことを知ってれば知ってるほど、リアルな幻覚が作れる」
 大村が見た山崎の幻覚が奇妙なほど笑顔だったのは、山本のイメージの中の存在だったからなのだろう。なぜ
山崎だったのかという疑問は残るが、もしかすると山本は、以前山崎が石を持っているところを見たことがあっ
たのかもしれない。そう考えると、樅野の幻覚はどの程度リアルだったのだろうか?残念ながら、大村は振り向
きもしなかったので、それを知ることはできない。
「まぁ幻覚ゆうか…正確には“蜃気楼”なんかもしらん。大村には見せて藤田には見せへん、みたいな使い方も
出来るから、まぁホンマモンの蜃気楼とも違うけどな」
「なんで蜃気楼でしょうね?…蜃気楼ったら…あぁ、砂漠?山本さんがラクダに似てるから?」
「さぁな。…あぁ、でもそうかもな?」
 軽口に山本が気を悪くした様子も無いので、藤田は思い切る。
「あの、山本さん。…樅兄の幻覚、もう一回作ってくださいよ」
「え?」
「俺、最後に、チャイルドマシーンの揃い踏みが見てェっす」
 もじもじすんじゃねぇ、と笑って背中を叩いて、藤田をツッコんでやろうかと大村は思ったが、相方のデカイ
体の向こうに見える山本が泣きそうに瞳をゆがめたので、何も言えなかった。
「…悪い、藤田。俺、今日もう打ち止め」
「…」
「1日に2人も幻覚作ったん初めてで、わりとへろへろ」


305 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:05:39
 それは言い訳ではなく、真実なのだろう。石を使った人にしか分からない疲労感は確かにある。しかもあれだ
けリアルに喋る幻覚を作ることが、何度も何度も出来るとは考えにくい。
 そっすか…とすっかりしょげかえった藤田の背中を、今度こそ大村がドスンと重たく叩く。
「…藤田、気付け。おまえの石の出番じゃねぇの?」
 大村の助け舟に、アフロの下の藤田の曇り顔が一気にパッと晴れ渡った。そして「どういうこと?」と山本が
問い直すより早く、
「山本さん、ハンパねぇっ!」
 早朝の空に、高らかに藤田の声が響いた。驚く山本だが、すぐに藤田のポケットの中が薄い碧色に光るのが服
の上からも見えたので、その意を察する。
「藤田、おまえの能力って」
 その問いには、藤田ではなく大村が応える。
「“名前+ハンパねぇ”って叫ぶことで、使い過ぎて消耗した石をハンパねぇ状態に回復させる。ま、ゆったら
タダで満タンにしてくれるガソリンスタンドみてぇなもんです」
「ちょ、それヒドくねぇ?」
 「ホントのことだろう」「だとしてもヒデェ」などと二人がちょっとした小競り合いを始める。それを見てい
た山本の隣の空気が、ちょうど人の大きさぐらいに、きゅぅっと密度を高めた。色はないが、透明なレンズを置
いたかのような。…藤田の石・翡翠(ジェイド)の能力のおかげで、幻覚を作り出すことが出来そうだ。しかし、
本格的な口喧嘩になり始めた藤田と大村は、その瞬間を見ていない。
「フザケんなよおめー!」
「やろうってのかよ。おまえのことなんざ金輪際もう知らねェ。ダチでもなきゃ相方でもねぇ」
「上等だ!このすっとこどっこい!」
 つい数時間前に「俺は相方を信じてる」ようなことを言っていた二人とは思えない罵詈雑言が、薄水色の朝空
の下を飛び交う。苦笑していた山本が、何か念じるかのように、一瞬目をきつく瞑った。ペンダント式なのだろ
うか。石があるらしい山本の胸元が、淡い光を放つ。
 彼の隣の“密な空気”が、中央からゆっくりと色を生していく。ゆらりゆらりと揺らいで危うかったそれは、
ある一瞬からしっかりと質感を持って目に映る。
 石が何かまでは明かさないが、今まさに山本は蜃気楼で人を一人出現させんとしている。

306 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:06:16
「…藤田」
「なんだね、今更すいませんでしたは聞かねぇぞ」
「おまえになど謝るかバカモノ。…いや、そうじゃなくて」
 大村がゆっくりとかざした手は、ピンと伸ばされたその人差し指で、一点を指している。
 その先を急いで追った藤田の目に映ったのは、ゆっくりと去ってゆく先輩の背中。
 肩越しにバイバイまたな、と手を振ってみせているのは山本。
 そしてそのとなりで一緒に歩み去りながら、一瞬こちらを振り返って、口のかたちだけで「喧嘩すんなよ」と
言っているのは、樅野。…いや、樅野の幻覚。幻覚と分かっていても驚くほど、すごくリアルだ。
 そしてそうやって二人の並ぶすがたは、あまりに当たり前に思えるほど自然で。
 立ち去る先輩二人を見送りながら、いつしかさっきまでの喧嘩を忘れて、ぼんやりと藤田と大村は立ち尽くし
ている。
「…なぁ、おーむ」
「…あ?」
「別に俺らはバンドん時、ふつうに樅兄に会えるんだけどさ。たぶんルミネであの二人に会う確率だって高いん
だろうけどさ」
 目が潤んでくるのは何故だろう。
「なんか…二人並んでっと、すげぇあの背中がでっかく見えんな」
「…」
 くせぇ、と笑いもせずに、大村は真顔のまま踵を返す。山本とは真逆の方向に歩みを進め始める。
「なぁ、大村ってば」
 その背中を追う藤田だが、顔はチラチラと反対方向に歩み去る先輩二人を見ている。それを横目で確認して、
大村は突然足を止めて。
「藤田、俺に“ハンパねぇ”かけてくれ」
「は?」
「いいからかけろよ。俺も、もう燃料切れ寸前だっつの」
「…大村、ハンパねぇ」

307 :ロシアン・シュー ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:06:58
 藤田が気の乗らぬまま呟く。これで大村の石も全快とはいかないが、それでもあと一回使うぐらいは出来るだ
ろう。手元に石を引き寄せて、握りこみ、胸にくっつける。藤田が見よう見まねの様子で同じ体勢を取る。
「“ハイライト”やんぞ」
「え?え?」
「“ハイライト”だよ。いいな?せぇの」
 一瞬先に、大村の石が淡いヒヨコ色の光を放った。『打ち合わせなしでも藤田とのハイライト詠唱がハズれな
いように』成功率を上げたのだ。とは言えこの場合、たとえ低確率でも二人の詠唱が外れることなどありえな
かったのだが。
 そして、二人は声をそろえて、背後の山本に聞こえる程度の声量で。
「チャ・チャ・チャイルドマシーンの、ハイライトっ」
 薄い緑と黄色の光に包まれながらそう言い放つと、脱兎のごとくその場を走り去った。

 あとに残された山本たちが、観客のカラス相手にいったいどんなハイライトシーンを見せたのか、藤田たちに
知る術はないが、それは山本だけが知っていればいいことだと思って気にも留めなかった。

 石の能力を最大限に使った疲労感を、飲み過ぎの二日酔いだということにすり替えて、朝日に向かって二人は
歩く。
「なぁ大村」
「なんだね」
 差し当たっての藤田の関心事は、白のユニットにどうやって入ればいいのかとか、黒のユニットにはどんな人
がいるんだっけ、とかそういうことよりも。
「頼むからさ、ロシアンシューで俺がアタリ引くように石使うの、ヤメねぇ?」
 大村が大きな声で笑い出してしまうようなそんなこと。

 何があっても自分たちが自分たちでいられれば、それでいいと思った。

End.

308 : ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:09:32
以上です、ありがとうございました。
バトルもない、ぬるめのメンタル系の話になってしまいましたが、
少しでも、読後に色んな方にホッとしていただければ幸いです。
以下、石の能力(藤田さん編/コンビ技)です。
先日のオンエアバトルで藤田さんが「俺、ハンパねぇ捨ててぇよ!」と言っていてガーンとショックを受けました(w

藤田憲右(トータルテンボス)
石・・・翡翠(ジェイド)
効能・・・心に落ち着きを与えて、精神的な成長をくれる。災難から身を守り、希望を与える。
能力・・・「○○(人の名前)、ハンパねぇ〜!」の言葉を投げることで、
 その人の持つ石の威力や使用回数を、MAXまで引き上げられる。
 MAXの状態に対しては、変化なし。(MAXを越えることはない)
 ただし、「マジ、ハンパねぇ!」と言った場合、低確率だが、MAXを越えさせることが一度だけ可能。
 疲労度が高まると、MAXまで引き上げられないことがある。(一日4・5回が限度か)
 「マジ、ハンパねぇ!」は疲労度が激しいので、確実にそこで打ち止めになる。
条件・・・藤田さんが、その人の名前を知っていること。芸名可。(つまりは藤田さんの交友関係が命)
 コンビ名などの複数指定や「おまえ」「そこの人」呼ばわりでは、効果が薄い。
 石を一時的に預かっている人や石を隠している人にも、効果は及ぶ。
 ちなみに「オレ、ハンパねぇ〜!」は無効。

トータルテンボス、コンビ技
「○○のハイライト」と叫ぶことで、声の届く範囲内で、
様々な事象のハイライトシーンを出現させることが出来る。
ただし、どんなハイライトになるかは選べない。

309 : ◆ksdkDoE4AQ :芸人降臨2006/04/02(土) 13:18:43
それと山本さんの能力ですが、石も何も詳しくは決めていないので、
文中で述べた能力にプラスアルファで、何かあるのかもしれません。
したらばでも相談してはいなかった部分なので、詳細は他の方にお任せします・・・

そのほかに、
☆以前樅野さんが持っていた石も現在所持している模様(詳細は不明)
☆もしかすると、以前アンタッチャブル山崎さんが石を使うところを見たことがあるのかも
☆更に言うと、柴田さんのダークサイドも見たことがあるかも(幻覚山崎の台詞より)
☆当分、石を使うつもりはない様子
☆白寄り
といった情報が挙げられます。

本当はトータルテンボスは、ルミネつながりでポイズンガールバンドや、
仲が良いという千鳥や笑い飯とも絡ませたかったのですが、
思いのほか長くなってしまったので、また機会があれば・・・と。
読んでくださってありがとうございました!

310 :名無しさん:2005/04/03(日) 15:41:37
乙です!
面白かったです!チャイルドマシーンそろい踏み・・・もう見れないだけに・・・
やっぱり樅野さんは本物同然のを作ってて・・・感動しました。
こういうバトルなしの話も良いと思いました。
ありがとうございました!

311 :名無しさん:2005/04/03(日) 18:17:23
お疲れさまです。
読んでいて書き手の方の愛を感じました。
心理戦っぽい所が面白かったです。
それといまさらですが、タイトルがいいですね。


312 :名無しさん:2005/04/05(火) 01:39:13
age

313 :名無しさん:2005/04/05(火) 02:04:58
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